「TYRANT」鑑賞


FXネットワークの新作シリーズ。

バサム・アルファイードは中東の国家アブディンの独裁者の次男であったが、テロなどによって乱れた母国に嫌気がさして政治の後継ぎを兄のジャマールに任せ、自分はロサンゼルスに移住して20年が経とうとしていた。医者として働きアメリカ人の妻子も持ったバサムだったが、甥の結婚式が開かれるということでアブディンに戻ってくるよう父に命じられる。家族に説得されて渋々と母国に戻ったバサムだったが、テロリストだと疑われた人物を兄が拷問するのを目にして、早々に国を去ることを決意する。しかし結婚式において父が心臓発作を起こして死亡し、さらには兄が交通事故によって重傷を負ったことから、彼はアブディンに留まることを余儀なくされてしまう…といような内容。

クリエーターのギデオン・ラフはイスラエル人で、オリジナルの「ホームランド」を作った人なのか。これも「ホームランド」のような政治サスペンスの要素もあるが、むしろ愛憎うずまく家族ドラマになるのかな?短命に終ったNBCの「KINGS」にちょっと似ているかも。

アブディンは当然ながら架空の国家で、イスラム文化を侮辱しないように気をつかったという記事も見かけたが、傲慢な男たちが女性を陵辱するシーンが何回も出てきて、それってイスラム女性の描きかたが紋切り型すぎるのではないか。なおイスラム国家を舞台にした番組といえば、ABCファミリーで企画されていた、サウジアラビアで軟禁される少女を主人公にした番組「Alice In Arabia」がリベラル側から差別的だと抗議を受けてこないだ製作中止になってまして、それに対して番組はもっとイスラム寄りの内容になるはずだったとライターが反論してたりして(実際に話のあらすじは面白そうだった)、まあここらへんの匙加減は難しいよね。

主役のバサムを演じるのはイギリス人のアダム・レイナー。アブディン国民の役の多くをアラブ系でなくイスラエルの役者が演じているようだけど、これってギデオン・ラフの事情とかがあるのかな。知ってる顔としてはボーグ・クイーンことアリス・クリーグが出ています。

主人公が国の運営を任されるようになる展開は個人的に興味があるんだけど、本国の評判は話の展開が遅くて退屈だとか、アダム・レイナーの演技が硬いとかいろいろ叩かれているようなので、おそらく長続きはしない番組でしょう。

「グランド・ブダペスト・ホテル」鑑賞


いやー素晴らしい出来ではないですか。公開中なので感想をざっくりと:

・今までのウェス・アンダーソン作品のシュールな展開がまったりと続く内容とは違って、歴史および(ファシズムが近づくことの)ペーソスが加わっており、話に深みを与えている。これって結構大きな発展であろう。

・他にもアンダーソン作品の特徴であったブリティッシュ・ロックを一切排除したり、画面のアスペクト比を変えたりと細かい試行が施されていて、実にアンダーソン的でありつつも新たなスタイルを確立している感じ。

・アンダーソン作品ではお馴染みの役者たちもたくさん出ていて、あまりにもたくさん出ているためビル・マーレイとかオーウェン・ウィルソンなんて連続出演記録をつくるためだけのカメオ出演のようになってしまっていたな。

・一方でアンダーソン作品初出演で主役を務めるレイフ・ファインズが本当に見事で、この人はコメディもきちんと演じることができるのだと実感させられた。

・そしてハーヴェイ・カイテルが久しぶりに裸になっていて、ああやはりこの男は脱ぐのが好きなのだとひと安心。

・興行的には世界中でヒットしてるらしいですが、これで初めてアンダーソン作品を観る人はどんな印象を抱くのだろう?知人に観るべきか尋ねられて、なんとも答えられなかったのであります。「おしゃれな映画」だけで済ますわけにもいかない作品だよね。

「DOMINION」鑑賞


Syfyチャンネルの新番組。なんかポール・ベタニーが主演した2010年の映画「レギオン」の続編だそうですが、なぜあんなマイナーな映画の続編を今さら?監督が売り込み頑張ったんだろうな。

舞台は映画版の25年後。神が去ったあとの世界は天使たちに襲撃されて荒廃し、生き残った人類たちは各地の都市に散らばって暮らしていた。主人公のアレックスは城塞都市となったラスベガスを護る兵士の一人だったが、ある日彼を幼いときに見捨てた父親と再会する。彼の父親こそ映画版のジープ・ハンソンであり、彼は体中につけられたイレズミの謎を解明するために世界を放浪していたのだった。その一方でラスベガスの指導者たちの間では不穏な権力争いが起き、さらにはより強力な天使を味方にした天使たちが街を襲撃する…というような内容。

おれ「レギオン」いちおう観たけど内容憶えてないがな…ジープ・ハンソンに加えて、人間たちの味方となる天使ミカエルが映画版に引き続いて登場するのだが、ポール・ベタニーが演じてないので同じ役だと気づくのに30分くらいかかったぞ。映画版は砂漠のなかのダイナーを天使たちが襲撃するという単純な内容だったけど、こちらはなぜ天使たちは飛べるのにラスベガスの空はろくに防御されてないのかとか、そもそも天使たちが人間に憑依できるのなら防御する術ってないんじゃね?などと細かいところが気になってしまうな。

なお荒廃した地球で街を護る物語、という点では同じSyfyの「Defiance」に似てるな。というかあの番組があるのに、なぜ似たような番組にゴーサインを出したのかがよく分からん。出てる役者も「バフィ」のアンソニー・ヘッド以外はよく知らない人たちばかりです。

そして劇場版ではダイナーで生まれた赤ん坊が、人類を救済する「選ばれし者」であるという設定だったけど、ネタバレをしてしまうとアレックスがその赤ん坊だそうな。おれ個人的にこの「選ばれし者」とか「古の予言で語られていた者」とかいう設定が苦手でして、予言がそんなに当たるなら主人公は別に努力する必用ないんじゃない?と思ってしまうのです。むしろ「選ばれてない者」が人類を救うような話の方が面白いだろうにねえ。

「SUPERHEROES」鑑賞


前からちょっと観たかったHBO製作のドキュメンタリー。

いわゆる『キック・アス』的な、リアルにスーパーヒーローの格好をして犯罪と戦う人たちを追ったもので、サンディエゴやブルックリン、はてはバンクーバーと北米各地で活動する、『マスター・レジェンド』や『ミスター・エクストリーム』といった人々を紹介している。おそらく世間的にいちばん有名なヒーローであるシアトルのフェニックス・ジョーンズは登場していなかった。

もちろんタイトルとは裏腹に誰もスーパーパワーなんて持ってなくて、格闘技を習ったりプロテクターを着けたりスタンガンを持ったりして夜のパトロールへと彼らは出かけていく。彼らがヒーローになった動機はおおまかに2つあって、崩壊家庭の出身で学校でもイジめられており、その反動でヒーローになったというのと、困っている人たちを見過ごすことができずに社会貢献のためヒーローになったというもの。「ウォッチメン」でも言及されていたキティ・ジェノヴィーズ事件を動機に挙げていた人もいたな。あと「子供のときにコスチュームをまとってイジメッ子を待ち伏せし、ボコボコにした」と語る人もいるんだが、それって犯罪では…。

彼らの多くは警察や司法制度をあまり信用しておらず、自らの手で犯罪を防ごうとヒーローになったらしく、そこらへんの考えがアメリカンだなあと。とはいえ完全に法の外で活動するわけにもいかないから、犯罪を目撃したら警察に通報するとか、そういう関係を保っているみたい。警察側は彼らの活動をあまり好ましく思っていないものの、大目に見ている状態らしい。劇中では警察の犯罪学者へのインタビューが行なわれ、彼らが危険に身をさらしていることや、彼らが持っている武器(スタンガンや警棒などで、銃は持っていない)などに懸念が示されている。あとはスタン・リーも出てきて、「彼はケガしたりせんじゃろか…」と心配をしていた。

「俺は格闘技を習得している」と語りつつも腹をタポタポさせてたり、パトロールの合間にビールをグビグビ飲んでるヒーローを見ると、すごく頼りない気がするものの、チームを組んでホームレスに物資を配ってたりするのは偉いよね。このドキュメンタリーもそんな彼らを基本的には好意的に描いている。ただ2012年のトレイヴォン・マーティン事件(自警団を気取ったバカが17歳の黒人少年をつけまわして射殺し、しかもなぜか無罪になった)のこととかを考えると、スーパーヒーロー活動とああいう自警団活動って紙一重の違いではないかと複雑な気分になってしまうのです。

「Halt and Catch Fire」鑑賞


AMCの新シリーズ。例によって公式サイトで第1話が視聴可能。タイトルはコンピューターを暴走(?)させる初期のコマンドらしい。

舞台は1983年。IBMがコンピューター市場を席巻しているなか、元IBM社員のジョー・マクミランがテキサスにある弱小コンピューター会社のカーディフ・エレクトリックにふらっと現れ、そこで働くことに。そしてそこの社員であるゴードン・クラークの才能に目を付けたマクミランは、大きな仕事を持ちかける:それはIBMの人気コンピューターをリバース・エンジニアリングするというものだった。その合法性に疑問を抱きながらも、かつて自身のプロジェクトが挫折した経験を持つクラークは熱意を持って作業に取り組む。さらにマクミランは自分たちの意図をIBMに通告し、彼らが法的措置をチラつかせたことでカーディフ・エレクトリックは否が応でもマクミランを支援しなければならない状況を作り出す。そして才能ある女学生のキャメロン・ハウをチームに加えたマクミランたちは、IBMという巨人を相手にコンピューター業界に革命をもたらそうとするのだった…というプロット。

あちらのメディアでは「80年代版マッドメン」と呼ばれていて、まあ妥当といえば妥当でしょう。そんなに史実に基づいた話にはなってないらしいが、山師のような主人公とヒゲとメガネの相棒、という図式はスティーブ・ジョブズとウォズニアックのコンビを連想せずにはいられない。またゴードン・クラークとその妻は、IBMに負けたOSの開発者がモデルになっているのだとか。なお劇中ではアップルはすでにアップルIIを発表していて、業界の大物という扱いになっている。

俺もコンピューターのこととかそんなに詳しいわけではないけど、最近のキーボードをカタカタさせてハッキングするようなものとは異なり、半田ごてと電光掲示板を使ってIBMのマシンのROMを解読していくさまなどは結構面白かった。あと法的にカーディフ・エレクトリックが主人公たちを支援せざるを得ない状況に持っていく過程がいまいちよく分からなかったけど、上司に疎まれながらもプロジェクトを推進していくという描写はスリルがあってよろしい。ザ・クラッシュやXTCといった当時のバンドによる曲も効果的に使用されている。

出演はリー・ペイスにスクート・マクネイリーにマッケンジー・デイビス…ってあまり日本では有名でないキャストかな。古くさいコンピューターなんかテーマにしてどうなんだろうと思っていたら意外と楽しめる内容であった。ただし第1話の視聴率は芳しくなかったらしいので、第2の「マッドメン」になることはできないかもしれない。