「THE RETURNED」鑑賞


昨年フランスで放送されたTVシリーズ。原題は「Les revenants」で、同名の劇場映画(邦題は「奇跡の朝」)をもとにしているらしい。

舞台となるのは山に囲まれた小さな町。そこでは4年前に子供たちを乗せたバスが谷底に落ちて全員が死亡するという惨事が起きており、彼らの両親はそのショックからようやく立ち直ろうとしているところだった。そしてある日突然、犠牲者の1人だったカミーユという少女が家に戻ってくる。彼女は事故の記憶を持たず、姿も年齢も当時のままだった。死んだはずの彼女の帰還に、喜びよりも戸惑いを見せる彼女の家族たち。さらに10年前に自殺したサイモンという青年や、30年前に亡くなったコスタス夫人といった死者たちの当時の姿で親族や友人たちの前に現われる。そしてこれに合わせたように町のダムでは水位が謎の低下をはじめ、さらに町は不可解な現象に見舞われるのだった…というようなプロット。

ゾンビものというよりも、超常現象的なスリラーといった内容。日本の「黄泉がえり」と似ているとの声もあるようだけど、あちらは観てないのでよく分かりません。山のなかの小さな町を舞台にしたスリラー、という点では「ツイン・ピークス」を彷彿とさせるな。生き返った殺人鬼や不思議な力を持った少年、ダムの底に沈んだ動物たちなどとさまざまな超常現象が起きるものの、あくまでも帰ってきた人たちに対応する町の住民たちを中心にしたドラマになっている。登場人物が多いので誰が誰だか把握するのに時間がかかるけどね。

ヨーロッパ本土のドラマにありがちな、やけに暗い画面作りはあまり好きではないけれど(彼らはなぜ家でも明かりをつけんのか)、山やダムの光景などは非常に美しく、神秘的でもある。さらにモグワイ(スコットランドの彼らね)が音楽を手がけていて、その重厚かつ不気味な旋律が雰囲気にものすごくマッチしている。というか先に音楽を作ってもらって、それにあわせた撮影をしたらしい。

本国では来年にシーズン2が放送されるらしく、どのような結末を迎えるのか想像もつきませんが、第1話を観た限りではとても良くできた作品。例によって英語版のリメークも作られるようなので、どちらかが日本で放送される可能性はあるんじゃないかな。

このチャンネル4の予告編、音楽はあまり良くないな。

「Escape From Tomorrow」鑑賞


今年のサンダンス映画祭で何の事前告知もなしに披露され、大きな話題を呼んだインディペンデント映画。何が特徴的かというとディズニーの許可を得ずにディズニーランドでゲリラ撮影を行ったことで、「ディズニーの弁護士の集団がヘリでサンダンスに向かっている」などという噂まで流れたものの、無事に一般公開までこぎつけたらしい。

舞台となるのはフロリダのディズニーワールド。そこに妻と2人の子供たちを連れてきていたジムは、朝から上司の電話で自分が解雇されたことを知らされる。暗鬱とした気分になりながらもそのことを妻子には隠し、皆でディズニーワールドへ向かうものの、期待していたように物事は進まず、妻には小言を言われ、子供たちには失望されてしまう始末。そんななかでジムは2人の魅力的なフランス人の娘たちに出会い、その後何度も彼女たちを見かけるうちに彼女たちに夢中になっていき…というようなプロット。

ジムの不安にあわせて現実と妄想と悪夢が錯綜していくような内容で、最初の1時間は妻子に苛まれ、残りの30分がSFっぽくなる展開。SF要素を排除して、惨めなバケーションだけの話にしても見応えがあったかも。世の中のパパさんは大変ですなあ。ラストも含め「シャイニング」に似てなくもないな。

全編をモノクロで撮影したのは季節感をなくすための策でもあったらしいが、ディズニーワールドのフューチャリスティックなデザインやクラシック調の音楽と相まって、「アルファヴィル」や「ウルトラQ」みたいなレトロ感覚のSF映画の雰囲気が非常に素晴らしい。花火のシーンにおける白と黒のコントラストもハッとするくらいに美しい。またゲリラ撮影したとはいえ満足できるショットを得るために何度もディズニーワールドに足を運んだとのことで、1つ1つのシーンがすごくよく撮れてるんですよね。きらびやかなはずのディズニーワールドを悪夢のように撮るとこうなるのかという。

なお、お姫様と魔女のアナロジー(?)が出てくるものの、ディズニーそのものに対する風刺などは皆無で、あくまでもディズニーワールドという文化をバックにした物語といった感じ。ところどころモザイクがかかってたりピー音が挿入されるものの、どうもあれは監督のジョークらしい。全然ジョークになってないところがさらにシュール感を強めているわけですが。

監督のランディ・ムーアは自費でこの映画を製作し、ディズニーの目を逃れるためにわざわざ韓国まで行ってポスプロ作業を行ったらしいが、今のところディズニーはこの映画のことは知っているものの何の法的措置もとっていない。騒ぎ立てて逆に注目を集めることになるのを避けている、ということらしい。おかげでアメリカでは劇場公開やVOD配信が行われているのですが、日本での公開とはできるのかなあ。単なるギミックではなく、映画としてとてもよく出来ている作品なので、ぜひこの監督にはこれからも映画を撮ってほしいところです。誰か東京ディズニーリゾートでリメークしようぜ!

「DRACULA」鑑賞


NBCの新作シリーズ。タイトル通りドラキュラ伯爵が主人公なのだけど、いま流行りの色白なティーンのゴスものではなく、スチームパンクなノリの作品になっていた。

舞台は19世紀末のロンドン。血を与えられて長い眠りから甦ったドラキュラは、アメリカ人のアレキサンダー・グレイソンと名を変えてイギリスの社交界に登場する。そこで彼はケーブルも不要な無料のエネルギーを披露して技術者たちを驚かせるが、彼の真の目的は世界を裏で操る組織「オーダー・オブ・ザ・ドラゴン」の壊滅にあった。ドラキュラの新しいエネルギーによって自分たちの支配が脅かされることを危惧する「ドラゴン」の幹部たち。そしてドラキュラと「ドラゴン」の争いに、新聞記者のジョナサン・ハーカーと婚約者のミナ・ハーカーが巻き込まれていく…というようなプロット。

The CWの「Reign」とかこれとか、今年は地上波局に時代劇の番組が進出してきているような?グリーンスクリーンの進歩により、大掛かりなセットを作らなくてすむようになったからかな。相変わらず有色人種のキャストが少ないのは感心しませんが。主役は「Tudors」のジョナサン・リース=マイヤーズで、品格のある感じは良く出ているんじゃないですかね。アメリカ訛りのアクセントがひどいという評判もあるようだけど、俺はあまり気になりませんでした。それ以外のキャストは特に有名な人はいないかな。

ドラキュラは屋敷の下に巨大な装置を備えていて、そこから無尽のエネルギーを引き出して「ドラゴン」を潰そうとするわけで、「これからは技術の時代だ!」とか言ったりするからパワーゲームが主体の話になるかと思いきや、さっそく実力行使に出て「ドラゴン」の幹部を夜道で惨殺してたりする。あと切り裂きジャックが吸血鬼だったと示唆されるようなセリフもあったりして、こういうスチームパンク(架空歴史?)的な要素は今後の展開にどのくらい絡んでくるんだろう。第1話は舞台のセットアップに時間が費やされていて、ミナとジョナサンの役割もいまいち不明だったな。でも話の持っていき方によっては、かなり面白くなりそうな可能性を秘めた作品だと思うので、NBCがちゃんとサポートしてくれると良いのですが…。

「The Thundermans」鑑賞


ニコロデオンのガキンチョ向けシットコム。

メンバーそれぞれが超能力を持ったサンダーマンさんち一家を主人公にしたもので、父親のハンクと母親のバーバラはかつてはスーパーヒーローとして活躍していたが、4人の子供たちを持ったことからヒーロー稼業を引退し、一般人として郊外に暮らしていた。ティーンの娘のフィービーも普通の女の子として生活したいものの、スーパーヴィランになりたい双子の兄のマックスや、パワーで遊びたがる妹のノーラと弟のビリーが邪魔をして…というようなお話。

設定はもろに「Mr.インクレディブル」の流用。パパさんが呑気な力持ちで、普通の暮らしをしたいのにいろいろボロが出て、正体がバレるたびに引っ越さなければならないところとか。ちなみにハンクは怪力のほかに飛行もできて、バーバラは電気を操れ、ノーラは目から熱線を放ち、ビリーは高速で移動でき、フィービーとマックスはテレキネシスなど複数の能力を持っているという設定らしい。目から怪光線を出してチキンを焼いたりするノーラがかわいいな。

昨今のスーパーヒーロー・ブームに露骨に便乗した内容だし、所詮は低予算の他愛ないシットコムなんだけど、このユルさはこれはこれでありなんじゃないでしょうか。「一般家庭のスーパーヒーロー」というとABCが数年前に「NO ORDINARY FAMILY」という番組を作ってコケてたけど、変にサスペンス要素を絡めたあの番組よりも、このようにコメディに徹したほうが面白いんじゃないですかね。大げさに言えば、スーパーヒーローものの実写化の1つの答えがここにあるのかと。

「Much Ado About Nothing」鑑賞


ジョス・ウィードンが「アベンジャーズ」の製作中に休みをとって、しれっと短期間で撮影した低予算映画。シェイクスピアの「から騒ぎ」の舞台を現代に移し替えたもので、レオナートの屋敷にドン・ペドロの一行がやってきたことで生じる男女2組の恋愛模様と、それを邪魔しようとするドン・ジョンたちの悪巧みが巻き起こす騒動を描いている。

マイナーな登場人物の性別が変更されている点などを除けば、シェイクスピアの原作に非常に忠実らしいのだが…私事で恐縮ですが俺って大学で英文学専攻だったにも関わらずシェイクスピアって殆ど読んだことがありませんでして(授業で無理矢理学ばせられるのが嫌だったのだよ)、この作品もどのくらい脚色されてるのかはよく分からず。

おまけにセリフはすべて当時のままで言い回しが難解だし、登場人物の名前も古めかしくて、誰が誰なのかが分からないまま前半が過ぎていったような。ここらへんは原作に精通している人が観るとずいぶん違った感想になるかと。それでも後半になって話が佳境を迎えてからはどんどん面白くなっていったし、独身主義を貫いていたツンデレの男女が結ばれる結末は非常に微笑ましいものであったよ。モノクロ映画だけど日本でもきちんと宣伝すれば格好のデートムービーになるんじゃないでしょうか。

出演者はクラーク・グレッグやネイザン・フィリオンをはじめ、以前にウィードンと仕事したことのある役者たちが勢揃い。ウィードンは監督・脚本だけでなく作曲も担当し、撮影してるのもウィードンの自宅なので、とてもアットホームな雰囲気に満ちた内容になっている。奥さんが設計した家らしいが、デカくていい家に住んでるよなあ。

舞台を現代にしたことで「彼女は死んだことにしよう!」とか「決闘だ!」といった話の展開はさすがに無理があるものの、そこは目をつむりましょう。コケティッシュな魅力のある良い作品ですよ。