「LAWLESS」鑑賞


日本では「欲望のバージニア」というアレな題名で6月に公開されるそうで。ニック・ケイヴ師匠とジョン・ヒルコートが「プロポジション 血の誓約」に続いてタッグを組んだ作品で、実在した3兄弟に関する小説を映画化したもの。

舞台となるのは1931年のヴァージニアの片田舎。禁酒法の時代にハワードとフォレストとジャックの3兄弟は密造酒を作って荒稼ぎをし、地元の警察も彼らのことを見過ごしていた。しかしシカゴから派遣された敏腕刑事とその上司の検事が利益の分け前を要求したのに対して3兄弟はこれを拒絶。こうして刑事と3兄弟による、血で血を洗う抗争が幕を開けるのだった…というようなプロット。

出演はシャイア・ラブーフにトム・ハーディ、ガイ・ピアース、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマンなどといった豪華な面々が勢揃い。しかし登場人物それぞれに時間を割いているために、話が散漫なものになってしまったのが残念。女性2人とのロマンスの話はどちらか1つに絞ってもよかったのでは。オールドマン演じるギャングスターなんて途中でどこかに行ってしまうんですもの。抗争とロマンスとその他の話がが詰め込まれ、大きな盛り上がりに欠けるためにTVシリーズのダイジェスト版を観てるような気になってくるのは否めない。もっと贅肉を落として抗争に焦点をあてるべきだったのでは。

あとやはり主人公を演じるラブーフが徹底的にカリスマ不足で、話を通じて人間的に成長せず、最初から最後まで若気の至りで暴走して周囲に迷惑をかけまくってるのはどうも不快。なんでこんな役者がスター扱いされてるんだか。そんな彼をボコボコにする刑事をガイ・ピアースが演じていて、しゃれたスーツを着こなして香水をつけてるようなマンガチックなキャラクターなのだが、いちばん目立ってておいしい役ではないかと。3兄弟の長男を演じるジェイソン・クラークもぶっとんだキャラを演じていて面白いんだけど、カーディガン着てブツブツ言うトム・ハーディの影に隠れてしまっているのが勿体ないところ。

主人公のナレーションとか、ケイヴたちによる挿入歌(「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」は2バージョンも使われている)なども用いられ、「プロポジション」に比べるとずいぶんメインストリーム寄りの映画という感じがするのですが、個人的にはもっと幻想的だった前作のほうが好きだな。

「Nemo: Heart of Ice」読了


『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』シリーズ最新作。今回はミナ・ハーカーやアラン・クオーターメインなどは登場せず、「1910」に出てきたキャプテン・ネモの娘ことジャンニ・ダカールが主人公の外伝的な内容になっている。

舞台は1925年。父親の後を継ぎノーチラス号で世界7つの海を駆け巡り、海賊行為を働いていたジャンニはそんな生活を不毛に感じるようになり、父親がかつて試みた南極探検を行うことを決意する。以前にネモが南極を探検した際は、彼以外のクルー全員が怪奇な死を遂げるという結末を迎えていたのだ。父の遺した探検記、および最新の雪上車を揃えた探検は楽なものになるかと思えたが、ジャンニが略奪した宝物の奪還を狙ったチャールズ・フォスター・ケーンによって3人の発明家/探検家が追ってきたために探検は難航することに。追っ手から逃げながら南極の奥地を目指すジャンニたちだったが、そこで彼女たちは想像を絶する光景を目にすることになる…というストーリー。

南極が舞台ということで、ベースの話となるのは「アーサー・ゴードン・ピムの物語」「氷のスフィンクス」「狂気の山脈にて」あたりの小説。ジャンニと一緒に冒険をするクルーはお馴染みのイシュマエルやブロード・アロー・ジャックのほか、思考機械ことヴァン・ドゥーゼン教授など。彼らを追う3人の発明家は、20世紀初頭の冒険小説の主人公たちであるらしい。あとは当然ながら「テケリ・リ!」と叫ぶ怪物や古のものどもが出てきます。人のいない秘境が舞台ということもあり、他の作品からの抜粋は比較的少ないほうかな。

「ムーンチャイルドの到来」という重いテーマが影を落としていた「Volume III」と違い、純粋な冒険活劇として読める作品。最新鋭のマシンを操って追いかけてくる敵からの逃避行はスリルがあって面白いぞ。狂気山脈に着いてからの展開はちょっと先が読めなくもないが、それでも巧みなストーリーテリングは流石である。

アラン・ムーアとケヴィン・オニールは今後もこのような「リーグ」の外伝を出していく予定らしいが、次は誰が主人公でどの時代を舞台にするのだろう。個人的には「Black Dossier」で言及されていた、フランスやドイツの「リーグ」との戦いが読んでみたいところです。

「RED WIDOW」鑑賞


ABCの新作ドラマ。

舞台となるのはサンフランシスコで、ロシア系移民の娘であるマータは夫と3人の子供たちと幸せに暮らしていたが、夫のエヴァンは密輸に関わっていた。父親もロシア系ギャングに関わってるマータは、子供たちのためにも夫を闇稼業から足を洗わせようとするのだが、エヴァンの部下がギャングの大物のであるシラーのブツを盗んだことからエヴァンは何者かに射殺されてしまう。悲しみに打ち拉がれるマータだったが、気を持ち直して夫の跡を継ぎ、シラーへの借りを返しながら、夫を殺したのが誰なのかを突き止めようとするのだった…というストーリー。

あらすじで分かるかもしれないが、「リベンジ」の二番煎じみたいな内容。女性がいろいろ逆境におかれながらも、目的を果たしていこうとするなんかドロドロとしたドラマ。ABCってこういうの好きだよな。ただ「リベンジ」は主人公の目的が明確だったのに対し、こちらは主人公が事件に巻き込まれる形なので話の方向性が見えにくいのが難点。第1話も「そこで終わるの?」といった感じでカタルシスもなければ次の話を観たいという気にもならず、なんかすごく地味な印象しか受けないのであった。主人公以外のロシア系移民がとてもステレオタイプ的な描写になってるのも気になるな。

主役のマータを演じるのはラダ・ミッチェル…ってよく知らない役者ですが結構いろんな映画に出てる人なのですね。あとはゴラン・ヴィシュニックなどが出ているほか、元「BROS」のルーク・ゴスなんかも出演しているぞ。でも頭髪がすっかり寂しくなってしまい、観ていてどれがルーク・ゴスなのか全く分からなかったよ。

「リベンジ」の類似品といえばNBCの「Deception」も視聴率は苦戦しているようで、そう簡単にヒットが続くもんじゃないですよ。とにかく視聴者を引っ掛けるフックなりギミックなりをすぐに打ち出さないと、あっという間に忘れ去られてしまいそうな番組。

「アルゴ」鑑賞


今さらながら観ました。遅れてすみません。

昨日のアカデミー賞では監督賞や主演男優賞にもノミネートされていないのに作品賞を穫ったことについていろいろな説が飛び交っているようだけど、個人的な感想としてはこれが「ハリウッドが活躍する映画」だからだということでして、いつもは脚本のオプション権を値切ったりB級映画のメークをしてるような裏方さんたちが、CIAに頼まれて秘密任務を遂行し、人命を救助するなんて話を見せられたら、アカデミー会員の大半を占める裏方さんたちはそら喜ぶわな。

現実ではハリウッドはおろかCIAも中心的な役割を果たさず、カナダが尽力したことで人質が救出されたらしいが、まあそこはハリウッド映画ですから。古き良きハリウッドを甘ったるく描いた「アーティスト」が昨年作品賞を穫ったのと同じような事例かな。おまけにどちらの映画もジョン・グッドマンが陽気なハリウッドガイを演じているわけですが、ならば彼が映画監督を演じたジョー・ダンテの傑作「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」だって作品賞を穫っても良いと思うのだが、そううまくはいかないようで。

このようにハリウッドが重要な要素となる映画であるものの、イランの場面との話の緩急のつけ方が気になるところでして、冒頭の大使館襲撃とかラストの空港のシーンなどは結果を知っていても手に汗握ってしまう展開が続く一方で、ハリウッドの陽を浴びてダラっとしてるシーンが挿入されると話の流れが断ち切られてしまうような。終盤の電話のシーンも、「撮影現場を横切れない!」ではなくて他に話の盛り上げ方があっただろうに。

出演者は濃いオッサンたちがいろいろ出ていて個人的には大満足。カイル・チャンドラーやビクター・ガーバーなどテレビ畑の人たちが出ているのもいいな。ブライアン・クランストンは「ブレイキング・バッド」が終了したらいま以上に劇場映画で引っ張りだこになるのではないか。あとジェームス・ネズビットが何でアメリカの職員を演じてるんだろうと思ったら、あれはタイタス・ウェリヴァーだったのか。なおベン・アフレックのキャラクターの造形はとても浅いと思ったよ。もっと子供とのつながりを深く描くとか、任務への情熱を見せるかしたほうが「人質を救出して必ず帰る」という感じが出て良かったと思うのだが。

あとは外人(イラン人)の描写についてもなんか腑に落ちないところもあるが、それについては国際情勢などに詳しい人たちがいろいろ解説してるでしょうからここでは省く。あとやはり映画のストーリーボードはジャック・カービーのデザインしたものをそのまま使うべきであった。決して悪い映画ではないが、作品賞に値するかと聞かれるとちょっと考えてしまうな。

「CULT」鑑賞


とてもダメダメ感のするThe CWの新シリーズ。

舞台はハリウッド。ワーナーのスタジオではカルト教団とそれを追う刑事を扱った、その名もずばり「カルト」なるサスペンスドラマが製作されて熱狂的なファンを獲得していた(放送局はもちろんThe CW!)。世間に顔を出さない謎のクリエーターによって作られたこの番組は映像のあちこちに謎を解く手がかりがちりばめられ、それを解読しようとファンたちは独自のコミュニティを作りあげるまでに至っていたのだ。一方ワシントン・ポストをクビになった記者のジェフは突然失踪した弟の行方を探すうちに、彼がこの番組に入れ込んでいたことを知る。不審に思った彼は番組のアシスタントであるスカイの助けを借りて調査にあたるのだが、番組のなかの出来事と現実の出来事が奇妙に交錯していき…というようなストーリー。

つまりテレビ番組のなかにもう1つ番組があるというメタな作りになっているわけだが、こういうのって「30ロック」みたいなコメディならまだしも、サスペンスなら「ビデオドローム」のように才能ある監督とかが臨場感ったっぷりにきちんと世界観を構築していかないとウソっぽく見えてしまうわけで、そういう意味ではこの番組はプロットが破綻してるなあと。現実の大衆はライトセーバーふりまわす少年や振り向くハムスターなどの他愛も無い映像に夢中になったりするわけですが、とはいえ「全米で大人気!」という架空の番組を見せつけられても鼻白んでしまうわけで、むかし「ウルトラマンエース」でヤプール人が化けた老人が作った歌が世界中で大ヒットするという話があって、子供心にも観ててものすごくウソっぽかったのを思い出したよ。

サスペンスとしても凡庸で、TV番組でカルトの教祖を演じる役者が黒幕であるらしい描写などもされるものの、その他の展開は普通の刑事ドラマとあまり変わらんなあ、といった感じ。むしろ番組の中の番組のほうが「Xファイル」みたいでずっと面白そうに見えてしまうのは問題だろう。ワーナーの撮影所およびハリウッド近郊で撮影してるから製作費はとても安く抑えられてるかもしれないが、「AVクラブ」では「F」という最低点をつけられているし、そもそもThe CWの視聴層向けの内容ではないので、今後の展開で大化けでもしない限りすぐに打ち切られるのではないか。