「VIKINGS」鑑賞


米ヒストリー・チャンネルで始まったフィクションのドラマで、名のごとくスカンジナビアのバイキングたちを描いたもの。

主人公となるのは後に伝説的なバイキング王となるラグナー・ロドブロックで、大志を抱いた若者であったラグナーはバイキングたちによる東部(ロシアあたり)の略奪遠征に満足できず、前人未到であった西部(つまりイギリス)への航海に思いを馳せる。そして彼は友人のフロキに頼んで長距離の航海が可能な船を建造してもらい、弟のロロとともに西部へ向かうことを検討するのだが、バイキングたちの首領であるジャリはそれを快く思わず…というようなストーリー。

ラグナーを演じるのがトラビス・フィメル…って誰だっけ。オーストラリア人の元モデルなのか。作中ではヒゲ面なので全然イケメンに見えませんな。有名どころではバイキング王のジャリをガブリエン・バーン、その妻をジェサリン・ギルシグが演じている。ガブリエン・バーンってヒストリーのドラマに出るには少し大物すぎるような気がするんだが、撮影はアイルランドで行われているらしいのでそれで引き受けたんだろうか。

いちおうバイキングによる戦いのシーンなどもあるものの、「ゲーム・オブ・スローンズ」のようなヒロイック・ファンタジーっぽさはあまりなく、登場人物の思惑がドロドロと渦巻く人間ドラマになっている。なんとなく「THE TUDORS〜背徳の王冠〜」みたいだな、と思ったらクリエーターが同じ人なのか。

悪い番組ではないものの今後ヒットするとも思えないので、やはり「THE TUDORS」みたいに黙々と続くようなシリーズになるんだろうか。ヒストリーはこういうフィクションものにどの程度の成功を望んでいるんだろう。

「BROADCHURCH」鑑賞


10代目ドクター・フーことデビッド・テナント主演のITVのミステリードラマ。11代目ドクターのコンパニオンだったアーサー・ダーヴィルも出てるよ。

舞台となるブロードチャーチは海辺にある小さな町で、住民がみな互いを知っているような共同体だったが、そこで11歳の少年が変死体となって発見される。当初は事故死かと考えられたものの他殺であることが判明し、地元の警察に勤めるエリーは町の外から派遣されてきた刑事のアレックと組んで捜査を始めるが、やがて住民たちの暗い秘密が明らかになっていくのだった…というようなプロット。

テナントが演じるのがアレックで、部外者の彼に主導権を握られて憤慨するエリーを演じるのが、薄幸そうな役が似合うオリビア・コールマン。小さなコミュニティにおける子供の殺人事件、という点では「THE KILLING」に似てるかなあ。被害者の家族が後ろめたい秘密を持ってそうなところも似てるけど、まあ決して独特なプロットというわけでもないからね。このほか地元の新聞記者による詮索とか、アレックが左遷のような形で派遣されてきた理由などが物語に関わってくるらしい。

なおアレックは愛想が悪くて寡黙で、10代目ドクターとは正反対のタイプ。こういう演技をしているテナントは新鮮でもあるのですが、どうしてもドクターのイメージが強いのでああいうエキセントリックな演技を期待していると肩すかしをくらうかも。

全8話のシリーズになるらしいですが、第1話の時点では今後の展開が何とも分からんので、面白い作品になるかどうかは判定し難いところ。被害者の少年と友人だったエリーの息子が何かしらの鍵を握っているという描写とかは面白そうなんだけどね。

「フライト」鑑賞


やるじゃんゼメキス。ここ10年は不気味の谷のあちら側に行っていた感のある人ですが、「キャスト・アウェイ」で培った飛行機落としのテクニックに磨きをかけて、意外にもR指定で実写にカムバックしてきたわけです。

勝手に想像していた「事故のときに何が起こったのか?」という展開の話ではなく、事故とその後の話が時系列に沿って描かれていくわけだが、苦境に陥った主人公が宗教・家族・AAなどといった救済の可能性に触れ、最後に2つの選択肢を持つことになるという流れは「ライフ・オブ・パイ」に少し通じるものがあるかな。

アル中の問題児である主人公の自己中な振る舞いを最初から最後まで見せつけられる展開であるため、本来ならば観客は主人公に感情移入できないはずなのだが、それでも観る人の目を引きつけさせるデンゼル・ワシントンの演技力が凄い。顔面の細かな動きから体の微妙な揺らし方まで、すごく話のリズムに合っていて飽きさせない。彼は共演者からの評判が悪いことであまり好きな役者ではなかったのだが、やはり演技力は超一流であることを実感。相手役のケリー・ライリーって女優はよく知らなかったのですが、こちらもいい演技してます。対してドン・チードルとかはあまり目立ってなかったかな。ジョン・グッドマンがおいしいところを奪ってしまってる感じ。

とはいえ視覚的には前半の飛行機事故のシーンがやはり最大の見せ場であって、そこから先は中だるみこそしないものの地味なシーンが続くので、もう20分くらい削っても損はなかったかもしれない。劇場では隣のオッサンが退屈そうにモソモソしてました。

これはぜひ飛行機の中で観るべき映画ですが、インフライト上映させた度胸のある航空会社はどこかいなかったのかな?

「LAWLESS」鑑賞


日本では「欲望のバージニア」というアレな題名で6月に公開されるそうで。ニック・ケイヴ師匠とジョン・ヒルコートが「プロポジション 血の誓約」に続いてタッグを組んだ作品で、実在した3兄弟に関する小説を映画化したもの。

舞台となるのは1931年のヴァージニアの片田舎。禁酒法の時代にハワードとフォレストとジャックの3兄弟は密造酒を作って荒稼ぎをし、地元の警察も彼らのことを見過ごしていた。しかしシカゴから派遣された敏腕刑事とその上司の検事が利益の分け前を要求したのに対して3兄弟はこれを拒絶。こうして刑事と3兄弟による、血で血を洗う抗争が幕を開けるのだった…というようなプロット。

出演はシャイア・ラブーフにトム・ハーディ、ガイ・ピアース、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマンなどといった豪華な面々が勢揃い。しかし登場人物それぞれに時間を割いているために、話が散漫なものになってしまったのが残念。女性2人とのロマンスの話はどちらか1つに絞ってもよかったのでは。オールドマン演じるギャングスターなんて途中でどこかに行ってしまうんですもの。抗争とロマンスとその他の話がが詰め込まれ、大きな盛り上がりに欠けるためにTVシリーズのダイジェスト版を観てるような気になってくるのは否めない。もっと贅肉を落として抗争に焦点をあてるべきだったのでは。

あとやはり主人公を演じるラブーフが徹底的にカリスマ不足で、話を通じて人間的に成長せず、最初から最後まで若気の至りで暴走して周囲に迷惑をかけまくってるのはどうも不快。なんでこんな役者がスター扱いされてるんだか。そんな彼をボコボコにする刑事をガイ・ピアースが演じていて、しゃれたスーツを着こなして香水をつけてるようなマンガチックなキャラクターなのだが、いちばん目立ってておいしい役ではないかと。3兄弟の長男を演じるジェイソン・クラークもぶっとんだキャラを演じていて面白いんだけど、カーディガン着てブツブツ言うトム・ハーディの影に隠れてしまっているのが勿体ないところ。

主人公のナレーションとか、ケイヴたちによる挿入歌(「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」は2バージョンも使われている)なども用いられ、「プロポジション」に比べるとずいぶんメインストリーム寄りの映画という感じがするのですが、個人的にはもっと幻想的だった前作のほうが好きだな。

「Nemo: Heart of Ice」読了


『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』シリーズ最新作。今回はミナ・ハーカーやアラン・クオーターメインなどは登場せず、「1910」に出てきたキャプテン・ネモの娘ことジャンニ・ダカールが主人公の外伝的な内容になっている。

舞台は1925年。父親の後を継ぎノーチラス号で世界7つの海を駆け巡り、海賊行為を働いていたジャンニはそんな生活を不毛に感じるようになり、父親がかつて試みた南極探検を行うことを決意する。以前にネモが南極を探検した際は、彼以外のクルー全員が怪奇な死を遂げるという結末を迎えていたのだ。父の遺した探検記、および最新の雪上車を揃えた探検は楽なものになるかと思えたが、ジャンニが略奪した宝物の奪還を狙ったチャールズ・フォスター・ケーンによって3人の発明家/探検家が追ってきたために探検は難航することに。追っ手から逃げながら南極の奥地を目指すジャンニたちだったが、そこで彼女たちは想像を絶する光景を目にすることになる…というストーリー。

南極が舞台ということで、ベースの話となるのは「アーサー・ゴードン・ピムの物語」「氷のスフィンクス」「狂気の山脈にて」あたりの小説。ジャンニと一緒に冒険をするクルーはお馴染みのイシュマエルやブロード・アロー・ジャックのほか、思考機械ことヴァン・ドゥーゼン教授など。彼らを追う3人の発明家は、20世紀初頭の冒険小説の主人公たちであるらしい。あとは当然ながら「テケリ・リ!」と叫ぶ怪物や古のものどもが出てきます。人のいない秘境が舞台ということもあり、他の作品からの抜粋は比較的少ないほうかな。

「ムーンチャイルドの到来」という重いテーマが影を落としていた「Volume III」と違い、純粋な冒険活劇として読める作品。最新鋭のマシンを操って追いかけてくる敵からの逃避行はスリルがあって面白いぞ。狂気山脈に着いてからの展開はちょっと先が読めなくもないが、それでも巧みなストーリーテリングは流石である。

アラン・ムーアとケヴィン・オニールは今後もこのような「リーグ」の外伝を出していく予定らしいが、次は誰が主人公でどの時代を舞台にするのだろう。個人的には「Black Dossier」で言及されていた、フランスやドイツの「リーグ」との戦いが読んでみたいところです。