「RED WIDOW」鑑賞


ABCの新作ドラマ。

舞台となるのはサンフランシスコで、ロシア系移民の娘であるマータは夫と3人の子供たちと幸せに暮らしていたが、夫のエヴァンは密輸に関わっていた。父親もロシア系ギャングに関わってるマータは、子供たちのためにも夫を闇稼業から足を洗わせようとするのだが、エヴァンの部下がギャングの大物のであるシラーのブツを盗んだことからエヴァンは何者かに射殺されてしまう。悲しみに打ち拉がれるマータだったが、気を持ち直して夫の跡を継ぎ、シラーへの借りを返しながら、夫を殺したのが誰なのかを突き止めようとするのだった…というストーリー。

あらすじで分かるかもしれないが、「リベンジ」の二番煎じみたいな内容。女性がいろいろ逆境におかれながらも、目的を果たしていこうとするなんかドロドロとしたドラマ。ABCってこういうの好きだよな。ただ「リベンジ」は主人公の目的が明確だったのに対し、こちらは主人公が事件に巻き込まれる形なので話の方向性が見えにくいのが難点。第1話も「そこで終わるの?」といった感じでカタルシスもなければ次の話を観たいという気にもならず、なんかすごく地味な印象しか受けないのであった。主人公以外のロシア系移民がとてもステレオタイプ的な描写になってるのも気になるな。

主役のマータを演じるのはラダ・ミッチェル…ってよく知らない役者ですが結構いろんな映画に出てる人なのですね。あとはゴラン・ヴィシュニックなどが出ているほか、元「BROS」のルーク・ゴスなんかも出演しているぞ。でも頭髪がすっかり寂しくなってしまい、観ていてどれがルーク・ゴスなのか全く分からなかったよ。

「リベンジ」の類似品といえばNBCの「Deception」も視聴率は苦戦しているようで、そう簡単にヒットが続くもんじゃないですよ。とにかく視聴者を引っ掛けるフックなりギミックなりをすぐに打ち出さないと、あっという間に忘れ去られてしまいそうな番組。

「アルゴ」鑑賞


今さらながら観ました。遅れてすみません。

昨日のアカデミー賞では監督賞や主演男優賞にもノミネートされていないのに作品賞を穫ったことについていろいろな説が飛び交っているようだけど、個人的な感想としてはこれが「ハリウッドが活躍する映画」だからだということでして、いつもは脚本のオプション権を値切ったりB級映画のメークをしてるような裏方さんたちが、CIAに頼まれて秘密任務を遂行し、人命を救助するなんて話を見せられたら、アカデミー会員の大半を占める裏方さんたちはそら喜ぶわな。

現実ではハリウッドはおろかCIAも中心的な役割を果たさず、カナダが尽力したことで人質が救出されたらしいが、まあそこはハリウッド映画ですから。古き良きハリウッドを甘ったるく描いた「アーティスト」が昨年作品賞を穫ったのと同じような事例かな。おまけにどちらの映画もジョン・グッドマンが陽気なハリウッドガイを演じているわけですが、ならば彼が映画監督を演じたジョー・ダンテの傑作「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」だって作品賞を穫っても良いと思うのだが、そううまくはいかないようで。

このようにハリウッドが重要な要素となる映画であるものの、イランの場面との話の緩急のつけ方が気になるところでして、冒頭の大使館襲撃とかラストの空港のシーンなどは結果を知っていても手に汗握ってしまう展開が続く一方で、ハリウッドの陽を浴びてダラっとしてるシーンが挿入されると話の流れが断ち切られてしまうような。終盤の電話のシーンも、「撮影現場を横切れない!」ではなくて他に話の盛り上げ方があっただろうに。

出演者は濃いオッサンたちがいろいろ出ていて個人的には大満足。カイル・チャンドラーやビクター・ガーバーなどテレビ畑の人たちが出ているのもいいな。ブライアン・クランストンは「ブレイキング・バッド」が終了したらいま以上に劇場映画で引っ張りだこになるのではないか。あとジェームス・ネズビットが何でアメリカの職員を演じてるんだろうと思ったら、あれはタイタス・ウェリヴァーだったのか。なおベン・アフレックのキャラクターの造形はとても浅いと思ったよ。もっと子供とのつながりを深く描くとか、任務への情熱を見せるかしたほうが「人質を救出して必ず帰る」という感じが出て良かったと思うのだが。

あとは外人(イラン人)の描写についてもなんか腑に落ちないところもあるが、それについては国際情勢などに詳しい人たちがいろいろ解説してるでしょうからここでは省く。あとやはり映画のストーリーボードはジャック・カービーのデザインしたものをそのまま使うべきであった。決して悪い映画ではないが、作品賞に値するかと聞かれるとちょっと考えてしまうな。

「CULT」鑑賞


とてもダメダメ感のするThe CWの新シリーズ。

舞台はハリウッド。ワーナーのスタジオではカルト教団とそれを追う刑事を扱った、その名もずばり「カルト」なるサスペンスドラマが製作されて熱狂的なファンを獲得していた(放送局はもちろんThe CW!)。世間に顔を出さない謎のクリエーターによって作られたこの番組は映像のあちこちに謎を解く手がかりがちりばめられ、それを解読しようとファンたちは独自のコミュニティを作りあげるまでに至っていたのだ。一方ワシントン・ポストをクビになった記者のジェフは突然失踪した弟の行方を探すうちに、彼がこの番組に入れ込んでいたことを知る。不審に思った彼は番組のアシスタントであるスカイの助けを借りて調査にあたるのだが、番組のなかの出来事と現実の出来事が奇妙に交錯していき…というようなストーリー。

つまりテレビ番組のなかにもう1つ番組があるというメタな作りになっているわけだが、こういうのって「30ロック」みたいなコメディならまだしも、サスペンスなら「ビデオドローム」のように才能ある監督とかが臨場感ったっぷりにきちんと世界観を構築していかないとウソっぽく見えてしまうわけで、そういう意味ではこの番組はプロットが破綻してるなあと。現実の大衆はライトセーバーふりまわす少年や振り向くハムスターなどの他愛も無い映像に夢中になったりするわけですが、とはいえ「全米で大人気!」という架空の番組を見せつけられても鼻白んでしまうわけで、むかし「ウルトラマンエース」でヤプール人が化けた老人が作った歌が世界中で大ヒットするという話があって、子供心にも観ててものすごくウソっぽかったのを思い出したよ。

サスペンスとしても凡庸で、TV番組でカルトの教祖を演じる役者が黒幕であるらしい描写などもされるものの、その他の展開は普通の刑事ドラマとあまり変わらんなあ、といった感じ。むしろ番組の中の番組のほうが「Xファイル」みたいでずっと面白そうに見えてしまうのは問題だろう。ワーナーの撮影所およびハリウッド近郊で撮影してるから製作費はとても安く抑えられてるかもしれないが、「AVクラブ」では「F」という最低点をつけられているし、そもそもThe CWの視聴層向けの内容ではないので、今後の展開で大化けでもしない限りすぐに打ち切られるのではないか。

「Seven Psychopaths」鑑賞


「ヒットマンズ・レクイエム」に続くマーティン・マクドナーの長編第2弾で、相変わらず過度なバイオレンスとブラックなユーモアが混じり合った傑作。

ハリウッドで脚本家をやっているマーティはライターズ・ブロックに陥っており、「7人のサイコパス」という作品の脚本が書けずに酒ばかり飲んでいる状態。そんな彼を心配した友人のビリーは実在の連続殺人犯の話をしてネタにさせ、さらには「サイコパス求む!」という広告を出したためにマーティのもとにヤバそうな人がやってくる羽目に。一方でビリーは公園で犬を誘拐し、飼い主が懸賞金をだしたところで「返却」するという詐欺行為で小金を稼いでいたのだが、マフィアのボスの犬を盗んだために相棒のハンスとともに狙われる身になってしまい…というようなプロット。

題名通りにサイコな人たちがたくさん出てくる展開になっており、マフィアのボスなんてのはまだ可愛いほう。マフィアを狙う連続殺人鬼とか、数十年前からシリアル・キラー殺しをやってるカップルとか、なんかヤバそうな人たちがいろいろ出てきます。しかも「こいつは普通そうだな」と思ってた人が後になってどんどんサイコになっていくあたりの展開がすごい。登場人物はみんな頭のネジが緩んでるので会話が微妙にかみ合わなかったりするんだけど、それでも話がグイグイと進んでいく感じ。

サイコさんの小話とかフラッシュバック、さらにはマーティの脚本の中の話などが随所に挿入される構成は、いかにも作家による脚本だな、という気もするが、どれも奇想天外でぶっ飛んでるので観てて飽きがこない。現実世界でも空想のなかでも人がバンバン撃たれて死んでいっております。

キャストも無駄に豪華で、コリン・ファレルやクリストファー・ウォーケン、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソンなどに加え、トム・ウェイツ、ハリー・ディーン・スタントン、ガボレイ・シディベ、オルガ・キュリレンコなど実に濃い人たちがいろいろ出演。どうもクリスピン・グローバーも一瞬出てるらしい。あとミッキー・ロークも出るはずだったのが監督とケンカ別れしたのだとか。

前回の「ヒットマンズ」はブルージュという小さい街の話だったために、まだ舞台劇っぽさが残っていたが、今回の舞台は砂漠などにも繰り広げられ、砂漠に光る月の映像なんてのがとても美しいぞ。ただ砂漠に移ってからの展開は少しダラけたかな。

巧みな台詞回しと過度なバイオレンスのためにタランティーノ作品と比較されるのは避けられないが、やたらオマージュを捧げたがるタランティーノよりも、もっとブラックでドライな展開が続くこっちのほうが個人的には好きだな。人が次々と死ぬ話の展開ながらも、ゲラゲラと笑える内容になっておりました。日本でもきちんと公開・宣伝すればカルト人気を誇れるであろう傑作。

「ZERO HOUR」鑑賞


「ER」のグリーン先生ことアンソニー・エドワーズ主演の新シリーズ。第1話の監督は「96時間」のピエール・モレル。

ニューヨークで雑誌の編集長をしているハンクは、時計店を営んでいる妻のレイラと幸せに暮らしていたが、レイラが古物市で謎めいた古い時計を入手したことで、彼女は国際的なテロリストに誘拐されてしまう。手がかりとなる時計を調べたハンクは中にあったダイヤモンドに古地図が刻まれていることを知り、そこに記されていた地点へと向かうものの、そこには第二次世界大戦のときから伝わる、彼の出生にまつわる秘密が隠されていたのだった…というようなプロット。

話の設定は「ダヴィンチ・コード」っぽくてナチスの陰謀とか薔薇十字団の秘密とかがてんこ盛りになっているものの、あまり真剣な展開にならず、あくまでも明快な冒険活劇といった感じ。「LOST」みたいに謎がズルズルと続く内容でもなく、1シーズンごとに謎が解決されていく展開になるらしい。原案者が「プリズン・ブレイク」の人だということで、まああれくらい単純明快な話になるのでしょう。

謎の設定も行き当たりばったりというか突っ込みどころが満載で、海外で出逢った謎の老人が英語ペラペラだったりする。レイラを誘拐したテロリストも敏腕と言われる割にはなんか仕事が雑だし、主人公がニューヨークからカナダに向かうあいだに助手たちがドイツに向かって先に目的地に着いてるのもちょっと違和感があったな。なお主人公は「フォーティアン・タイムズ」みたいな超常現象を扱った雑誌の編集長をやってるんだが、そんなニッチな雑誌のくせにニューヨークで広々としたオフィスを構え、しかも出張費は無尽蔵!出張申請いらずに航空券は正規料金!ってそんな羽振りの良い出版社が今どきあるんかい。

周囲の出来事に翻弄される気のいいハンクはグリーン先生そのまんまだが、アンソニー・エドワーズってあまり真剣な演技は似合わない人だよね。そんな彼の妻を誘拐するテロリストを「ゴースト・プロトコル」のミカエル・ニクヴィストが演じていた。あとは主人公の助手役のアディソン・ティムリンって子が結構可愛いな。

世界をまたにかけた冒険活劇、という意味ではすぐに打ち切られた「MISSING」よりは面白いし、それなりに続けば日本でも放送される可能性は高いと思うのですが、はてさて。