「ALPS」鑑賞


「Dogtooth」こと「籠の中の乙女」で全世界の度肝を抜いたヨルゴス・ランティモス監督の新作。主演は「乙女」の長女を演じた人で、「Attenberg」の女の子も出てます。

新体操のジムに通う少女2人が、中年男性ふたりと組んで「アルプス」というグループを結成。彼らは愛する人たちを失った遺族に近づき、亡くなった人の身代わりをしばらく演じることで、別れの悲しみを和らげさせるという商売を始めるのだが…というようなプロット。

話のあらすじだけ聞くと、人との別離を感情的に描くとか、他人を演じてアイデンティティ・クライシスに陥るとか、職務を忘れて遺族を愛してしまうとか、なんかそんなメロドラマチックな展開を期待してしまうのですが、そんな描写は全然なくて、ただ与えられた仕事を無機質に淡々とこなしていく主人公たちの姿が描かれていく。

彼女たちの「サービス」を受ける遺族たちについても顔が殆ど映されず、感情も表にしないのがかなり不気味で、主人公たちに感謝するどころか彼女たちにコスプレをさせ、あれこれ指示してコキ使っている始末。恋人代行としてエッチする者もいるほか、亡くなった夫の浮気現場を再現させ、それを「発見」して主人公をペチペチ叩くオバさんとか、もうやりたい放題。

前作では家の中という非常に限られた空間におけるニセモノの世界という設定が斬新であったが、今回は本物の世界にニセモノの人物を持ってきたことで、どうも話の焦点が希薄になってしまった感じ。この監督のスタイルではあるんだろうが、あまりにも説明不足で突き放した印象を受けてしまい、どうしても話に感情移入できないのが残念。もうちょっと観る人へのサービス精神を発揮してくれたらもっと楽しめる作品になっていただろうに。この監督の次回作は英語の作品になるらしいが、もう少し大衆性を持ってくれることに期待。

「ホビット 思いがけない冒険」


ケチなので2Dで観ました。48FPSってのも経験したかったんだけどね。

なるべく事前にいろいろ調べないようにして観に行ったのですが、いやリチャード・アーミテジやジェームズ・ネスビットが出演していたことがエンドクレジットの時点まで気づきませんでしたよ。みんな鼻のデカいメークをしてるんですもの。

世の中的には批評的にも興収的にも前作とくらべてイマイチといった話が出ているものの、個人的には結構楽しめましたよ。確かに前作と比べるとストーリーのスリル感が欠けているかもしれないが、それはひとえに原作が「指輪物語」に比べると弱いということで。

冒頭からイアン・ホルムとかイライジャ・ウッドなど懐かしい顔が出てきて寸劇じみたことをやって、それからドワーフたちのコントじみた酒宴が行われたりと、どことなく間延びしてる感は否めず、前半もフラッシュバックや小話などが続いてちょっとダレ気味かな…と思いつつも観てるうちにホワーンとした感じになってきて、ニュージーランドの美しい大自然の風景と相まって中つ国の盛大な観光映画を観てるような気分になっておりました。やはり監督にピーター・ジャクソンを起用したのは正解だよな。逆にアクション満載の後半のほうが、「ありがち」な光景のような気がして前半ほど楽しめませんでした。やはり「ホビット」には「指輪物語」と違ってアネクドート色の強さが求められてるのかしらん。

そういう意味ではマーティン・フリーマン演じるビルボ・バギンズは大変素晴らしいんだけど、原作だともっとトリックスター的というか呑気なタイプじゃなかったっけ?映画向けにちょっとだけ暴力的に描かれているような。その他の登場人物の演技も、上記のメークとあわせて見事なのですが、クリーチャーたちのほうはCGっぽさが気になったかな。ゴラムは例外的に素晴らしかったですが。タバコの煙くらいCGに頼らなくてもいいんじゃないの、と思うのよ。

2部作の予定だったのが3部になったことにはまだ不安があるものの、とりあえず第1作は大変楽しめる内容でした。今後の展開に期待。

「DECEPTION」鑑賞


1月から始まるNBCの新作ドラマ。でも内容はABCっぽいナイトタイムソープもの。

巨大な製薬会社の社長の娘であるヴィヴィアン・ボウワーズがオーバードーズによって死んだ姿で発見される。しかし他殺の可能性もあることと、以前より汚職の疑いでボウワーズ一家に目を付けていたFBIは、サンフランシスコ市警のジョアンナに、一家を探るように依頼する。ジョアンナの母親はかつてボウワーズ家の住み込みの召使いであり、ヴィヴィアンとジョアンナは幼なじみであったのだ。刑事であることを隠してボウワーズ家の面々と再会したジョアンナは家長のロバートに歓迎され、そのまま家に泊まるように誘われる。そしてヴィヴィアンの死をめぐる捜査にかかるジョアンナだったが、その裏には一家をめぐる大きな陰謀がうずまいていた…といようなプロット。

金持ちの大家族のドロドロとした人間関係に殺人事件のミステリーが絡んでくるあたりは、ABCの「リベンジ」に似てるんじゃないですかね。というか恐らくあの番組の成功を受けて作られたものかと。酒浸りで口うるさい母親とか、薬物に溺れがちのヤサ男とか、反抗的なティーンの娘など、登場人物はかなりありがちなタイプばかり。こういう人たちにジョアンナは翻弄されるわけですが、なんか彼女が部外者すぎるというか、家族に受け入れてもらえずただ突っ立ってるようなシーンが多くて、いまいち主人公らしさを感じられないんだよな。「リベンジ」ではもっと主人公の意図がもっと明確だったと思うんだけどね。

なおボウワーズ家の家長を演じるのが「エイリアス」のヴィクター・ガーバー。個人的にこの手のナイトタイムソープって好きではないのですが、「リベンジ」が予想外のヒットとなったように、これも話が進めば人気が出てくる可能性もあるかもしれない。でも黒人が主役なので、日本では残念ながら放送される機会は少ないかも。

「1600 Penn」鑑賞


NBCの新作コメディ。タイトルはホワイトハウスの住所「1600ペンシルバニア通り」からで、要するに大統領一家を主役にしたシットコム。

スキップはボンクラな大学生だったが父親はアメリカの大統領で、あまりにも大学での成績が悪いために「家」に呼び戻されてホワイトハウスに住むことに。そこには彼の妹2人や弟なども暮らしていたが、彼らの母親は他界しており、父親の再婚相手であるエミリーとはどうもウマが合わない状況だった。父親のデールはそんな彼らの面倒を見つつも大統領としての職務を果そうとするのだが、スキップがいろいろ手を出してきて…といような内容。

トラブルメーカーな長男のスキップに加えて、長女が妊娠してることが発覚したり、次女がゲイらしいことが示唆されたりと、いろいろゴタゴタを抱えた家族が主役だというのは典型的なシットコムですかね。というか舞台がホワイトハウスだというのを除けばあまり目新しさは感じられないような。第1話では大統領が海外の使節団に会ったりするんだが、例によって外国人をコケにしたジョークはあまり面白くないんだよな。

でもキャストは結構豪華で、スキップを演じるのがミュージカル「The Book of Mormon」で一躍有名になったジョッシュ・ギャド、エミリー役が「ダーマ&グレッグ」のジェナ・エルフマン、そして大統領役がビル・プルマン。最後にプルマンが大統領を演じたときは独立記念日に戦闘機に乗ってエイリアンと戦ってたりしましたが、今回もそういうことやってくれればいいのにね。

ホワイトハウスが舞台のコメディなら既に「Veep」があるからいいや、といった程度の番組。

「プレミアム・ラッシュ」鑑賞


ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演のアクション・サスペンス。

ワイリーはニューヨークの法律学校に通っていたが、スーツを来た弁護士になることに興味を抱けず、スリルを求めて自転車のメッセンジャー・サービスをやっていた。ギアなし・ブレーキなしの金属製フレームというベーシックな自転車に乗った彼は自分の脚力と反射神経を駆使してニューヨークの忙しい街なかを疾走し、所属する事務所のなかでもトップレベルの腕を誇っていたが、ある日ガールフレンドのルームメイトより封筒をチャイナタウンまで最優先(プレミアム・ラッシュ)で届けるように依頼される。しかし配達を始めたとたんにワイリーは謎の男に追跡され、身の安全を脅かされるようになる。さらにこの追跡劇に市警の自転車警官や中国人マフィア、ライバルの同僚などが加わり、はたしてワイリーは時間内に封筒を届けることができるのか…というようなストーリー。

冒頭からニューヨークの喧噪のなかを、最適ルートを瞬時に見極めながら自在に走りまくるワイリーの活躍が描かれ、アドレナリンが出っぱなし。タクシーにつかまったり歩道を走ったりとやってることは違法まがいなんだが、車と車のあいだをすり抜けながら走る姿がカッコいいのです。このデリバリーのシーンに過去のシーンがフラッシュバックで挿入され、封筒にまつわる謎が徐々に明らかになっていく。こうしたフラッシュバックや追跡以外のシーンも決してダラけた雰囲気にならず、いい感じの短さでテンションを緩めさせないのが巧いな。

冒頭のマンハッタンの北から南まで90分以内という注文は余裕じゃね?と思ったけど、いろいろ邪魔が入って道路を逆走したり、セントラルパークでレースをしたりと多様な展開が楽しめるぞ。難があるとすれば最後のモブシーンのところがちょっと地味だったかな。あと今さら「ババ・オライリー」を使わなくても。

1時間半のあいだ手に汗握って楽しめる良質のサスペンス映画。これ日本じゃ劇場公開しないの勿体ないよねえ。きちんと宣伝して上映すればゼニが稼げる作品になるはずなんだが。