「AWAKE」鑑賞


NBCの新シリーズ。

刑事であるマイケルはある晩に家族とドライブ中に車を横転させてしまい、1人息子のレックスを亡くしてしまう。悲しみに打ちひしがれながらも職場に復帰するマイケルだったが、実は彼は夜に見る夢のなかでもう一つの現実を体験していた。そちらの世界では事故で亡くなったのはレックスではなく妻のハンナであり、彼はレックスと2人で暮らしていたのだ。2つの世界の境界が分からなくなり、困惑するマイケル。果たしてどちらの世界が現実で、どちらが幻なのか…というようなプロット。

話の設定だけ聞くと「LOST」みたいな謎ものかSFっぽい内容を連想するかもしれないが、実は意外とストレートな刑事もの。2つの世界で起きる事件が微妙にリンクしていて、マイケルは片方の世界で入手した手がかりをもう一方の世界で使って事件を解決する、なんてことをやってたりする。あとどちらの世界にもセラピストがいて、主人公にカウンセリングを与えてたりするのがアメリカンなところですね。

原案者は昨シーズンにあっという間に打ち切られた「LONE STAR」と同じ人…って二重生活ネタが好きな人だね!主演は「ブラザーフッド」とかに出てたジェイソン・アイザックス。よく見るとダニエル・クレイグに似てるね。ほかにも「ロー&オーダー SVU」のB・D・ウォンとか「プラクティス」のスティーブ・ハリスなんかが出演している。

「2つの世界のどちらが本物か?」という設定は裏を返すと「どちらも幻の存在では?」という考えになってしまうわけで、主人公以外の登場人物に感情移入するのがどうも難しいような気がする。ミニ・シリーズやSyfyチャンネルのシリーズならまだしも、地上ネットワークのシリーズとしてこれからずっと話を引っ張ってくのは相当厳しいのでは。

例えば「ライフ・オン・マーズ」だと「70年代の世界に来てしまった主人公が元の世界に帰ろうとする」という明確な目的があったが、この作品だと主人公が「2つの世界で妻子に会えるならそれでも良くね?」と変に割り切ってしまってるので、これから話がどう続いていくのががよく分からないんだよな。作りはしっかりしてるので「LONE STAR」同様に瞬殺されないことを願いたいのですが…。

「A Very Harold & Kumar Christmas」鑑賞


そのマリファナ万歳な内容のために(だよね?)日本では劇場公開はおろかDVDさえも発売されてない人気コメディ・シリーズ第3弾。今回は劇場だと3Dで公開されたので、タマゴから紙吹雪からマリファナの煙までありとあらゆるものが画面に向かってくる演出になっていたよ。これはちょっと3Dで観たかった気もする。

2作目が1作目の直後から始まってたのに対し、今回のストーリーは2作目の6年後という設定で、クマーが相変わらず小汚いアパートに住んでマリファナをキメてばかりの毎日を送っているのに比べ、ハロルドは出世してウォール街のオフィスで働き、妻のマリアと大きな家に住んでいた。そしてクリスマス・イブの朝にクマーのもとにハロルド宛の荷物が届いたことからクマーはハロルドの家を訪れるものの、それが大騒動に発展して…というようなストーリー。

相変わらずマリファナ・ジョークが満載だし裸のおねーちゃんたちも出てくるんだけど、前2作に比べてかなりメインストリームのコメディになったなという感じ。ラフなところが魅力だったインディーズのバンドが、メジャーデビューして良くも悪くも洗練された音になったようなものというか。3DゆえにCGを多用してるのはまだしも、ワッフルボットなんて登場させる必要あったのかな。その一方でマリファナ人間が今回は出演してないのは許せんなあ。あとトーマス・レノンが演じるハロルドの助手の役に時間が割かれ、メインの2人のドタバタの勢いが削がれてる気もする。

脇役は相変わらずニール・パトリック・ハリスが怪演技を見せつけてくれて、実際の婚約者(男性だよ)まで登場させつつも、女好きのスケベという役を力演している。たださすがに第1作目に比べるとインパクトが弱まったけどね。ハロルドの義理の父を演じるダニー・トレホはいつもの通りのトレホ。あとウクライナのギャングをイライアス・コティーズが演じてるんだが、俺は最後まで前2作に出演してるクリストファー・メローニだと思っていたよ。あの2人はそっくりなんだよな。

笑えるところは笑えるし、キャストも和気あいあいと演じてるのが感じられる作品なんだけど、どうも小ぢんまりとした作りになってしまった印象を受けてしまうな。劇中ではNPHが「第4作目でも会おうぜ!」なんて行ってるけど、興行成績も予測を下回ったらしいので、たぶんこれがシリーズ最終作になるんじゃないでしょうか。

「THE RIVER」鑑賞


ABCのいわゆる「LOST」ライクな新シリーズ。去年の「THE EVENT」の失敗で「LOST」ライクな作品は当分出てこないかと思ったけど、やはり今年も出てきたか。まあ他にもエイブラムスご本人の「PERSON OF INTEREST」とか「ALCATRAZ」とかがあるけど、あちらはもっと一話完結ものに近いよな。

探検家のエメット・コール博士は20年以上ものあいだ世界の秘境を渡り歩き、自身とその家族の冒険を映したTVシリーズによって世界的な知名度を誇っていたが、ある日アマゾンの奥地へと探検に向かったまま消息を絶ってしまう。そして世間では彼は死んだものとみなされるが、その半年後に彼の非常用ビーコンが作動したことを知った彼の妻のテスは、まだエメットが生存していることを信じ、息子のリンカーンや撮影クルーを率いてアマゾンへ向かうが、そこで彼らが目にしたものは…というプロット。

アマゾンを舞台にしてるので「アナコンダ」に雰囲気がにているかな。あとは「モンスターズ/地球外生命体」とか。コール博士がアマゾンで魔術を調査していたことが示唆され、彼を捜すクルーが直面するのもオカルト的な存在になるみたい。とはいえクルーの1人に霊感の強い少女がいるのは少し安直すぎる気もしますが。あとクルーの行動がみんなカメラで撮影されてるので、「パラノーマル・アクティビティ」みたいなPOVホラーの要素も多分に含まれている…って原案者が「アクティビティ」の監督なのか。

コール博士を演じるのがブルース・グリーンウッドで、消息不明の人とはいえ過去のテープの映像としていろいろ登場しまくってます。妻のテスを「24」のレスリー・ホープが演じてるほか、プロデューサーにスティーブン・スピルバーグが名を連ねている。スピルバーグって今年やけにTVシリーズに関わってない?

第1話を観た限りでは「THE EVENT」みたいに大風呂敷を広げてるわけでもないし、意外としっかりした探検もの/ホラーとして楽しめた。ただ話の舞台が限定的だし、登場人物も少ないのでこれから長く続くシリーズになれるかは微妙なところかな。まあ人気が出ればあの手この手で長続きさせられるんだろうけど。多くの「LOST」ライクな作品と同様に、いずれ日本でもどこかで放送されるでしょう。

「裏切りのサーカス」鑑賞


iTunes UK経由で。何を語ってもネタバレになりそうな作品なので、以下を読む時はお気をつけ下さい。

舞台となるのは1973年の冷戦下のイギリス。情報局秘密情報部(通称「サーカス」)のトップはある情報を得るためにハンガリーへエージェントを送るがその作戦は失敗し、その結果サーカスのトップおよび彼の右腕のジョージ・スマイリーは引退を余儀なくされる。しかしサーカスの上層部に共産側のスパイが潜り込んでいるらしいとの情報を聞きつけた政府は、スマイリーを呼び戻してスパイを探し出すよう命じるのだったが…というような話。

ジョン・ル・カレの原作読んでないし、アレック・ギネスの70年代のTVシリーズも当然観てないズブの素人が言うのも何ですが、かなり難解な映画だったなあ。ストーリーそのものが難解というよりも説明的なセリフやショットが極力省かれていて、話の行間を読むというか、登場人物の間の空気を読むことが多分に求められる演出がされていたのだよ。おかげですごく話が凝縮されて緊迫感があるのだが、ちょっとでも話を聞き漏らすとあとの展開が分からなくなるような感じでもあった。またフラッシュバックが多用されており、さっき死んだ人物が過去のシーンで再登場するなんてことが頻繁に起きていた。

登場人物もかなり多くて、それが話の複雑さに輪をかけているわけだが、主人公を演じるゲイリー・オールドマンを筆頭にみんな濃い演技を披露してますよ。コリン・ファースにトム・ハーディにカンバーバッチなどなど。個人的にはジョン・ハートとマーク・ストロングの演技が良かったな。特にストロングはベタな悪役ばかり演じてる印象が強かったので、繊細な演技が出来ることを改めて知った次第です。ただ映画として主人公の探すスパイにそれなりの役者を起用する必要があるため、何となく誰がスパイか想像がついてしまうのが難しいところか。小説だと誰もがスパイになり得たんだろうけどね。

あと特筆すべきは当時の諜報活動の描写で、70年代とはいえ終戦直後の世界のようにすべてが重々しく表現され、エージェントたちは報われない仕事を黙々と続けている。派手なドンパチもないし、スパイものとはいえ007シリーズとは対極をなす光景がずっと続いていく。バカでかい電話の受話器とか電線とつながって本国と連絡がとれるタイプライターといった機器を見ていると、携帯電話のおかげでスパイ映画がどれだけ変わったかというのかが良く分かりますね。

決して万人受けするような作品ではないし、気楽に見られるものでもないが、最近では珍しいくらいに密度の高いサスペンスであった。イギリス映画の本領発揮ですな。

「ドライヴ」鑑賞


批評家のあいだで高い評価を受けたライアン・ゴズリング主演のサスペンス。

主人公は物静かなドライバーで、昼間はメカニックや映画のスタントドライバーとして働き、夜は強盗の逃走を手助けする運転手という2つの顔を持っていた。そんな彼が同じマンションに住む子持ちの若い女性と仲良くなったとき、刑務所に入っていた彼女の夫が出所して帰ってくる。そして悪い仲間たちから仕事の依頼を受けて困っていた夫を主人公は助けることにするが、予期しなかった展開になり…というようなストーリー。

洗練されつくしたシネトグラフィーに、無駄な要素をそぎ落とした脚本と編集のおかげで、LAを舞台としたサスペンスなのにまるでヨーロッパのアートフィルムを観ているかのよう(監督のニコラス・ウィンディング・レフンはデンマーク出身)。主人公の名前が劇中で明かされず、役名がそのまんま「ドライバー」となっている点なども作品のストイックさを象徴しているといえよう。

でもサスペンスの臨場感は非常に楽しめるし、カーチェイスのシーンも迫力があって良かったよ。アメリカでは「ワイルド・スピード」みたいな内容を期待してたのに!と実際に訴訟まで起こした物好きがいるようだけど、ボンクラなアクション映画なんぞよりもずっと面白いよ(本当にボンクラなアクション映画を期待してるなら話は別ですが)。80年代っぽいシンセポップを多用したサントラも、不似合いのようで実はとても効果的だった。

寡黙に自分の仕事を行う主人公を演じるライアン・ゴズリングは非常にカッコよくて、仏頂面なんだけど子供の前などではニンマリ笑うあたりがいいなあと。物事の状況が悪くなっていくにつれ服がどんどん血に染まっていくあたりはかなりサイコな人なのですが、絶妙なバランスでアンチヒーローとしてのスタンスを保っている。彼に仕事をもちかける役のアルバート・ブルックスも、従来のコメディアンのイメージとはうってかわって腹黒いボスを好演。ヒロイン役のキャリー・マリガンは毎度のことながら薄幸な女性を演じてますが、まあ似合ってるんだから文句は言うまい。他にもブライアン・クランストンやロン・パールマン、クリスティーナ・ヘンドリックスといったケーブル局の人気番組で活躍する役者たちが脇を固めているぞ。

主人公がちょっと万能すぎるような気もするし、LAってもっと渋滞してない?というツッコミもあるのですが、非常に完成度の高い洗練された作品。ただその洗練度のゆえに万人受けするものではないかな。あとトレーラーが意外とネタバレ満載なので要注意: