「HOLY FLYING CIRCUS」鑑賞


「キリストの生涯を茶化している」という理由から世界各地で上映禁止となった、モンティ・パイソンの映画「ライフ・オブ・ブライアン」にまつわる騒動の裏話を描いたBBC4のTVムービー。

パイソンズの面々を他の役者が演じているということで前から話題になっていた番組だが、内容はかなりおふざけが入ったものになっており、マイケル・ペイリンの奥さんは女装したテリー・ジョーンズだし、ジョン・クリーズもカメラに向かって「僕はクリーズ本人よりも(「フォルティー・タワーズ」の)バジル・フォルティーに近いキャラクターです」なんて自己紹介する始末。ちなみに上の写真を見ても分かるようにキャストは本物たちによく似ていて、テリー・ジョーンズだけは似てないかと思ったけど女装したらよく似ていたよ。

ストーリーも内輪ネタというかメタなジョークが満載で、登場人物がテリー・ギリアム風のアニメになったり人形になってライトセーバーで闘ったり、歴史検証に間違いがあることに気付いた(架空の)視聴者がBBC4にクレームを入れたりとやりたい放題。ただしこうしたナンセンスさが全て成功しているとは言い難くて、特にパイソンズを陥れようとするTVプロデューサーたちも間抜けにしてしまったことで、最後の見せ場であるキリスト教の僧侶とのテレビ番組での討論への盛り上がりに欠けてしまったのが残念。別に「フロスト X ニクソン」みたいなのを期待してたわけではないが、抗議運動などはもうちょと真面目に描いてもよかったのに。でも話の主人公を「世界でいちばん良い人」ことマイケル・ペイリンにしたのは正解だったな。視聴者がいちばん感情移入しやすい人だろうから。

というわけでどこまでがフィクションでどこまでが実話かよく分からない怪作でしたが、かつてこんなに論議を呼んだ映画があったんだよと知るのには適した番組ですかね。ちなみにアイルランドでは「人生狂騒曲」さえも公開禁止にされたんだよな。

早くも全編をyoutubeにアップした猛者がいた:

「Terry Gilliam’s Faust」鑑賞


BBC4で放送されたのをiPlayer経由で視聴。ベルリオーズの「ファウストの劫罰」をテリー・ギリアムがオペラ形式で演出したもので、今年の5月にイングリッシュ・ナショナル・オペラで公演されたものらしい。

詳しいあらすじなどはウィキペディアを参照してもらうこととして、この公演では19世紀に書かれた原作の舞台を、20世紀前半のドイツに移しているのが大きな特徴。牧歌的な光景が第一次世界大戦の戦渦を経験してナチスの台頭につながり、共産主義社が処刑されユダヤ人が逮捕されるなか、メフィストフェレス(上の写真左)に翻弄されるファウスト(写真右)の運命が描かれていく。

時代設定をナチスの頃にするのってイアン・マッケランも「リチャード3世」でやってたし、少し安直な気もしなくはないが、それでも「水晶の夜」のシーンとか、マルグリートを救うために魂を売って地獄に堕ちてカギ十字に磔にされるファウストや、強制収容所の遺体の山からマルグリートの魂が昇天することが示唆されるラストシーンなどは非常に印象的であった。冒頭のインタビューによるとギリアムはそもそもドイツの歴史に興味があったほか、ドイツ印象派のスタイルがナチスの直線的なデザインにとって代わられる流れを描きたかったらしい。全体的主義社会における悲しい愛というのは「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせるし、安易なハッピーエンドにならないところもギリアムの映画作品に通じるところがあるかな。

当然ながら映画みたいなセリフのかけ合いやシーン転換などがあるわけではないので、少し冗長に感じられるところもあったけど、それは俺がオペラの鑑賞に慣れてないからだろうな。全体的にはセットの変化とかがとても凝っていたし、映像投影の効果的な使用などもあって視覚的にも大変楽しめましたよ。またギリアム作品ではお馴染みの奇怪なクリーチャーも出てきますが、みんな生身の人間が演じて見事な振り付けをしているところに圧倒される。CGの怪物なんかよりもこっちのほうがずっと凄いって。

これ日本でもNHKあたりでやってくれないかな。イギリスでの評判も良かったらしいので、ギリアムはまた舞台を手がけることになるのかも。とはいえ往年のファンとしてはまた苦労してでも映画を撮ってほしいところです。

「BATMAN: YEAR ONE」鑑賞


言わずと知れたフランク・ミラー&デヴィッド・マズッケリの同名傑作コミックのアニメーション版。

バットマンことブルース・ウェインと、ジェームズ・ゴードン警部のゴッサム・シティにおける最初の年の活躍を描いたもので、65分という比較的短い尺ながらも原作のセリフや展開を丁寧に映像化していてなかなか楽しめる出来になっている。ラストの「メガネがないと何も見えないんだ」というところは原作以上に思わせぶりな演出になっていて良かったな。なお原作といちばん異なるのは「ゴードンがタバコを吸わない」という点でして、ここらへんはアメリカの表現規制が厳しいんだろうな。原作ではちょっとした小道具的扱いだっただけに残念。

アニメーションの出来も良いんだが、原作に忠実なぶんマズッケリの素晴らしいアートと比べると見劣りしている感があるのは否めない。アクションシーンの決めのポーズとかね。最近はヨーロッパでアートなコミックを描いてるマズッケリですが、スーパーヒーローものにまた戻ってきてくれないかなあ。

声優はゴードン役をブライアン・クランストンが勤めていて、妻子を抱えながらゴッサムの闇と闘うハードボイルドな演技はブレイキング・バッドしていて大変よろしい。それに対してバットマン役のベンジャミン・マッケンジーは滑舌があまり良くないような?バットマンの声優って全てケヴィン・コンロイに任せればいいんじゃないかと思うんですが、もっとセレブな役者を起用していのかね。他にもエリザ・ドゥシュクやケイティー・サッコフなどが声の出演をしてます。

原作コミックを片手に持ちながら鑑賞をしたわけですが、フランク・ミラーって昔はこういう男たちの心情をきちんと書ける人だったんだなあと改めて実感してしまったよ。彼って後期「シン・シティ」あたりから手がけるストーリーがずいぶん大味になってきて、さらに911テロのあとは発言とかが相当ヤバい人になってしまい、監督した映画「スピリット」が大コケしたほか、こないだ久しぶりに出したコミック「HOLY TERROR」はバットマンまがいのヒーローが「イスラム教徒はみなテロリストだ!」といった姿勢で暴力をふるうという相当ヒドい内容になっているらしく、各方面からまんべんなく叩かれているんだよな。こうして「YEAR ONE」が映像化されたり、デアデビルの「BORN AGAIN」も映像化されるという噂があるなか、ミラーが世間からとても遠い所にいってしまった感じがするのは残念なことです。

「PRIME SUSPECT」鑑賞


ヘレン・ミレンが主演したイギリスの刑事ドラマ「第一容疑者」のリメークで、主演はマリア・ベロ。彼女の上司としてエイダン・クインも出ている。

ニューヨーク市警の殺人課に配属されてきたジェーン・ティモニーは非常にタフで腕利きの警部だったが、周りの男性警官たちは女性が警部であることが気に入らず、露骨に彼女を蔑む始末。おまけに警部の1人が心臓発作で急死し、ジェーンがその後を継ぐことになったことで周囲は彼女を殆ど敵視するまでになってしまう。それでもジェーンは逆境にめげず、殺人事件の第一容疑者を捜すことに毎日奔走するのだった…というようなストーリー。

実はイギリスのオリジナル版を観たことがありませんでして、あっちと比べてどうなのかはよく分かりませんが、女性だからといって差別されながらも自己流の捜査で犯人を挙げていく主人公の姿はなかなかカッコいい。マリア・ベロはこうした役には最適かと。夜になるとメゲて恋人に泣きついたりしているけどね。しかし実際の警察があんなに差別的だったら嫌だなあ。

最初からレイプされて惨殺された被害者が出てくるなど、犯罪の描写とかは結構キツくて、気軽に観られる刑事ドラマというわけではないな。製作と第1話の監督はピーター・バーグが勤めているが、同じく彼が手がけたシリーズで、パイロットから傑作だった「FRIDAY NIGHT LIGHTS」に比べると見劣りすることは否めない。視聴率も苦戦しているらしいが、オリジナル版の人気のせいか海外セールスは好調らしいのでそれなりに長続きはするんじゃないかなあ。あるいは「FNL」みたいに地上波以外の局に移って放送されるとか?

「LAST MAN STANDING」鑑賞


ティム・アレン主演のABCの新シットコム。「ティム・アレンが帰ってきた!」なんて上の写真には書いてあるけど、要するに90年代の人気シットコム「Home Improvement」の成功後に「トイ・ストーリー」とか「ギャラクシー・クエスト」のような優れた映画に出演したものの、その後が続かなくて結局シットコムに戻ってきたんだなあ、という感が否めない。

話の設定も「Home Improvement」に似ていて、ティム・アレンが演じるのは3人の娘たちのパパ。アウトドアグッズのメーカーに勤める彼は男らしいタフな生活を送りたいと思うものの、家では娘たちと妻という4人の女性に囲まれて、男としての威厳を保つのに苦労する…というようなもの。主人公の上司役をヘクター・エリゾンドが演じてるが、「シカゴ・ホープ」のイメージが強いのでコメディがなんか似合わないような?

まあ内容は非常に典型的なマルチカメラのシットコムといった感じで、気の抜けたパパさんに対して頭の回転の早いティーンがシャレた文句を言うたんびにラフトラックが過剰気味に入る展開がずっと続いてく。ここまで典型的なシットコムはむしろ最近珍しいかも。主人公がもっと男性至上主義で銃や狩猟が大好きなティーパーティーの人だったらもっと面白くなったかもしれないが、そこまで過激な内容にはできなかったか。でも娘の1人がシングルマザーだってのは時代を反映してるのかもしれんな。

今シーズンはタフな男になろうとするヤワ男を描いたシットコム「How To Be A Gentleman」が速攻で打ち切りになったりしてるわけで、文字通り「最後の男」となってしまったこの番組はいつまで続くことやら?