「HART OF DIXIE」鑑賞


The CWの新作ドラマ。いわゆる「都会の人が田舎に行って四苦八苦するものの、次第に周囲と打ち解けていく」というジャンルの作品。

ニューヨークの若き女医であるゾーイ・ハートは医学校を首席で卒業した優等生で、心臓病の医者になることが夢だったものの、患者に親密に接することができないという理由で上司にその夢を断たれてしまう。失望したゾーイは数年前に彼女の卒業スピーチを聞いて感動したという老人のオファーを受け、アラバマの小さな町の病院で働くことになる。しかし彼女がその町に着いたときには老人は既に亡くなっており、彼の遺言で病院の半分の所有権がゾーイに譲られていたことを彼女は知る。こうして彼女はニューヨークとは異なる田舎の慣習に驚かされながらも、町の人たちの面倒を見るようになり、ある秘密を知ることになるのだった…というプロット。

アイシャドーが濃い主人公のゾーイを演じるのはレイチェル・ビルソン…って誰だっけ。彼女と病院を共同で運営する医師の役でティム・マシスンが出てるけどレギュラーでなくゲスト扱いみたい。都会のキャリアウーマンが夢破れて田舎に行き、そこでカルチャーギャップに驚くという展開はどっかで観たなあ。というわけで目新しさは無いものの、いわゆるオールドスクールなThe CWの雰囲気があって、俺はそんなに嫌いではないですよ。

アラバマの人たちはみんな呑気でマイペースで、頭の回転がなんか鈍そうで女の子がすぐ妊娠する、という描写はどうなんだろ。良家のお嬢様で悪賢そうなビッチも出てくるけどね。全体的に田舎者を見下してる雰囲気が感じられなくもないが、昨年の「OFF THE MAP」よりはマシか。南部なのに白人ばかり出てくる内容になるのかなと思ったら、町の町長は引退した黒人のNFL選手という意外な設定だったのは面白かったかも。

「ONCE UPON A TIME」同様に登場する女性がみんな30歳以上というのはちょっと残念ですな。とはいえ早くもフルシーズンの放送が決まったらしいので、爆発的なヒットにはならなくても、このまま番組表の片隅でずっと続いていく「ONE TREE HILL」のようなシリーズになるんじゃないですかね。

「ONCE UPON A TIME」鑑賞


なぜかimdbで第1話が先行公開されていたABCの新作ドラマ。

おとぎの国では白雪姫を王子様が無事に生き返らせ、2人はめでたく結婚することになったものの、結婚式の途中に悪い王妃が現われ、いずれ災いが起きることを伝えて去っていく。そして2人のあいだに子供が生まれたとき、王妃が2人の城に攻めてきたことから白雪姫は魔法の扉を使って赤ん坊を「我々の世界」へと送り出す。それを知った王妃はおとぎの国自体を「我々の世界」へ持ち運ぼうとするが…。それから28年後、保釈金の取り立て屋をしているエマという女性のところに10歳の少年が訪れてくる。彼はエマがむかし養子に出した実の息子だというのだ。そして彼といっしょにストーリーブルックという小さな町に行くエマだったが、その町ではおとぎの国からやってきた住人たちが人間の姿を借りて暮らしていたのだ。さらに実はエマこそが白雪姫と王子の娘であり、彼女が町にやってきたことで「最後の戦い」への歯車がまわりはじめる…というようなプロット。

ちょっと解説が長くなったけど、分かるかな?ようするにおとぎの国のキャラクターたちが我々の世界に隠れて住んでいるということだよ。これってNBCで始まる「GRIMM」という番組と同じコンセプトなんだが、元ネタはDCコミックス/ヴァーティゴの「FABLES」だよなあ…あっちのTVシリーズ化の話は全然進んでないのに、よく似た話の番組が2つも作られるという不思議さ。まあハリウッドではよくあることでしょうが。

「LOST」のプロデューサーが絡んでるようで、どうも「LOST」ライクな番組として売り出したいみたいだけど、第1話の時点で多くの謎が説明されてるようなので、これからどこまで視聴者を引っ張っていくことができるのかな。小さな町のミステリーという点ではsyfyの「ユーリカ」とか「ヘイヴン」に似た雰囲気があるけど、地上波ネットワークでこうした内容がどこまで通用するんだろう。

主人公のエマを演じるのは「ハウス」のジェニファー・モリソン。他にもランプルスティルスキンの役でロバート・カーライルなんかも出演している。ロバート・カーライルにアメ公どもの脇役を演じさせるのは勿体ないなあ。白雪姫をはじめ出てくる女性がみんな三十路の人たちなのがアレですが、今後はシンデレラとかが出てくるみたい。他に出てくる(予定)のキャラクターはピノキオにゼペットじいさん、ジミニー・クリケットや赤ずきんなどなど。

すくなくとも「GRIMM」よりはずっと面白いし宣伝にも力を入れてるようなのでそれなりに長続きはするかもしれないが、こういうファンタジー色の強い番組がABCでどれだけ人気がでるのかはよく分かりません。

「HOLY FLYING CIRCUS」鑑賞


「キリストの生涯を茶化している」という理由から世界各地で上映禁止となった、モンティ・パイソンの映画「ライフ・オブ・ブライアン」にまつわる騒動の裏話を描いたBBC4のTVムービー。

パイソンズの面々を他の役者が演じているということで前から話題になっていた番組だが、内容はかなりおふざけが入ったものになっており、マイケル・ペイリンの奥さんは女装したテリー・ジョーンズだし、ジョン・クリーズもカメラに向かって「僕はクリーズ本人よりも(「フォルティー・タワーズ」の)バジル・フォルティーに近いキャラクターです」なんて自己紹介する始末。ちなみに上の写真を見ても分かるようにキャストは本物たちによく似ていて、テリー・ジョーンズだけは似てないかと思ったけど女装したらよく似ていたよ。

ストーリーも内輪ネタというかメタなジョークが満載で、登場人物がテリー・ギリアム風のアニメになったり人形になってライトセーバーで闘ったり、歴史検証に間違いがあることに気付いた(架空の)視聴者がBBC4にクレームを入れたりとやりたい放題。ただしこうしたナンセンスさが全て成功しているとは言い難くて、特にパイソンズを陥れようとするTVプロデューサーたちも間抜けにしてしまったことで、最後の見せ場であるキリスト教の僧侶とのテレビ番組での討論への盛り上がりに欠けてしまったのが残念。別に「フロスト X ニクソン」みたいなのを期待してたわけではないが、抗議運動などはもうちょと真面目に描いてもよかったのに。でも話の主人公を「世界でいちばん良い人」ことマイケル・ペイリンにしたのは正解だったな。視聴者がいちばん感情移入しやすい人だろうから。

というわけでどこまでがフィクションでどこまでが実話かよく分からない怪作でしたが、かつてこんなに論議を呼んだ映画があったんだよと知るのには適した番組ですかね。ちなみにアイルランドでは「人生狂騒曲」さえも公開禁止にされたんだよな。

早くも全編をyoutubeにアップした猛者がいた:

「Terry Gilliam’s Faust」鑑賞


BBC4で放送されたのをiPlayer経由で視聴。ベルリオーズの「ファウストの劫罰」をテリー・ギリアムがオペラ形式で演出したもので、今年の5月にイングリッシュ・ナショナル・オペラで公演されたものらしい。

詳しいあらすじなどはウィキペディアを参照してもらうこととして、この公演では19世紀に書かれた原作の舞台を、20世紀前半のドイツに移しているのが大きな特徴。牧歌的な光景が第一次世界大戦の戦渦を経験してナチスの台頭につながり、共産主義社が処刑されユダヤ人が逮捕されるなか、メフィストフェレス(上の写真左)に翻弄されるファウスト(写真右)の運命が描かれていく。

時代設定をナチスの頃にするのってイアン・マッケランも「リチャード3世」でやってたし、少し安直な気もしなくはないが、それでも「水晶の夜」のシーンとか、マルグリートを救うために魂を売って地獄に堕ちてカギ十字に磔にされるファウストや、強制収容所の遺体の山からマルグリートの魂が昇天することが示唆されるラストシーンなどは非常に印象的であった。冒頭のインタビューによるとギリアムはそもそもドイツの歴史に興味があったほか、ドイツ印象派のスタイルがナチスの直線的なデザインにとって代わられる流れを描きたかったらしい。全体的主義社会における悲しい愛というのは「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせるし、安易なハッピーエンドにならないところもギリアムの映画作品に通じるところがあるかな。

当然ながら映画みたいなセリフのかけ合いやシーン転換などがあるわけではないので、少し冗長に感じられるところもあったけど、それは俺がオペラの鑑賞に慣れてないからだろうな。全体的にはセットの変化とかがとても凝っていたし、映像投影の効果的な使用などもあって視覚的にも大変楽しめましたよ。またギリアム作品ではお馴染みの奇怪なクリーチャーも出てきますが、みんな生身の人間が演じて見事な振り付けをしているところに圧倒される。CGの怪物なんかよりもこっちのほうがずっと凄いって。

これ日本でもNHKあたりでやってくれないかな。イギリスでの評判も良かったらしいので、ギリアムはまた舞台を手がけることになるのかも。とはいえ往年のファンとしてはまた苦労してでも映画を撮ってほしいところです。

「BATMAN: YEAR ONE」鑑賞


言わずと知れたフランク・ミラー&デヴィッド・マズッケリの同名傑作コミックのアニメーション版。

バットマンことブルース・ウェインと、ジェームズ・ゴードン警部のゴッサム・シティにおける最初の年の活躍を描いたもので、65分という比較的短い尺ながらも原作のセリフや展開を丁寧に映像化していてなかなか楽しめる出来になっている。ラストの「メガネがないと何も見えないんだ」というところは原作以上に思わせぶりな演出になっていて良かったな。なお原作といちばん異なるのは「ゴードンがタバコを吸わない」という点でして、ここらへんはアメリカの表現規制が厳しいんだろうな。原作ではちょっとした小道具的扱いだっただけに残念。

アニメーションの出来も良いんだが、原作に忠実なぶんマズッケリの素晴らしいアートと比べると見劣りしている感があるのは否めない。アクションシーンの決めのポーズとかね。最近はヨーロッパでアートなコミックを描いてるマズッケリですが、スーパーヒーローものにまた戻ってきてくれないかなあ。

声優はゴードン役をブライアン・クランストンが勤めていて、妻子を抱えながらゴッサムの闇と闘うハードボイルドな演技はブレイキング・バッドしていて大変よろしい。それに対してバットマン役のベンジャミン・マッケンジーは滑舌があまり良くないような?バットマンの声優って全てケヴィン・コンロイに任せればいいんじゃないかと思うんですが、もっとセレブな役者を起用していのかね。他にもエリザ・ドゥシュクやケイティー・サッコフなどが声の出演をしてます。

原作コミックを片手に持ちながら鑑賞をしたわけですが、フランク・ミラーって昔はこういう男たちの心情をきちんと書ける人だったんだなあと改めて実感してしまったよ。彼って後期「シン・シティ」あたりから手がけるストーリーがずいぶん大味になってきて、さらに911テロのあとは発言とかが相当ヤバい人になってしまい、監督した映画「スピリット」が大コケしたほか、こないだ久しぶりに出したコミック「HOLY TERROR」はバットマンまがいのヒーローが「イスラム教徒はみなテロリストだ!」といった姿勢で暴力をふるうという相当ヒドい内容になっているらしく、各方面からまんべんなく叩かれているんだよな。こうして「YEAR ONE」が映像化されたり、デアデビルの「BORN AGAIN」も映像化されるという噂があるなか、ミラーが世間からとても遠い所にいってしまった感じがするのは残念なことです。