「LOST IN LONDON」鑑賞


最近いちばん劇場で目にしている(ハン・ソロ、猿の惑星、スリー・ビルボードetc.)気がする役者であるウディ・ハレルソンの初監督作品。といっても舞台の演出に近いのかな。ロンドンを舞台にハレルソン本人がさまざまな不遇に見舞われ四苦八苦するさまがリアルタイムで撮影され、それが「生放送で」イギリスの映画館において上映されるという、一緒のライブビューイング的な鑑賞が行われた作品なんだそうな。いちおう世界初の試みだそうで。

ハレルソンが以前にロンドンのタクシーの灰皿を壊したために警察に追われることになった実体験を脚色したもので、ハレルソンが本人自身を演じている。舞台出演のために家族を連れてロンドンに来ていたハレルソンだったが、前夜に3人の女性と乱痴気騒ぎをやらかしたことがパパラッチされてしまい、それを知った妻は当然ながら激怒。ホテルに戻る前に頭を冷やすよう命じられる。仕方なしに時間を潰す羽目になった彼はイランの王子たちに遭遇し、彼らに連れられてナイトクラブへ向かう。そこでは旧友のオーウェン・ウィルソン(これも本人)に出会うものの、ささいなことから喧嘩となってしまう。さらにハレルソンの災難は続き、しまいには警察に追われて収監されてしまうことに…というストーリー。

ハレルソンは実物よりも(たぶん)もっとB級セレブ的な扱いをされていて、殆どの人が彼のことを知らないか、90年代の作品を覚えている程度。役者が本人を自虐的に演じるパターンですね。オーウェン・ウィルソンとの会話もウェス・アンダーソンの映画とかに関する楽屋オチっぽいものになっていて、そういうのあまり好きではないけどまあ役者ふたりが本人同士を演じるとそういう内容になるのでしょう。ハレルソンとウィルソン以外はそんなに有名な役者は出ていないが、U2のボノ(とその奥さん)が電話越しに声だけカメオ出演しているほか、終盤になってなぜかウィリー・ネルソンが登場していた。ウィリー・ネルソンとハレルソンといったら、一緒にマリファナをキメてハイになる展開でしょ、と思ったらそうでもなかったな。

ウディ・ハレルソンってそのテキサス訛りのせいか、あまり演技に幅のある役者だとは思ってなかったけど、これを観ると体を張った多様な演技ができる人だな、というのが良く分かる。一発撮り作品としては「ヴィクトリア」よりも手が込んでいるんじゃないかな、これ?車の運転手と会話しながらも移動するシーンが2回くらいあるんだが、あれ役者が本当に運転しながら移動したのだろうか?ハレルソンが車に追いかけられるシーンとか、よく一発で撮れたなと感心するところもいろいろありました(自分が観たバージョンは、生放送されたものに多少の編集が加えられてるかもしれないが)。

まあ一発撮り作品の欠点として、カットすればいいような場面もカットされておらず全体的にテンポが悪いし、単なるギミック映画と言ってしまえばそれまでなのだが、ハレルソン渾身の演技もあって以外と楽しめた1本でした。

「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」鑑賞


公開されたばかりなので感想をざっと。ロン・ハワードが8割くらい撮り直したらしいので、ミラー&ロード版だったらどうなってたか、と論じるのは野暮でしょ。以降はネタバレ注意。

・前に「ローグ・ワン」もそうだったし、SW映画なのにオープニングのテキストクロールがないとか、画面のワイプがないことに不平を言うつもりはない。しかし前半ずっと画面が暗かったのは何なんだろう。戦場のシーンとか列車強盗のシーンとか、リアリズムを出すつもりならそれは失敗していると思うし、誰もSW映画にそんなものは求めてないと思うのだがなあ。後半になって明るくなったからよしとするが。

・現在進行形であるエピソード7〜8が、古参の俳優が枯渇していっているためにフランチャイズを方向展開していってジェダイやフォースなどから離れて行っているのに対し、こちらはプリクエルとして別の俳優を起用して過去の伏線回収というかプロットの補足をバンバン行えるわけで、まあオールドファンを喜ばせられる強みはあるわな。

・個人的には「ケッセルランを12パーセク」はソロがでっちあげたホラ話であってほしかったけど。観客の想像に委ねればいいことをいちいち余計に補填してくれるのが、SWプリクエルの大きなお世話ですな。

・全体の4分の1を脱出ポッド(しかも進行方向にある)が占める宇宙船って何だよ。

・ハリソン・フォードは演技が下手ながらも「不敵にニヤッと笑う」ことだけは完璧にできてた人なので、それに比べるとオールデン・エアエンライクはまだその域に達してないかな。若き頃の姿とはいえ、なんかディズニー化されているというかいい人すぎる設定なのよな。ファンの間で論議を呼んだ「先撃ち」をやったのは良かったけど。

・エミリア・クラークはなんかぷにぷにしていて、最初から貧困感がなかったような。ドナルド・グローバー演じるランド・カルリジアンよりもベスピンのヘッドセットの人の登場を期待してたのですが、出てこなかったですね。

・最後の赤い人の登場、今作が「エピソード1」よりも後の話であることを忘れていたよ。なんかスピンオフのために無理して伏線張ってるような気もするが。彼の声がアニメ版と同じになっていることも含め、アニメシリーズへの言及がずいぶん多いようですね。

前述したようにオールドファンを喜ばせるという仕事はしていて、可もなく不可もない作品といったところか。工業的にこけたことで、今後のスピンオフ展開もいろいろ見直しが入ってくるんだろうが、変なテコ入れがはいってこないことを願うばかりです。

「Please Stand By」鑑賞


ダコタ・ファニング主演のインディペンデント系映画。日本では9月に「500ページの夢の束」という邦題で公開予定。キノフィルムズ、作品をいろいろ買うのはいいのだけど日本公開がいろいろ遅いと思うの。以降はネタバレ注意。

ウェンディは自閉症の女の子で、オークランドの施設に暮らしていた。簡単なバイトとかはできるものの人とのコミュニケーションが苦手で、感情が高まったりするので姉の赤ん坊にも合わせてもらえない状況。そんな彼女が大好きなのは宇宙大作戦こと「スター・トレック」で、オリジナル・シリーズはおろかスピンオフ・シリーズのキャラクターなどを熟知し、周囲のオタクどもからも一目置かれる少女であった。そんな彼女はパラマウント・ピクチャーズがスター・トレックの脚本コンテストを開催していることを知り、自分が手塩にかけた500ページもの脚本を送ろうとするものの、最後の最後までこだわったために郵送できる締め切りを過ぎてしまい、仕方なく彼女はパラマウントまで脚本を手渡しに行こうと、周囲の誰にも告げずに人生初の長旅に出るのだったが…というあらすじ。

感情の表現がうまくできないスポックとウェンディを重ね合わせるセリフがあったり、コミュニケーションが下手な彼女がクリンゴン語を使って会話するシーンなどがあるものの、スター・トレックはそんなに大きなテーマとして扱われているわけではない。そもそもスター・トレックって一般人から脚本を受け付けているほぼ唯一のTVドラマであることは有名で、なんで脚本コンテストなんかやるの?と思うのだが、CBSでなくパラマウント・ピクチャーズ主催なので映画版の脚本なのだろうか。でもウェンディの脚本って「スポックがディープ・スペース・ナインに赴いてウォーフの助力を請う」なんていうファンフィクションまがいの内容のようで、それって映画化するのかなり難しいのでは。そもそも500ページの脚本(つまり約500分の内容)なんてハリウッドで誰も読まないだろ、とは思うものの、まあそこらへんに愚痴を言っても仕方ないか。あと脚本をメールで送ればすべて解決したんじゃね?と思いたくなるが、いちおう投稿の規定は「印刷されたものを郵送」だそうな。あとパラマウントのオフィスにあんな簡単に入り込んだりできないからね!

内容は比較的凡庸なロードムービーだが、主人公がバスから降ろされたり、道中出会ったカップルに財布とられたり、乗った車が事故ったりと、いろいろ災難がてんこ盛りでなんかお腹いっぱい。施設から消えたウェンディを探して彼女の姉や施設の管理人も心配して苦労するわけでが、周囲に迷惑をかけていることを主人公が認識していないために、観ていてなんかモヤモヤするところがあったよ。いちおうコンテストの優勝賞金をゲットすれば姉に迷惑をかけずにすむ、という目的をウェンディは抱いているのだが、自閉症という設定にしたことで逆に彼女の決心が曖昧なものになっていたような。もっと普通の内気な女の子を主人公にしても良かったんじゃないの。そのほうが、自分の抱える問題に向き合って解決しようとする彼女の行いがもっとスッキリ描けたと思うのだが。

ダコタ・ファニングは例によってFull Retardにならない自閉症者の演技をしていて、まあ型にはまっているといえばはまっている。彼女を施設で面倒みているのがトニ・コレットで、彼女の姉を演じるのがアリス・イブ。ご存知のようにアリス・イブって「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に出演してるので、そこらへん何かメタな展開があるかなと期待してたけど何もなかった。この映画、スター・トレックを題材にしている割には、あまりトレッキーが喜ぶネタがないのが寂しいところである。パットン・オズワルド演じる、クリンゴン語を話す警官なんてのは出てきてたけど。

まあ凡作。

「Cloak & Dagger」鑑賞


別名「Marvel’s Cloak & Dagger」で、その名から分かるようにマーベルの同名コミックをもとにしたFreeformの新作シリーズ。原作のクリエイターはロケット・ラクーンと同じくビル・マントロ御大な。Freeformとしては初のマーベル作品だけど、過去にもABCファミリー時代にコミックを映像化した傑作「THE MIDDLEMAN」とかやってたのでそんなに違和感はない。

先に原作のコミックのほうを説明しておくと、「クローク&ダガー」という名前が一般的に指すミステリーやサスペンスのジャンルとは関係なくて、光でできた短剣(というか飛びナイフ)を操る白人女性のダガーと、フード付きの巨大な外套をまとい、それに包まれたもの(自身を含む)を自在に瞬間移動させる能力を持った黒人男性のクロークというふたりのティーンのスーパーヒーローを主人公にしたもの。

初登場は1982年のスパイダーマン誌で、そこからスピンオフして独自のミニシリーズ、さらにはオンゴーイングシリーズなどで活躍していったキャラクターだが、いわゆるスーパーヴィランと戦うような内容というよりも、当時社会問題だったティーンの家出とか麻薬問題などを扱った話が多かったらしい…すいません俺ほとんど読んだことありません。まあキャラクターが地味なんだよね。クロークの外見とか能力って少し前に登場したダズラーとよく似たものだったし、クロークは背後でむっすりしてるだけで特徴的なところはなかったし。他の作品にたまにゲストキャラで出てくる人たち、という印象が強かったかな。

マーベルのキャラクターとしてはデアデビルやパニッシャーのようなストリート系ということで、映像化も安上がりに済みそうだと思われたんだろうか。さらに主人公がティーンということでFreeformで放送されることになったとか?とにかくスーパーヒーローの番組というよりも、ティーンの青春ドラマという雰囲気が強い内容になっている。

主人公のタイローン(クローク)とタンディ(ダガー)は幼いときに、ニューオリンズ沖で起きたロクソン・コーポレーション(マーベルではおなじみの悪徳企業)の実験施設が爆破したときの衝撃を水中で受けた結果特殊な能力を身につけたものの、本人たちにはその自覚もなく、また事故の記憶も殆どなかった。しかし事故と前後してタイローンは兄を悪徳警官に射殺され、タンディは父親がロクソンに関わっていたと逮捕され、両者はそのトラウマによって周囲になじめないティーンに成長していた。やがて彼らの能力が覚醒し始め、タンディは光の短剣によって人を傷つけてしまい、タイローンは意図せずに遠く離れた場所へとワープするようになる。その能力に困惑する二人は、やがて大きな運命に導かれて出会うようになり…というあらすじ。

最初の2話まで観たけど話のペースが非常に遅くて、クロークとダガーの能力が発動するのは数回のみ。悪者をバッタバッタと倒すスーパーヒーロー活劇を期待していると、壮大な肩透かしをくらうことになるだろう。タンディの家庭が崩壊寸前で彼女が非行に走っているところとか、兄を失ったタイローンが家でも学校でもいろんなプレッシャーに苦しんでいるとことか、いかにもFreeformっぽい作品だなとは思うものの、それってマーベル作品に期待しているものなのかな、という気もする。

タンディ役は歌手もやってるオリヴィア・ホルト、タイローン役はオーブリー・ジョセフ。まああまり知られてない若手俳優ふたりですかね。有名俳優といえばタイローンの母役に「ER」のグロリア・ルーベンが出ているくらいか。

原作にはない神秘的な予知夢(?)のシーンとかもあって、マーベル作品としては一風変わった出来になっているし、今の段階でも少なくとも「インヒューマンズ」よりは面白くなるだろうとは思うものの、いかんせん話のペースが遅すぎて今後はどうなるかわからんなあ。主人公ふたりが自分たちの能力を完全に使いこなせるようになれば話が面白くなるんだろうけど、それがいつのことになるやら…。

「The Disaster Artist」鑑賞


ジェームズ・フランコ監督&出演、デイブ・フランコ主演というフランコ兄弟のコメディ映画。

2003年に公開されるなり、その演技の安っぽさと脚本の意味不明さが口コミで話題になって、監督&主演を務めたトミー・ワイゾーの強烈なキャラクター性とあいまって早くも「今世紀最低の映画」という評価を得るものの、その内容(コメディ映画ではない)のヒドさが逆に笑えるとして深夜上映などで人気を博し、未だにアメリカのどこかで上映されているというカルト映画「THE ROOM」の製作現場の裏側を描いた同名の本をもとにしたもの。なお「THE ROOM」自体はおれ観てません。

本を執筆したのはデイブ・フランコ演じるグレッグ・セステロで、彼は1998年にサンフランシスコの演劇教室でトミーに出会う。ニューオリンズ出身と言いながらもキツい東欧訛りを持ち、年齢不詳のトミーだったが、その空気を読まない無鉄砲さにグレッグは興味を持ち、ふたりはスターになることを夢見てサンフランシスコからロサンゼルスへと向かう。なぜかトミーは無尽蔵に金を持っており、彼が所有するアパートに移ったふたりは役者稼業を始め、グレッグにはエージェントがつく一方でトミーには何の仕事もやってこなかった。業を煮やしたトミーは自分で映画を製作することを決心し、機材を一式購入して(レンタルでなく。しかも35ミリ&HDの機材両方)、自分は監督と出演を行い、グレッグにも出演させて撮影を開始するのだが、もとから才能のないトミーのおかげで現場は大混乱に陥り…というあらすじ。

簡単なセリフを覚えることができずに何十回もテイクを繰り返すようなトミーを演じるのがジェームズ・フランコで、そのクセのあるアクセント(be動詞がない)をはじめ、トミーの撮影現場での野人のような振舞いを体を張って熱演しています。ほかにもアリソン・ブリーやセス・ローゲン、シャーリーン・イー、ポール・シアー、ネイサン・フィルダー、ハニバル・バーレスといった人気コメディアンがいろいろ出ているほか、ジャド・アパトーやブライアン・クランストン、ザック・エフロン、シャロン・ストーンなどといった有名人がたくさんカメオ出演しているのが観ていて楽しいかも。

エンドクレジットでは実際の「THE ROOM」と今回の映画で再現したシーンの比較も披露されていて、どれも非常にそっくりに作られていて関心するのだが、これってやはり元ネタを知ってる人が、その再現ぶりを観てニヤニヤするたぐいの、内輪ネタを狙った作品だよねえ。例えば「エド・ウッド」では同じくダメ監督を扱っていても、主人公の映画製作に対する情熱が描かれていたものだが、こちらのトミーはひたすらセットで横柄に振舞うだけでキャラクターの内面が描かれていないのだもの。トミーは当然ながらまだ存命だし、ジェームズ・フランコは撮影中にいろいろ彼と話したらしいが、インタビューでも自分のことについてろくに語らず、怒ると電話を切ったりする人でもあるので、あまりパーソナルなことは聞き出せなかったんだろうか。

なお劇中では国籍と年齢が不詳とされるトミー・ワイゾーだが、その後の調査(?)で1955年にポーランドで生まれたことが判明しているらしい。しかし彼がなぜ潤沢な資金力を持ち、500万ドルともされる「THE ROOM」の製作費を賄うことができたのかは、今でも謎のままであるらしい。そこを追ったりしていれば面白い話になったろうになあ。

まあとにかく「THE ROOM」を先に観ていれば、これとはまた違った感想を抱いていたかもしれない。しかし今世紀最低と呼ばれる映画をわざわざ観る気には、どうもなれんのです。