リック・ウェイクマンの受賞スピーチ


「ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)」の受賞式典が昨夜ニューヨークで開催されたそうな。今回の受賞者はELOやイエスやジャーニーなど。ロックの殿堂って大衆受けする連中しか選出されないし、年寄りの同窓会という印象が強くてそれってロックじゃないよね、と個人的には思うのです。ましてやイエスみたいなプログレっておれあまり聴かないし、特にキーボードのリック・ウェイクマンってふんぞり返った大御所みたいなイメージがあって好きではなかったのですが、彼の受賞スピーチがなぜか下ネタ満載のスタンダップコメディのごとき内容になっていて大変面白かったので、例によって英語の勉強として訳してみる。原文はこちら。

このマイクもっと上にあがる?俺の人生そのまんまだな(笑い)。まあいいや。この受賞式に来ることができて幸せな理由は2つあります。1つはイエスのメンバーとしてロックの殿堂に入れてもらったことですね。もう1つは、言うべきではないかもしれませんが、この建物から半マイルもいかない場所で、私は意義のある性経験を初めてしたということです(笑い)。いやいや、そんなに良くなかったかな。

スティーブ・ハウが妻に感謝の言葉を述べたように、私も自分の妻に感謝します。残念ながら彼女はこの場にいません。今朝彼女のもとを離れたとき、彼女は昏睡状態でした。セックスはいつも通りでしたが洗濯物がたまってましたね。

イエスのメンバーに加えて、私は自分に大きな影響を与えてくれた父親に感謝します。彼も芸能界で働いてましてね。うちの家族はとても貧しかったんですが、彼はエルビスの物真似をやってました。1947年にはまったく需要がなかったのですが(笑い)。彼は多くのことを教えてくれました。私を座らせて、「いいか、安くて汚いストリップ小屋なんかに行くなよ。目にしたくもないものを見ることになるぞ」と教えてくれたので、もちろん私はストリップ小屋に行きました。そしたら親父がいるのを目にしたのです(笑い)。

イエスを招いてくれて、ロックの殿堂には大変感謝しています。実のところ(今日スピーチをする)3番目のバンドとなったのは幸運でした。年をとると前立腺が肥大してトイレが近くなってね。真面目な話、前立腺の検査がいかに重要かをお伝えしたいです。私も月曜日にやったばかりでね、女性たちは知らないでしょうがしんどいものですよ。胎児の姿勢になってね、ゴムの手袋をつける音がして、ホリネズミが体内を駆け上ってる感じがします。検査中に医者が言うんですよ。「恥ずかしがらなくていいですよウェイクマンさん、この状況で勃起するのは普通ですから」って。「でも先生、私は勃起してないですよ」と言ったら「知ってます。私がしてるんです」だって。

どうもありがとう!

んー日本語に訳すとパンチ力が弱まるかな。映像はこちら。後ろに誰かの娘らしい少女がいるんだがこんな下ネタ聞かせていいのか?

「BROCKMIRE」鑑賞


ハンク・アザリア主演のIFCの新シリーズ。元々はFunny or dieのために作られたキャラクターを主人公にしたもの。

ジミー・ブロックマイアはメジャーリーグの名物実況アナウンサーであり、その表現豊かな実況にはファンも多かった。しかしある日妻の浮気現場を目撃してしまったことから、やけになって酔っ払った彼は実況中に暴言を撒き散らす失態を犯し、さらにその釈明会見でも暴走したことで職を追われることになる。それから10年は海外を放浪していた彼だが、その会見の映像はyoutubeにアップされてカルト人気を誇っていた。そしてアメリカに戻った彼はマイナーリーグでの求人をうけて田舎町にやってくるが、そこの球場はボロボロで、彼の実況は地元のラジオにも流れず球場だけで流されるという境遇だった…というあらすじ。

アザリアといえばエメリッヒ版「ゴジラ」とか「HUFF〜ドクターは中年症候群」とかで日本でも知られた役者だが、やはり一番有名なのは「シンプソンズ」でアプーとかモーといった多数のキャラクターを演じ分けている声優としてなのですね。声帯模写でも非凡な才能を発揮している彼が、クセのある声を持った実況アナウンサー(声も格好も実在の有名アナウンサーを真似たらしい)を演じるというのは実に適役なのではないかと。

共演はマイナーリーグ球団のオーナーにアマンダ・ピート。一回ヘマをして挫折した男が田舎町で再起しようとするという展開は決して目新しいものではないし、今後の展開がどうなるのかいまいちわからない点はあるのだけど、早くもシーズン2の製作が決まったということなので、今後面白くなってくることに期待しましょう。

マッドネスのライブ


こないだレジデンツに行ったばかりですが、マッドネス来日と聞けば行かずにはおるまいと思って。80年代初頭にイギリスに住んでたときからのファンなのです。当時はPVの面白いコミックバンド的な存在だったけど、演奏は手堅いし歌詞も意外と真面目なバンドなのですよ。

場所は六本木のEXシアター。開演前のドリンク待ちの行列がやたら長いことと、ハイハットなどの高音が割れてるような印象を受けたかな。メンバーはいわゆる黄金期メンバー(チャズ・スマッシュだけ不在)とパーカッションにホーン3人。ドラマーがやけに若いように見えたけどオリジナルメンバーだったんですね。ボーカルのサッグスとサックスのリー・トンプソンにスポットライトが当たってる感じで、リーダー(?)のマイク・バーソンは後ろで黙々とキーボードを弾いていた。ベースのマーク・ベッドフォードも童顔だったけどさすがに老けたのう。

初っ端から新アルバムの曲をやったけど、大体3分の2くらいは再結成前の曲だったかな?「House of Fun」「It Must Be Love」「Embarrassment」などなど、ヒット曲のオンパレード。久しぶりに演奏したという「Cardiac Arrest」もあったし、「Wings of a Dove」も女性コーラス抜きだけど結構良かった。やはり客が盛り上がるのは「Our House」あたりで、途中の「あ〜あ〜あ〜あ〜」というコーラスも大合唱。マッドネスと聞けば日本人の多くが連想するであろう「In The City」(CMソングだったのよ)は意外にも演奏せず。おれは「Bed and Breakfast Man」が好きなんだけどあれも演奏なかったな。

最後は「Madness」と「Night Boat To Cairo」で締め。若い頃は懐メロだらけのライブってなんか軽蔑してたけど、年とってくるとそうも言ってらんないすね。30年以上ファンのバンドのライブが拝めて満足でございました。

「レゴバットマン ザ・ムービー」鑑賞


ADHDの人向けに作られてるかのごとく、カラフルな画面と怒濤の如きギャグの展開に圧倒されますが、かなり楽しめる作品。

前作の「LEGO ムービー」、いや失礼、「LEGO® ムービー」は後半の意外なメタな展開におおっ!となった秀作でしたが、こっちは映画のクレジットとかにメタなツッコミが入ったりはするものの、基本的にはバットマンの世界に話を置いている。コメディ映画なんだけどバットマンの孤独さに焦点をあて、彼にはなぜロビン(とその他の仲間)が必要なのか?という点をうまく解説した作品でありました。なんでバットマンのコスチュームに比べてロビンのものはあんなに派手なのか?というのはコミックでもきちんと説明されてない案件なのだが、それも冗談半分ながらうまく分析してましたね。

サイコなバットマンとパッパラパーなロビンの組み合わせという点では、かの悪名高き「All Star Batman & Robin, the Boy Wonder」を彷彿とさせましたが、当然ながらあそこまでダークではなく、映画やテレビ版を含めたバットマンのフランチャイズの歴史に敬意を払った内容になっている。カイトマンとかカレンダーマンといったマイナーなキャラクターが動く姿なんて拝めるとは思ってなかったですよ。ジェントルマン・ゴーストってバットマンのヴィランじゃないだろうとか、ブラック・バルカンとかワンダーツインズってジャスティス・リーグにいないだろうとかツッコミながら観るのもアメコミファンの冥利につきますな。エンドクレジットでも多数のアメコミのクリエーターたちの名前が挙げられてましたよ。

さらに今回の悪役はバットマンの伝統的なヴィランではなく(除くジョーカー)、フランチャイズの枠を超えた悪役大集合!ワーナーが版権持ってるキャラクターだけかなと思ったらジョーズも出てくるし、イギリスからは「ドクター・フー」のダーレクまで登場する大盤振る舞い!デカい恐竜はゴジラかと思ってたら「タイタンの戦い」のクラーケンだったか。

字幕版で観たがバットマンの声優は前作に続いてウィル・アーネットで、ケビン・コンロイでないのは仕方ないのかもしれんね。ロビンの声がマイケル・セラなので「アレステッド・ディベロップメント」のカナダ人ふたりの共演になっている。ザック・ガリフィアナキスがジョーカーの声をやってるのだけど、ちょっとサイコっぽさがなくて残念。ここはやはりマーク・ハミルにやらせてもよかったのでは。

バットマンのことを知ってればとても楽しめるし、そうでなくても普通に楽しめる作品。世界中で大ヒットしたようだし、アメコミ映画だからといってMCUやDCUといった狭いコンティニュイティに制限せず、こういうコメディ作品も作ったほうがコミックの柔軟性を示せて良いのではないかと思うのです。

「ハクソー・リッジ」鑑賞


良心的兵役拒否者でありながらも第二次世界大戦に参戦し、沖縄の激戦で多くの人命を救った衛生兵デスモンド・ドスの活躍を描いた、メル・ギブソンの久々の監督作品。以下ネタバレ注意。

内容はおおまかに3つのパートに分かれていて、前半は敬虔なセブンスデー・アドベンチスト教会の信者として育ったデスモンドが、信仰上の理由から人を殺めることを拒否し、家庭内での暴力を目撃した経験から銃を持つことまで拒みつつも、戦場で戦う人々のために貢献したいという思いから陸軍へ入隊志願する姿が描かれる。

銃を扱わないばかりかベジタリアンで肉を食べず、安息日は訓練をしないデスモンドは当然ながら上官や同僚に疎まれるわけで、トイレ掃除を命じられ、同僚たちにはリンチをくらう次第。でもね、これが旧日本軍だったら上官に体罰をくらって恐らく廃人になってますよ。というわけで日本人から見ると彼が受けてる仕打ちは意外と生ぬるかったりする。ついに彼の態度が問題視されて軍法会議にかけられるのだが、デスモンドの父親の尽力もあって彼は除隊を命じられず、銃を持たぬまま戦場へ赴くことを許される。こういうのがアメリカ軍の余裕ですかね。なおデスモンドの父親は第一次大戦でPTSDになって飲んだくれで息子たちに暴力を振るってたらしいのだが、その一方でこうして息子を助けたりしてて、あまり怖いという印象は受けず。つうか前半の演出はTVムービー並みのクオリティで主人公の葛藤もあまり表されておらず、凡庸な出来であったよ。

それが後半になって沖縄の戦場に場面が移ってからは俄然と話が面白くなる。日本軍が死守する前田高知の絶壁ことハクソー・リッジを陥落させるためにアメリカ軍が崖をよじ登り、上にいる日本兵と肉弾戦を繰り広げていく。戦場の描写は凄惨で、撃たれた兵士が単に倒れるようなものではなく、当たった銃弾はすべて体を貫通して血を撒き散らし、掃射を受けた兵士の肉と骨が避け、死体の臓物が飛びちってグロ描写が満載。ここらへんは反戦のメッセージというよりも監督の趣味なんだろうなあ。なお肝心のデスモンドは銃が撃てないのであんまり活躍せず、負傷した兵士を介抱している程度。

そして最後のパートでは戦闘が一段落したあとで、戦場に残された負傷兵をデスモンドが単身救出していくさまが描かれる。日本兵の目をかいくぐって一人また一人と兵を運び、崖の下へと降ろしていく。ここが一番の見所で、主人公の献身がよく分かるようになっているわけですね。最終的には75人以上の兵士をデスモンドは救出したという。

なお戦後のデスモンドは戦時中に罹患した結核のために片肺と肋骨5本を失い、抗生物質の過剰投与で聴覚を失い、働けない彼にかわって看護婦の妻が家計を支え、それで2006年まで生きていたという波乱の人生を送ったらしいが、そこらへんは映画では描かれてません。

また気になる日本軍の扱いだが、日本兵同士が会話するようなシーンは全くなし。ゾンビのごとく死を恐れずにわらわらと襲いかかってくる、強大で不気味な存在になっている。まあ切腹とか特攻のようなシーンもあるのだが、あまり気になる描写はなかったかな。こういうのを見て反日と騒ぐ人は、何にでも騒ぐのでしょう。

デスモンドを演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。相変わらずフニャフニャした話し方だが純朴な主人公の役には合っている。「沈黙」では同じく日本で神が何も答えてくれないことに苦悶していた彼だが、こちらでは神に一方的に語りかけてひたすら行動!「あと一人だけ助けさせてください」とか言いつつ何十人も人を助けてます。

彼をしごく上官にヴィンス・ヴォーン。銃が大好きなコテコテの右翼らしいので、鬼軍人の役は板についてます。もう一人の上官を演じるのがサム・ウォーシントン。相変わらず特徴がないというか、無味乾燥な役者で…。あとは主人公の父親をヒューゴー・ウィービングが演じてたりします。アメリカ軍の映画なのに監督がオーストラリア人で、アメリカ人のキャストが少ないな。

反戦映画というには血湧き肉躍る戦闘描写が満載で、単にメルギブが戦争映画撮りたかっただけじゃないの?とも思うけれど、戦闘シーンの迫力は凄いし、こういう人が日本の相手国にいたんだよ、というのを知るのには良い映画かと。