上映中なので感想を簡潔に。いちおうネタバレ注意。

・前作は宇宙のならず者たちが違いや偏見を超えて結束していき、官僚主義のノヴァ・コーズにも頼りにされるという展開が痛快だったが、今回はすでにチームが出来上がっているので、じゃあ今回のテーマは何かというと「家族」である。スターロードことピーター・クイルの父親が登場し、ガモラとネビュラの姉妹の葛藤とかが描かれていく。

・そのなかで登場人物たちの過去が説明されていくわけだが、前作に比べて主人公たちに切羽詰まった危機感がないので、特に中盤は間延びした印象を受けたかな。主人公が「ここで幸せに暮らせるぞ!」と言われてもそんな展開になりっこないことは観客には分かってるわけで、もっと話に緊迫感をもたせても良かったんじゃないの。

・エゴやマンティスといった新しいキャラクターが登場するほか、ネビュラが主人公たちを行動を共にするので登場人物が増えているのだけど、話が雑多になるのを防ぐために彼らを二手に分けてしまうわけですね。そこで片方は視察、片方はお留守番と別々の目的を与えたので、そこで話のスピードがガクンと落ちてしまう。例えば「スター・トレック BEYOND」もチームを複数に分けてたけど、あれは宇宙船が不時着してお互いを探すという目的が共通していたわけで。主人公たちを追いかけているはずの敵(金ピカのほう)もさほど脅威的に見えないし。

・まあでも不満があったのはこの話のペースだけで、アクションも台詞回しも軽快だし、深く考えずに見る分には非常に楽しめる作品じゃないですか。80年代のポップカルチャーの知識が少し求められるけど。「チアーズ」を知らない人に説明するとね、サムとダイアンの恋愛プロットが解決したら人気がグッと下がったのですよ。

・しかしスターロード、ヘルメットあれば宇宙服いらないんじゃなかったっけ?

・ちなみにエゴの話って、「スターマン」に似てない?そうなると演じるのはカート・ラッセルよりもジェフ・ブリッジスのほうが良かっただろうが、あっちは「アイアンマン」に出てしまってるからなあ。


いわゆる密室型のホラーで、原題は「The Autopsy of Jane Doe」。5月20日から日本公開。以降はネタバレ注意。

小さな街の一軒家において住人が惨殺されるという不可解な事件が起き、さらには地下室から地面に埋まった形で全裸の若き女性の死体が発見される。この女性の死因を調べるために、死体は親子で検視医を営むトミーとオースティンのもとに運ばれ、身元不明の遺体につけられる「ジェーン・ドウ」の名前で呼ばれることになる。ジェーン・ドウの体は死亡してから時間が経っている兆候がある一方で、死後硬直などが起きておらず、その奇妙さに頭をひねるトミーとオースティン。さらに解剖を進めるうちに謎めいた痕跡をいくつも発見する二人だったが、それにあわせて彼らの周囲にも不気味な現象が起き始め…というあらすじ。

スプラッター系というよりも心理的なホラーだが、題名のごとく死体がザクザク切り刻まれて解剖されていく内容なので当然ながら血みどろの描写が多く、そういうのが苦手な人は気をつけましょうね。外見上は傷のない遺体を解剖するうちに数々の謎が浮かび上がってくる、という展開は『CSI:科学捜査班』とか『羊たちの沈黙』みたいなサスペンスではお馴染みの展開かもしれないが、それをホラーに結びつけた点が目新しいかな。

ざっくり話を分けると、前半は解剖を進めるうちになんかヤバい雰囲気がだんだんと高まっていき、後半はその結果が起きる、どちらかといえばアクション多めの展開になっている。よってホラーとしては前半のほうが優れているだろう。もっと登場人物が多い話であれば謎について肯定派と否定派の見解が対立して観客をうまくケムにまくことができたかもしれないが、こちらは出てくるのが二人だけなので、「なんかヤバいよね」から「逃げるぞ!」までの流れがやけにスムースなのが気になったかな。まあ作品の出来を下げるようなものではないですが。

検視医のうち親父のトミーを演じるのがブライアン・コックス。当初はマーティン・シーンが演じる予定だったもののスケジュールの都合でコックスになったそうだが、シーンにはホラーが似合わない気がするので、コックスのほうが適役だったと思う。そして息子のオースティン役にエミール・ハーシュ。彼ってこないだ暴力沙汰を起こしたのでハリウッドを干されるかなと思っていたら、今後も出演作が続くそうで、まあ良かったんじゃないですかね。あとは死体のジェーン・ドウ役を、オルェン・ケリーという女優さんががんばって演じています。なんか次作も昏睡状態の女性の役をやるみたいで…?

観ていてサスペンスの盛り上げ方が大変怖い映画でございました。おれあまりホラーは観ないけど、ホラーとしては今年のベスト級に入る作品ではないでしょうか。


ジム・ジャームッシュの新作。日本では「パターソン」の邦題で8月公開かな?

舞台となるのはニュージャージーのパターソンという街。主人公のパターソン(街の名前と同じだね、というツッコミが劇中でも入る)はバスの運転手をして暮らしており、毎朝早く起きてバスを運転し、夕食には妻と愛犬の待つ自宅へ帰る、という生活を繰り返していた。そんな彼の隠れた情熱は詩を書くことで、同じくパターソンに住んでいた詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズに憧れながら、自分が目にして経験する物事について詩をノートに綴っていくのだった…というあらすじ。

ジャームッシュの前作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」はファンタジーというかサスペンス性が強い内容だったが、こちらは一転して日常系の物語。パターソンの月曜から日曜までの1週間を切り出し、彼の淡々とした生活を描いている。事件というかトラブルも発生するものの、あまり影響が出ずにそのまま人生が続いていく感じ。あとは乗客の会話に耳を傾ける運転手、という点では「ナイト・オンザ・プラネット」に通じるものがあるかな。

主人公のパターソンは暇さえあれば詩を綴っている人物だが、アーティスト気取りのようなところは一切なく、詩人かと聞かれても否定するほど。むしろケーキ作りやインテリアやギターに興味が移りまくる彼の妻のローラのほうが、いわゆる意識の高い人にように振舞っているかな。

パターソンを演じるのはアダム・ドライバー。やはり「スター・ウォーズ」なんかよりもこういう一般人の役のほうが似合うよね。彼が書く詩はジャームッシュの好きな詩人が提供したものらしいが、撮影にあたってちゃんとバスの運転手の資格を取得したというのは流石だなと。あとは「ミステリー・トレイン」にも出演してた永瀬正敏がちょっと登場してます。

内容が内容だけにナレーション形式で詩がたくさん詠まれていて、これ日本語に訳すの大変そうだなと思っていたら「詩を訳すのは雨具を着てシャワーを浴びるようなものです」という身も蓋もないセリフが出てきておりました。まあそれでも訳さないといけないわけですが。

あまりにも淡々としすぎていて、アメリカで非常に高い評価を得ているのがちょっとよく分からないのだけど、ごく普通の人々が持つアート心への賛歌、という点が受けてるのでしょう。悪くはない作品。


前作は劇場で2回観て、原作もクッソ読みづらい原書で読んだし(「ポルノ」は読んでない)、舞台版も見に行った。それくらい思い入れのある映画であったので、果たしてこの続編が期待に応えることができるかについてはそれなりの不安を抱いていたわけですね。海外での評判もいまいちだったようだし。

んで結論から言いますと、十分に楽しめる良作であった。もちろん前作ほどのキレというか疾走感は無いよ。あちらはボンクラがカタギの生活をしようと努力するエネルギーに満ちていたのに対し、こちらは中年にさしかかって人生の壁にぶつかった男たちが右往左往する話なのだから。でもそれが自分のような主役たちと同い年の者にとっては非常に親身に感じられるわけですね。公開週なのに劇場ガラガラだったけど、これもっと若い人が観たらどう感じるだろう。

20年の時を経て、登場人物も役者たちもみんな年をとっている。ユアン・マクレガーこそ未だに童顔であるものの、他の人物たちは髪が薄くなったり、丸っこい体型になっていた。30代でホグワーツの女学生を演じていたシャーリー・ヘンダーソンも(前作に出てないけど)さすがに老けてきている。そして彼らは結婚したり子供をつくったりしている一方で真っ当な大人になれず、家族への責任も抱けないわけだが、ベグビーに妻子がいる設定はちょっとズルいと思いましたよ。

そんな彼らが金儲けの話よりも夢中になれるのが「昔話」であり、過去の写真や逸話を壁に貼りながら、以前の武勇伝を語り合うときだけ、彼らの目は輝いている。(ここの部分はちょっと感情移入できなかったかな。自分が子供だったときの写真とか見て楽しいか?)

そして彼らは結局のところ怪しい金儲けに手を出すわけだが、スコットランドの経済状況や政治状況をうまく反映させてるのが面白かったな。親英派の集会とか。そして彼らを待ち受ける、ほろい苦い終わり方もまた良かった。

ダニー・ボイルの映像と音楽は相変わらず美しくて無駄がない。いつも彼の映画を通して(自分にとって)新しいミュージシャンを知るのですが(「トランス」のエミリー・サンデーとか)、今回はウルフ・アリスとかヤング・ファーザーズなどがめっけものでした。前作の映像と音楽も効果的に組み込まれてましたね。

一人くらいはカタギになってオフィスで働いているものの、安い給料で暮らしがしんどく、老いた親の介護でろくに結婚もできないような設定になっててもいいんじゃないの、とも思ったけどそれって日本的な発想なんだろうか。何にせよここ20年が何もなかったような設定の続編が多いなかで(インデペンデンス・デイとかX-ファイルとか)、時が経ったことを直視し、登場人物のその後をきっちり描いたことで、意義のある「続編映画」になっていたところに、この映画の大きな価値があるのでしょう。


ADHDの人向けに作られてるかのごとく、カラフルな画面と怒濤の如きギャグの展開に圧倒されますが、かなり楽しめる作品。

前作の「LEGO ムービー」、いや失礼、「LEGO® ムービー」は後半の意外なメタな展開におおっ!となった秀作でしたが、こっちは映画のクレジットとかにメタなツッコミが入ったりはするものの、基本的にはバットマンの世界に話を置いている。コメディ映画なんだけどバットマンの孤独さに焦点をあて、彼にはなぜロビン(とその他の仲間)が必要なのか?という点をうまく解説した作品でありました。なんでバットマンのコスチュームに比べてロビンのものはあんなに派手なのか?というのはコミックでもきちんと説明されてない案件なのだが、それも冗談半分ながらうまく分析してましたね。

サイコなバットマンとパッパラパーなロビンの組み合わせという点では、かの悪名高き「All Star Batman & Robin, the Boy Wonder」を彷彿とさせましたが、当然ながらあそこまでダークではなく、映画やテレビ版を含めたバットマンのフランチャイズの歴史に敬意を払った内容になっている。カイトマンとかカレンダーマンといったマイナーなキャラクターが動く姿なんて拝めるとは思ってなかったですよ。ジェントルマン・ゴーストってバットマンのヴィランじゃないだろうとか、ブラック・バルカンとかワンダーツインズってジャスティス・リーグにいないだろうとかツッコミながら観るのもアメコミファンの冥利につきますな。エンドクレジットでも多数のアメコミのクリエーターたちの名前が挙げられてましたよ。

さらに今回の悪役はバットマンの伝統的なヴィランではなく(除くジョーカー)、フランチャイズの枠を超えた悪役大集合!ワーナーが版権持ってるキャラクターだけかなと思ったらジョーズも出てくるし、イギリスからは「ドクター・フー」のダーレクまで登場する大盤振る舞い!デカい恐竜はゴジラかと思ってたら「タイタンの戦い」のクラーケンだったか。

字幕版で観たがバットマンの声優は前作に続いてウィル・アーネットで、ケビン・コンロイでないのは仕方ないのかもしれんね。ロビンの声がマイケル・セラなので「アレステッド・ディベロップメント」のカナダ人ふたりの共演になっている。ザック・ガリフィアナキスがジョーカーの声をやってるのだけど、ちょっとサイコっぽさがなくて残念。ここはやはりマーク・ハミルにやらせてもよかったのでは。

バットマンのことを知ってればとても楽しめるし、そうでなくても普通に楽しめる作品。世界中で大ヒットしたようだし、アメコミ映画だからといってMCUやDCUといった狭いコンティニュイティに制限せず、こういうコメディ作品も作ったほうがコミックの柔軟性を示せて良いのではないかと思うのです。