公開されたばかりなので感想をざっと。以降はネタバレ注意。

・どんどん年をとってる主役が体を張ったアクションを披露するのが売りになってきたあたり、ジャッキー・チェンの一連の作品と同じようなノリになってきた感がある。スタントなしでアクションに挑むトム君はすごいものの、ジャッキーの時代と違って「これグリーンスクリーン使って撮影してるんじゃね?」とふと思ってしまうのが損なところである。

・んで観客はそのトム君のアクションを期待して観に来ているわけで、複雑なプロットとかいらないと思うのだがなあ。俺が年取っただけなのかもしれませんが、誰がラークで、ソロモン・レーンとどう関わってて、ホワイト・ウィドウはどういう役割なんだっけ、と30分くらいしたら分からなくなってました。

・誰が裏切り者かはっきり分かるシーンを前に出しておきながら、トム君に容疑がかけられるシーンに時間をかけるのも蛇足だろう。クリストファー・マッカリーって脚本家出身のせいかなんか話が回りくどいのよな。実際に起きないシーンを夢オチで描くのも邪道では。

・今回は珍しく違っていたものの、このシリーズって悪役の印象が弱いので、ソロモン・レーンが前作に出ていたことをすっかり忘れておりました。あなた誰だっけ?という感じで。長らく主人公のロマンス要素を阻害していたヒロインの問題も、いちおう今回で解決したことになるのかな?あれ見ると前作の設定を引きずらずに、新作ごとにヒロインを替えている007シリーズの割り切り方のメリットがよく分かりますね。

・キャストはまあ前作と大半が一緒だが、いまいち活躍してなかったジェレミ・レナーが去り、ヘンリー・カヴィルが強い相手役として加わったのが良いアクセントになっているかと。「ジャスティス・リーグ」では大金かけてCG処理してヒゲを取り除いてましたが、同じシーンでヒゲの長さが変わっているのを観ると、こっちをCG処理すれば良かったんじゃね?と思うのです。

・観ていていちばん気になったのが、映像にレンズフレアがやたら多用されてることで、映画館のスクリーンに不備があるのかと一瞬思いましたよ。セリフを話している人の顔にも平気で光のモヤモヤがかかってるのが目障りでして。これプロデューサーのJJエイブラムスが自分の撮影監督を送り込んできたのかと思ったが、撮影したロブ・ハーディって「エクスマキナ」の人だったのか。あちらではすごく美しいショットを撮っていたのに、なんでこっちではモヤモヤとした映像になったのだろう。

体を張ったアクション・シーンは見応えがあるし、手に汗握る展開も多いのでチケット代ぶんの価値は十分にある作品であるのですよ。ただもうちょっと簡潔な内容にしても良かったんじゃないかと。特に「インクレディブル・ファミリー」のスパっとしたアクション展開とプロットを観たあとでは、ブラッド・バードが監督した「ゴースト・プロトコル」の域には達していないな、と思わざるを得ないのです。


ジョー・ケリー(ストーリー)とケン・ニイムラ(アート)によるイメージ・コミックスの同名作品(邦訳あり)を映画化したもの。ジョー・ケリーって90年台半ばにマーベルが破産申請でゴタゴタしてるときに作品をあれこれ執筆してた人で、なんかマーベルのイエスマンという印象があってそんなに好きではないのですが(これ偏見だろうし、デッドプールのキャラ設定に大きな貢献をしたんだろうけど)、この作品は彼のクリエイターオウンド作品で、彼の代表作といっていいんじゃないでしょうか。

小さな海辺の町に住むバーバラは、いつか町を巨人が襲ってくると信じ、彼らを撃退する罠の準備に専念している不思議な女の子。その町に引っ越してきた少女ソフィアや、学校のモレー先生などは彼女と仲良くしようとするものの、バーバラはなかなかうち解けようとしない。学校でも家庭でも孤立していくバーバラだったが、その一方で彼女のみなす「巨人の前兆」は増えていき…というあらすじ。

脚本をケリー自身が手がけているので、原作に忠実な映画化ということになるのかな。ただし眼鏡っ娘でウサギ耳をつけたバーバラは原作だともっと芯の強いタイプに描かれていたし、
ソフィアもミッドティーンくらいの少女だったけど、映画版ではバーバラはもっとファンタジー少女っぽくて、ソフィアはもっと幼い感じになっている。これ製作をクリス・コロンバスがやっていて、「ハリー・ポッター」みたいなお子様ファンタジーにしたかったのかなあ。

ただね、全体的に話がまどろっこしいのよ。周囲の善意にもかかわらずバーバラがウジウジしている描写がずっと続いて、肝心の巨人との対決についても何か拍子抜けでスッキリせず。原作の勢いがないというか、話のメリハリに欠けるのよ。最後で明らかにされるバーバラが心の葛藤を抱えている理由についても、もっと伏線を貼っといてよかったんじゃないかとか、彼女にとって巨人を倒すということは何なのかとか、もうちょっと深く描いていれば面白い作品になったと思うのだがなあ。監督のアンダース・ウォルターってこれが長編デビュー作らしく、なんか力量不足だなという感は否めない。

バーバラを演じるのはマディソン・ウルフ。ほかにイモジェン・プーツとか、ゾーイ・サルダナなど。撮影時15歳だったウルフをはじめ、役者の演技はそんなに悪くない。なんか疲れてる学校の先生役にソーイ・サルダナは似合うなあと。あと一瞬だけノエル・クラークが出ています。

もっと主人公の内面に迫った話にしていれば、いろいろ改善されたはずなのがちょっと残念な作品。


最近いちばん劇場で目にしている(ハン・ソロ、猿の惑星、スリー・ビルボードetc.)気がする役者であるウディ・ハレルソンの初監督作品。といっても舞台の演出に近いのかな。ロンドンを舞台にハレルソン本人がさまざまな不遇に見舞われ四苦八苦するさまがリアルタイムで撮影され、それが「生放送で」イギリスの映画館において上映されるという、一緒のライブビューイング的な鑑賞が行われた作品なんだそうな。いちおう世界初の試みだそうで。

ハレルソンが以前にロンドンのタクシーの灰皿を壊したために警察に追われることになった実体験を脚色したもので、ハレルソンが本人自身を演じている。舞台出演のために家族を連れてロンドンに来ていたハレルソンだったが、前夜に3人の女性と乱痴気騒ぎをやらかしたことがパパラッチされてしまい、それを知った妻は当然ながら激怒。ホテルに戻る前に頭を冷やすよう命じられる。仕方なしに時間を潰す羽目になった彼はイランの王子たちに遭遇し、彼らに連れられてナイトクラブへ向かう。そこでは旧友のオーウェン・ウィルソン(これも本人)に出会うものの、ささいなことから喧嘩となってしまう。さらにハレルソンの災難は続き、しまいには警察に追われて収監されてしまうことに…というストーリー。

ハレルソンは実物よりも(たぶん)もっとB級セレブ的な扱いをされていて、殆どの人が彼のことを知らないか、90年代の作品を覚えている程度。役者が本人を自虐的に演じるパターンですね。オーウェン・ウィルソンとの会話もウェス・アンダーソンの映画とかに関する楽屋オチっぽいものになっていて、そういうのあまり好きではないけどまあ役者ふたりが本人同士を演じるとそういう内容になるのでしょう。ハレルソンとウィルソン以外はそんなに有名な役者は出ていないが、U2のボノ(とその奥さん)が電話越しに声だけカメオ出演しているほか、終盤になってなぜかウィリー・ネルソンが登場していた。ウィリー・ネルソンとハレルソンといったら、一緒にマリファナをキメてハイになる展開でしょ、と思ったらそうでもなかったな。

ウディ・ハレルソンってそのテキサス訛りのせいか、あまり演技に幅のある役者だとは思ってなかったけど、これを観ると体を張った多様な演技ができる人だな、というのが良く分かる。一発撮り作品としては「ヴィクトリア」よりも手が込んでいるんじゃないかな、これ?車の運転手と会話しながらも移動するシーンが2回くらいあるんだが、あれ役者が本当に運転しながら移動したのだろうか?ハレルソンが車に追いかけられるシーンとか、よく一発で撮れたなと感心するところもいろいろありました(自分が観たバージョンは、生放送されたものに多少の編集が加えられてるかもしれないが)。

まあ一発撮り作品の欠点として、カットすればいいような場面もカットされておらず全体的にテンポが悪いし、単なるギミック映画と言ってしまえばそれまでなのだが、ハレルソン渾身の演技もあって以外と楽しめた1本でした。


公開されたばかりなので感想をざっと。ロン・ハワードが8割くらい撮り直したらしいので、ミラー&ロード版だったらどうなってたか、と論じるのは野暮でしょ。以降はネタバレ注意。

・前に「ローグ・ワン」もそうだったし、SW映画なのにオープニングのテキストクロールがないとか、画面のワイプがないことに不平を言うつもりはない。しかし前半ずっと画面が暗かったのは何なんだろう。戦場のシーンとか列車強盗のシーンとか、リアリズムを出すつもりならそれは失敗していると思うし、誰もSW映画にそんなものは求めてないと思うのだがなあ。後半になって明るくなったからよしとするが。

・現在進行形であるエピソード7〜8が、古参の俳優が枯渇していっているためにフランチャイズを方向展開していってジェダイやフォースなどから離れて行っているのに対し、こちらはプリクエルとして別の俳優を起用して過去の伏線回収というかプロットの補足をバンバン行えるわけで、まあオールドファンを喜ばせられる強みはあるわな。

・個人的には「ケッセルランを12パーセク」はソロがでっちあげたホラ話であってほしかったけど。観客の想像に委ねればいいことをいちいち余計に補填してくれるのが、SWプリクエルの大きなお世話ですな。

・全体の4分の1を脱出ポッド(しかも進行方向にある)が占める宇宙船って何だよ。

・ハリソン・フォードは演技が下手ながらも「不敵にニヤッと笑う」ことだけは完璧にできてた人なので、それに比べるとオールデン・エアエンライクはまだその域に達してないかな。若き頃の姿とはいえ、なんかディズニー化されているというかいい人すぎる設定なのよな。ファンの間で論議を呼んだ「先撃ち」をやったのは良かったけど。

・エミリア・クラークはなんかぷにぷにしていて、最初から貧困感がなかったような。ドナルド・グローバー演じるランド・カルリジアンよりもベスピンのヘッドセットの人の登場を期待してたのですが、出てこなかったですね。

・最後の赤い人の登場、今作が「エピソード1」よりも後の話であることを忘れていたよ。なんかスピンオフのために無理して伏線張ってるような気もするが。彼の声がアニメ版と同じになっていることも含め、アニメシリーズへの言及がずいぶん多いようですね。

前述したようにオールドファンを喜ばせるという仕事はしていて、可もなく不可もない作品といったところか。工業的にこけたことで、今後のスピンオフ展開もいろいろ見直しが入ってくるんだろうが、変なテコ入れがはいってこないことを願うばかりです。


ダコタ・ファニング主演のインディペンデント系映画。日本では9月に「500ページの夢の束」という邦題で公開予定。キノフィルムズ、作品をいろいろ買うのはいいのだけど日本公開がいろいろ遅いと思うの。以降はネタバレ注意。

ウェンディは自閉症の女の子で、オークランドの施設に暮らしていた。簡単なバイトとかはできるものの人とのコミュニケーションが苦手で、感情が高まったりするので姉の赤ん坊にも合わせてもらえない状況。そんな彼女が大好きなのは宇宙大作戦こと「スター・トレック」で、オリジナル・シリーズはおろかスピンオフ・シリーズのキャラクターなどを熟知し、周囲のオタクどもからも一目置かれる少女であった。そんな彼女はパラマウント・ピクチャーズがスター・トレックの脚本コンテストを開催していることを知り、自分が手塩にかけた500ページもの脚本を送ろうとするものの、最後の最後までこだわったために郵送できる締め切りを過ぎてしまい、仕方なく彼女はパラマウントまで脚本を手渡しに行こうと、周囲の誰にも告げずに人生初の長旅に出るのだったが…というあらすじ。

感情の表現がうまくできないスポックとウェンディを重ね合わせるセリフがあったり、コミュニケーションが下手な彼女がクリンゴン語を使って会話するシーンなどがあるものの、スター・トレックはそんなに大きなテーマとして扱われているわけではない。そもそもスター・トレックって一般人から脚本を受け付けているほぼ唯一のTVドラマであることは有名で、なんで脚本コンテストなんかやるの?と思うのだが、CBSでなくパラマウント・ピクチャーズ主催なので映画版の脚本なのだろうか。でもウェンディの脚本って「スポックがディープ・スペース・ナインに赴いてウォーフの助力を請う」なんていうファンフィクションまがいの内容のようで、それって映画化するのかなり難しいのでは。そもそも500ページの脚本(つまり約500分の内容)なんてハリウッドで誰も読まないだろ、とは思うものの、まあそこらへんに愚痴を言っても仕方ないか。あと脚本をメールで送ればすべて解決したんじゃね?と思いたくなるが、いちおう投稿の規定は「印刷されたものを郵送」だそうな。あとパラマウントのオフィスにあんな簡単に入り込んだりできないからね!

内容は比較的凡庸なロードムービーだが、主人公がバスから降ろされたり、道中出会ったカップルに財布とられたり、乗った車が事故ったりと、いろいろ災難がてんこ盛りでなんかお腹いっぱい。施設から消えたウェンディを探して彼女の姉や施設の管理人も心配して苦労するわけでが、周囲に迷惑をかけていることを主人公が認識していないために、観ていてなんかモヤモヤするところがあったよ。いちおうコンテストの優勝賞金をゲットすれば姉に迷惑をかけずにすむ、という目的をウェンディは抱いているのだが、自閉症という設定にしたことで逆に彼女の決心が曖昧なものになっていたような。もっと普通の内気な女の子を主人公にしても良かったんじゃないの。そのほうが、自分の抱える問題に向き合って解決しようとする彼女の行いがもっとスッキリ描けたと思うのだが。

ダコタ・ファニングは例によってFull Retardにならない自閉症者の演技をしていて、まあ型にはまっているといえばはまっている。彼女を施設で面倒みているのがトニ・コレットで、彼女の姉を演じるのがアリス・イブ。ご存知のようにアリス・イブって「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に出演してるので、そこらへん何かメタな展開があるかなと期待してたけど何もなかった。この映画、スター・トレックを題材にしている割には、あまりトレッキーが喜ぶネタがないのが寂しいところである。パットン・オズワルド演じる、クリンゴン語を話す警官なんてのは出てきてたけど。

まあ凡作。