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Archive for the ‘映画評’ category

「CHRONICLE」鑑賞

May 20th, 2012


ジョン・ランディスの息子が脚本を書いた低予算SF映画。以後ネタバレ注意。

アンドリューは暴力をふるう父と病弱な母をもったひ弱な少年で、学校でも周囲にバカにされていじめられ、ビデオカメラでそんな日常を撮影することだけに生きがいを感じていた。ある日彼は従兄弟のアレックスに連れられて行ったパーティー会場の外で、地面の奥深くにまで空いた謎の穴を発見し、アレックスおよび同級生のスティーブと穴の奥まで行った彼は青く光る奇妙な物体を見つけるが、そのあとの記憶を失ってしまう。気付くとアンドリューたち3人は穴の外におり、自分たちがテレキネシス(念動能力)を身につけたことを知る。最初はこの能力をイタズラ程度で使っていた3人だったが、やがてその力の使い方をマスターするうちに彼らの行動はエスカレートしていき…というようなストーリー。

アンドリューのビデオカメラの映像記録、といういわゆる「ファウンド・フッテージ」のスタイルがとられており、個人的にこのスタイルってあまり好きではないんだけど、別のカメラの映像を混ぜ合わせたり、カメラを念力で宙に浮かせることで第3者の視点のようにさせる手法は巧みだったな。

アレックスがあまり意味もなく哲学を語ったり、登場人物の1人が話の途中でいなくなってしまうあたりは脚本が弱冠拙いような気もしたけど、尺が短いこともあり、あまり中だるみせずに最後のクライマックスまで話をぐいぐい引っ張っている。能力を使ってせっかく学校の人気者になれたのに、初エッチに失敗して暴走するアンドリューの不憫さが涙をさそうぞ。

南アフリカで撮影したり、デビッド・ボウイの曲を使ったりとそれなりに金はかけてるみたいだけど、それでも予算は1200万ドルくらいなので低予算の部類に入るよな。しかし特殊効果の映像は大作映画に匹敵するくらいの出来で、特にラストの超能力バトルは迫力があって大変素晴らしい。怪獣パニック映画が好きな人はとても楽しめるんじゃないでしょうか。なお出演者は比較的無名の若手俳優が大半だけど、スティーブ役を「ザ・ワイヤー」のマイケル・B・ジョーダンが演じている。彼はあの若さで優れた作品に次々と出演してるので、これからもっと活躍していくでしょう。

あまり期待せずに観たら意外なくらいに面白かった作品。「アタック・ザ・ブロック」が好きな人に薦めたいな。世界中で大ヒットしたために早くも続編の製作が決まってるらしいけど、これ話が続けられるのかね?「ファウンド・フッテージ」ものの続編ってみんな蛇足になって失敗してる印象があるので少し不安ではある。

下着姿の女の子のシーンはカットされてた。チェッ。

「BRONSON」鑑賞

May 14th, 2012


こないだの「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフンがその1つ前に監督した作品。

実在の人物で「イギリスで最も凶暴な囚人」といて知られるマイケル・ピーターソンの半生を描いたもの。子供の頃から悪ガキだったマイケルは教師や警官にも平気でたてつき、結婚してからも悪さを繰り返してついには郵便局強盗で7年の懲役をくらうことに。刑務所のなかでも看守たちにケンカを売り続け、精神病棟に入れられたりしたものの、やがて出所することに。シャバでは裏社会のボクシングの拳闘家として小銭を稼ぎ「チャールズ・ブロンソン」というリングネームを名乗ることになるが、すぐに宝石強盗で逮捕され、それからずっと刑務所で暴れることに…というような内容。

実際のブロンソンは刑務所で何回も看守たちを人質にとって騒ぎを起こし、刑務所を100回以上移転してるような筋金入りのワルなわけだが、その一方で殺人は1度も犯したことがない人物であり、劇中ではユーモアに満ちた人物として好意的に描かれている。

ブロンソンを演じるのはトム・ハーディで、彼のモノローグで話が進んでいくこともあり、彼の一人芝居のような映画になっている。既に「WARRIOR」を観てるので彼の筋肉モリモリの姿にはさほど驚かなかったが、フルチンになって体にバターを塗りたくり、看守に戦いを挑むという狂気に満ちた演技を見せてくれる。「ダークナイト」のベインがジョーカーを演じてるような感じ。彼って「スター・トレック/ネメシス」のときは細身の若造といったイメージだったが、大化けしたよなあ。

主人公がアウトローでシンセポップが用いられてるあたりは「ドライヴ」に通じるものがあるものの、あの映画のノリを期待してると裏切られるかも。むしろ荘厳なクラシックが多用され、暴力行為がスタイリッシュに描かれてるところは「時計じかけのオレンジ」に似てるかな。ただし最初から最後まで主人公が内面的にいっさい成長しないというのはどうなのよ?いちおう刑務所でアートに目覚めるという描写はあるものの、そのまま指南役を人質にしてしまうような有様だし。ちなみに彼の描く絵はアウトサイダー・アートそのまんまで、彼の公式サイト(!)で購入できるぞ。

犯罪者を美化してることとかは構わないんだが、どうも話にメリハリが無いような。拳闘を扱ってるという意味では「ドライヴ」よりもレフンの次作「Only God Forgives」がこれに似た作品になるのかもしれない。


スティーブン・ソダーバーグの新作で、脚本は彼と何度か組んでるレム・ドブス。

マロリーはアメリカ政府に雇われた私企業の特殊エージェントで、バルセロナに監禁されている中国の要人を救出するというミッションに成功したのち、新たな指令を受けてダブリンに向かうものの、そこで仲間のエージェントの裏切りに遭う。自分がワナにはめられたことを知ったマロリーは単身ダブリンを抜け出し、アメリカに戻って彼女の元上司に復讐を誓うのだった…というようなストーリー。プロット自体は比較的シンプルなんだけど、登場人物が多いことやフラッシュバック形式で話が語られることから、ちょっと物語を追うのがしんどいところがあるかも。

主人公のマロリーを演じるのは現役の総合格闘家であるジーナ・カラーノで、これまでの演技経験は殆ど無し。ソダーバーグがたまたまテレビで彼女の試合を見て惚れ込んだらしいが、そんな彼女を主役に起用し、さらにマイケル・ダグラスにユアン・マクレガーにマイケル・ファスベンダーにチャニング・テイタムにアントニオ・バンデラスなどといった、やたら豪華な男優たちを脇役に揃えてしまうところがソダーバーグの凄いところか。そしてこのうちの何人かは当然ながらカラーノに劇中でボコボコにされてます。

女性格闘家が主役のアクションというと「ビデオボーイ」の裏表紙とかで宣伝されてたようなB級・C級のビデオムービーが連想されるのですが。この作品はソダーバーグが撮っているだけあって格闘シーンなども非常にスタイリッシュなものになっている。そしてやはり現役の格闘家であるカラーノのアクションが非常にさまになっていて、回し蹴りとかジャンプしてグーでパンチする姿などがいちいち決まっており、当たったらマジで痛そうだなあ。相手をしとめるのに遠くから狙撃などせず、後ろから走ってきてブン殴るというのは仕事の効率的にどうよ、という気がしなくもないけど。彼女はルックスも演技も悪くはないので、今後もいろんな映画で見かけることになるんじゃないかな。

アクション・サスペンスとはいえ派手なドンパチが繰り広げられるような内容ではないので、アメリカでは批評家たちには褒められた一方で観客の評判は芳しくなかったらしいけど、個人的には結構楽しめた作品でした。


何となく田山花袋の「少女病」を連想してしまったよ。特に地下鉄のシーンとか。これ主人公がニューヨークのオサレなアパートメントに住んでいる高級取りのイケメンをスタイリッシュに撮っているから成り立っている作品であるわけで、これが埼玉の格安賃貸に住むブサメンの色情狂とメンヘラの妹という設定だったらまた違った話になってたんだろうね。個人的にはそっちも観てみたかった気がするが。

同じ監督&主演の前作「ハンガー」が密室劇に近かったのに比べ、こっちはニューヨークでの屋外ロケなども行ってずいぶん映画としてこなれてきたな、という感じ。セックス依存症という微妙なテーマを、美しい映像によって美化することも卑下こともせずきちんと描いているのは巧いな。特に鏡を効果的に使った映像が見事で、ここらへんはやはり芸術家が監督やってるのことはあるね。

そして普通の生活を装うとするものの自分の渇望を抑えきれず、奈落の底に落ちていく主人公をマイケル・ファスベンダーが文字通り体を張って熱演している。こないだの「A Dangerous Method」のときも書いたように、彼って受け身というか周囲に翻弄されるタイプの役が多いので役者としての力量がいまいち掴みにくいんだけど、ここでは心に大きな虚無を抱えた主人公にその演技がとてもよく似合ってるかな。一方のキャリー・マリガンは彼を更正させる無垢な女性の役を演じるのかと思ってたら、彼以上に精神的にヤバい人の役だったんですね。少し意外な設定でしたが悪くはない役でしたよ。

まあやはりアートな映画という印象は拭えず、例えばニューヨークの精神的に不安定なヤンエグ(死語)の話だったら「アメリカン・サイコ」、依存症の話だったら「レクイエム・フォー・ドリーム」などのほうが優れている気もするが、どうにもならなくなって苦悶に顔をゆがめるファスベンダーの演技を観るだけでも価値はあるかも。いっそこのまま二次元萌えとかに目覚めてくれればとても面白い話になったかもしれないが…。

「Into the Abyss」鑑賞

April 16th, 2012


こないだ「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」が日本でも公開されたヴェルナー・ヘルツォークの新作ドキュメンタリー。

アメリカの死刑囚をテーマにしたもので、舞台となるのは(当然ながら)テキサス。2001年にマイケル・ペリーとジェイソン・バーケットという2人のティーンエイジャーは、ある女性の家にあった赤いカマロを盗むためにその女性を殺害する。さらに帰宅した女性の息子とその友人も殺害し、遺体を湖や森の中に廃棄するのだが、数日後に警察と銃撃戦をした末に逮捕され、ペリーは死刑を、バーケットは終身刑を言い渡される。そして2010年に死刑執行を数日後に控えたペリーにヘルツォークは面会し、さらに彼の友人や被害者の遺族、当時を知る警官などにも会って事件と死刑の重さを浮き彫りにしていく。

まだ30歳にもならず童顔のペリーは「僕はクリスチャンだから死んだら天国に行けるんだ」と語り、彼もバーケットも自分たちの罪を明確には認めていないわけだが、事件の真相を明かすというよりも当時いったい何が起きたのかが映画のなかで詳しく語られていく。1つ驚くのは加害者と被害者の周囲における不運というか恵まれない状況の数の多さで、殺された女性の娘は6年のあいだに他の親族も次々と亡くなったと語り、バーケットの父親と兄弟は別の罪で同じ刑務所に入れられ(父親の刑期は40年)、3人目の被害者(息子の友人)の兄もまた刑務所に入れられていた。単にこれがテキサスの低所得層の生きざまなのかも知れないが、もっと得体の知れない因果といか業のようなものを感じてしまったよ。

そしてペリーは死刑執行の直前に被害者の遺族へ「僕はあなたたちを許します」と述べ(ふつう逆だろ)、薬物注射される死刑台へと向かっていく。一方でバーケットは父親が刑務所から一時的に出てきて法廷で熱く彼を弁護したことが効いて死刑でなく終身刑を与えられ、40年後に来るかもしれない仮釈放の機会に思いを馳せている。さらに塀の外から彼のことを知った女性が彼と恋に落ち、彼と結婚したばかりか、手を握ることくらいしか許されてないはずなのに彼の子供を身ごもってしまう!あれ本当にバーケットの子供なんだろうか。その女性は自分が「囚人グルーピー」であることは否定するものの、言動がちょっと不思議ちゃんなんだよな。

他にはテキサスで初の女性受刑者の死刑を執行したあとに神経衰弱となって死刑反対の立場をとるようになった元職員の話などが興味深かったな。常識を逸した話もいろいろ出てくるものの、みんな目に涙を浮かべながら真剣に話しているのを見ると、作品のタイトルのごとく人間性の深淵を覗いているような気分になってくる。

ヘルツォーク自身は画面に登場しないものの、あの特徴ある訛りの声で喋ってるので存在感はありまくり。死刑に対する彼のスタンスは作品中だとあまり明確にされないものの、このインタビューによると死刑には反対しているらしい。また一般人とは異なり自分の死ぬ日時を明確に分かっている死刑囚たちと話すことによって、生きるということが再認識されることに惹かれてこの映画を作ったのだとか。

なおこの作品には、別の死刑囚たちとヘルツォークとの面談を扱ったスピンオフ的な全4話のTVシリーズがあるらしく、そちらもぜひ観てみたいところです。

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