超低予算の作品ながらサンダンスなどで話題になったドキュメンタリー。ガス・ヴァン・サントとジョン・キャメロン・ミッチェルがエグゼクティブ・プロデューサーなので、この監督2人の作品が好きな人なら、かなりツボにはまるかもしれない。 監督そして物語の主人公はニューヨーク在住の役者ジョナサン・カウエット。彼の母親レネーは幼いときにモデルとして活躍するほどの美貌をもちながら、とある事故がきっかけで両親の要望によりショック療法を繰り返し施され、そのおかげで精神が不安定になったまま大人へと成長する。親元を離れた彼女は結婚をするがすぐに離婚、その後にジョナサンをもうけるものの彼女の精神はさらに悪化。ジョナサンは施設に預けられるがそこで虐待を経験することとなる。それに加えて母親の友人にもらったドラッグにより精神に異常をきたした彼は、ゲイのコミュニティーと映画製作と役者稼業に心の平穏を見いだしてニューヨークへ移り、自分の存在さえ知らなかった父親に対面したり、母親と親密になる機会を持ったりするが、やがて母親がリチウムの過剰摂取で倒れたことを知り、故郷のテキサスへと向かう…というのが大まかなストーリー。虐待・心の病・疎外感などに溢れた哀しい物語が、過去の8ミリ映像や写真の絶妙なコラージュとともに美しく語られていく(流れる音楽も最高)。
かつての美貌を長く苦しい生活により失い、最後はリチウムのために脳障害を起こして無邪気に笑う母親、温厚そうに見えるけれども過去にレネーを虐待しており、年をとってボケていく祖父母、そしてパンク・ロックとアングラ映画に自分のアイデンティティを見つけようとするジョナサンの映像が心を打つ。起承転結の明確な話ではないので冗長に感じられる部分もあるが、非常に印象的な作品であることは間違いない。
ただ個人的には、もとから内容に興味があって観に行ったわけでは決してなく、この作品の(最大の?)ウリとしてアップルの無料映画製作ソフト「iMovie」で全編が作られたということに興味を抱いたのだ。
プロ向けのFinalCutなどに比べれば性能が著しく劣るiMovieだが、その映像エフェクト(特に「Nエフェクト」や「ミラー」)をこの作品は効果的に駆使して、とても素人向けのソフトで作ったとは思えない映像加工や編集に成功している。ジョナサンは友人のマックで地道に製作を行ったらしいが、カメラとマックさえあれば劇場映画が作れる時代になったわけだ。iMovieに詳しい人なら「あ、今のはXXのエフェクトだ」とか「このシーンはまずフラッシュをかけて、それからスピードを遅くして撮ったな」などと観察するのも面白いかと。ただ細かい点を挙げると、iMovieでは出来ないはずの画面分割エフェクトが使われているし、スカイウォーカー・サウンドでの音声ミックスなどのポスト・プロダクションも行ったようだから、一番始めにiMovieで作られたものとは内容が違っているようだ。もちろん映画のストーリーには何の関係もない事だけど。
ウェスタン時代から現在に至るまで、クリント・イーストウッドってものすごく映画業界に貢献した稀有の人で、現在受けている賞賛でも足りないくらいの偉大な存在だと個人的には思っているのだけど、この作品はかなりハズレだった。一見するとボクシング映画のようで、実はボクシングというものはストーリーの刺身のツマでしかないことが上映開始1時間半ほどで分かってくるのだが、それに関する「ひねり」があまりにも突然というか、「何でそうなるの」的にやってくるため、その後の展開にどうしても感情移入ができなくなってしまう。もちろん単なるスポ根映画でないことは事前に承知してたつもりだが、ああいう展開になるとは…。イーストウッドの前作「ミスティック・リバー」は少なくとも観たあとに重ったるい「やるせなさ」が胸に残ったが、この作品には何も残るものが感じられないのだ。
近所の2番館に「Primer」を観に行く。ちょうど1年前のサンダンスで賞を穫った低予算作品で、ずいぶんっ評判が良かったので期待してたのだが…
監督ミシェル・ゴンドリー&脚本チャーリー・カウフマンという、「ヒューマン・ネイチュア」のコンビによる第2弾。何を書いてもネタバレになってしまうような物語構成なので内容についてはあまり詳しく書かないけれども、別れた恋人の記憶を消すために科学療法を受けることに同意した主人公が、消え行く記憶のなかで恋人がいかに大切な存在であったかに気づく、という意外なほどストレートなラブ・ストーリーになっている。