ジョージ・ミラーの新作。「マッド・マックスの監督がこんな映画を?」と一瞬思ってしまうが、ペンギンが踊るアニメも作ってた人なので意外性はないわな。日本では「アラビアンナイト 三千年の願い」という邦題で2月公開だが、話に「アラビアン・ナイト」関係ないから!旧約聖書の話のあと、「アラビアン」の時代をとばしてオスマン・トルコ帝国の話になってるぞ?
舞台は現代のイスタンブール。学術会議のためにそこを訪れていた文化学者のアリシアは古物屋で古びたガラス瓶に惹かれてそれを購入する。彼女がホテルでそれを開けると、中から妖霊のジンが飛び出してくる。彼は長年にわたって瓶に閉じ込められていたというのだ。解放された礼として3つの願いを叶えてやろうとアリシアに伝えるジンだったが、ジンにまつわる伝承に詳しい彼女は彼に騙されるのではないかと彼を拒絶する。そんな彼女を前に、ジンはなぜ自分が過去に3回も瓶に閉じ込められることになったのかを語るのだった…というあらすじ。
ジンは万能の力をもっているようで実はいろいろ弱いところがあって、魔法を使う人間には手込めにされるし物理的な弱点も持っていたりする。また誰もが思うであろう「3つの代わりに無数の望みを叶えてくれ」という願いは受け付けないそうな。彼は人間の女性を愛し、妖霊のハーフだったシバの女王をはじめ、彼がいかに各時代の女性たちを愛し、彼女たちの望みを叶え、それがいかに自身の破滅(幽閉)につながっていったかを語っていく。
シンプルなホテルでのアリシアとの会話を挟んで、優雅な時代の物語が豪勢な衣装やセットで描かれていて、これ石岡瑛子とかが衣装やってたら見ものだったろうなあ。AS・バイアットの短編をもとにジョージ・ミラーと娘が脚本を書いていて、肥大した裸の女性が出てくるあたりが「デス・ロード」っぽいかな。あとは「デス・ロード」のバア様のひとりがちょっと出ています。
身寄りのないアリシアを演じるのがティルダ・スウィントン様で、相変わらず年齢不詳でお美しい。ジン役はイドリス・エルバことストリーンガー・ベルで、大きな目をキラキラさせながら語るのがいいです。
予告編だと奇抜な内容であるかのような印象を受けるが、実際はもっとしっとりした、大人のおとぎ話・恋物語であった。興行的には大失敗したとかで、確かに最後の展開はちょっと弱いところがあるものの、普通に楽しめる作品でした。「マッド・マックスの監督」という偏見を捨てて観るべし。