「厳戒態勢「宇宙戦争」試写の理由…業界裏メール」

日本武道館での「宇宙戦争」の試写の中止は「単なる自意識過剰か。作品への自信のなさ」なんていってる記事があった。 スピルバーグやトム・クルーズの弁明をする気はさらさらないが、この記事に書かれてる「せりふのある人物以外はすべてボカシが入っている版、つまり完全な本編を見ずに字幕を付けさせられた」なんてことは知る限り5年以上前から大作映画に対して行われてることで、珍しいことでもなんでもない。海賊版の流出を防ぐために、日本語版制作において最低限必要な未完成の素材しか渡されないというわけだ。

ハリウッドにとって日本なんてのは、中国や台湾のような「海賊版天国」だと思われてるわけで、そこで世界初公開なんか大規模にやったらマズいだろう、と判断されて試写が中止になったというのが今回の真相ではないか。それを自意識過剰だの自信が無いだの、変に勘ぐられてもねえ。

でも最近あった「エピソード3」の流出(タイムコード付きの完全版)なんかを見てると、アジアでの海賊版流出を心配するよりも、身内の横流しに目を光らせたほうがいいんじゃないの、と思ってしまう。

「MIX TAPE」鑑賞

昨日から今週末にかけて、ここトロントでは「NORTH BY NORTHEAST」(略称NXNE)という音楽のフェスティバルが行われていて、いろんなライブハウスに無名のバンドがわんさか出演して、一つの盛り上がりを見せているのであります。テキサスでやってる同様のフェスティバル「SOUTH BY SOUTHWEST」を意識して始めたものだろうけど、あちらは20年の歴史を誇る大御所なのに比べてこちらは5年ほどだから、大手メディアの取扱いも天と地ほどの差があったりするわけだ。それでも元ストラングラーズのヒュー・コーンウェルとかニューヨーク・ドールズとか、ちょっと興味をそそられるミュージシャンも来ていたりする。 そしてライヴだけでなく音楽関係の映画やドキュメンタリーの上映会もちょろっと行われるということで、2003年のインディペンデント映画「MIX TAPE」を観に行ったんだが…。とってもつまらない作品でした。

前評判からは「ハイ・フィデリティ」みたいに、ミックス・テープ作りに全力をそそぐ男たちの心情を深く突いた内容かと思ってたんだけど、ただ単に音楽好きでチャラチャラしてるシカゴの男女を延々と描いただけの内容で、撮影・音響・演技のどれもが素人まるだしなので嫌気がさして途中で退席する。これに比べると「SLACKER」がいかにきちんと製作されていたかが実によく分かる。いくら超低予算でビデオ撮りしか出来なかったとはいえ、世の中にはレイモンド・ペティボンの「SIR DRONE」みたいな傑作も存在するわけだから、もっと作り込むか凝縮しろっての。

また本編の上映前にはトロントで撮影されたアマチュア・バンドのミュージック・ビデオも紹介されたが、これも男女がカラオケパブとかで踊ってるだけのお粗末な内容だった。映像作品の発表っていうと何か敷居が高いような気がするけど、とりあえず「発表したもの勝ち」のときもある、ということを学んだという意味ではいい勉強になったかもしれない。

「THE INSIDE」鑑賞

「新スーパーマン」や「Xファイル」、「エンジェル」に「FIREFLY」といった実にギーク心をくすぐる作品のライターだったティム・ミニアーがてがけた新番組「THE INSIDE」を観る。 舞台となるのはロサンゼルスの特殊犯罪課。スタッフの1人が怪死を遂げたことにより、代わりに新人のレベッカ・ロックがチームに加わることになる。実はレベッカは幼いころに誘拐された経験があり、犯罪者の心理を理解することに長けているのだった。そして彼女はロサンゼルス一帯で起きている連続殺人事件に共通点があることを発見し、自らがオトリとなって調査を行うのだったが…というのが第1話の大まかなプロット。

猟奇殺人とかプロファイリングとか、机の奥に埋もれてた脚本を使ったの?と思えるくらいに90年代テイストに満ちた作品。今になってこんなシリーズを始められてもなあ。主人公もウブなんだか切れ者なんだかよく分からないし。ピーター・コヨーテ演じる厳格な上司だけはいい感じだったけど。設定は短命に終わった「ミレニアム」に似てるけど、その地味な雰囲気はもっと短命だった「ストレンジ・ワールド」(これもミニアー脚本)に似てるかな。

サマーシーズンに放送開始したということは、放送局のフォックスもあまり力を入れてないということか?フォックスは新シリーズをすぐに打ち切ることで悪名高いので、このシリーズも相当頑張らないと先が短いかもしれない。メネ・メネ・テケル・ウパルシン。

WWDC 2005 基調講演

WWDCにおけるスティーブ・ジョブスの基調講演をストリーミングで鑑賞。 新製品の発表もないし、インテルへの移行は現在のところ諸手を挙げて賛成する気にもなれないので、あまり内容はパッとしなかったかな。帰国したらiMacG5を買おうかと思っていたけど、インテル内蔵のやつが出るまで待った方がいいんだろうか。でも新製品が出るのは2年くらい後のことだから、判断が難しいところである。

今回の基調講演の一番の特徴は、従来のMPEG4ではなくH.264のコーデックでストリーミングされたことだろう。今までとデータ量は変わらないまま画格が16X9になり、色合いや解像度が鮮明になっているのが一目瞭然だった。場所によってジョブスの口と音声がズレていたり、カクる所もあったけど、なかなかいいな、あのコーデック。

「シンデレラマン」鑑賞

「シンデレラマン」を劇場へ観に行く。ロン・ハワード&ラッセル・クロウのコンビってあまり個人的には興味がなく、実は「ビューティフル・マインド」もまだ未見だったりする。クロウの前作「マスター&コマンダー」は傑作だったけど。 これはアメリカの恐慌時代に活躍したボクサー、ジム・ブラドックの姿を描いた伝記映画。彼は貧困やスランプに悩まされながらも、妻や子供たちに励まされてリングに復帰し、やがて世界チャンピオンのマックス・ベアーに挑戦するのだった…という、まあ、それだけの話。

とにかく内容がベタ。展開がまるで少年マンガのようで、かなり先まで読めるストーリーになってしまっている。いくら事実をもとにした話とはいえ、もうちょっとヒネリを加えても良かったのに。上映中に時計を見て「あと30分くらい暗い状況が続いて、次の30分は主人公が再起して、残りの15分くらいがクライマックスの試合かな」と考えたら、大体そんな感じで話が進んでいった。あと夜中に両親が悩んでるところを陰から見つめる娘とか、子供たちから隠れて涙を流す母親とか、日本のテレビドラマ並みに古くさい演出がされているのも興ざめだった。

主要な登場人物はクロウ演じる主人公と、その妻役のレネー・ゼルウィガー、およびセコンド役のポール・ジアマッティしかいないのだが、クロウは抑え気味の演技がそこそこ効果的であるものの、ゼルウィガーはただ役をこなしてるって感じ。家族がどんな極貧状態にあってもやけに恰幅が良く、疲れ果ててるような印象が全く伝わってこない。もうちょっと薄幸そうな女優さんが役を演じれば良かったのに。またジアマッティも今回は演技が過剰気味で、いつもの良さがあまり出てないような印象を受けた。

でも話のポイントとなるボクシングのシーンはなかなか迫力があって楽しめる。特にラストの試合は両者がボコボコに殴り合ってる雰囲気が伝わってきて良かったかな。ボクシング映画としては「レイジング・ブル」の足下にも及ばないが、「ミリオンダラー・ベイビー」よりかは面白かった(後者をボクシング映画と呼べるかは不明だが)。ベタな内容とはいえ一種のサクセス・ストーリーなので、娯楽作品だと割り切って観ればそれなりに楽しめる作品でしょう。

ちなみに自分がこの映画を観にいった一番の理由は、撮影がここトロント、しかも家の近くの通りで行われていたということ。俺がトロントに来る前(去年の夏)のことなので撮影自体は見ていないものの、話を聞く限りでは建物に1930年代風の飾りをつけたりして相当大がかりなセットを作ったらしい。エキストラもかなり雇ったらしいので、参加したかったなあ。