「HUMAN TARGET」再映像化

DCコミックスの知る人ぞ知る作品「ヒューマン・ターゲット」のTVシリーズのパイロット版が製作されるんだとか。

これは変装の達人であるクリストファー・チャンスが、何者かに命を狙われている人物になりすまして自らが「人間の標的」となり、暗殺者をおびきよせるというアクション色の強いクライム・コミックで、90年代になぜかリック・スプリングフィールド主演でTVシリーズ化されてるんだよね。コミックのほうではピーター・ミリガンがストーリーを担当した一連の作品が1999年あたりからヴァーティゴから出されていて、あまり長続きはしなかったものの結構俺は好きだったんだよな(特に単行本で出された「FINAL CUT」は傑作)。

「人が誰かに変装する」話というのはコミックなら描写は簡単だけど映像ではそうもいかなくて、今回の映像化ではそこらへんをどう対処するんだろう。やはり変装後は別の役者が主人公を演じる仕組みになるのかな。

フランク・ミラーの次の監督作

コミック・ファンのあいだでは定説となりつつある話として、「フランク・ミラーはここ10年のあいだ、徐々にしかし確実に正気を失いつつある」というのがありまして、これは例えば「シン・シティ」の「THE HARD GOODBYE」と「TO HELL AND BACK」、もしくは「ダークナイト・リターンズ」と「DK2」を読み比べてみたり、「ALL-STAR BATMAN AND ROBIN」を一瞥してみれば明らかなことなんだけれども、ここしばらくの作品はみんな話が大味になっていて、登場人物に深みが無いものになってるんだよね。911テロに精神的打撃を受けたことは本人も認めてるし、カラーリストのリン・ヴァーリィとも離婚したりして、まあいろいろあったのかもしれないけれど、昔はもっと業界で絶大なリスペクトを受ける作家だったんだがなあ。

でもその一方で「シン・シティ」と「300」という自身が原作者の映画がヒットしてしまったため、最近は映画業界の人になってしまった感があるのですが、その監督第一作である「THE SPIRIT」は公開前からボロクソに叩かれているらしい。これでもう映画監督としてのキャリアは無くなったかな、と思いきや次は「バック・ロジャース」の劇場版を監督するという話が伝わって来た。なぜ今になってバック・ロジャースなのか?ミラーのスタイルとは180度違う、明るくて未来的なコミックなのに…?「ミラー流の暗い話になる予定だ」なんて書かれてるけど、誰もバック・ロジャースにそんなもの期待してないぞ!とりあえずゴミ映画を作るのであれば、他人のコミックではなく自分の作品を映画化しましょうね。

ちなみに俺は70年代の「バック・ロジャース」のTVシリーズのオープニングが死ぬほど好きなのです:

こちらは「サウス・パーク」の良く出来たパロディ:

「BATMAN: BLACK & WHITE」鑑賞


「ウォッチメン」がなかなか好評のような、DCコミックスのモーションコミック第2弾。原作は90年代に発刊された、バットマンを主人公とした白黒のアンソロジー・シリーズで、ジョー・キューバートやリチャード・コーベン、さらには大友克洋といったトップレベルのアーティストが参加したことで人気を博したコミック。確か日本語版も出てたんじゃなかったかな。

iTunesストアでは2本15分という形で販売されており、俺のお気に入りであるブルース・ティム作の「TWO OF A KIND」を観てみる。トゥーフェイスを扱ったものとしては史上最高の作品の一つだと思うのです。「ウォッチメン」に比べるとセリフの吹き出しが出ないようになっており、声優も複数名いるほか背景の動きなども細かくなっていてよりアニメに近いクオリティになっている。ただしそれが必ずしも良い結果になっているわけではなくて、逆にコミックの良さを打ち消しているところが多いかな。原作は8ページほどの短編だけどストーリーの流れに緩急があったのに対し、こちらは5分ちょっとという尺のなかでどんどん話が進んでいくため内容を十分に楽しめない気がする。特に最後のシーンなんてもっと余韻があるべきなんだがなあ。

さらに原作はアニメーターであるブルース・ティムが、コミックならではの技法を用いたストーリーテリングをしていたのに、それに多少の動きをつけたものではティムの従来のアニメーションの出来にも遠く及ばず、コミックとしてもアニメとしても中途半端なクオリティになっている。しかしコミックとアニメの表現技法の違いを実感させてくれるという意味では興味深い作品ではあった。

ちなみにもう1話はポール・ディニ&アレックス・ロスの作品が映像化されてたんだが、ロスの絵が非常に写実的なものであるためアニメというよりも実写作品のように見えることと、俺が原作を未読であることなどからこちらは結構楽しめた。

「100 BULLETS: DIRTY」読了


本国ではそろそろ最終話が出る傑作クライム・コミック「100 Bullets」のペーパーバック第12巻。

シリーズの84話から88話を収録したもので、最終話の第100話に向けたクライマックスを前にした、今までのストーリーラインからの橋渡しをするようなエピソードが並べられている。具体的には過去に出て来た登場人物がさまざまな形で「清算」されていく様子を扱った内容の話が多く、1人だけ重要なキャラが初登場するほかは大きな展開もなく、今までの単行本に比べると地味な印象があるのは否めない。

このようにブライアン・アザレロのストーリーが地味な一方でエデュアルド・リッソによるアートワークは相変わらず素晴らしく、金持ちの豪邸から場末のモーテル、コロラドの雪山からニュージャージーの裏通りまで、あらゆる場所の雰囲気を的確にとらえ、多くの登場人物の性格を深く描き出すことに成功している。ただ眺めているだけでも楽しめるくらいの本。

あとは残りの12話で、いろいろあったストーリーをどこまできちんと完結させられるかに期待。

「FABLES」TVシリーズ化?

 

DCコミックスの大人向けレーベルであるヴァーティゴの人気作品「FABLES」が米ABCでTVシリーズのパイロット版が作られるんだとか。これは予想してなかったな。

この「FABLES」というのは、おとぎの国を追い出された白雪姫や赤ずきんやシンデレラといったキャラクターたちが、人間界に住みながら彼らを追い出した敵との脅威と戦っていくというようなストーリーのコミック。ヴァーティゴの作品だから派手な戦闘シーンみたいなものはなくて、ファンタジーに重点を置いた内容になっている。前にちょっと読んでみたけど、日本人には馴染みのない童話のキャラクターが多く出てくるんであまり面白いとは思わなかったかな。でもスーパーヒーローものだけでなく、このようなヴァーティゴの作品が映像化されるのは歓迎すべきことかと。こないだの「プリーチャー」だけでなく「Y: THE LAST MAN」とかの映画化の話も少しは進展するのかな。