キャプテン・アメリカが死んだって?

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どうもイマイチだったマーヴェル・コミックスのイベント「CIVIL WAR」のラストで政府に逮捕されたキャプテン・アメリカが、こんどの最新号で宿敵レッド・スカルの送った狙撃者に撃たれて命を落としてしまうらしい。60年以上も前から活躍している人気キャラクターが死んだということで、APのようなコミック業界外のメディアからも注目を集めているようだ。

でもさ、アメコミのキャラクターなんて死んでもすぐに復活することでよく知られているわけで、こんなの真剣に受け止めている人なんて誰もいないでしょ?ドル箱のキャラクターであるキャプテン・アメリカをマーヴェルが封印するわけないじゃん。90年代初頭にはスーパーマンをはじめ多くの人気キャラクターが話題集めのために「お亡くなり」になったけど、これもそれに似たもんだって。そもそも現在「キャプテン・アメリカ」のストーリーを担当しているエド・ブルベイカーって、前にはレッド・スカルが死ぬ話を書いて話題になったけど、いつの間にか復活させていたし、アメコミ界では数少ない「ちゃんと死んでいる」キャラクターだったバッキー(キャプテン・アメリカの元相棒)だって復活させているわけだからね。でもブルベイカーの書く話は結構好きなので、今後の展開に期待したいところです。

ちなみに今回のニュースで一番驚いたのは、ジャック・カービーとともにキャプテン・アメリカを創作したジョー・サイモンがまだ健在だということ。94歳になる彼は今回の件について「世の中はキャプテン・アメリカを必要としているのに」と嘆いているらしいぞ。大丈夫だよジョー。もう半年くらいでキャップは元気な姿を僕らの前に見せてくれるさ。

「CIVIL WAR」終了

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マーヴェル・コミックスの大イベント「CIVIL WAR」がこのたび終了した。アーティストの遅延などもあって全7話が出るのに半年くらいかかったのかな。

全体的な感想としては、最初はけっこう面白そうだったんだけど、話が進むにつれて尻つぼみになっていたようなところがあるかなあ。スーパーヒーローの強制登録という、パトリオット・アクトに類似したコンセプトを持ち込むことで現実世界出の出来事を反映させようとしたんだろうけど、スパーダーマンの正体の公表とか(?)、ソーのクローンとか(??)、地下に潜ったヒーローたちを狩るのに悪党が使われるとか(???)、何でそうなるの?といった話の展開が続いていったおかげでどんどん話から現実らしさが失われていった感は否めない。マーク・ミラーって政治的な話を書くのはうまいんだけど、師匠のグラント・モリソンとかに比べて話がいつも直球勝負というか、話に幅をもたせることができないんだよね。だから読者が一度こういう疑念を抱いてしまうと、その後の展開に没入できなくなると思うんだが、それって俺だけかな。

んで最後は例によってヒーロー同士のバトルロイヤルになって、相変わらずマーヴェルのヒーローは仲違いばっかりやってんなーといった感じ。しかも結末は意外なくらいの大団円で終わってしまったりもする。うーむ。結局アイアンマンが何をしたかったのかがよく分からなかったな。

スティヴ・マクニーヴンのアートは綺麗だったし、前回のイベント「HOUSE OF M」に比べれば100倍くらいマシな作品だっただけに、途中でどんどん失速していったのが悔やまれるところです。

今月のウォッチメン

なんかザック・スナイダーによる「ウォッチメン」の映画化はそこそこ進んでいるらしいぞ。まあここらへんまでは他の監督(特にギリアム)もすでに足を踏み入れたところなので、これから先に進めるかが見ものかな。

たまにネットなんかで「最近のハリウッドはヒット狙いで安易にコミック原作の映画に手を出してけしからん」みたいなことを書いてる人がいるけど、スナイダーしかりロドリゲスしかりデルトロしかり、コミックの魅力を理解している世代の監督たちが心をこめて映画化しているわけで、現在はコミック映画の黄金期だと思うんだけどね。俺にとっては駄作である「デアデビル」を撮ったマーク・スティーヴン・ジョンソンだって、「プリーチャー」のTVシリーズ化については非常にまともなことを言ってたりするし。

とは言うものの、やはり映画化してはいけない作品というのもこの世にあるわけで、「V・フォー・ヴェンデッタ」だって製作者の映画化に対する熱意こそ感じられたものの、やはり原作には遠く及ばない出来となって、原作の素晴らしさを伝える貢献はできなかったと思うし、この「ウォッチメン」もどう映画化したって原作の奥の深さを伝えることは無理だと思うんだけどね。良い意味で期待が裏切られるといいんだけど。

ちなみにフランク・ミラーの初期の作品「RONIN」の映画化の話も出てきたらしい。監督はシルヴェイン・ホワイトって・・・誰?インタビューを読む限りでは原作のファンらしいけど、「四肢のない超能力少年に時代を超えて乗り移った戦国時代の浪人が、宿敵の悪魔を倒すために荒廃した未来社会をうろつく話」なんてのは非常に映画化しにくそうなんだが、どうやるんだろう。

「100 BULLETS vol.10: DECAYED」読了

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現在続いているシリーズのなかでは一番お気に入りのアメコミ「100 BULLETS」の最新ペーパーバック「DECAYED」を読む。いわゆるクライム・フィクションの作品だよ。

全100話(予定)のうち68〜75話が収録されてるんだが、シリーズの残りも4分の1となって、今までの複数のプロットが一気に収束するようになってきた。今回は秘密結社「トラスト」内部での権力争いをバックグラウンドに、ミニットメンの1人であるジャックの覚醒と、最後のミニットメン「セイント」の登場&覚醒が描かれている(わけが分かんない人はちゃんと買って読むように)。

ブライアン・アザレロのストーリーもエデュアルド・リッソのアートも相変わらずトップレベルで読みごたえ十分なんだが、トラストとミニットメンの話を交互にもってくることによって全体的に散漫な感じになってしまったのはちと残念。前々巻の「THE HARD WAY」のようにタイトな物語展開を期待してたんだけどね。最後の第75話が一話完結でとても凝縮された話となっているだけに、これくらいの濃さが他の話にも欲しかったところです。まああくまでもこのシリーズの標準に対しての話であって、他のそこらの作品に比べればメチャクチャ濃い話が詰まってんだけどね。あと今まで何度も会話で言及されてて、いったいどんな奴なんだろうと非常に期待してた最後のミニットメン「セイント」が意外とさえない奴だったのにはガッカリ。

今回の話で登場人物が全て出揃ったはずなわけで、あとは最終話に向けてそれぞれの思惑が交差し、壮絶な殺し合いが繰り広げられていくんだろう。最後まで生き延びるのはいったい誰になるやら。どうも最近の話では、俺の好きなキャラクターが早くも死んでしまったらしい。ああ次のペーパーバックが出るのが待ち遠しい。

ヴァーティゴ作品が無料でダウンロード可能に

DCコミックスのサイトで、新旧のヴァーティゴ作品の第1号が無料で多数ダウンロードできるという、なかなか太っ腹なサービスをやっている。

このブログで何回も言及している「ヴァーティゴ」というのはDCコミックスのレーベルの1つで、概して大人向けの作品(エロに非ず)を扱っており、スーパーヒーローなんかの枠に捕われない、独創的かつ芸術的な作品を多数出してきたことで有名なレーベルなのです。最初はイギリス人作家によるホラー/ファンタジー作品が多かったんだけど、それがやがてSFや犯罪もの、さらにはウェスタンと様々なテーマの作品を出版するようになっていったのも、ヴァーティゴの成功の証といえるだろう。また「コンスタンティン」をはじめ、こないだ書いた「PREACHER」や撮影がそろそろ終了する「STARDUST」など、それなりに多くの作品が映像化されている。

提供されている作品のうち、個人的なお勧めはクリス・バチャロがまだ上手な絵を描いてたころの「DEATH: THE HIGH COST OF LIVING」や「TRANSMETROPOLITAN」、「100 BULLETS」あたりかな。アメコミといえばスーパーヒーローしか思い浮かばない人たちには、ぜひ読んで欲しい作品群。タダでっせ。