「Marvel’s Daredevil」鑑賞

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あるいは単に「Daredevil」な。マーヴェルがネットフリックスと組んで世に出すTVシリーズの第1弾。とりあえず1話と2話を観たので感想をざっと箇条書きにする:

・全体的な設定は原作コミックと同じ、というかかなり忠実なほう。
・主人公の赤コスチュームもいずれ登場するようだけど、当初は黒ずくめの服装と覆面という姿で悪と戦っていて、そのデザインおよびストーリーはフランク・ミラー&ジョン・ロミタJr.のオリジン話「The Man Without Fear」をざっくりベースにしている。
・「The Man Without Fear」ってフランク・ミラーの作風がかなり暴力的になり始めたころの作品で、デアデビルがサクサクと人を殺して行く展開はおれあまり好きではないのだけど、こちらのデアデビルもかなり暴力的で、人殺しこそしないもののゴロツキを拷問して情報を得たりしてて、かなり血なまぐさい内容になっている。
・とはいえデアデビルは格闘が意外と弱くて、ゴロツキ一人倒すのにも苦労してるし、第2話ではギャングのワナにはまってボコボコにされてやんの。もうちょっと自分の能力を利用したほうが良いかと。
・能力(視力以外の四感が超人的に優れている)の描写は劇場版に比べるとかなり控え目で、四感を駆使したレーダーセンスの描写などはなし、ただし人の心臓の鼓動を聴いて、その人がウソを行ってるか判断するというコミック通りの展開があります。
・いちおう劇場版やテレビ版のマーヴェル作品と同じ世界を共有しているという設定のようで、「アベンジャーズ」に関連してるようなセリフがちらほら。アベンジャーズが街中で盛大に戦って建物を破壊したおかげで、ニューヨークのゼネコン業界はウハウハだそうな!
・クリエーターは「キャビン」のドリュー・ゴダード。主演のチャーリー・コックスはちょっと老けてる気がするが(髪の生え際…)、赤髪でないことを除けばそんな悪くはない。あとはロザリオ・ドーソンがナイトナースみたいな役で出演してたり。みんなシリアスな演技をしているなか、フォギー・ネルソン役のエルデン・ヘンソンだけが原作通りに愚直なキャラクターを演じていて目立っている感じ。主人公の師匠であるスティックとか宿敵のキングピンなどはまだ登場してません。
・ネットフリックスのシリーズの常として、シーズン全話を一気に視聴してもらうことを念頭においているためか、ストーリーの流れにエンジンがかかるのが遅いような。主人公の生い立ちはフラッシュバックで少しずつ語られ、その能力については明確に説明されたりしてません。ここらへん日本に来た時は視聴者にどう受け止められるだろう?
・いずれシーズン全話を観るつもりなので最終的な判断は置いておくが、劇場版よりはたぶんマシな内容になるであろうものの、地上波のTVシリーズなどと比べて突出して素晴らしい、というわけでもないかな。あとは原作のストーリーをどう料理してくれるかに期待。主人公の母親らしき存在も示唆されてるので、名作「ボーン・アゲイン」とかも映像化してくれるかな?

「SPRING」鑑賞

Spring
※かなりネタバレ注意。

末期ガンの母親の死を看取ったエヴァンは、カリフォルニアのさえない暮らしから離れようと決心し、衝動的にイタリアへと向かう。そして海辺の町をうろついていた彼はルイーズという女性に出会い、彼女に惚れ込んでしまう。しかし彼女には隠された秘密があったのでした…というストーリー。

まあ予告編を観れば明らかなんだけど、これヨーロッパが舞台のラブストーリー…ではなくてホラー映画な。好きになった女の子が実は…というやつで、ルイーズが尋常でないことは視聴者にはかなり早い時点で明らかになるものの、話がかなり進まないとエヴェンはそのことを発見しないため、そこらへんは観ていてまどろっこしく感じられるかもしれない。

あとルイーズの状態については科学的(医学的)な説明が一応されているものの、何かあまり説明になってなかったような。どうせフィクションなんだし、あくまでも幻想的な存在として扱っておけばよかったのに。どうも監督(二人いる)の片方は医学生だったらしく、それでやけに専門的な説明がされているのかもしれない。それよりもイタリアに来て数週間しか経っていないのに、エヴァンが移民管理局に追われる理由がよく分からなかった。観光ビザだって半年は滞在できるだろうに。

このようにストーリー上はいくつかノイズがあるものの、イタリアの美しい光景をバックにした恋物語として楽しむこともできますよ。時々ハッとするような空撮映像もあったが、あれってドローン飛ばしてるのかな。低予算映画でも空中撮影ができてしまう世の中になったのですね。なおスプラッター的な作品ではないが、動物の死骸などが随所に登場するので、そういうのがダメな人はお気をつけください。

他にもいろいろあるんだが、ネタバレになりそうなのでここまでにしておく。その美しい映像などは高い評価を得ているようで、日本でもどこかの会社が配給するんじゃないかな?監督たちの次回作はアレイスター・クローリーの伝記映画になるらしいので、今からそっちのほうにも期待しておく。

ベクデル・テストとハリウッドの男性主義


最近いろんな映画関連の記事で目にするようになったものに「ベクデル・テスト(Bechdel test)」というものがありまして、これはアリソン・ベクデルが1985年に描いたコミックストリップ(上の画像)での会話が起源らしいが、要するに「その映画はどれだけ女性をまっとうに描いているか?」ということを測るテストだそうな。これは3つの基準から成り立っていて、

・(名前のついている)女性キャラクターが2人以上登場するか
・それらの女性たちはお互いに会話をするか
・その会話の内容は、男性に関するもの以外のことか

というもの。当然ながらより多くの基準を満たしたほうが女性をリスペクトした映画とみなされるわけで、最近の映画をこのテストにかけた結果を表示してるサイトもあったりする。例えば「キャプテン・アメリカ2」ではスカジョ演じるブラック・ウィドーが主役並みに活躍している一方で、女性同士が会話するシーンは無かったし、女性3人が主人公の「The Other Woman」も彼女たちが話すのは男のことばかりなのでテストは不合格、といった感じ。

もちろんこのテストだけをもとに、じゃあ「ゼロ・グラビティ」は女性を尊重してない映画だ!と噛み付くのはお門違いだろうし、アメリカでもこのテストに対する批判があるらしいけど、こういうテストが提唱されることと、そしてテストをパスする映画が極めて少ないこと(半数くらい?)が、ハリウッド映画における男性主義を表しているのではないかと。こないだ発表された「スター・ウォーズ」新作のキャストも女性が一人しかいなかったことが批判されていたしね。このテストは邦画でやったらどういう結果になるだろう。

またこのテストに似たものもいくつか提唱されていて、LGBTのキャラクターへのリスペクト度を測るものなどがあるみたい。他にも「パシフィック・リム」を参考にした、「女性にちゃんと独自のストーリーが与えられているか」を測る「マコ・モリ・テスト」というのも提唱されている。あとは人種をテーマに「ロシア訛りのないロシア系アメリカ人」とか「ちゃんとストーリーに絡んでくるアジア人」なんてのも測れるんじゃないかな。

このテストがハリウッドの男性主義を覆すようなものにはならないと思うけど、こんど映画館に足を運ぶときはこのテストを念頭に置いておくのも、また違った映画の鑑賞の仕方につながるかと。あとは「ウィルヘルムの叫び探し」と、PG13の映画で一回だけ使える「FUCK」探しも念頭に置いておこうね!

ハロルド・ライミス死去

朝から訃報を聞いて落ち込む。というかもう69歳だったのか。

俺らの世代にとってはやはり「ゴーストバスターズ」のイゴン・スペングラーだよね。ほかのメンバーが奔放なアメリカンという感じだったのに対し、メガネかけて科学に打ち込むさまは日本人の多くが共感できたのではないか。最近は映画監督のイメージが強かったけど、トロントに住んでたときはSCTVの再放送をよく観ておりまして、若かりし彼がスケッチコメディを演じてるのが新鮮でありました。

俺も監督作の多くをチェックしているわけではないし、「紀元1年が、こんなんだったら!?」みたいな微妙な作品も作ってるのだけど、やはり「恋はデジャ・ブ」はホロっとする名作だよね。ビル・マーレーを使いこなせる監督としても貴重だったような(最近はウェス・アンダーソンがいるけど)。個人的にはやはり「アイス・ハーヴェスト」がすごく好きな作品で、故郷を離れたいダメ男を主人公にしたブラックユーモアとノワールのミックスが最高でした。

製作がそろそろ現実味をおびてきた「ゴーストバスターズ3」でも元気な姿を見せてくれると思ってたんだがなあ。合掌。

「マン・オブ・スティール」鑑賞


「ウォッチメン」のあとはザック・スナイダーの映画は二度と観るまいと誓った身ですが、スーパーマン映画となると話は別で。許せ。

公開したばかりなので感想を簡潔に:

・またダメ映画になるかと思ったけどある程度は楽しめた。でもこれスーパーヒーロー映画というよりSF映画だよな。人類のファースト・コンタクトを描いた内容の。

・「ダークナイト」が大ヒットしたときにワーナーの重役あたりが「これからのDCコミックスの映画はみんな暗くするからね〜」といったことを言っていて、スーパーマンを暗くしてどうするんだよと思ってたが、本当にそんな感じだった。

・今回はそれはそれで映画が成り立っているけれど、フランチャイズとして人気を持続させることが出来るのかは微妙な気もする。なんか悪い意味で全力を使い果たしてしまったというか、後にも登場するであろうキャラクターたちをきちんと立たせていないし。おそらく次の映画には出てこないであろうケヴィン・コスナーとラッセル・クロウなどは良い演技を見せているのだが。

・「プレミアム・ラッシュ」を観てしまうと、マイケル・シャノンの悪役はどうもカラ威張りしているように見えてしまうな。

・まあ次回はご存知のようにバットマンが登場するわけで、そっちのほうのアクションを際立たせておけば映画としては成り立ってしまうんだろうか。この暗いトーンってバットマンには似合うかもしれないけれど、JLAには合わないんじゃないの。

・話題を呼んだラストの展開も含め、爽快感は無いものの、まあ悪くはない作品でした。ただやはりこの路線って話がどんどん暗くなる方向にしか進まなくて、いずれ行き止まりに達するような気がする。というわけで次作のことを勝手に心配しながらスクリーンを眺めるという、どうも不思議な体験であったよ。