ハロルド・ライミス死去

朝から訃報を聞いて落ち込む。というかもう69歳だったのか。

俺らの世代にとってはやはり「ゴーストバスターズ」のイゴン・スペングラーだよね。ほかのメンバーが奔放なアメリカンという感じだったのに対し、メガネかけて科学に打ち込むさまは日本人の多くが共感できたのではないか。最近は映画監督のイメージが強かったけど、トロントに住んでたときはSCTVの再放送をよく観ておりまして、若かりし彼がスケッチコメディを演じてるのが新鮮でありました。

俺も監督作の多くをチェックしているわけではないし、「紀元1年が、こんなんだったら!?」みたいな微妙な作品も作ってるのだけど、やはり「恋はデジャ・ブ」はホロっとする名作だよね。ビル・マーレーを使いこなせる監督としても貴重だったような(最近はウェス・アンダーソンがいるけど)。個人的にはやはり「アイス・ハーヴェスト」がすごく好きな作品で、故郷を離れたいダメ男を主人公にしたブラックユーモアとノワールのミックスが最高でした。

製作がそろそろ現実味をおびてきた「ゴーストバスターズ3」でも元気な姿を見せてくれると思ってたんだがなあ。合掌。

「マン・オブ・スティール」鑑賞


「ウォッチメン」のあとはザック・スナイダーの映画は二度と観るまいと誓った身ですが、スーパーマン映画となると話は別で。許せ。

公開したばかりなので感想を簡潔に:

・またダメ映画になるかと思ったけどある程度は楽しめた。でもこれスーパーヒーロー映画というよりSF映画だよな。人類のファースト・コンタクトを描いた内容の。

・「ダークナイト」が大ヒットしたときにワーナーの重役あたりが「これからのDCコミックスの映画はみんな暗くするからね〜」といったことを言っていて、スーパーマンを暗くしてどうするんだよと思ってたが、本当にそんな感じだった。

・今回はそれはそれで映画が成り立っているけれど、フランチャイズとして人気を持続させることが出来るのかは微妙な気もする。なんか悪い意味で全力を使い果たしてしまったというか、後にも登場するであろうキャラクターたちをきちんと立たせていないし。おそらく次の映画には出てこないであろうケヴィン・コスナーとラッセル・クロウなどは良い演技を見せているのだが。

・「プレミアム・ラッシュ」を観てしまうと、マイケル・シャノンの悪役はどうもカラ威張りしているように見えてしまうな。

・まあ次回はご存知のようにバットマンが登場するわけで、そっちのほうのアクションを際立たせておけば映画としては成り立ってしまうんだろうか。この暗いトーンってバットマンには似合うかもしれないけれど、JLAには合わないんじゃないの。

・話題を呼んだラストの展開も含め、爽快感は無いものの、まあ悪くはない作品でした。ただやはりこの路線って話がどんどん暗くなる方向にしか進まなくて、いずれ行き止まりに達するような気がする。というわけで次作のことを勝手に心配しながらスクリーンを眺めるという、どうも不思議な体験であったよ。

2012年の映画トップ10

昨年同様に、観た順に10本選んでみました。順位は特につけません。

ドライヴ
サソリのジャケット買っちゃったよ。

ファミリー・ツリー
まったりと話が進んでいるようで、家族の絆をしっかり描いている点が秀逸。

CHRONICLE
少年マンガに出てくるような超能力バトルがしっかり撮れた作品。

アベンジャーズ
純粋な娯楽という点ではこれが抜きん出ていた。いろいろツボをちゃんと抑えた大作。

アイアン・スカイ
粗削りではあるんだけど、低予算で風刺と特撮をきちんとまとめたことに敬意を表して。

キャビン
ホラーの定番を見事にスプーフした傑作。これ観ちゃうとB級ホラーが普通に観られなくなるかも。

ムーンライズ・キングダム
あまりにも箱庭的にまとまりすぎてる気もするが、W・アンダーソンの1つの頂点ですな。

THE BAY
まさかバリー・レヴィンソンがファウンドフッテージものをやるとは。パニックに襲われる町を手堅く描いている。

007 スカイフォール
オールドファンに気をつかいつつ、新たな幕開けを迎えることに成功した秀作。

Beasts of The Southern Wild
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』という邦題で公開されるみたいです。新人監督が町のパン屋さんを起用して、なぜこうも幻想的な作品が撮れてしまうのか。

特別賞:「ヒューゴの不思議な発明
映画好きが、映画にまつわる映画を観たらそりゃ好きになるのは決まってるので、特別賞扱いとする。少年の話かと思いきや、映画に情熱をかけた老人の話にもっていってしまう巧みさ。

これ以外には「裏切りのサーカス」「ザ・レイド」「ダークナイト・ライジング」「プレミアム・ラッシュ」「ルーパー」などが良かったな。これでも取りこぼしている(観てない)作品が多々あるので、今年はもっと偏見なしに多くの映画を観るように心がけたいところです。

ゴールングローブ考


日本時間で明日の今頃にはゴールデングローブ賞の結果が発表され始めてるのかな。アカデミー賞よりも気楽な感じでテレビと映画のひとたちが一緒になって祝い合うという意味では決して嫌いな賞ではないのですが、受賞者を決定するハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)って調べれば調べるほどウサンくさい団体であるような気がするので、その気になる点についていくつか書いてみる:

・そもそもHFPAの創立の理由が、ハリウッドのスターたちと懇意になりたい記者たちが「ねえねえ、賞をあげるから仲良くしてよ」という考えから生まれたもので、その時点でハリウッドとズブズブの仲であったわけだ。そして授賞式がディック・クラーク・プロダクションにより派手なショーにされてNBCで放送されることにより、その知名度と影響力は大きく上がっていく。

・『外国人』映画記者協会といいつつも、HFPAのメンバーになる条件の1つに「南カリフォルニアに住んでること」というのがある。そりゃハリウッドに近いところに住んでれば便利だろうけど、国際性を強調してるような名前の意味が無いのでは。また公式サイトのメンバー表を見ると「Jean E. Cummings」という人が日本担当の1人になってるのですが…誰だこれ?

・彼女に限らずHFPAのメンバーは素性が不明な人が多いことでも有名で、90数名いるメンバーのうち活動内容がネット上で明らかになってるのは10名ほど。彼らがメンバーであり続けるためには、自分の記事が年に最低4回は何らかの出版物に掲載されることが条件になっているのだが、何をもって出版物と定義するかをHFPAは公表いていない。つまり田舎のコンビニに置いてあるようなフリーペーパーでもHFPAが「出版物」とみなせば、それに年に4回寄稿するだけでメンバーの資格は保持できるわけだ。

・HFPAのメンバーの多くが実は映画ジャーナリストではない、というのも以前からよく語られてきた話で、不動産業者やヘアドレッサー、車のセールスマンなども含まれるという話を聞いたことがあるが、いかんせん素性が不明なので何ともいえんな。メンバーシップが世襲制だという噂も耳にしたが、たぶんこれは事実ではないだろう。ただし加入条件が『現メンバーの2名以上の推薦があり、他のメンバーから反対票が投じられないこと」という実に身内に有利な条件であるため、実際に何が起きてるかは分かりませんが。

・アカデミー賞の会員数が数千人いるのに対し、HFPAは常にメンバーの数を100人以下に絞り、ハリウッドからの厚遇を受けてきた。有名な話では81年にピア・ザドラの金持ちの夫がメンバーを買収して彼女に新人賞を穫らせた(彼女は子役出身であり新人でも何でもなかった)という出来事があって、さすがにこれでバッシングを受けたHFPAはハリウッド受けられる接待の条件を制限したらしいが、それでもハリウッドからの厚遇は続き、昨年「ツーリスト」がコメディ部門にノミネートされて論議を呼んだソニーもメンバーをラスベガスに招待して相当のおもてなしを与えたらしい。

…とまあハリウッドのお手盛り、と言われても仕方が無いような団体であるわけですが、いちおうHFPAの弁護もしておくと、彼らが得ている収益の多くは映画関係のチャリティに寄付されているようだし、昨年の震災に対しても寄付があったらしい。それに判断基準がどうであれゴールデングローブを受賞する作品が結構まともである例も多く、特に数年前にイギリス版「THE OFFICE」が受賞したことであの番組の知名度が飛躍的に上がったことは非常に良かったと思う。

とはいえ上記のとおりウサンくさい団体が選んでいる賞であることは承知しておくべきでしょう。昨年あれだけ物議を醸したリッキー・ジャヴェイスを続いて司会に起用するあたり、HFPAも冗談が分かってきてるような気がするけどね。これを威厳のある賞のように持ち上げてるマスコミにはムカつきますが。また今年からメンバーに加わった日本人ライターがその厚遇ぶりを書いているが、これって裏を返せば他のジャーナリストには不公平な扱いをしているってことだよねえ。まあ誰だってスターとお友達になりたいわけで、彼らが特権にこだわる気持ちは分からんでもないですが。

ちなみにHFPAがこの時期に授賞式を開催するのは、アカデミー賞の投票のタイミングにあわせて作品にハクを与えるためなのですが、昨年あった噂で面白かったのが「アカデミー賞がゴールデングローブ賞をぶっ潰すために授賞式の開催日を早める」というもので、もしこれが実行されてたらHFPAの影響力も大きく変わってたのではないかと。

こんなことを考えつつ、明日の受賞結果に思いをはせる次第です。

今年観た映画トップ10

去年ほど明確な順位付けができそうにないので、良かった映画を日付順に10本挙げていく:

DOGTOOTH
実はこれを年間ベストに推したい気持ちもあるんだけどね。でも単なるキワモノ好きのように思われるので。ギリシャ映画は今年も注目しよう。

127時間
ラストのシガー・ロスの曲がかかるシーンがとても素晴らしいです。

恋とニュースのつくり方
普通だったら選ばないような出来の作品ですが、震災後にモヤモヤしていたしていたとき観に行ったらいい気分転換になったので、感謝の念を込めて。

ブラック・スワン
アロノフスキーの作品としては「レクイエム」と「レスラー」の延長線上にあるような感じで決して期待してたほどではなかったのですが、それでも出来の良い映画であることは間違いない。

X-MEN:ファースト・ジェネレーション
今年のアメコミ映画のなかではこれがいちばん好き。マシュー・ヴォーンやるじゃん。

ミッション: 8ミニッツ
純粋に楽しめるSF映画。邦題が残念なところではある。

スーパー!
繰り返して言うが、目の前で行列に割り込んだ奴を撲殺する光景は素晴らしい。

サブマリン
飛行機のちっちゃい画面で観たことには気が引けるが、とてもよく出来たボーイ・ミーツ・ガールものだよ。

ATTACK THE BLOCK
ニック・フロストなら「宇宙人ポール」よりこっちのほうが面白いよ。来年に日本でも劇場公開されるはず。

WARRIOR
最近観たばかりだから印象が強いのかもしれないが、しっかり作られたスポーツ映画でした。

他にも良かったのは「FOUR LIONS」「トゥルー・グリット」「マイティ・ソー」「MI4」などなど。

それなりに観ているようでイーストウッドとかソダーバーグあたりの作品が抜け落ちているのはいかんなあ。来年はアジアの映画もしっかり観ないと。そして非リア充であるがゆえにロマンス映画を敬遠してるのではないかと、映画のリストを見ていて気付いた次第です。もっとまんべんなく鑑賞しないといかんですね。