「I’m Here」鑑賞


こないだのサンダンスで公開された、スパイク・ジョーンズの短編映画。またコメディ・タッチの内容になってるのかと思いきや不覚にも感動させられてしまったよ。

人間とロボットが共存している世界が舞台になっていて、その背景については一切説明されないものの、ロボットに対する一種の偏見や規制は存在しているらしい。そんななかで出会った2人のロボットの恋愛と自己犠牲を描いた、極めて真面目なラブストーリーになっている。

話はどことなく80年代の日本のSFマンガとかを彷彿させるけど、演出がとにかく巧い。表情の乏しいロボットたちに感情移入させてしまう手腕は見事だな。スパイク・ジョーンズってストーリーよりも映像が先行する作家かと思ってたけど、観る人のエモーショナルな部分にもちゃんと訴えることができるようになってたんですね。これは「かいじゅうたち〜」も早く観ないといかんな。

30分ほどの尺で、公式サイトで視聴可能だよ。エログロの描写などはないものの、スポンサーがアブソルート・ウォッカなので年齢制限があるサイトになってるのが少し残念。これは万人に観てもらいたい傑作なのに。

「マイレージ・マイライフ」鑑賞

前半はとても良く出来た映画だと思ったんだけどな、これ。企業の解雇通知人として全米を飛び回りマイレージ集めを趣味にしている主人公が、若くて賢い助手をつけられて彼女に仕事のコツを教えているうちに自分のやっていることを再認識するようになるだけでなく、忘れられない女性に出会ったことで根無し草だった自分の人生を見つめ直すという構図が非常に巧みに感じられたのですよ。

いまアメリカでは不況により多くの人々が解雇されているというタイムリーな事実も話に深みを与えていたのに、それが後半になって妹の結婚式というパーソナルな舞台に移ったら話がとても小ぢんまりとしたものになってしまったのが残念。式の当日になって怖じ気づく新郎なんて展開はあまりにもメロドラマすぎるというか。

俺が思うに、この映画の主人公には2つの特徴があって、

A. 全米を飛び回る解雇通知人
B. 結婚を面倒なものだと考えている独身男

というものであり、ストーリーテリングの常としてこれらに何かしらの危機やか挑戦がやってくるわけだが、それらがすべてB.のほうに集中している気がするんだよな。でも彼を主人公として特徴づけているのはA.のほうであるはずなのに、解雇通知人としての行いには明確な因果というか報いのようなものが生じず、彼の助手だけが報いを受けるというのはどうなんだろう。人々にクビを伝え続ける生活というものが、主人公にどう影響するのかを深く掘り下げて描いて欲しかったような気がする。

でも主人公を演じるジョージ・クルーニーは心の葛藤などをうまく表現していてハマり役か。彼の脇をかためるヴェラ・ファーミガとアナ・ケンドリックもいい感じ。その反面、ジェイソン・ベイトマンやザック・ガリフィアナキス、J.K.シモンズ、ダニー・マクブライドといったコメディ畑のそうそうたる面子を揃えておきながら、ベイトマン以外はほとんど出番がなかったのが残念だな。ふつう冒頭にガリフィアナキスのような知られた顔が出てきたら、後でもまた登場すると思うよなあ。

そして最後は実際に仕事から解雇された人々による、いかに家族が励みになったかが語られるインタビューで幕を閉じるわけだが、むしろ独り身のほうがクビになっても家族に迷惑をかけなくていいんじゃないの、と俺のようなひねくれ者の独身男は考えてしまうのです。

「FANTASTIC MR. FOX」鑑賞

邦題は「すばらしき父さん狐」になるのかな?ウェス・アンダーソンによるストップモーション・アニメ。かつてニワトリ泥棒をやっていたミスター・フォックスは妻が妊娠したことをきっかけに泥棒稼業から足を洗い、新聞のコラムニストとして妻子とむつまじく暮らしていた。しかし大きな木の中にできた家に引っ越したとき、そこから3つの裕福な農家を眺めているうちに昔の意欲がムクムクと沸き上がってきてしまい、それぞれの農家に泥棒に入ることに。3件とも泥棒に成功して有頂天になるフォックスだが、これにより激怒した3人の農家たちはフォックスを銃撃し、彼は尻尾を失ってしまう。さらに農家たちがフォックスたちの住む木を爆破したため、彼らは命からがら地中に逃げることに。しかし農家たちの追撃はそこにも迫ってきていて…というようなお話。

ウェス・アンダーソンってあの若さで良くも悪くも自分のスタイルを確立させてしまった人で、前作「ダージリン急行」は話の展開があまりにもそのスタイルにはまっていて食傷気味だったんだが、今回はストップモーション・アニメという技法を用いることで新しい境地に辿り着いたのかな…と思ってたら彼のスタイルは健在でした。微妙に噛み合ないシュールな会話とか、どこかぎこちない家族関係、60年代のブリティッシュ・ロックといったアンダーソン作品ではおなじみの要素があちこちで顔を出すことに。「子供に尊敬されない父親」が主人公だというのは「ロイヤル・テネンバウムス」や「ライフ・アクアティック」に似ているかな。ただし「アクアティック」ではそのマンガ的な展開が空回りしていることが多かったのに対し、今回はまさにマンガ(アニメ)という手法をとったために、どんな滑稽な展開があっても違和感なしに観れてしまうところが強みだな。

アニメの出来は「コラライン」とかに比べると多分にぎこちなくて、教育テレビとかで見かけるものをちょっと立派にしたような感じ。12fpsで撮影されたというのもチープさに影響してるのかな。でも物語の素朴さにはよく合っていると思う。ミスター・フォックスの声をあてているジョージ・クルーニーも、いかにも本人そのままといった感じで気楽に演技しているところが良かったな。

アニメ作品とはいえ、内容はむしろ30〜40代あたりのお父さんに受けるんじゃないかな。日本で宣伝するのはなかなか難しそうだ。まあこれでウェス・アンダーソンは今までと違った映画を作ったわけで、それが彼の今後の作品にどう影響するか期待したいところです。

「ブロック・パーティ」鑑賞

いまだに復帰するんだかどうなんだかよく分からないデイヴ・シャペルが2004年に主催した、ブルックリンでの無料コンサートの姿を追ったドキュメンタリー。シャペルの地元のオハイオから近所のオバサンや大学のブラスバンドを招いたり、ヒッピー夫妻の家の前の区画を借りてステージを建てたあと、カニエ・ウェストやエリカ・バドゥ、モス・デフ、ジョン・レジェンドといった一流アーティストたちが揃ったコンサートが行われていくのが観ていて微笑ましい。個人的にはビッグバンドであるザ・ルーツが一番良かったかな。というかクエストラブは殆ど一日中ドラムを叩き続けてるのが凄いな。あと大トリのフージーズが皆よりも別格な扱いを受けている気がしなくもないが、まあ7年ぶりの再結成ということだから仕方ないか。

日本ではミシェル・ゴンドリーの監督作品という点が売りにされてたようだけど、映画の中心となるのは明らかにデイヴ・シャペル。相変わらず人種に関する際どいジョークを連発してるけど、このコンサートをすべて自費で賄ったという彼の人柄がよく分かる内容になっている。というか彼、コメディアンやるには性格が優しすぎるのかもしれない。この映画の公開と前後して神経衰弱(?)になって大人気番組「シャペルズ・ショー」を降板してしまったわけだが、最近また動向をチラホラ聞くようになったのでぜひ皆の前に復帰してほしいところです。

特にハプニングとかも起きないので弱冠まったりしている感じがするけど、とても良い映画でした。

「ザ・シンプソンズ MOVIE」鑑賞

今まで観るのをド忘れしていた作品。俺にとってのシンプソンズってそんなものになってしまったのかなあ。昔はテレビでやってたらかかさず観てたのに。でも悪い作品ではなかったよ。なんか惰性で続いている感じのする最近のTVシリーズ版のエピソードよりもずっとネタが詰まっていて、大声で笑った箇所もいくつかあったし。映画版ということで予算もかかってて作画のレベルも非常に高かったし。

ただしTVの話よりも3倍近く尺が長いこともあって、話の流れがどうも微妙にズレて感じられたかな。「シンプソンズ」のエピソードって話の導入部が結構長いことで有名で、ある事柄から始まった話が曲がりに曲がってやっとその話の中心テーマに辿り着くところが(当初は)斬新だったわけだが、劇場版では逆にどんな話になるのか冒頭だけでは分かりにくく、ストーリーが流れにのるまで少し時間がかかりすぎてたような気がする。あとやはりシンプソン一家はスプリングフィールドの住人たちとドタバタやってるのが一番楽しいわけで、彼らを町の外に出してしまったことでその楽しさが半減してしまったような。

大金をかけて劇場版をつくらなくても、TVシリーズのほうで上質のエピソードを作ってくれれば俺は何も言いません、