ヴェルナー・ヘルツォークの比較的最近の作品「神に選ばれし無敵の男」をDVDで観た。
怪力男としてベルリンで名を馳せ、ナチスに対するユダヤ人の象徴として尊敬されたポーランド人の若者と、彼の雇い主でナチスに取り入ろうとするインチキ予言者(どちらも実在の人物)を描いた映画なんだが、どうしても「アギーレ 神の怒り」や「フィッツカラルド」といったヘルツォークの傑作と比べるとTVムービー程度の出来にしか見えんなあ。あれらの作品が、猛り狂う自然と狂気につかれた男のコントラストを衝撃的に描いてたのにくらべ、今作は権力を手にする前のナチスと素朴で内気な怪力男の対決を扱っているので、どうもせせこましい感じがするのは否めない。
役者は予言者を演じるティム・ロスがズバ抜けて見事な演技を見せてくれるものの、それ以外の役者に素人が多いため、逆に彼が完全に浮いてしまっている。主人に本当の怪力男、ピアニスト役に本当のピアニストをあてがうのは斬新だけど、あまり成功しているようにも見えない。だから人によって演技力と英語力がまちまちで、兄弟なのにアクセントが違うなんてことになってるのはどうも気になってしまう。
決して悪くはない作品なんだけどね。「アギーレ」などと比べるのが酷なのかな。
アメリカでは来週ついに「SUPERMAN RETURNS」が公開されるわけで、既に鑑賞した批評家たちからは絶賛されてるらしい。ああ早く観てえ。だがとりあえずその前に、こないだ発売されたDVDムービー「SUPERMAN: BRAINIAC ATTACKS」を観る。 これはアニメ・シリーズ「SUPERMAN: THE ANIMATED SERIES」の長編作品で、例によってブルース・ティムがデザインしたキャラクターたちが画面中を動き回ってくれるのです。ただし「SUPERMAN : TAS」や、特にあの大傑作「JUSITICE LEAGUE UNLIMITED」では俺みたいなオールドファンも喜ばせてくれるような話の展開が多々あったのに比べ、今回の作品は明らかに内容が子供むけ。スーパーマンの宿敵ブレイニアックはただの巨大ロボットみたいで、シリーズ版にあった知的で冷酷な感じはなくなってるし、「JLU」では主人公なみのクールさを発散していたレックス・ルーサーに至っては、やたら騒いでくだらないダジャレをとばすような、実につまらないキャラクターになってしまっている。おまけにどうも絵が下手だし、「JLU」並のクオリティを期待してると本当に失望させられる内容になっている。おかげでアマゾンでも酷評されまくってるようだ。
イギリスが誇るスーパーマリオネーション冒険活劇「サンダーバード」の劇場版「サンダーバード6号」をDVDで観る。まだ観たことがなかったのです。もう1つの劇場版(なぜか最後にクリフ・リチャードが出てくるやつ)は観たことあるんだけどね。 感想としては、まあ悪くもないけど期待してたほどじゃなかったかな。時間が長くなったせいで、TVシリーズ版にあった「限られた時間での救出活動」という緊張感がなくなっていて、全体に間延びした雰囲気になってるのが残念。しかも俺の好きなサンダーバード4号は冒頭にちょこっと出てくるだけだし。それでも1号や2号が大空を舞うシーンは非常にカッコいいし、ラストの複葉機によるアクションなんかもスリルがあって楽しめるかな。2068年が舞台の作品だけど、未来社会に対する夢のようなものが感じられるのがいいですね。脚本がダメダメだった「チーム・アメリカ」なんぞよりもずっと優れた作品だろう。
一部でカルト的な人気を持つ、アンディ・ラウ主演の映画「マッスルモンク」をDVDで観る。 いやー。こういう作品だったとは。冒頭では肉じゅばんをまとって筋肉ムキムキのラウの姿には一瞬引くものの、アクション描写は相変わらず一流だし、サスペンスの醸し出し方なんかも上手でなかなかストレートに楽しめる。でも謎のインド人が逮捕されてからズルズルと話がすべっていくというか、プロットが徐々に破綻していき、冒頭の展開からずっと離れたところに着地して終わるラストが、まあ、なんというか、といった感じ。このユルさ加減を楽しめるかどうかが、この作品を観るときの最大のポイントなんだろう。