「インデペンデンス・デイ: リサージェンス」鑑賞

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昨年は「ロッキー」や「スター・ウォーズ」の続編が作られて、今年は「Xファイル」が再開したりと、いったい今は何年なんだというフランチャイズ展開が続いているわけですが、これも20年ぶりの続編ですからね。おれ前作は大学生のときに観たけど、もっと若い人は劇場で観てないんじゃないだろうか。まあ前作がビデオやテレビ放映で根強い人気を保ってたということですかね。

前作も公開時にはすでに、頭カラッポにしても見られるハリウッド的ブロックバスターという評判を得ていたわけだが、今回もそのまんま。本国では当然ながら批評家陣の受けは悪く、興行成績もイマイチだったのであまり期待せずに観に行ったのですが、思ったよりかは楽しめた。B級インベイジョン映画として観る分には悪くない出来かと。ネタバレしないように感想をざっと:

・1996年が舞台だった前作は地球の当時の技術で、圧倒的な軍事力を誇る宇宙人に対抗するという醍醐味があったわけだが、今回は宇宙人のテクノロジーを地球人側が組み込んで月面に基地を構えていたり、さらにエクスマキナ的な存在が登場したりと、ちょっとチートな武力バランスになっている。まあ普通のSFアクションとして観ればよいかと。

・前作もそうだったけど重力の描写は気にするなよ。高層ビルを引き付けるくらいの引力をもった巨大宇宙船が地球の表面にべったり張り付いたら地球の軌道が変わるくらいの大惨事が起きるはずだが、前作も「月の4分の1の質量」をもった宇宙船が月の横を通っても何もなかったので、まあそういう世界なんでしょう。

・キャストはウィル・スミスの続投がないのを残念がる声もあるようだけど、彼が出てたら話の大半を彼の活躍に割かなければならなかっただろうから、他の役者にまんべんなく焦点をあてるという意味では彼が出なくてよかったのでは。それでもジェフ・ゴールドブラムの父親とか再び出す必要はあったのかと思うし、セラ・ワード演じる大統領の話とかは中途半端になってる印象を受けましたが。あとシャルロット・ゲンズブールがハリウッド大作に出るようになったのはいいですね。

・大統領(ビル・プルマンのほう)の娘を前作のメイ・ホイットマンでなくマイカ・モンローが演じることになったことが非難されてるらしいが、マイカ・モンローの軍服姿はいいぞ。いいぞ。

・誰もが前作で死んだと思っていた、ブレント・スパイナー演じる科学者が生きていて、意外と重要な役を演じているのがスタートレックTNGのファンとしては嬉しいところ。各キャラクターの恋愛とか家族愛の描写も、例えばマイケル・ベイの映画なんかよりは(一応)きちんと描かれているが、いちばんのロマンスがゲイのキャラクター同士であるところは監督の趣味なのだろうなあ。怪獣映画っぽい展開になるところも、「ゴジラ」のリベンジだったのですかね。

・字幕で「復讐」とすればいいところが「リベンジ」となっていて、「赤ちゃん」が「ベイビー」になっていて、「座席」が「シート」となっているあたり、ああこれは戸田奈津子の字幕だなと思ったらやはりそうだった。あのルー大柴のような訳し方はかなりデンジャーなところにカミングしていると思うの。

・そして最近のハリウッド映画の常として中国市場へのサービスが込められているわけですが、あの中華ミルクはプロダクト・プレースメントだよね?「アイアンマン3」もそうだったが、なぜ中国のミルクがやたらハリウッド映画に登場するのか。中国の旗を掲げた敏腕パイロットを演じるアンジェラベイビーも、ヘルメット被るのに髪が長すぎやしないかとか目を見開きすぎだろうと感じたものの、直前に「シン・ゴジラ」の予告編を見て石原さとみの英語に悶絶したばかりだったので、中国人俳優が英語勉強してハリウッドで頑張ってることは否めないよね。

前作ほどのインパクトはないし、続編も作らなくていいいんじゃないの、とは思うものの、それこそ頭カラッポにして見られるアクション大作としてはそれなりに楽しめる内容でございました。

「ミストレス・アメリカ」鑑賞

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ノア・バームバックの新作。もう一方の新作「ヤング・アダルト・ニューヨーク」は日本でも劇場公開されるのに、こっちはVODスルーだってさ。なんだこの差は。

ニューヨークのバーナード大学に入学したトレーシーは大学生活に馴染めず、人気のある文芸サークルへの入部も認められずに悶々とした日々を送っていた。そこで母親が再婚する予定の相手の娘であるブルックに連絡して二人は出会うことに。ニューヨーカーらしく奔放な生き方をしているブルックにトレーシーはすぐに憧れるが、ブルックが開店する予定だったレストランへの出資がうまく集まらず、ブルックはコネチカットに住む裕福な元カレとその妻を頼ることにする。そしてトレーシーの元カレとそのガールフレンドが運転する車に乗って、4人はコネチカットに向かうが…というあらすじ。

前半はニューヨークでの思春期ドラマっぽくて、後半はコネチカットの家でのドタバタ劇みたいになって、若干話の整合性がとれていないかな。とはいえコネチカットでの会話劇はウディ・アレンっぽくって面白かった。若い女の子や監督の恋人がキャスティングされてるのもアレンっぽいというのかな。大人数でのドタバタ劇ってバームバックの作品にしては珍しいが、彼って「マダガスカル3」の脚本とかも書いてるので意外とこういうのは得意なのかもしれない。才能があると思って憧れてた人物が実はそうでもなかった、という展開はハル・ハートリーの「ヘンリー・フール」を連想しました。

ブルックを演じるのがグレタ・ガーウィグで、「フランシス・ハ」以上に周囲の空気が読めずに自分の目標に突っ込んでいく女性を演じてます。そしてトレーシーを演じるローラ・カークって「ゴーン・ガール」で憎ったらしいモーテル女を演じた女優か。雰囲気が全く違うんで気付かなかった。あと音楽を「イカとクジラ」以来久しぶりにディーン・ウェアハムとブリッタ・フィリップスが担当しているが、なぜかOMDとかTOTOなどの懐メロばかりが使用されてたな。ウェアハムはコネチカットの隣人役として出演もしてて、意外といい感じじゃないの。

バームバックとガーウィグによる脚本はセリフがやたら多くて、トレーシーの小説のナレーションとかいらなかったんじゃないかと思うし、全体的にこなれてない感じもするものの、勢いがあるぶん「ヤング・アダルト・ニューヨーク」よりも楽しめたかな。せめて日本でもDVDくらい出てくれればねぇ。

「MIDNIGHT SPECIAL」鑑賞

Midnight Special (2016)
ジェフ・ニコルズの新作。これ何も知らないまま観るのがベストだと思うので、以下はネタバレに注意。

舞台となるのはテキサス郊外。目にゴーグルをかけた8歳の少年が、二人の男が運転する車に乗って真夜中を疾走していた。男のうち一人は少年の父親で、カルト教団にいた少年を奪い返し、友人であるもう一人の男性とともに教団から逃れようとしていたのだった。この少年の名前はアルトンといい、神秘的なメッセージを受信するなどといった不思議な能力を持っていたため、教団では神の子のような扱いを受けていた。さらにアルトンがアメリカ政府の極秘の暗号電波をも受信したことから政府が彼の存在に気付き、彼らもアルトンを追い始める。教団と政府に追われるなか、父と子はアルトンが告げた場所へと向かうのだが…というあらすじ。

親と子の不思議なお告げに関する物語、という意味では監督の前々作「テイク・シェルター」に通じるものがあるかな。政府が迫り来るなかでの逃避行は「E.T.」の後半を彷彿とさせるが、個人的には70年代のSF映画っぽい雰囲気も感じました。アルトンが夜空から◯◯を落とすシーンとかゾクゾクするよ。その一方でアルトンの能力が強力すぎて、彼を追う教団と政府があまり怖い存在になってないのが残念。逃避行がもっと絶望的なものになっていればラストのカタルシスが一段と冴えていたかも。あとこの手の作品にしては音楽が比較的凡庸だったかな。クリフ・マルティネスあたりが担当してればもっと印象的な内容になってたのでは。なおエンドクレジットでは監督の兄貴が一曲歌ってます。

主演はニコルズの作品の常連であるマイケル・シャノンで、共演者にはアダム・ドライバー、キルステン・ダンスト、ジョエル・エドガートン、サム・シェパードなどとかなりの面子が揃っている。「ファーゴ」もそうだったけどキルステン・ダンストってオバハン演じるようになってからいい女優になりましたね。

本国ではスピルバーグ作品と比較されているようだけど、そう呼ぶには何かが足りない(子供の観点とか、トラウマ的な父と子の関係とか)ような気がするものの、「スーパー8」なんぞに比べればずっと良いぞ。題名通り真夜中にミニシアターとかで観たら非常に楽しめる映画ではないでしょうか。

「X-MEN:アポカリプス」鑑賞

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アメリカで見てきた。27日公開でも東海岸が27日になってれば西海岸では26日に封切りされるの?日本公開は8月なのでネタバレしないように感想をざっと:

・本国では批評家の評判が悪くて、なかには「ファイナル・ディシジョン以下」という評もあったので覚悟しながら観たけど、何のことはなく普通に楽しめる作品であったよ。

・そりゃミュータントが狩られるなか、政治的不安を背景にエグゼビアとマグニートとミスティークの思想を絡め、さらに過去と未来の姿を描いた傑作だった前作に比べれば出来は劣るよ。大人が主人公だったあちらに比べて、こっちは少年少女が主体の映画だもの。だから変に期待せずに気楽に観ればいいんじゃないですか。

・悪い点を先に言っておくと、やはり悪役にアポカリプスを持ってきたところ。コミックでも図体デカくて威張ってる割にはいまいち何をしたいのかよく分からない奴なのだが、今回も石の下敷きになって何千年も無力だったのが突然目覚めて世界に新しい秩序をもたらそうとするあたり、なんか迷惑なオッサンだなという感じは否めない。ミュータントであるXメンたちに脅威を与える存在でないと悪役としての魅力は半減してしまう。さらにコミックと違って普通の人間サイズなので、どうもみみっちい感じがするんだよな。これは「デッドプール」のコロッサスみたいに巨大なキャラにすることはできなかったのか。

・その一方では人気のあるキャラクターの立て方が見事で、クイックシルバーの活躍シーンなんて前回以上に痛快だし、基地で出てくるあいつの格好なんてオールドファンが泣いて喜ぶような姿ですからね。各キャラクターの掛け合いなんかはやはり監督が手馴れているなあと。

・あまり強そうでなさそうで実は強いアポカリプスを倒すために最後はアレが出てくるわけですが、やはりそうする必要があったんだろうな。当然あるエンドクレジット後のシーンの展開(原作知らないと解りにくいかも)と掛け合わせると、次作(あるいはウルヴァリン3)はアレとあいつが戦う内容になるのだろうか。

・エンドクレジットといえば、コミック業界の人たちってクレジットに載ってたっけ?俺は気づかなかったよ。

・前述のクイックシルバーが主役を食っているのは別として、生徒たちが活躍するためかマカヴォイ/ファスベンダー/ローレンスの3人のシーンは前回よりも少なめ。新しいキャストもそんなに強烈な演技をしているわけでもなく、演技面は全体的に薄いかな。オスカー・アイザックなんてすごくいい役者だけど、やはりアポカリプスの重厚なメークの下では強烈な印象を残せず。オリビア・マンのサイロックも宣伝されてるほど活躍してないものの、今後の「Xフォース」で再登場するのかな?あとソフィー・ターナー演じるジーン・グレイの訛りが気になったのだが、あれはオランダ訛りという設定か?

・今回は夫婦で出演されております。

・先月の「シビル・ウォー」と比べる向きもあるようだけど、あちらは新しい展開への布石を敷いていたのに対し、こちらはいちおう三部作の締めくくりということで、別に比較しなくてもいいんじゃないかと。十分に面白い作品。

機内で観た映画2016

アメリカ出張に行ってたので、飛行機のなかで観た映画の感想をざっと:

「カンフー・パンダ3」:最強の敵がやってきて、最初は主人公が苦戦していたものの、意外にも奥義を習得してやっつける、というパターンを三たび繰り返しているだけでは…ロールプレイングゲームとかもそうだけど主人公が「選ばれし者」だという設定っておれ嫌いなんだよな。アニメーションの出来はよくてストーリーテリングも手馴れているだけに、もっと新しいことやってほしかった。自分の子供3人をしっかり声優に起用させてるところにアンジェリーナ・ジョリーの親バカっぷりが伺える。

「アーロと少年」:ピクサー作品、もといディズニーアニメにしては珍しく登場する動物が微妙にグロくて、小動物は肉食動物にムシャムシャ喰われるし、酒?に酔って気色悪い幻覚を見たり、さらには放尿シーンがあったりと、ちょっとだけ大人向けの作りになってるのですが、じゃあ話が面白いかというとそうでもなく。迷子の帰郷って「ファインディング・ニモ」がずっと上手くやってしまったからなあ。そもそも首長竜に農耕をさせるというコンセプトがよく分からんのよね。

「Concussion」:アメフトの衝突が脳に与える悪影響について検証し警告した実在の医師をウィル・スミスが演じているのだが、もはや彼はセレブとしての印象が強いため、真面目に演技しようとすればするだけ逆に空回りしているような感は否めない。脇をベテラン中年の俳優陣で固めているのもスミスとしっくり合ってないような。主人公の生活にではなく、脳への悪影響の説明や、NFLが彼に仕掛けてきたという嫌がらせにもっと焦点を当ててれば面白くなっただろうに。

「ズーランダー No.2」:前作はそんなに好きではなかったけど、これはコメディとアクションがあって気軽に観るぶんには楽しめる作品では?ペネロペ・クルスを加えたのが良かったですね。あとはハリウッドとファッション業界のセレブがいろいろチョイ役で出てくるのを楽しむわけだが、ニール・デグラス・タイソンって彼らに匹敵するセレブになったんだなあ。

「ビクター・フランケンシュタイン」:最後にクレジットを見て気づいたのだが、これ脚本がマックス・ランディスだったのか。しかし手垢のついた話が進んで行くだけで、さほど面白いとは思えず。セットも立派だし、出演者も体をはって演技してるのに、なんか報われてないのよな。「アメリカン・ウルトラ」も凡作だったが、マックス君はコメディ・アクションでなく「クロニクル」みたいな真面目な若者向け作品を書いたほうが良いのではないか?

あとは「オデッセイ」の各シーンをつまんで観ても十分面白いことに気づく。中国との「スターマン」や最後の「アイアンマン」のところ、あるいはリッチ・パーネル・マヌーバーの説明とか。1つの問題がテンポよく解決される構成になってるんだよな。

なお今までは飛行機で提供される映画って、キワどい内容は編集されてスクリーンの画角も修正されてたけれど、今回の便では「この作品の内容は修正されてません。気をつけて視聴ください」みたいな断り書きがついているものが多かった。これはこれで良いことかと。エッチなシーンを見てるのを周囲の乗客に気付かれるのは恥ずかしいでしょうが。