「MIDNIGHT SPECIAL」鑑賞

Midnight Special (2016)
ジェフ・ニコルズの新作。これ何も知らないまま観るのがベストだと思うので、以下はネタバレに注意。

舞台となるのはテキサス郊外。目にゴーグルをかけた8歳の少年が、二人の男が運転する車に乗って真夜中を疾走していた。男のうち一人は少年の父親で、カルト教団にいた少年を奪い返し、友人であるもう一人の男性とともに教団から逃れようとしていたのだった。この少年の名前はアルトンといい、神秘的なメッセージを受信するなどといった不思議な能力を持っていたため、教団では神の子のような扱いを受けていた。さらにアルトンがアメリカ政府の極秘の暗号電波をも受信したことから政府が彼の存在に気付き、彼らもアルトンを追い始める。教団と政府に追われるなか、父と子はアルトンが告げた場所へと向かうのだが…というあらすじ。

親と子の不思議なお告げに関する物語、という意味では監督の前々作「テイク・シェルター」に通じるものがあるかな。政府が迫り来るなかでの逃避行は「E.T.」の後半を彷彿とさせるが、個人的には70年代のSF映画っぽい雰囲気も感じました。アルトンが夜空から◯◯を落とすシーンとかゾクゾクするよ。その一方でアルトンの能力が強力すぎて、彼を追う教団と政府があまり怖い存在になってないのが残念。逃避行がもっと絶望的なものになっていればラストのカタルシスが一段と冴えていたかも。あとこの手の作品にしては音楽が比較的凡庸だったかな。クリフ・マルティネスあたりが担当してればもっと印象的な内容になってたのでは。なおエンドクレジットでは監督の兄貴が一曲歌ってます。

主演はニコルズの作品の常連であるマイケル・シャノンで、共演者にはアダム・ドライバー、キルステン・ダンスト、ジョエル・エドガートン、サム・シェパードなどとかなりの面子が揃っている。「ファーゴ」もそうだったけどキルステン・ダンストってオバハン演じるようになってからいい女優になりましたね。

本国ではスピルバーグ作品と比較されているようだけど、そう呼ぶには何かが足りない(子供の観点とか、トラウマ的な父と子の関係とか)ような気がするものの、「スーパー8」なんぞに比べればずっと良いぞ。題名通り真夜中にミニシアターとかで観たら非常に楽しめる映画ではないでしょうか。

「X-MEN:アポカリプス」鑑賞

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アメリカで見てきた。27日公開でも東海岸が27日になってれば西海岸では26日に封切りされるの?日本公開は8月なのでネタバレしないように感想をざっと:

・本国では批評家の評判が悪くて、なかには「ファイナル・ディシジョン以下」という評もあったので覚悟しながら観たけど、何のことはなく普通に楽しめる作品であったよ。

・そりゃミュータントが狩られるなか、政治的不安を背景にエグゼビアとマグニートとミスティークの思想を絡め、さらに過去と未来の姿を描いた傑作だった前作に比べれば出来は劣るよ。大人が主人公だったあちらに比べて、こっちは少年少女が主体の映画だもの。だから変に期待せずに気楽に観ればいいんじゃないですか。

・悪い点を先に言っておくと、やはり悪役にアポカリプスを持ってきたところ。コミックでも図体デカくて威張ってる割にはいまいち何をしたいのかよく分からない奴なのだが、今回も石の下敷きになって何千年も無力だったのが突然目覚めて世界に新しい秩序をもたらそうとするあたり、なんか迷惑なオッサンだなという感じは否めない。ミュータントであるXメンたちに脅威を与える存在でないと悪役としての魅力は半減してしまう。さらにコミックと違って普通の人間サイズなので、どうもみみっちい感じがするんだよな。これは「デッドプール」のコロッサスみたいに巨大なキャラにすることはできなかったのか。

・その一方では人気のあるキャラクターの立て方が見事で、クイックシルバーの活躍シーンなんて前回以上に痛快だし、基地で出てくるあいつの格好なんてオールドファンが泣いて喜ぶような姿ですからね。各キャラクターの掛け合いなんかはやはり監督が手馴れているなあと。

・あまり強そうでなさそうで実は強いアポカリプスを倒すために最後はアレが出てくるわけですが、やはりそうする必要があったんだろうな。当然あるエンドクレジット後のシーンの展開(原作知らないと解りにくいかも)と掛け合わせると、次作(あるいはウルヴァリン3)はアレとあいつが戦う内容になるのだろうか。

・エンドクレジットといえば、コミック業界の人たちってクレジットに載ってたっけ?俺は気づかなかったよ。

・前述のクイックシルバーが主役を食っているのは別として、生徒たちが活躍するためかマカヴォイ/ファスベンダー/ローレンスの3人のシーンは前回よりも少なめ。新しいキャストもそんなに強烈な演技をしているわけでもなく、演技面は全体的に薄いかな。オスカー・アイザックなんてすごくいい役者だけど、やはりアポカリプスの重厚なメークの下では強烈な印象を残せず。オリビア・マンのサイロックも宣伝されてるほど活躍してないものの、今後の「Xフォース」で再登場するのかな?あとソフィー・ターナー演じるジーン・グレイの訛りが気になったのだが、あれはオランダ訛りという設定か?

・今回は夫婦で出演されております。

・先月の「シビル・ウォー」と比べる向きもあるようだけど、あちらは新しい展開への布石を敷いていたのに対し、こちらはいちおう三部作の締めくくりということで、別に比較しなくてもいいんじゃないかと。十分に面白い作品。

機内で観た映画2016

アメリカ出張に行ってたので、飛行機のなかで観た映画の感想をざっと:

「カンフー・パンダ3」:最強の敵がやってきて、最初は主人公が苦戦していたものの、意外にも奥義を習得してやっつける、というパターンを三たび繰り返しているだけでは…ロールプレイングゲームとかもそうだけど主人公が「選ばれし者」だという設定っておれ嫌いなんだよな。アニメーションの出来はよくてストーリーテリングも手馴れているだけに、もっと新しいことやってほしかった。自分の子供3人をしっかり声優に起用させてるところにアンジェリーナ・ジョリーの親バカっぷりが伺える。

「アーロと少年」:ピクサー作品、もといディズニーアニメにしては珍しく登場する動物が微妙にグロくて、小動物は肉食動物にムシャムシャ喰われるし、酒?に酔って気色悪い幻覚を見たり、さらには放尿シーンがあったりと、ちょっとだけ大人向けの作りになってるのですが、じゃあ話が面白いかというとそうでもなく。迷子の帰郷って「ファインディング・ニモ」がずっと上手くやってしまったからなあ。そもそも首長竜に農耕をさせるというコンセプトがよく分からんのよね。

「Concussion」:アメフトの衝突が脳に与える悪影響について検証し警告した実在の医師をウィル・スミスが演じているのだが、もはや彼はセレブとしての印象が強いため、真面目に演技しようとすればするだけ逆に空回りしているような感は否めない。脇をベテラン中年の俳優陣で固めているのもスミスとしっくり合ってないような。主人公の生活にではなく、脳への悪影響の説明や、NFLが彼に仕掛けてきたという嫌がらせにもっと焦点を当ててれば面白くなっただろうに。

「ズーランダー No.2」:前作はそんなに好きではなかったけど、これはコメディとアクションがあって気軽に観るぶんには楽しめる作品では?ペネロペ・クルスを加えたのが良かったですね。あとはハリウッドとファッション業界のセレブがいろいろチョイ役で出てくるのを楽しむわけだが、ニール・デグラス・タイソンって彼らに匹敵するセレブになったんだなあ。

「ビクター・フランケンシュタイン」:最後にクレジットを見て気づいたのだが、これ脚本がマックス・ランディスだったのか。しかし手垢のついた話が進んで行くだけで、さほど面白いとは思えず。セットも立派だし、出演者も体をはって演技してるのに、なんか報われてないのよな。「アメリカン・ウルトラ」も凡作だったが、マックス君はコメディ・アクションでなく「クロニクル」みたいな真面目な若者向け作品を書いたほうが良いのではないか?

あとは「オデッセイ」の各シーンをつまんで観ても十分面白いことに気づく。中国との「スターマン」や最後の「アイアンマン」のところ、あるいはリッチ・パーネル・マヌーバーの説明とか。1つの問題がテンポよく解決される構成になってるんだよな。

なお今までは飛行機で提供される映画って、キワどい内容は編集されてスクリーンの画角も修正されてたけれど、今回の便では「この作品の内容は修正されてません。気をつけて視聴ください」みたいな断り書きがついているものが多かった。これはこれで良いことかと。エッチなシーンを見てるのを周囲の乗客に気付かれるのは恥ずかしいでしょうが。

「ハイ・ライズ」鑑賞

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J.G.バラードの1975年の小説を映像化したもの。

舞台となるのはロンドン郊外に建てられた40階建ての高級タワーマンション。スーパーマーケットや学校、スイミングプールなどを内部に完備したその建物の25階に、主人公の医師ロバート・ラングは新しく引っ越してくる。奇しくもマンションの各階は住人の社会的地位を反映しており、無骨なテレビカメラマンのリチャード・ワイルダーたちは低い階に住み、富裕層の住人たちは高い階に住み、そして最上階のペントハウスにはマンションの設計者であるアンソニー・ロイヤルが住んでいた。当初こそ住人たちは秩序良く生活を営んでいたものの、やがて頻発する停電などによって鬱憤がたまっていき、マンションが1つの隔離された世界となって混沌の渦へと巻き込まれるのであった…というあらすじ。

おれ原作を読んだのはもう20年くらい前(こんど復刊されるみたいね)なので詳細はあまり覚えてないものの、ラングが廃墟と化したマンションで犬の肉を食いながらそれまでの経緯を振り返る冒頭から最後まで、原作にはかなり忠実な内容になっていたと思う。監督のベン・ウィートリーの作品を観るのはこれが初めてですが、いささかコテコテな暴力描写などが、どことなく突き放した感のあるバラードの文体をうまく補完できていたのではないか。高層階の住人たちが揃いのスポーツウェアに身を包んで下層階を襲撃する光景に、バラード後期の「スーパー・カンヌ」(だったか「コカイン・ナイト」だったか)との共通点を感じてしまったよ。

話が設定されている年代は明言されていないが、おそらく原作と同じ70年代。よって携帯電話やパソコンなどは登場せず。「クラッシュ」もそうだったがバラードの話は無理に現代に持ってこないほうが良いと思う。70年代のファッションや建築のデザインが話にうまく合っている一方で、40階のタワーマンションって今となってはあまり高くないよね、とつい思ってしまう。原作読んだときは「プールが途中の階にあるマンションなんて作れるのか!」と驚いたけど、それも今ではそんなに珍しくないものかと。ただ現在のように40階以上の高層マンションができるようになると、上層階と下層階の価格差がより激しくなり、それが住人の資産格差などに直結して管理組合でイザコザが起きるケースが日本でもあるようで、そういった意味ではレトロながらも現代に通じるテーマをもった作品である。

主人公のラングを演じるのがトム・ヒドルストン。裸のサービスショットも多いですよ奥さん。ただ劇中ではいちばん「普通の人」という役回りなので、肉体派で暴力的なワイルダーを演じるルーク・エバンズのほうがおいしい役になっているな。対する高層階の住人にジェームズ・ピュアフォイなど。最上階のアンソニー・ロイヤルはジェレミー・アイアンズ。ロイヤルってもっと偏狭なマッド・サイエンティストみたいなキャラクターかと思っていたけど、ラングと並んで最後まで正気を保とうとする人物を好演している。女性陣ではシエナ・ミラーやエリザベス・モス、キーリー・ホーズなどが体を張った演技を見せてくれます。音楽はクリント・マンセルが担当していて、いつもの彼の音楽よりもギターやストリングスが多用されているかな?アモン・デュールやアバ、ポーティスヘッドなどの曲も使われていて、最後にザ・フォールを持ってくるのは、分かってるなあと。

これで「クラッシュ」「ハイ・ライズ」と映画化されたら残るはやはり「コンクリート・アイランド」なわけで、一時期はクリスチャン・ベールが映画化するなんて話もあったらしいけどね。あれは日本を舞台にしても十分成り立ちそうだと考えているのだが、どうでしょう?

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」鑑賞

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公開中なので感想をざっと。いちおうネタバレ注意:

・よく油を差された機械のごとく、多くのキャラクターが登場しながらもきちんと各々の見せ場を作って、展開も分かりやすくしながらストーリーを進めていく手際は、さすがにマーベルの長年の経験が活かされてますね。ルッソ兄弟は前作「ウィンター・ソルジャー」でもアクションと政治性をうまくブレンドしていたわけで、どこかしらアラの目立った「ウルトロン」以上にアベンジャーズっぽい作品になっているかと。

・と言いつつもやはりキャラクターが多すぎるのでは。以前からの登場人物に加えて新しいのもたくさん出てきて、それなりに事前勉強みたいなものが求められるため、これで初めてマーベル映画を観た観客はどこまで楽しめるのだろう?

・ソーとハルクという巨頭ふたりを登場させなかったことで各チームの戦力的なバランスがとれたのは正解だったが、ビジョンも手持ちぶさたな扱いをされていたような。今後「インフィニティ・ウォー」に向けてさらに多くのキャラクターが出てくるわけで、そこらへんの交通整理はきちんとやっておいたほうがいいだろう。

・原作は911テロと愛国法の誕生というアメリカの情勢を反映させた色が強かったが、こちらは事件の発端となるテロがラゴスで起きたのは、ブラック・パンサーのワカンダに絡める必要があったからだろうか。でもアフリカのテロなんてアメリカ政府はろくに気にしないと思うのよね。

・題名に「キャプテン・アメリカ」とついているだけあって基本的にはキャップ側のチームに寄ったつくりになっているが、明らかに厄病神であるバッキーを最後まで守るキャップの動機にいまいち納得ができず、最後の展開には少しモヤモヤするものを感じたのは俺だけでしょうか。

・スパイダーマンの出演は予想してたよりもよかった。トム・ホランドは若き日のトビー・マクガイアを彷彿とさせていい感じ。ビリー・エリオットのミュージカルにも出てたそうだが、ジェイミー・ベルにも似てますね。その一方でマリッサ・トメイのMILFなメイおばさんはヤバい。ピーターよりも精神的に不安定そうなキャラクターにしてどうするんだよ。今からでも遅くないからキャスティングしなおすことをお勧めします。

・ブラック・パンサーがアフリカ訛りの英語を話すのが違和感あったな。確かによく考えれば不自然ではない設定なのだが、完璧な英語(や他の言語)を話せる知的なキャラクターという印象を抱いていたので。あとすべてのアメコミ映画に言えることだが、マスクを外しすぎではないか。

・変装から爆破から拷問まで、すべてひとりでコツコツとやっていくあの悪役は、ご苦労さまでした。

・全体的にはとてもよくできた作品であり、「ウルトロン」の後のフェーズ3の展開を活性化させることに成功している反面、やはりフランチャイズ疲れのようなものを感じてしまうのよな。上映前に「ローグ・ワン」の予告編を観て思いましたが、これから何年にもわたって公開される関連作を随時チェックしていくことを考えると、期待よりも疲労のようなものをなんとなく感じてしまうのです。