「X-MEN: フューチャー&パスト」鑑賞


アメリカで観てきてしまったのだよ。ネタバレにならぬよう簡単な感想を:

・『Xメン映画の中では最高の出来』という声がアメリカでは既に挙ってまして、確かに個人的にも『X2』と並んで非常に楽しめた作品であった。

・アクション映画ながらもヒューマンドラマ(ミュータントドラマ?)をきっちりと仕立てていて、ベトナム戦争とパリ協定という争乱の時代を背景に、迫害されるミュータントの葛藤をうまく描いている。

・未来と過去(1973年)の物語が同時に進むため、プロットがみっちり詰め込まれた内容になっているものの、決して煩雑にはなっておらず、密度の高い展開が進展していく。ただしキャラクターの説明などは殆どされないため(特に未来のXメン)、過去の作品やコミックに詳しくない人は十分に楽しめないかもしれない。

・つうかキティ・プライドのあの能力ってコミックにも登場しないぞ。エレン・ペイジが可愛いので許すけど。

・未来のXメンはそんなに登場しなくて、70年代のファースト・ジェネレーション組とウルヴァリンが主役扱い。やはりマイケル・ファスベンダーの役がいちばん良くて、プロフェッサーXと手を組むもののいつ裏切るか分からないマグニートーを好演している。厚いメーキャップしても表情が分かるジェニファー・ローレンスの演技もいい。

ハンバーガー食ってたりしてなんかヘタレキャラかと思ってたクイックシルバーが、意外にも良いアクセントを加えている。あまりにも強いために話の途中で脱落してますが。「アベンジャーズ2」のクイックシルバーよりもこっちのほうが良い可能性は高いな。

・ミュータントを嫌悪するトラスク博士を演じるピーター・ディンクレイジが実は外見的にはミュータントである、という皮肉な設定が面白いんだけど、そこらへんはあまり描写されてなかった。

・ストライカーを演じてるのってショーン・ウィリアム・スコットだとずっと思ってたけど、良く似た別の役者だったのか!

・アナ・パキンの登場シーンは、彼女のクレジットが表記されてる時間よりも短いかもしれない。

・前作のあとにマグニートーがいかに収監されることになったかの経緯は、このサイトで詳しく説明されている。

・未来のシーンが典型的なディストピア(天気が悪くて皆が不幸)になっているのが残念。なんか『マトリックス』の二番煎じみたいなんだよな。

・とはいえ過去と未来の話をうまくまとめあげ、ついでに凡作「ファイナル・ディシジョン」の出来事を微妙に無かったことにしてくれて、大満足の出来であります。タイムトラベル映画の常として話がかみ合わない所も多いんだけど、細かいことはいいんだよ!でも今後のフランチャイズ展開はどうするんだろうね?「Xフォース」が先に撮られるのかな?

・クレジットの最後(途中でなく、本当に最後のところ)におまけのシーンがあるので見逃さぬよう。おれあのキャラクター好きじゃないんだよな…。

機内で観た映画2014

またちょっと海外に行ってたので、機内で観た映画の感想をざっくりと:

・「LEGO® ムービー」
「LEGOムービー」と「®」を抜かして書くと訴えられたりするのだろうか。終盤のメタな展開には驚いたが、「とりあえず何でも組み立ててみればいいじゃん」ということを謳った脚本が素晴しい。バットマンの声はウィル・アーネットでも悪くないのだが、やはりケヴィン・コンロイにあてて欲しかったな。

・「CUBAN FURY」
サルサ・ダンスをテーマにした、ニック・フロストとクリス・オダウドが出ているコメディ。まあ典型的なイギリスの小規模コメディといった感じで、良くはないんだけどそんなに悪くもない。出演者のファンだけにお勧めできるような作品。練習もなしで見事なダンスをしてしまうオリヴィア・コールマンのキャラクターはちょっと反則だろう。

・「Alan Partridge: Alpha Papa」
言わずと知れた、スティーブ・クーガン演じるアラン・パートリッジの劇場版。テレビ版をそんなに観てたわけではないのですが、今回のパートリッジはずっと「場の空気が読める」人になってるような?コルム・ミーニー演じる立てこもり犯に指図されてるからかもしれないが。ラジオ局での収録のかけ合いなどは非常に巧いと思うのですが、日本公開はないだろうな。

・「ミケランジェロ・プロジェクト」
第二次大戦が舞台の映画って嫌いじゃないんだけどね、せっかく有名どころの役者を揃えたのに、ヨーロッパ各地に分散させてしまったことでストーリーも散漫なものになってしまっている。なんか細かいエピソードが続くだけで盛り上がりに欠けていて、やはりジョージ・クルーニーって監督業にはあまり向いてないんじゃないだろうか。

・「アナと雪の女王」
ダメじゃんこれ。
同性愛許容のメタファーとして観ても良いのだろうけど、いかんせん脚本が稚拙で、人物描写も薄っぺらい。悪役が最初から自分の悪巧みを説明してしまうあたり、手抜きと言われても仕方ないかと。

「her/世界でひとつの彼女」鑑賞


スパイク・ジョーンズの新作。

舞台は近未来のロサンゼルス。恋人や家族への手紙のメールの代筆業をしているセオドアは、別れた妻との離婚協議をズルズルと引き延ばしているような男性で、内気な性格のために新しい彼女を見つけることもままならない。そんなとき、ユーザー個人に進化して適応してくれるというコンピューターの新しいOSを見つけ、早速自宅のPCとスマートフォンにインストールする。音声で語りかけてくれるそのOSは自らをサマンサと名付け、セオドアのさまざまな世話を行なうようになる。そんなサマンサと気楽な会話を続けていたセオドアだが、やがて彼らは人種(?)の壁を越え、互いに愛し合う仲となる。しかしサマンサが進化を遂げていくにつれ、2人の仲は微妙な仲になっていき…というストーリー。

女声のOSと恋に落ちる男の物語、と聞くとキモがられるかもしれないが、そこらへんは比較的サラっと受け流されていて、拒否感を示す人もいる一方で普通に受け入れる人もいて、セオドア以外にもOSと親密な仲になる人たちも登場する。とはいえ真っ当なラブストーリーというわけでもなく、いろいろSF的な要素も絡んできていて、そこらへんのバランスが難しいところです。

かつてはMTV世代の奇妙キテレツな映画を作ってたイメージが強いスパイク・ジョーンズだけど、今作は男女の関係を真っ正面から描いている。人工知能との愛という点では傑作短編「アイム・ヒア」に通じるものがあるかな。アーケード・ファイアによるぽわーんとした音楽と絞りの浅い映像は「UPSTREAM COLOR」を連想しました。あと主人公がメッセージ書きをしていて、そのときの気分がメッセージに反映されるという演出は「500日のサマー」みたいだな。

セオドアを演じるのはホアキン・フェニックス。内気で不器用ながらも一途にサマンサを愛す主人公を熱演しています。あとはエイミー・アダムスやオリヴィア・ワイルドなどが出演していて、サマンサの声はスカーレット・ヨハンソンが担当している。そもそもはサマンサ・モートンが声をあてていて、ポスプロの時点になって急遽ヨハンソンに変更されたらしいけど、彼女のちょっとぶっきらぼうな奔放なサマンサの性格にうまくマッチしている。でもサマンサ・モートンのバージョンも聞いてみたいな。あと吹替が大変そうだなこれ。

非モテ男の物語としては共感できる部分が多かったのですが、科学的な設定がどうも気になって話にのめり込めなかったのも事実ではある。つうかユーザーに黙ってメールを送ったり、スネて返事してくれないOSというのはものすごくヤバい存在だと思うのだが。NSAのバックドアなんてもんじゃねーぞ。まあそういうところには目をつぶって鑑賞しましょう。

なお高層ビルが乱立し、皆がウエストの高いズボンを履いている未来のロサンゼルスの外観は、すべて上海で撮影されている。中国資本が入っているというのもあるけど、かつて1972年の「惑星ソラリス」のころは東京の外観が未来都市だったのに、今では上海がフューチャリスティックなものになってしまったんだなあ。しかしバーチャルな相手との恋愛というのは日本人のお家芸であるはずなので、OS付き抱き枕との恋愛を描いたリメークを日本でも希望!

「GOD LOVES UGANDA」鑑賞


昨年のアカデミー賞にもノミネートされたドキュメンタリー。

こないだウガンダでは同性愛を犯罪とみなし、終身刑の厳罰に処することができる法案が署名されて国際的な批判を受けたわけだが、その思想の根源はアフリカでなくアメリカのキリスト教右派にあるとする内容。世界各国に宣教師を送り込みキリスト教の教えを伝道しようとする団体「International House of Prayer」(通称IHOP。日本にも支部があるようだけど日本語の団体名が分からなかった)は、イディ・アミンが失脚したのちに混沌状態にあったウガンダに目を付け、アフリカでの伝道の拠点とするために宣教師たちを送り込むようになる。彼らは住民のために献身的に活動する一方で、同性愛や婚前のセックスは悪だとするキリスト教保守の考えを持ち込み、やがてウガンダの政治家たちも感化されていく…というような話。

IHOPの宣教師たちは目つきや話し方がちょっとヤバい感じがするのですが、彼らの目的は単なる布教だけでなく、もっとパワーゲームめいたものであることが劇中では示唆されている。クリントン政権のときはコンドームの使用についてアメリカから補助を受け、エイズの減少に役だっていたのだが、ブッシュ政権時には「禁欲主義を推奨しなければ経済援助は行なわない」と脅され、コンドームの代わりに禁欲主義を推奨したところエイズが再び増加したのだとか。

またウガンダのキリスト教の牧師がアメリカにちょくちょく足を運び、(おそらく資金援助を受けて)かなり豪勢な家に住んでいることも描かれていた。その一方では同性愛者の権利を保護したためにウガンダを追放された牧師が登場し、同性愛者への深刻な迫害についての説明がされている。

ただ全体的にはIHOPの宣教師たちの姿をダラダラ映しているだけで、85分という短い尺ながらも冗長に感じられるところが多かったかな。もうちょっとチャートやグラフィックなどを加えて、IHOPの問題点などを追求すればよかったのに。人権活動家のデービッド・カトが殺害されたことについても、あまり深くは語っていないんだよね。

国連やオバマ政権がウガンダの同性愛者への迫害に対して懸念を表明している一方で、アメリカのキリスト教右派は着実に自分たちの考えをアフリカで広めており、ここらへんは西部開拓時代におけるマニフェスト・デスティニーを連想せずにはいられない。なおウガンダは若い世代がかなり多いらしく、そこでIHOPの教えを受けた若者たちが、やがてアフリカの他の国でも思想を広めていくことになるのだろうか。

「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」鑑賞


とてもよく出来た作品ですよ。何を書いてもネタバレになりそうな内容なので、感想を手短に。

・ジョー・ジョンストンのレトロ趣味が合っていた前作に対し、こちらは70年代スリラーの雰囲気を漂わせて、現代におけるキャップの存在意義をうまく描いている。コメディ畑の、あまり手がけた作品も多くない監督にこれだけの大作をまかせて、ちゃんと結果を出させているところが凄いなあと。

・原作をうまくアレンジして、プロットやキャラクターを詰め込みすぎずに、あくまでも映画として楽しめる内容になっている。ここらへんは「アメスパ2」と違って、既にフランチャイズが確立されている側の強みだろうな。

・その一方で、今回の展開とエンドクレジット後の映像が、アベンジャーズ続編(というかウルトロンそのもの)とどうつながるか予想もつかんのですが、そこは胸をときめかせて期待しときましょう。

・「アイアンマン3」でもA.I.M.のメンバーはユニフォーム着てなかったけど、ヒドラの諸君にはぜひこれやって欲しかったな:

・いままで映画のなかでトリスケリオンが言及されたことってあったっけ?

・ギャリー・シャンドリング、ちょっと不安な太りかたをしてるな。