「グランド・ブダペスト・ホテル」鑑賞


いやー素晴らしい出来ではないですか。公開中なので感想をざっくりと:

・今までのウェス・アンダーソン作品のシュールな展開がまったりと続く内容とは違って、歴史および(ファシズムが近づくことの)ペーソスが加わっており、話に深みを与えている。これって結構大きな発展であろう。

・他にもアンダーソン作品の特徴であったブリティッシュ・ロックを一切排除したり、画面のアスペクト比を変えたりと細かい試行が施されていて、実にアンダーソン的でありつつも新たなスタイルを確立している感じ。

・アンダーソン作品ではお馴染みの役者たちもたくさん出ていて、あまりにもたくさん出ているためビル・マーレイとかオーウェン・ウィルソンなんて連続出演記録をつくるためだけのカメオ出演のようになってしまっていたな。

・一方でアンダーソン作品初出演で主役を務めるレイフ・ファインズが本当に見事で、この人はコメディもきちんと演じることができるのだと実感させられた。

・そしてハーヴェイ・カイテルが久しぶりに裸になっていて、ああやはりこの男は脱ぐのが好きなのだとひと安心。

・興行的には世界中でヒットしてるらしいですが、これで初めてアンダーソン作品を観る人はどんな印象を抱くのだろう?知人に観るべきか尋ねられて、なんとも答えられなかったのであります。「おしゃれな映画」だけで済ますわけにもいかない作品だよね。

「SUPERHEROES」鑑賞


前からちょっと観たかったHBO製作のドキュメンタリー。

いわゆる『キック・アス』的な、リアルにスーパーヒーローの格好をして犯罪と戦う人たちを追ったもので、サンディエゴやブルックリン、はてはバンクーバーと北米各地で活動する、『マスター・レジェンド』や『ミスター・エクストリーム』といった人々を紹介している。おそらく世間的にいちばん有名なヒーローであるシアトルのフェニックス・ジョーンズは登場していなかった。

もちろんタイトルとは裏腹に誰もスーパーパワーなんて持ってなくて、格闘技を習ったりプロテクターを着けたりスタンガンを持ったりして夜のパトロールへと彼らは出かけていく。彼らがヒーローになった動機はおおまかに2つあって、崩壊家庭の出身で学校でもイジめられており、その反動でヒーローになったというのと、困っている人たちを見過ごすことができずに社会貢献のためヒーローになったというもの。「ウォッチメン」でも言及されていたキティ・ジェノヴィーズ事件を動機に挙げていた人もいたな。あと「子供のときにコスチュームをまとってイジメッ子を待ち伏せし、ボコボコにした」と語る人もいるんだが、それって犯罪では…。

彼らの多くは警察や司法制度をあまり信用しておらず、自らの手で犯罪を防ごうとヒーローになったらしく、そこらへんの考えがアメリカンだなあと。とはいえ完全に法の外で活動するわけにもいかないから、犯罪を目撃したら警察に通報するとか、そういう関係を保っているみたい。警察側は彼らの活動をあまり好ましく思っていないものの、大目に見ている状態らしい。劇中では警察の犯罪学者へのインタビューが行なわれ、彼らが危険に身をさらしていることや、彼らが持っている武器(スタンガンや警棒などで、銃は持っていない)などに懸念が示されている。あとはスタン・リーも出てきて、「彼はケガしたりせんじゃろか…」と心配をしていた。

「俺は格闘技を習得している」と語りつつも腹をタポタポさせてたり、パトロールの合間にビールをグビグビ飲んでるヒーローを見ると、すごく頼りない気がするものの、チームを組んでホームレスに物資を配ってたりするのは偉いよね。このドキュメンタリーもそんな彼らを基本的には好意的に描いている。ただ2012年のトレイヴォン・マーティン事件(自警団を気取ったバカが17歳の黒人少年をつけまわして射殺し、しかもなぜか無罪になった)のこととかを考えると、スーパーヒーロー活動とああいう自警団活動って紙一重の違いではないかと複雑な気分になってしまうのです。

「ゴジラ」鑑賞


これもアメリカで観てきたので、ネタバレにならぬよう感想をざっと。なお俺自身は昭和版のゴジラやガメラ作品はそれなりに観ていたけど、84年の「ゴジラ」を最後にそれ以降のものは観ておりませぬ。

・まず何よりも「人智を超えた存在」かつ「正義の味方」であるゴジラの描写が巧みなバランスで描かれていたと思う。

・もうご存知の方も多いかとは思いますが、ゴジラ以外の怪獣が劇中では登場するわけで、それらを悪役にすることでゴジラを(いちおう)人間の側に立たせることができているわけなんですね。

・話の後半になるまでゴジラがまっとうに姿を見せない演出は賛否両論あるみたいだけど、ベタに出まくるよりも良いんじゃないですか。むしろゴジラの全貌をなかなか見せないことで臨場感を高めている。

・そしてゴジラに多くの「決め」のシーンを与えてるあたり、監督は分かってんなあと。放射能火焔を吐く前に、暗闇のなかで青く光る背びれが映ったときはゾクゾクしましたね。

・「人間 VS 怪獣」のスタンスをとっていたエメリッヒ版「ゴジラ」に対し、こちらの怪獣たちは自然の猛威の象徴であり、人間たちはその猛威を目前にしてうろたえることしかできない。とはいえ人間の視点からとらえた怪獣映画に徹していたし、父と子の絆とか、家族のもとに帰ろうとする兵士の物語などがうまく織り込まれていた(「Xメン」に比べるとかなり単純な描写であることは否めないが)。

・日本の描写は確かにツッコミどころも多いんだけど、そしたらネバダとかハワイの描写も変らしいので、そこをとやかく言うのはやめましょう。ブライアン・クランストンも日本語がんばってます。しかし「ジャンジラ」って何が由来なんだろう。

・明らかに東北の震災をモデルにした津波や原発事故の描写があるものの、放射能はメタファーでも何でもなく、もろに話のプロットの中心となってます。だから「怪獣は放射能の脅威の象徴であり…」などと語るのは野暮かと。最後にXXXしたのはアメリカンだなーと思いましたが。

・日本映画には比類なき予算とプロセスをかけ、過去の作品にもきちんと敬意を払って作られた作品であり、こういうの作られると日本で「ゴジラ」作るのは相当難しくなるんじゃないかと。とはいえ映画館から出てきた直後に、ああして欲しかった、こうして欲しかったと思ってしまうわけで、まあ数十年の思い入れを1つの映画ですべて解消するのは無理でしょう。続編の製作もさっそく決まったらしいので、次は佐原健二とM宇宙ハンター星雲人の登場を希望します。

「X-MEN: フューチャー&パスト」鑑賞


アメリカで観てきてしまったのだよ。ネタバレにならぬよう簡単な感想を:

・『Xメン映画の中では最高の出来』という声がアメリカでは既に挙ってまして、確かに個人的にも『X2』と並んで非常に楽しめた作品であった。

・アクション映画ながらもヒューマンドラマ(ミュータントドラマ?)をきっちりと仕立てていて、ベトナム戦争とパリ協定という争乱の時代を背景に、迫害されるミュータントの葛藤をうまく描いている。

・未来と過去(1973年)の物語が同時に進むため、プロットがみっちり詰め込まれた内容になっているものの、決して煩雑にはなっておらず、密度の高い展開が進展していく。ただしキャラクターの説明などは殆どされないため(特に未来のXメン)、過去の作品やコミックに詳しくない人は十分に楽しめないかもしれない。

・つうかキティ・プライドのあの能力ってコミックにも登場しないぞ。エレン・ペイジが可愛いので許すけど。

・未来のXメンはそんなに登場しなくて、70年代のファースト・ジェネレーション組とウルヴァリンが主役扱い。やはりマイケル・ファスベンダーの役がいちばん良くて、プロフェッサーXと手を組むもののいつ裏切るか分からないマグニートーを好演している。厚いメーキャップしても表情が分かるジェニファー・ローレンスの演技もいい。

・ハンバーガー食ってたりしてなんかヘタレキャラかと思ってたクイックシルバーが、意外にも良いアクセントを加えている。あまりにも強いために話の途中で脱落してますが。「アベンジャーズ2」のクイックシルバーよりもこっちのほうが良い可能性は高いな。

・ミュータントを嫌悪するトラスク博士を演じるピーター・ディンクレイジが実は外見的にはミュータントである、という皮肉な設定が面白いんだけど、そこらへんはあまり描写されてなかった。

・ストライカーを演じてるのってショーン・ウィリアム・スコットだとずっと思ってたけど、良く似た別の役者だったのか!

・アナ・パキンの登場シーンは、彼女のクレジットが表記されてる時間よりも短いかもしれない。

・前作のあとにマグニートーがいかに収監されることになったかの経緯は、このサイトで詳しく説明されている。

・未来のシーンが典型的なディストピア(天気が悪くて皆が不幸)になっているのが残念。なんか『マトリックス』の二番煎じみたいなんだよな。

・とはいえ過去と未来の話をうまくまとめあげ、ついでに凡作「ファイナル・ディシジョン」の出来事を微妙に無かったことにしてくれて、大満足の出来であります。タイムトラベル映画の常として話がかみ合わない所も多いんだけど、細かいことはいいんだよ!でも今後のフランチャイズ展開はどうするんだろうね?「Xフォース」が先に撮られるのかな?

・クレジットの最後(途中でなく、本当に最後のところ)におまけのシーンがあるので見逃さぬよう。おれあのキャラクター好きじゃないんだよな…。

機内で観た映画2014

またちょっと海外に行ってたので、機内で観た映画の感想をざっくりと:

・「LEGO® ムービー」
「LEGOムービー」と「®」を抜かして書くと訴えられたりするのだろうか。終盤のメタな展開には驚いたが、「とりあえず何でも組み立ててみればいいじゃん」ということを謳った脚本が素晴しい。バットマンの声はウィル・アーネットでも悪くないのだが、やはりケヴィン・コンロイにあてて欲しかったな。

・「CUBAN FURY」
サルサ・ダンスをテーマにした、ニック・フロストとクリス・オダウドが出ているコメディ。まあ典型的なイギリスの小規模コメディといった感じで、良くはないんだけどそんなに悪くもない。出演者のファンだけにお勧めできるような作品。練習もなしで見事なダンスをしてしまうオリヴィア・コールマンのキャラクターはちょっと反則だろう。

・「Alan Partridge: Alpha Papa」
言わずと知れた、スティーブ・クーガン演じるアラン・パートリッジの劇場版。テレビ版をそんなに観てたわけではないのですが、今回のパートリッジはずっと「場の空気が読める」人になってるような?コルム・ミーニー演じる立てこもり犯に指図されてるからかもしれないが。ラジオ局での収録のかけ合いなどは非常に巧いと思うのですが、日本公開はないだろうな。

・「ミケランジェロ・プロジェクト」
第二次大戦が舞台の映画って嫌いじゃないんだけどね、せっかく有名どころの役者を揃えたのに、ヨーロッパ各地に分散させてしまったことでストーリーも散漫なものになってしまっている。なんか細かいエピソードが続くだけで盛り上がりに欠けていて、やはりジョージ・クルーニーって監督業にはあまり向いてないんじゃないだろうか。

・「アナと雪の女王」
ダメじゃんこれ。
同性愛許容のメタファーとして観ても良いのだろうけど、いかんせん脚本が稚拙で、人物描写も薄っぺらい。悪役が最初から自分の悪巧みを説明してしまうあたり、手抜きと言われても仕方ないかと。