「Wet Hot American Summer: First Day Of Camp」鑑賞

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ネットフリックスの新作シリーズ。

日本では公開されてないし知名度ゼロ(俺も未見)ですが、2001年にアメリカで公開された「Wet Hot American Summer」というコメディ映画がありまして、サマーキャンプを舞台にした80年代のティーン映画のパロディをやってるのですよ(なお予算の都合で撮影は冬にやったらしい)。評論家にはウケなくてロジャー・イバートなどには酷評されたらしいが、監督のデビッド・ウェインをはじめとする「THE STATE」のメンバーたちや、ポール・ラッドにエイミー・ポーラー、クリストファー・メローニ、デビッド・ハイド・ピアース、ブラッドリー・クーパー、ジャニーン・ギャロファロといった、(主に当時は無名だった)有名俳優がたくさん出ていることでカルト的な人気を博している作品なのです。この人気を受け、当時のキャストをそのまま使って(みんな老けてしまっているのだが)プリクエルを撮影するという話は以前からあったのだが、それがついに製作されたというわけ。

当時のキャストは殆ど戻ってきていて、みんな若作りのメイクをしてティーンエイジャーの役を演じてるので、不気味といえば不気味だな。さらに今回はジェーソン・シュワルツマンやジョン・スラッタリー、クリステン・ウィッグ、クリス・パイン(!)といったキャストも出演するようで、無駄に豪華というか何というか。よくこれだけの役者を集められたよな。

内容はキャンプを舞台にしたスケッチコメディみたいな感じで、下ネタを中心に若者たちのシュールなドタバタが繰り広げられるといった内容。キャンプ場のそばに核廃棄物が不法投棄されてるとか、あとにつながるプロットみたいなのもあるのだけど全話観てないので何とも言えません。

登場人物がバカやってるんだけど誰もそれにツッコまない系のコメディ(ウィル・ファレルがよくやってるやつ)って個人的にはあまり好きなタイプのコメディではないけど、さすがにキャストが豪華なので「あ、彼があんな役やってるよ!」と気付きながら観るのだけでも楽しめるかと。

「Benvenuto Cellini」鑑賞

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ファウストの劫罰」に続いてテリー・ギリアムがイングリッシュ・ナショナル・オペラと組んで演出した、ベルリオーズの「ベンヴェヌート・チェッリーニ」がアルテによって映像が全編公開されていた。。ただしこちらはオランダのナショナル・オペラが演じたものみたい。

セリフ(歌)がみんなフランス語だし、字幕もないので仕方なしに対訳サイトをちらちら眺めながら鑑賞。結局話がよく分からなかったな。彫刻家のベンヴェヌート・チェッリーニが教皇に命じられて彫像を建造するはずが、町で飲んだくれて愛しの女性テレーザと乳繰り合ってて…というような話?
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前回の「ファウスト」は舞台設定をナチス政権下へと大胆に移し、ファウストに対するメフィストフェレスの誘惑とナチスの台頭がマッチしてすごく緊迫感のある演出になっていたが、今回はスラップスティック・コメディみたいになっていたな。ドタバタ動きながらもしっかりと声を出して歌う出演者たちは本当に素晴らしいものの、広場の道化師などはオペラというよりもシルク・ドゥ・ソレイユのようであった。

個人的に「ファウスト」はギリアムがここ20年くらいのあいだに手がけた作品のなかでもベストに入るものだと思っていて、最後のファウストの地獄堕ちの演出などは息をのむくらいに素晴らしかったけど、今回の出来はあれほどではないかな。つうか幕間をカットしても3時間ある映像を字幕無しでずっと観るのがしんどくて、ちょっとスキップしたのであまり大きなことは言えませんが。

前作ほどではないにしろ登場人物のファッションとかセットの演出はギリアムならではのものだし、ファンならチェックしても損はないだろう。映像もしばらくは公開されてるみたいだし。なお映像の冒頭にNHKの名前が出てくるのだけど、協賛とかしてるのかな?いずれBSなどで日本でも放送されることに期待。

「Scream: The TV Series」鑑賞

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MTVによる「スクリーム」のTVシリーズ版。まあ最近はホラー映画のTVシリーズ化が流行ってるからね。これは来るべきして来た作品なのかも。

舞台とか登場人物は映画版とまったく別物で、レイクウッドという小さな町(でも住人の家はみんなプールがあってデカい)における高校生たちが主人公になっている。生徒のひとりがレズビアンであることを暴露したビデオが映像サイトに公開された結果、そのビデオをアップロードしたと思われる女生徒が自宅で殺害(ここは映画版のドリュー・バリモアのシーンのオマージュ)されたことから、町に殺人鬼が潜んでいるのでは…と皆が疑心暗鬼になる…という設定。

俺が思うに映画版のスクリーム(少なくとも第一作目)が画期的だった理由は2点あって:

・一般大衆向けの映画ながらも意外とエグいスラッシャー描写
・MTV世代の登場人物が、過去のホラー映画のクリーシェについて語るなか、それに近い形で話が展開するというメタ気味な設定

というもの。うち前者はケーブル局においては当然ながらあまりエグい描写ができなくて、一気に残虐行為がトーンダウンした「スクリーム3」程度といったところ。でもまあ頑張ってるほうかな。後者についてはオタクっぽい生徒が「最近は『アメリカン・ホラー・ストーリー』みたいなゴシックホラーのTV番組が流行ってるけど、スラッシャー映画はシリーズ化できないよな。あれって話の展開が速いから、シリーズとして引き延ばすことはできないだろ」とメタ気味というか自虐的に語るシーンがあって、第1話を観た限りでは確かにそんな感じ。殺されるのは前述の女の子だけだが、このまま登場人物が殺されてったらあっという間に誰もいなくなってしまうわけで、そこらへんのジレンマはどう対処するのだろう。

あとレイクウッドには、20年くらい前に連続殺人を犯して湖に消えたというカタワ者の少年の伝説があって、彼が戻って来たのではと住人たちは怯えるのだが、それって「13日の金曜日」のジェイソンでは…。これって他のホラー映画のパロディをやるということなのかな?それとも脚本家たちはあくまでも真面目なのか?

雰囲気的には「スクリーム」というよりも「プリティ・リトル・ライアーズ」みたいな作品。今後の展開によっては面白くなるかもしれないけど、とりあえず映画のノリを期待してはいけません。

「HUMANS」鑑賞

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スウェーデンの番組をリメークしたチャンネル4の新シリーズで、アメリカではAMCで放送開始したもの。

最近は技術の進化を反映してかAI(人工知能)を扱った映画がいろいろ作られていて、「チャッピー」とか「Ex Machina」のほかに、「アベンジャーズ2」もAIが大きなテーマになってますな。このシリーズもAIを持ったロボット(シンセと呼ばれる)が市販され、家事手伝いとか単純労働などの業務を人間に代わって行なうようになった近未来を舞台にしている。

話の登場人物は大まかに3グループあるようで、出張のため家を不在にしがちな母親の代役としてアニタという名のシンセを購入した一家、時代遅れのシンセと生活する老科学者、および特定のシンセを探している謎の男といったところ。第1話では彼らがお互いに絡むことはないんだが、今後はいろいろ話が錯綜していくのかな。

アニタを含む一部の特定なシンセは感情や記憶を持っていることが示唆されており、そうしたシンセを追って捕獲する謎の組織も登場するサスペンスになっている。シンセが人間そっくりで外見からすぐシンセだと判断できないのって実際には不便だろうし、アニタに子供たちがなついてしまい嫉妬する母親とか、SF番組としては前にどこかで見たような展開が続いて決して目新しくはないものの、「Ex Machina」同様に音楽や演出が巧いので観ていて飽きない内容になっている。

出演者で有名どころは「マーリン」のコリン・モーガンか。ヒゲが生えてて最初誰だか分からなかったよ。あと意外にも老科学者役としてウィリアム・ハートが出演している。またアニカはジェンマ・チャンというアジア系の女優が演じてるのだが、アジア人女性って従順な召使いというステレオタイプがあるのかね…?

今後の展開が分からないので評価しづらいところだが、知的なSFサスペンスとして期待できる作品かもしれない。

「SENSE8」鑑賞

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「SENSE8」と書いて「センセイト」と読む。「バビロン5」のJ・マイケル・ストラジンスキーとウォシャウスキー姉弟によるネットフリックスのオリジナルシリーズで、多くのエピソードをウォシャウスキー姉弟が監督している。

第1話を観ただけでは話の全貌がかなり掴みづらいのだが、肉体的に遠く離れていても五感を共有することができるセンセイトという存在がいて、悪のセンセイトと善のセンセイトの間にいた女性のセンセイトが自殺し、それがきっかけとなって世界中の8人の男女にセンセイトの能力が授けられる。ソウルのビジネスウーマンやシカゴの警官、ドイツの金庫破りなど人種も経歴もまったく異なる彼ら8人だったが(みんな英語話してるのはご愛嬌)、他人が目撃したものを自分も目にするといった突然の感覚の共有に戸惑うことになる。しかしその感覚はやがて彼らを結びつけることになり…というストーリー。

まあネットフリックスのシリーズなので、例によってシリーズ全話を一気に視聴することが推奨されてるみたい。よって第1話観ただけでは話が全然分からないのですが、おれ全話観てる時間なんてないのよ。しかも第1シーズンでは8人のセンセイトが実際に出会う展開は無く、あくまでも世界各地での彼らの話が進んでいくらしい…って「HEROES」のティム・クリング作品っぽくってすごく不安なのだが。でも複数エピソードを観た人のレビューはそこそこ好評なようで、クリングの「TOUCH」などよりは面白い内容になってるのかな。

出演者はダリル・ハンナにフリーマ・アジャマンなど。ナイロビやムンバイといった世界各地でロケをしていて金がかかってんなーと思うものの、8人の姿が目まぐるしく描写されるため、どのキャラクターにも感情移入しにくいのだよな。おれ「マトリックス」以降のウォシャウスキー姉弟の作品ってまるで観れてないのですが、「クラウド・アトラス」もこんな感じなの?

たぶん話を追っていけば面白くなる作品なのだろうが…。既に日本語版も作ってるようなので、日本に来たときにみなさん代わりに観ておいてください。