「The Daily Show With Jon Stewart」最終回

The Daily Show_ Jon's Final Week
10年以上のあいだ、欠かさずに観ていた番組が終ってしまったよ。今となっては想像もつかないかもしれないが、2000年代前半はyoutubeも開始しておらず、インターネットでテレビ番組を見るというのは数秒程度のクリップを劣悪な解像度で観るといった程度で、海外の番組を気軽にチェックしてみるといったことはまだまだ不可能だった時代なのですよね。そんななかで「でいりーしょー」なる風刺番組がアメリカで人気らしい、という話を何かで知って、ならばカナダに行ったときに観てみようと思ったのが2004年のとき。よってこのブログを立ち上げたときから、俺はずっと「デイリーショー」を見続けていたことになる。ジョン・スチュワートがCNNの番組に出演して番組の司会者たちを論破し、知名度を一気に上げたのもその頃だったな。

アメリカおよび世界における最新の出来事(時には大手メディアが報じないニュース)を取り上げ、風刺しながらも物事の核心を鋭くつくスタイルは日本のテレビ番組に無いものであり、下手なニュース番組を観るよりもはるかに世の中の出来事について学べる番組であったのですね。ブッシュ政権がイラク戦争を押し進め、FOXニュースがそれを讃えていた時代に、風刺をもってそれに立ち向かったジョン・スチュワートは当時のリベラルにとって数少ない頼みの綱であったのだよ。

報道番組が(形式的にであれ)中立性を主張するなか、あくまでも自分の観点で物事を語っていった彼のスタイルは多くのジャーナリストにとっても羨望の的であったという。結果的にコメディ番組でありながらも多くの人がここからニュースを学ぶことになり、クリントンやオバマを始めとする多くの政治家や要人たちがゲストとして出演したのも特筆すべきことであろう。個人的には元国連大使のジョン・ボルトンと一歩も引かずにやりあったのが印象に残っている。

さらには「特派員」として出演した多くの若きコメディアンたちにも活躍の場を与え、この番組から大成していった人たちも数多い。スティーブ・カレルにスティーブン・コルベアー、ジョン・オリバーにエド・ヘルムズなどなど。いまのコメディ業界で活躍している人たちの多くは、「サタデー・ナイト・ライブ」か「デイリーショー」出身者のどちらか、と言っても過言ではないだろう。タイミング次第ではスチュワートがデビッド・レターマンの後任として「レイト・ショー」の司会を引き継ぎ、コルベアーが「デイリーショー」を引き継ぐ可能性もあっただろうが、「もしも」の世界を論じても仕方ないかな。

そして今回の最終回(60分特番)となったわけだが、前半は歴代の特派員たちが次々と登場して同窓会のような雰囲気に。サマンサ・ビーやロブ・コードリーといった、俺が番組を見始めたころの人たちや、モー・ロッカにヴァンス・ディジェネレスといったそれ以前の人々、さらには前の司会者のクレイグ・キルボーンまでもが出演して豪華だったなあ。トリはスティーブン・コルベアーが登場し、(アドリブで?)スチュワートの功績を真面目に語って、スチュワートは涙目。俺も泣きました。

そのあとは番組のスタッフへの感謝を込めて、彼らの仕事を紹介する映像が流される。自分を押し出さずに、裏方さんたちにもきちんと感謝するところにスチュワートの善い人っぷりが表れてますね。そして「世の中にはロクでもないことが溢れているけど、そうしたことを見抜ける人になりましょうね」という彼からの言葉が語られて締め。最後はスチュワートが大ファンであるブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドがスタジオ内で演奏して大団円。長い間お疲れさまでした。

なおこれで「デイリーショー」という番組が終るわけではなく、9月から南アフリカ出身のトレバー・ノアが後任の司会者を務めるわけだが、良くも悪くもスチュワートの番組とは全く違ったものになると思う。スチュワート自身は今後の活動について何も公表していないが、テレビであれ映画であれ、スタンダップであれ、我々のまえに引き続き元気な姿を見せて欲しいところです。今までどうもありがとうございました。

「Wet Hot American Summer: First Day Of Camp」鑑賞

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ネットフリックスの新作シリーズ。

日本では公開されてないし知名度ゼロ(俺も未見)ですが、2001年にアメリカで公開された「Wet Hot American Summer」というコメディ映画がありまして、サマーキャンプを舞台にした80年代のティーン映画のパロディをやってるのですよ(なお予算の都合で撮影は冬にやったらしい)。評論家にはウケなくてロジャー・イバートなどには酷評されたらしいが、監督のデビッド・ウェインをはじめとする「THE STATE」のメンバーたちや、ポール・ラッドにエイミー・ポーラー、クリストファー・メローニ、デビッド・ハイド・ピアース、ブラッドリー・クーパー、ジャニーン・ギャロファロといった、(主に当時は無名だった)有名俳優がたくさん出ていることでカルト的な人気を博している作品なのです。この人気を受け、当時のキャストをそのまま使って(みんな老けてしまっているのだが)プリクエルを撮影するという話は以前からあったのだが、それがついに製作されたというわけ。

当時のキャストは殆ど戻ってきていて、みんな若作りのメイクをしてティーンエイジャーの役を演じてるので、不気味といえば不気味だな。さらに今回はジェーソン・シュワルツマンやジョン・スラッタリー、クリステン・ウィッグ、クリス・パイン(!)といったキャストも出演するようで、無駄に豪華というか何というか。よくこれだけの役者を集められたよな。

内容はキャンプを舞台にしたスケッチコメディみたいな感じで、下ネタを中心に若者たちのシュールなドタバタが繰り広げられるといった内容。キャンプ場のそばに核廃棄物が不法投棄されてるとか、あとにつながるプロットみたいなのもあるのだけど全話観てないので何とも言えません。

登場人物がバカやってるんだけど誰もそれにツッコまない系のコメディ(ウィル・ファレルがよくやってるやつ)って個人的にはあまり好きなタイプのコメディではないけど、さすがにキャストが豪華なので「あ、彼があんな役やってるよ!」と気付きながら観るのだけでも楽しめるかと。

「Benvenuto Cellini」鑑賞

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ファウストの劫罰」に続いてテリー・ギリアムがイングリッシュ・ナショナル・オペラと組んで演出した、ベルリオーズの「ベンヴェヌート・チェッリーニ」がアルテによって映像が全編公開されていた。。ただしこちらはオランダのナショナル・オペラが演じたものみたい。

セリフ(歌)がみんなフランス語だし、字幕もないので仕方なしに対訳サイトをちらちら眺めながら鑑賞。結局話がよく分からなかったな。彫刻家のベンヴェヌート・チェッリーニが教皇に命じられて彫像を建造するはずが、町で飲んだくれて愛しの女性テレーザと乳繰り合ってて…というような話?
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前回の「ファウスト」は舞台設定をナチス政権下へと大胆に移し、ファウストに対するメフィストフェレスの誘惑とナチスの台頭がマッチしてすごく緊迫感のある演出になっていたが、今回はスラップスティック・コメディみたいになっていたな。ドタバタ動きながらもしっかりと声を出して歌う出演者たちは本当に素晴らしいものの、広場の道化師などはオペラというよりもシルク・ドゥ・ソレイユのようであった。

個人的に「ファウスト」はギリアムがここ20年くらいのあいだに手がけた作品のなかでもベストに入るものだと思っていて、最後のファウストの地獄堕ちの演出などは息をのむくらいに素晴らしかったけど、今回の出来はあれほどではないかな。つうか幕間をカットしても3時間ある映像を字幕無しでずっと観るのがしんどくて、ちょっとスキップしたのであまり大きなことは言えませんが。

前作ほどではないにしろ登場人物のファッションとかセットの演出はギリアムならではのものだし、ファンならチェックしても損はないだろう。映像もしばらくは公開されてるみたいだし。なお映像の冒頭にNHKの名前が出てくるのだけど、協賛とかしてるのかな?いずれBSなどで日本でも放送されることに期待。

「Scream: The TV Series」鑑賞

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MTVによる「スクリーム」のTVシリーズ版。まあ最近はホラー映画のTVシリーズ化が流行ってるからね。これは来るべきして来た作品なのかも。

舞台とか登場人物は映画版とまったく別物で、レイクウッドという小さな町(でも住人の家はみんなプールがあってデカい)における高校生たちが主人公になっている。生徒のひとりがレズビアンであることを暴露したビデオが映像サイトに公開された結果、そのビデオをアップロードしたと思われる女生徒が自宅で殺害(ここは映画版のドリュー・バリモアのシーンのオマージュ)されたことから、町に殺人鬼が潜んでいるのでは…と皆が疑心暗鬼になる…という設定。

俺が思うに映画版のスクリーム(少なくとも第一作目)が画期的だった理由は2点あって:

・一般大衆向けの映画ながらも意外とエグいスラッシャー描写
・MTV世代の登場人物が、過去のホラー映画のクリーシェについて語るなか、それに近い形で話が展開するというメタ気味な設定

というもの。うち前者はケーブル局においては当然ながらあまりエグい描写ができなくて、一気に残虐行為がトーンダウンした「スクリーム3」程度といったところ。でもまあ頑張ってるほうかな。後者についてはオタクっぽい生徒が「最近は『アメリカン・ホラー・ストーリー』みたいなゴシックホラーのTV番組が流行ってるけど、スラッシャー映画はシリーズ化できないよな。あれって話の展開が速いから、シリーズとして引き延ばすことはできないだろ」とメタ気味というか自虐的に語るシーンがあって、第1話を観た限りでは確かにそんな感じ。殺されるのは前述の女の子だけだが、このまま登場人物が殺されてったらあっという間に誰もいなくなってしまうわけで、そこらへんのジレンマはどう対処するのだろう。

あとレイクウッドには、20年くらい前に連続殺人を犯して湖に消えたというカタワ者の少年の伝説があって、彼が戻って来たのではと住人たちは怯えるのだが、それって「13日の金曜日」のジェイソンでは…。これって他のホラー映画のパロディをやるということなのかな?それとも脚本家たちはあくまでも真面目なのか?

雰囲気的には「スクリーム」というよりも「プリティ・リトル・ライアーズ」みたいな作品。今後の展開によっては面白くなるかもしれないけど、とりあえず映画のノリを期待してはいけません。

「HUMANS」鑑賞

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スウェーデンの番組をリメークしたチャンネル4の新シリーズで、アメリカではAMCで放送開始したもの。

最近は技術の進化を反映してかAI(人工知能)を扱った映画がいろいろ作られていて、「チャッピー」とか「Ex Machina」のほかに、「アベンジャーズ2」もAIが大きなテーマになってますな。このシリーズもAIを持ったロボット(シンセと呼ばれる)が市販され、家事手伝いとか単純労働などの業務を人間に代わって行なうようになった近未来を舞台にしている。

話の登場人物は大まかに3グループあるようで、出張のため家を不在にしがちな母親の代役としてアニタという名のシンセを購入した一家、時代遅れのシンセと生活する老科学者、および特定のシンセを探している謎の男といったところ。第1話では彼らがお互いに絡むことはないんだが、今後はいろいろ話が錯綜していくのかな。

アニタを含む一部の特定なシンセは感情や記憶を持っていることが示唆されており、そうしたシンセを追って捕獲する謎の組織も登場するサスペンスになっている。シンセが人間そっくりで外見からすぐシンセだと判断できないのって実際には不便だろうし、アニタに子供たちがなついてしまい嫉妬する母親とか、SF番組としては前にどこかで見たような展開が続いて決して目新しくはないものの、「Ex Machina」同様に音楽や演出が巧いので観ていて飽きない内容になっている。

出演者で有名どころは「マーリン」のコリン・モーガンか。ヒゲが生えてて最初誰だか分からなかったよ。あと意外にも老科学者役としてウィリアム・ハートが出演している。またアニカはジェンマ・チャンというアジア系の女優が演じてるのだが、アジア人女性って従順な召使いというステレオタイプがあるのかね…?

今後の展開が分からないので評価しづらいところだが、知的なSFサスペンスとして期待できる作品かもしれない。