「LAST CHRISTMAS」鑑賞

Doctor Who_ Last Christmas
12代目ドクターになってから初の「ドクター・フー」クリスマス特番な。そんなに重要な展開とかは起きないんだけど、いちおうネタバレ注意。

ドクターと別れてクリスマスの晩に寝ていたクララたんの家の屋根にサンタクロースが落ちてきます。呆気にとられる彼女の前にドクターもやってきて、2人は北極の研究基地へ行くことに。そこでは4人の研究員がいるのですが、ほかの研究員は「夢ガニ」という宇宙生物に襲われて仮死状態になっていました。「夢ガニ」はフェイスハガーのごとく人の顔にとりつき、その人に夢を見させながらゆっくり脳を食らう恐怖の生物だったのです。この生物から身を守る方法を考えるドクターたちですが、クララたんが「夢ガニ」の餌食になってしまい…というプロット。

基地で怪物に襲われるという展開は「Warters of Mars」をはじめ何度もやってるので目新しさはないが、今回は「夢ガニ」が夢を作り出すということで、何が現実で何が夢なのかが分からないという設定が話を面白くしている。夢から覚めたつもりがそこはまた夢で、そこから醒めてもまた夢だった…と幾重にも夢が作られているのはまるで「インセプション」のよう。前シーズンで○○したクララたんの恋人ダニー・ピンクが夢のなかで再登場するのも巧いな。「すべてのクリスマスが最後のクリスマスだ」というタイトルの意味も良かった。

ドクターたちを助けるキャラクターとしてサンタクロースが登場していて、なんでサンタが?というのは観てからのお楽しみ。エドガー・ライトの映画でお馴染みのニック・フロストがサンタを演じていて、ドクターと真っ当にやりあえる奇人っぷりをうまく出している。ただヒゲで顔が隠れていて表情がよく見えないけど。さらに暗い基地の中と夜空の下で話が進むため、全体的に映像が暗いのも気になったな。

夢また夢の幻想的な内容と、ドクターとクララたんの関係がうまく描かれていて、「A Christmas Carol」ほどでないにしろクリスマス特番のなかでは良く出来た方だったな。この話でクララたんが番組を去るという噂もまことしやかに流れていたわけですが、来シーズンも出演するようでめでたしめでたし。シーズン7では不思議少女として描かれていた彼女が、シーズン8ではもっと人間味のある女性になっていてとても良かったわけで、当分はこのコンビによる話が続くことに期待します。

「Ascension」鑑賞

Ascension, Season 1
Syfyチャンネルのミニシリーズ。

架空歴史っぽい設定で、1960年代に冷戦の激化を懸念したアメリカ政府はプロキシマ・ケンタウリへの移民を企画し、350人の男女を乗せた巨大宇宙船「アセンション」を打ち上げた。アセンションは100年の時をかけてケンタウリに到達する世代宇宙船であり、物語は打ち上げの51年後に始まる。宇宙船のなかで生まれた世代が成人となり、アセンションの目的が搭乗員のあいだで希薄になっていくなか、プールのそばで少女の死体が発見される。当初は事故死かと思われたが、船に持ち込まれていないはずの拳銃によって彼女は射殺されていたことが判明する。さらにアセンションには衝撃的な事実が隠されていた…というプロット。

ネタばらしすると設定はJ・G・バラードの「アルファ・ケンタウリへの十三人」と同じなのだが、あそこまで真面目な内容になっているわけでもなく、もっとベタな感じ。むしろジュブナイルSFを映像化したような出来かな。宇宙船でのファッションやトレンドは未だに60年代なので「宇宙のマッドメン」などと比喩されているようだけど、他にも搭乗員の権力争いとかお色気シーンとかティーンのロマンスとかがあって、なんかゴタゴタ盛られた内容になっている。

主演は「ギャラクティカ」のトリシア・ヘルファー。地上波ネットワークの番組とかに出演もしたけどあまり成功しなくて、またSyfyに戻ってきましたね。あとは「アリーmyラブ」のギル・ベローズなんかも出演している。でも全体的に役者の演技がヘタというか、説明調のセリフが多いところで損をしてしまっていると思う。

「ギャラクティカ」並に奥の深いSF番組を期待していると肩すかしをくらうかもしれないが、ここ数年のSyfyチャンネルって安直なリアリティ番組ばかり製作してた印象があるので、こういう野心的な番組をまた作るようになったのは良い傾向だろう。このあとは「地球幼年期の終わり」のミニシリーズの製作なんかも控えているわけで、これをきっかけに良質なSF番組を作ってくれることに期待しておきます。

「コルベアー・レポー」最終回

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ついにこの日が来てしまった。おれ2005年の放送開始時から全エピソード観ているわけで、それだけ愛着のあった番組が終ってしまうのは残念だなあ。フィナーレは番組の過去のゲストが大勢揃った合唱で大いに盛り上がったのでした。ヘンリー・キッシンジャーなんかよく連れて来れたな。

「デイリーショー」のスピンオフとして始まった番組だが、番組としてのスタイルが確立されたあの番組に対し、「レポー」はスティーブンが大統領選挙に出馬したり、冬季オリンピックチームのスポンサーになったり、イラクに行ったり、スーパーPACを立ち上げたりと、とにかく何でもありの展開がものすごく面白かったのですよ。この番組がきっかけで、あの伝説的なブッシュ批判のスピーチが生まれたことも憶えておくべきだろう。

ご存知の通りスティーブンはこのあと(というか来年夏な)デビッド・レターマンの後任として「レイトショー」の司会者になるわけですが、おそらく「レポー」のときほど好き勝手は出来ないんじゃないだろうか。レターマンと当分のあいだは比較されるだろうし、「右派の論客」というキャラクターを演じられるわけでもないから。とはいえまだ若いんだし、今後の健闘を期待したいところです。

そして前にも書いたが、「Colbert」は「air」や「bear」と韻を踏むんだからな!それにあわせて「Report」も「t」は発音しないの!日本語版ウィキペディアに「コルベア・リポート」という項目を作った奴は万死に値する。おれはそれを危惧してスティーブンの項目のところに「「Report」を「レポー」と読ませる」と書いておいたのに、どこぞのマヌケが「個人的な理由」で「レポール」とかに修正してるし、正しい表記が日本ではあまり浸透しなかったのが少し残念。

「The Librarians」鑑賞

The Librarians, Season 1
TNTの新シリーズ。おれよく知らなかったんだけどノア・ワイリー主演の「ライブラリアン」というTVムービーが何本かあって、それのシリーズ化ということらしい。

舞台となるのはメトロポリタン公共図書館のはるか地下に位置する施設「ライブラリ」。そこでは施設自体が意思を持つとされ、魔法が世界を覆っていたころに作られた数々のアイテムが世界中から集められ、保管されていた。ライブラリに招かれたフリン・カーセンはそこの「ライブラリアン」としてアイテムを探す仕事をしていたが、ライブラリの宿敵であるサーペント団がフリン以外のライブラリアン候補たちを暗殺し始めたことから、フリンは生き残った4人の男女を集め、サーペント団の野望を打ち砕くべく、まずは失われたアーサー王の冠を探しに向かうのだった…というようなプロット。

「ライブラリ」はインディ・ジョーンズに出てくる「倉庫」みたいに聖櫃とか聖杯などが保管されてるのですが、TVシリーズということもあって雰囲気はむしろ「ウェイアハウス13」とか「レリック・ハンター」に似てるんじゃないかな。軽いノリの内容になっていて、突然オクラホマに忍者軍団(黒マスクをしてるだけ)が登場したりしますが、サクッと観る分には楽しめる内容かと。

TVムービーから続けてノア・ワイリーがフリン役を演じているけど、彼はまだ「フォーリング・スカイズ」の撮影が残ってるのであくまでもゲスト役であり、新たに招集された4人のチーム(肉体派のリーダー、共感覚を持った天才少女、百科事典並みの知識を持ったカウボーイ、および盗みのプロ)が主役になるみたい。うち肉体派のリーダーを演じるのがレベッカ・ローミンなのだが、彼女の格闘シーンは結構タルいのよな…足が上がってないのだもの。「Xメン」で見せた身体のキレはやはりスタントによるものだったか。

TVムービーのほうは日本でもDVDが出ているようなので、いずれどこかの局でも放送されるんじゃないですかね?

「MARCO POLO」鑑賞

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ネットフリックスが100億円近い予算をかけて、ワインシュタイン・カンパニーと作ったオリジナル・シリーズ。

名前のとおりイタリアの商人のマルコ・ポーロがアジア東部を旅した話をベースにしたもので、撮影はカザフスタンやマレーシアで行なわれたみたい。商人の父を持ったマルコは彼とともにシルクロードをはるばる旅し、当時盛大な帝国を築いていたクビライ・カーンのもとへと赴く。そこで彼は父親に売られるような形でクビライの家来となり、徴税士となって帝国のあちこちの出来事を目にすることになるのだった…というような物語。

あちらのメディアではよく「ゲーム・オブ・スローンズ」との比較がされていて、まあ確かに宮廷内の人間関係とか、まだモンゴル帝国に降伏してない西安への侵攻にまつわる駆け引きなんかは「スローンズ」を意識してるんだろうなあという感じ。「スローンズ」ほどではないがおっぱいも出てくるものの、なんか女性がみんな色仕掛けの道具みたいな描写がされているのが気になったな。全体的な東洋の描写もちょっと気になるところがあるけど(道場とか)、おれ当時の歴史に詳しい訳ではないので何とも言えませんな。

冒頭では中国語やモンゴル語やイタリア語が飛び交うものの、クビライが突然流暢な英語を話しはじめ、それから先はアジア人がみんな英語を話すという展開はまあ大目にみましょう。その一方でマルコ役のロレンゾ・リーケイルミーはイタリア人なのでこの役のために英語を学んだのだとか。アジア人の役者としてはベネディクト・ウォン、リック・ユネ、ジョアン・チェンといった有名どころが出てるけど、日系の人はいないかな?たぶんジパング(日本)はストーリーに絡んでこないでしょう。

ネットフリックスは例によって全10話を一気に提供開始したものの、第1話を観た限りではなんかまどろっこしい宮廷ドラマが続いているようで、「ゲーム・オブ・スローンズ」というよりも「金のかかった華流ドラマ」といった感じ。本国での評判もイマイチみたい。ネットフリックスは今後もオリジナル・シリーズの制作に力を入れていくようだけど、人気のある原作の映像化とかを試みた方が無難なんじゃないのかなあ。