「The Nightly Show with Larry Wilmore」鑑賞

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昨年末に終了した「コルベアー・レポー」の後番組で、ホストを務めるのは「デイリーショー」の「黒人特派員」ことラリー・ウィルモア。日本では知られてない人ですがハリウッドで「The PJs」や「The Bernie Mac Show」などをヒットさせた、プロデューサー兼ライター兼コメディアンというマルチタレントなのですよ。

当初は「コルベアー・レポー」にあやかって「Minority Report」(レポーなのかレポートなのかは知らない)という番組名になると発表されてたのだけど、やはり映画の「マイノリティ・レポート」と紛らわしいということで今の名前に落ち着いたらしい(ちなみにあっちもTVシリーズになるみたいね)。

初回を観た限りでは、前半が時事ネタに関するモノローグで、後半が「特派員」やゲストを招いてのパネルディスカッションという形になるみたい。ゲストにはタリブ・クウェリや議員のコーリー・ブッカーなんかが登場していた。パネルディスカッションという点ではビル・マーの番組に雰囲気が似てるかな?ウルトラ保守というキャラクターを演じていたコルベアーに対し、ウィルモアはもっと普通のホストといった感じ。飄々として毒を吐くスタイルは「デイリーショー」のときから変わってませんね。

マイノリティに焦点をあてた話が続くため日本人にはとっつきにくい内容になるかもしれないけど、最近のアメリカでは黒人がホストを務めるトークショーがことごとく打ち切りの目に遭っているので、コメディ・セントラルという(比較的)マイナーなチャンネルであっても長続きして欲しいところです。毎日がお祭りのようだった「コルベアー・レポー」を超える番組になるかは分かりませんが、俺は見続けます。

「12 Monkeys」鑑賞

12 Monkeys, Season 1
Syfyチャンネルの新シリーズで、テリー・ギリアムが監督した1996年の映画のTVシリーズ版。ただしギリアムはこっちには何も関わってないみたい。

大まかな設定は劇場版と同じで、近い未来において何者かが放ったウィルスによって人類の大部分は死滅し、2043年には地球上の文明は崩壊していた。残った人間たちは使える道具などを漁って暮らしていたが、過去に人を送り込むことができる装置を発見する。そこで彼らはジェームズ・コールという男性を2015年に送り返し、ウィリスを散布したと思われる科学者を抹殺するよう彼に命じるのだったが…というようなプロット。

劇場版とはキャラクターの名前が少し違っていて、コールが過去で出会う女性科学者がキャスリンでなくカサンドラになっているのは劇場版でカサンドラ・コンプレックスが言及されてたことに由来するんだろうな。またブラッド・ピットが演じてたメンタルな人の役は女性が演じることになるみたい。

また劇場版でコールを過去に送る科学者たちは冷酷で人間味の無い存在として描かれていたが、こちらではもっとコールに協力的になっている。過去と未来の行き来も比較的容易にできるようだし、いずれコールが1970年代に行くことも示唆されてるので、コールが時空を股に冒険する「タイムマシーンにお願い」みたいな内容になるのかなあ。

Syfyの番組としてはまあ悪い出来ではないと思うのだけど、「12モンキーズ」の看板を抱えているとどうしても劇場版と比べてしまうのよ。あちら(およびその元になった「ラ・ジュテ」)は時間を超えた愛と死というペーソスが根本にあったのに対し、こちらは単なるSF番組になっているというか。というわけでこの番組の内容に興味をもった人はまず劇場版を鑑賞しましょう。ギリアムの新作「ゼロの未来」もやっとこさ5月に公開されるよ!

「Marvel’s Agent Carter,」鑑賞

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「エージェント・オブ・シールド」に続く、マーベル・コミックスのTVシリーズ第二弾な。

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のスピンオフ的な番組で、主人公はあの映画でヒロイン役だったペギー・カーター。キャプテン・アメリカが海の藻くずと消え、戦争が終わったあと、彼女はシールドの前身組織であるSSR(Strategic Scientific Reserve)のエージェントとして働くのだが、まだ女性の社会進出が珍しかった時代において男性の同僚たちには相手にされない状況であった。そんななか、ハワード・スタークが開発していた秘密兵器が闇市場に流出したという情報が入り、カーターは同僚たちを差し置いて単独で調査をはじめるのだが、謎の組織による陰謀が彼女を待ち受けていた…というような展開。

カーターを演じるのは劇場版と同じくヘイリー・アトウェル。ハワード・スタークも引き続きドミニク・クーパーが演じているけどすぐに海外に去ってしまうのでレギュラー出演はしないみたい。代わりにスターク家の執事であるエドウィン・ジャービスが彼女の補佐につき、いい感じの凸凹コンビを構成している。あとは「アイアンマン2」で言及されてたアントン・ヴァンコが登場したりと、マーベル映画とのつながりがいろいろ出てくるようだ。映画とTVシリーズを連結させたユニバースっていずれ整合性が破綻すると個人的には考えてるのだけど、これは1940年代が舞台ということもあり比較的自由に話が進められるんじゃないかな?ジャービスとアイアンマンのJARVISの関係とか、シールド創設の話とかがいずれ語られるのかも。あと「ウインターソルジャー」だとカーターは結婚したことになってたんだっけ?まあ海に沈んだ童貞男のために操を守り続けるわけにもいかないだろうから、ロマンスなども描かれるのでしょう。

気になるのはSSRの他のエージェントたちで、一人を除いて皆がカーターを露骨に差別し、お茶汲み係程度にした扱ってない始末。そんな彼らを尻目にカーターがさっさと事件を解決してくさまは見てて楽しいんだが、他のエージェントたちは無能すぎるんじゃないの。しかも政府の組織なのにあまり給料が良くないのか、カーターは一人暮らしせずにルームメイトと同居してるのだが、仕事の内容が内容だけに悪党が家までやってきてルームメイトが殺されてしまうという展開。エージェントに安全な家くらい与えろよ。ハイドラに乗っ取られたシールドの脇の甘さはSSRの時代から続いていたのだな。

40年代のアメリカのセットもよく出来てるし(グリーンスクリーンだけどね)、女性が活躍するライトな冒険活劇としては十分に楽しめる内容かと。第1話では『ザ・ファースト・アベンジャー』の映像がずいぶん使い回されてたが、キャップの知名度に頼らなくてもすぐに独自の人気を集めるようになるんじゃないかな。

「The Man In the High Castle」鑑賞

highcastleTransparent」がゴールデン・グローブ賞を受賞したりして、米アマゾンのオリジナル・シリーズもネットフリックス並みの評価を得るようになってきたわけですが、3回目(だよな?)となるパイロット番組の一群がこないだ公開されまして、これはそのうちの1つ。

フィリップ・K・ディックのSF小説「高い城の男」を原作にしたもので、「Xファイル」のフランク・スポトニッツが脚本を書いていて、製作にはリドリー・スコットが名を連ねている。当初はBBCやSyfyチャンネルで放送されるという話もあったけど、結局アマゾンで公開されることになったわけか。思ったよりも製作が早かったな。

話の設定は原作に比較的忠実で、舞台となるのは第二次世界大戦に枢軸国が勝利し、ナチス・ドイツと大日本帝国によって分割統治された1962年のアメリカ。市民の生活はナチスや日本軍に厳しく監視され、ユダヤ人や障碍者などは弾圧の対象になっていた。一方でヒットラーは高齢のため死期が近づいており、ゲッベルスやヒムラーが後を継げばアメリカ全土の掌握を求めて戦争を仕掛けてくることを日本側は危惧していた。そんななかニューヨークからはレジスタンス運動に加わったジョーという青年が、そしてサンフランシスコからはジュリアナという女性が、それぞれ使命を帯びて緩衝地帯にあるコロラドの町へとやってくるのだが…という展開。

原作ではアメリカが敗戦国になった状況をもっと甘受してたような憶えがあるけど、こちらでは帝国主義へのレジスタンス活動が行われていることが強調されている。ディックの小説の大きなテーマである「何が本物で何がニセモノか」という要素も盛り込まれてはなく、原作の主要人物である美術商のロバート・チルダンも第1話では登場していなかった。そして原作との最大の違いは、連合国が勝利した「正史」を描いたフィクション「イナゴ身重たく横たわる」が小説ではなくニュースリール映像になっていることで、これは映像化にあたっての必然的な変更になるのかな。当然CGなどもない時代において、連合国が勝利している映像がどうやって撮影されたのか?という謎が意外にも面白いアレンジになっていた。

リドリー・スコットが関わっているので「ブレードランナー」ばりの世界観を期待してしまうが、日本が統治するサンフランシスコの描写などは比較的抑えめだった。劇中で話される日本語は発音が変なのもあったけど、日本語の看板などは比較的よく出来てたかな。空港の名前が「ヒロヒト空港」となってるのはご愛嬌。易経もちゃんと出てきて、田上信輔がお伺いを立てています。

その田上信輔を演じるのがケイリー=ヒロユキ・タガワで、あとはルーファス・シーウェルやDJ・クオールズなんかが出演してます。原作も決して話にメリハリがある小説ではないし、シリーズ化されたら話がどう進んでいくのか予想もつかないけど、今後の展開が面白くなりそうな内容ではあった。なおこれを除けば今回のアマゾンのパイロット番組はみんなダメ、という評価も出ているので、とりあえずこれはシリーズ化される可能性が高いんじゃないでしょうか。

「EMPIRE」鑑賞

Empire, Season 1
フォックスの新作TVシリーズ。

元ラッパーでプロデューサーのルーシャスはエンパイア・エンターテイメントという音楽企業を立ち上げて成功し、会社は株式公開も目前としていた。彼には3人の息子がおり、近々そのうちの一人に会社を継がせるつもりでいたが、彼の元妻で麻薬取引の罪で刑務所に入っていたクッキーが17年ぶりに出所してきて彼の前に現われる。会社の立ち上げ時の資金が、彼女が犯罪に手を染めて手配したものだということをちらつかせながら、彼女は会社の大きなシェアを要望する。そしてミュージシャンの次男のマネージメントを彼女が担当することになり、同じくラッパーとしてデビューする三男との競合が始まるのだった…というような展開。

いわゆるナイトタイムソープなので、ドロドロとした人間関係がコテコテに詰まってます。売れない頃に裏社会と関わっていたルーシャスはいまだにその関係から抜けきれないでいるし、さらに難病をかかえていることが発覚して余命数年と宣告される次第。彼の息子たち(ビジネスマンとして優秀だがミュージシャンでない長男、ミュージシャンとして優れてるがゲイである次男、若くて横柄な三男)も会社の経営権をめぐって裏では駆け引きが始まっているうえに、すべてをクッキーが引っかき回すという設定。でもどの登場人物も深みがあるように描かれているかな。

第1話の監督はリー・ダニエルズ。ルーシャスを演じるのがテレンス・ハワードで、クッキー役がタラジ・P・ヘンソン、あとはガボレイ・シディベがゲスト出演してたりと、かなり強力な役者が揃ってます。しかも今後はコートニー・ラブやナオミ・キャンベル、メイシー・グレイなんかも出演するみたい。内容が内容だけに歌のパフォーマンスも多分に盛り込まれていて、ドラマと歌の部分のバランスが微妙ではあるのですが悪くはない。なお音楽監修はティンバランド。

現代における音楽業界の実情とか、ラップ・シーンにおけるゲイの立場とかが描かれていて、ブラック・カルチャーが好きな人には結構楽しめる内容じゃないでしょうか。日本ではあまり受けないかもしれないけど、今後の展開が気になるような内容ではあった。