「IRONSIDE」鑑賞


10月から始まるNBCの新シリーズで、名の通りレイモンド・バーの「鬼警部アイアンサイド」のリメーク…っておれオリジナルを観たことがないのですが。

ニューヨーク市警の警部ロバート・アイアンサイドは容疑者を追跡中に狙撃され、半身不随となって車椅子の身になってしまう。しかしこの障害にもめげず、彼は独自の捜査班を結成してさまざまな事件を解決していくのであった…というプロット。

アイアンサイドは頭脳明晰であり、情報集めなどは部下が行うものの、いわゆる安楽椅子探偵というわけでもなく、自ら現場に赴いて犯人逮捕などを行う行動派。ただそのせいか従来の刑事ドラマに比べてそんなに目立った特徴があるわけでもなく、意地の悪い言い方をすれば「刑事が車椅子に乗ってるだけ」だという内容でもある。第1話ではアイアンサイドが狙撃された狙撃された顛末とか、半身不随になったことの葛藤なども描かれているものの、あまり話に深みを与えるものではなく。とりかかった事件の解決もなんとなくモヤモヤが残る内容だったな。

主人公のアイアンサイドを演じるのは「THE EVENT/イベント」のブレア・アンダーウッドで、彼の部下としてパブロ・シュレイヴァーなどが出演している。実際は健常者であるアンダーウッドが障碍者を演じることに対して「障碍者の役者を起用しろ!」というクレームも出たらしいが、そこまで政治的に正しくならなくてもいいんじゃないかと思う。

むしろこうした作品に人気が出ることが障碍者への貢献にもなるとは思うんだけど、人気が出るかはかなり微妙な内容の作品ではある。

「LOW WINTER SUN」鑑賞


「ブレイキング・バッド」に代わるドラマが早急に必用なAMCの新シリーズ。秋に早くも日本で放送するとか?

フランクはデトロイト市警の刑事だったが、同僚のブレンダンの悪徳ぶりと汚職に耐えられなくなくなり、別の同僚のジョーと結託してブレンダンを殺害し、自殺に見せかけて車ごと海に投げ込む。完全犯罪を達成したつもりのフランクだったが、実はブレンダンは内部調査の部門に目をつけられており、次の日に彼らが調査にやってきたことからジョーは調査のことを知っていたのではと訝しむフランク。一方ではブレンダンから麻薬の横流しを受けていた街のゴロツキたちが、ブレンダンがいなくなったことでマズい状況におかれていた。さらに海中から引き揚げられたブレンダンの車のトランクから切断された死体が発見されたことで、物事は予期せぬ展開を迎えることに…というのが第1話のプロット。

主演は最近いろんな映画で悪役を演じてる感のあるマーク・ストロング。彼の同僚のジョーを演じるのは同じくイギリス人のレニー・ジェームズ…ってこのままだとアメリカ人のテレビ俳優はデトロイトの労働者よりも先にみんな失業してしまうんじゃないだろうか。「ブレイキング・バッド」のデヴィッド・コスタビルも出てるけどね。そもそもストロングがイギリスで出演した同名のミニシリーズをベースにしたものらしい。ミニシリーズならまだしも、この設定で話をどこまで引っ張ることができるんだろう?

話は地味というか暗くて、荒廃したデトロイトを舞台に登場人物たちがウジウジ悩む描写が続く内容になっている。その地味っぷりはAMCの「ルビコン」に通じるものがあるかな。「ブレイキング・バッド」には吹っ切れた主人公によるカタルシスがあったわけだが、この番組にそのようなものは期待できず。「バッド」の後釜になるのは厳しいかな。ちゃんとデトロイトで撮影をして地元の経済復興に貢献してるようなので(自治体から補助金もらってるらしいけど)、頑張ってほしいシリーズではあるのですが…。

12代目ドクター・フー決定!


And he’s still not ginger!

マット・スミスが年末のクリスマス・スペシャルで降板するにあたり、「次のドクターを演じるのは誰か?」という話題がロイヤルベイビーの性別くらいにイギリス国民(および世界中のオタク)を賑やかしていたわけですが、先週になって週末の生放送で新ドクターの発表が行われるとの情報が入り、そして公表されたのは…「The Thick Of It」のマルコム・タッカーことピーター・キャパルディ!

下馬評というかブックメーカーのオッズでは一番人気だったこともあり(あの人たちはどこから情報を仕入れてるんだろう)、マット・スミスのときのようなサプライズではないものの、リブートされてからは比較的若手がドクターを務めていたことを考えると、55歳のキャパルディの起用は大きな方向転換とも言えるでしょうな。彼は年を取りすぎているという批判もあるようだけど、ドクターってのはそもそも年取ってるものなんだよ!

「The Thick Of It」では死人も震え上がらせるほどの罵詈雑言をまき散らす「怖い人」のイメージがあるキャパルディだけど、ユーモラスなドクターの役をどう演じるのかな。演技力はバツグンの人なので不安などはまったくありませんが。あと彼は以前にも古代ポンペイの官僚の役で「ドクター・フー」に出てたり、トーチウッドの「チルドレン・オブ・アース」では準主役のような役回りであったのですが、そこらへんは無視されるのかな。

マット・スミスが去るのは残念ですが、キャパルディのようなベテランがドクターを演じるのなら今後の展開にも大きく期待できるでしょう。日本でもそれなりに知名度のある役者だし、いずれ日本での放送も…?

それではキャパルディ氏からのメッセージをお聞きください:

「FAMILY TREE」鑑賞


ジョージ・クルーニーのハワイのやつじゃないよ、HBOとBBCが共同製作した、クリストファー・ゲストの新シリーズだよ。ゲストの作品なので当然のごとくモキュメンタリーのスタイルで撮られたコメディ。

交通事故の過失を調査する仕事をしているトムは、姉とともに久々に父親の家を訪れたところ、彼の大叔母にあたる女性が亡くなったことを父親から伝えられる。そして大叔母は一家に伝わる品々が入った箱をトムに遺しており、その中で彼は自分の祖先らしき人物の古い写真を発見し、彼が誰であったかを調べようとするのでした…というプロット。

主人公のトムが自分の親族に関わるいろんな事実を発見していく、というコンセプトの番組で、やがて海を渡ってアメリカに行ったりするらしい。いろいろエキセントリックな人たちが出てきて笑えるところは笑えるんだけど、小市民のペーソスみたいなものが根底にあって、トムは自分の先祖が偉大な人かもしれないという期待が裏切られてばかりだし、彼の父親はろくに動作もしない発明品に凝っている有様で、姉のビーにいたっては心の鬱憤をうまく吐き出すことができず、腹話術を使って猿の人形に罵詈雑言を言わせる癖をもった女性だったりする。

ゲストが監督した映画「みんなのうた」でも男女ふたりの儚い名声とその後の生活の描写がとても哀しかったけど、どこか精神的に脆い人々をバカにするわけでもなく、賛美するわけでもなく、絶妙なスタンスで描いているのがクリストファー・ゲスト作品の巧いところですかね。エンドクレジットで流れるロン・セクスミスのオリジナルソングも異様にメランコリックでいいぞ。

トムを演じるのは「IT CROWD」のクリス・オダウド。他にもゲスト作品の常連としてマイケル・マッキーンやフレッド・ウィラード、さらにゲスト本人が出てくるほか、エド・ベイグリー・Jr.とかケビン・ポラック、エイミー・セイメッツなどが出演しているらしい。あとビーを演じるニナ・コンティって本当に腹話術で有名なコメディアンで、猿の人形も彼女のスタンダップ芸からの拝借らしい。

批評家の評判は良いものの、HBOで放送されたときはかなり視聴率が低かったらしく第1シーズンで打ち切りではないかとの憶測が飛び交っているようだけど、良い作品だと思うのでもうちょっと世に知られて欲しいところです。

「CAMP」鑑賞


アメリカのテレビとか映画を観ててもよく分からない文化の一つにサマーキャンプがありまして、なんか夏のあいだは全米すべてのティーンが田舎のキャンプ場に収監されるようなイメージを抱いてしまうのですが、実際どれだけの家族がサマーキャンプに子供たちを送るのか、どれだけの期間いるのか、いくら費用がかかるのかなどがよく分からないんだよな。これはそんなサマーキャンプを舞台にしたNBCの新シリーズ。前述の疑問の答えは全く見当たらなかったばかりか、まるでキャンプ場だけがこの世に存在する全てであるかのような描かれ方をしてました。

物語のプロットらしきものも殆どなくて、離婚したばかりでキャンプ場の経営に四苦八苦するシングルマザーを中心に、その息子とか、嫌々ながらキャンプ場にやってきた少年とか、挫折した水泳少女とかの交流が、キャンプ場のまわりの人たちともにまったりと語られている感じ。いちおうキャンプ場にもスクールカーストみたいなものがあって、ライバルのキャンプ場の少年たちとの凌ぎ合いなどもあるものの、The CWのティーン向けドラマみたいにギスギスした人間関係が出てくるわけでもなく、健全な少年少女たちのひと夏の物語、といったところ。

別にそれはそれで悪くはないし、観てて微笑ましいところがあるのですが、全体的にのんべんだらりとしてて無味乾燥であることは否めない。サマーキャンプを舞台にしたシリーズなら、ABCファミリーの「HUGE」のほうがティーンの抱える問題とかもしっかり描いていて面白かったような?例によってエピソード数も削られたようだし、夏の花火のごとくポンッと打ち上げられてシュルシュルと消えていく番組となるでしょう。