「K-VILLE」鑑賞

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iTunesストア経由でフォックスの新作ドラマ「K-VILLE」を鑑賞。ハリケーン・カトリーナによる災禍のあとのニューオリンズを舞台にしていることで話題になった作品だけど、内容自体はクリーシェ満載のえらくベタな刑事ドラマだった。

相棒をカトリーナの際に失った主人公の警官(黒人)が新しく転属してきた警官(白人)とコンビを組むことになり、最初は新しい相棒を軽蔑してケンカばかりしてたものの、だんだん腕を認めるようになるところとか、銃撃事件の操作に失敗して1度は恥をかくものの、ドンデン返しで事件の黒幕をつきとめて最後は波止場での銃撃戦になるとことか、もう典型的な刑事ドラマの要素が盛りだくさん。これに「定年退職を目前にして殉死するベテラン警部」とかが加わればもう完璧なんだけどね。同じくフォックスの「UC: Undercover」みたいな、悪くはないんだけど何の取り柄もない刑事ドラマといった感じ。

主人公を演じるアンソニー・アンダーソンは傑作「ハッスル&フロウ」でB級コメディアンからシリアスな役者へとうまく転身できた人だけど、ここでは演技がテンパリすぎてて周囲から浮きすぎている。他の出演者はみんな型にはまりすぎてて面白みなし。

とまあ厳しいことを書いたけどニューオリンズの光景自体はエキゾチックで奇麗なんですよ。災害で崩れた廃屋とかも含めて。今後はこのニューオリンズという舞台を、ガンボとかブードゥー・ショップといったステレオタイプに頼らずに、どれだけ巧みに利用できるかがポイントになってくるだろう。

「BACK TO YOU」鑑賞

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iTunesストアで無料配布されている新作TVシリーズの1つ「BACK TO YOU」を鑑賞。

「フレイジャー」のケルシー・グラマー主演の30分シットコムで、ピッツバーグのテレビ局のニュースキャスターだった主人公が、ロスアンゼルスのテレビ局へと栄転するものの、放送時の失言によりクビにされて、また古巣へと戻ってくる…という内容のもの。

良くも悪くも典型的なシットコム。新作なのに古くさい感じがしてやんの。「オニオン」のネタで「New Sitcom Pulls Back The Envelope」というのがあったけど、まさしくそんな感じの作品。ただしその反面、あらゆる点で保守的に作られているため、地雷を踏みまくりだった「The Big Bang Theory」に比べれば安心して観てられるかも。シットコムにしてはキャストが多いのが気になるけど、フレッド・ウィラードが出てるのはいいな。

ケルシー・グラマーって「フレイジャー」の末期では1エピソードあたり1億円以上のギャラを稼いでた人だけど、なんでそんな大金持ってるのにまだ仕事したがるんですかね。年に20億以上も稼いだら、とっとと引退してカリブ海あたりでのんびり暮らしたいところですが。金持ちの考えることはよく分からん。まあ演技の幅は無いに等しい(フレイジャーに似た役しかできない)人なので、「フレイジャー」のファンをどこまで引っ張ってこれるかに、この作品の成功はかかってるな。

ちなみに映像編集にMacMini使ってる放送局って、なんだよありゃ。

「The Big Bang Theory」鑑賞

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ここ最近はiTunesストアでのTVシリーズのダウンロードに動きがいろいろあって、NBCが価格面でアップルと衝突して作品を引き揚げ、自分ところのサイトで販売することになった一方で、フォックスは寛大にも新シーズンの作品を5つもiTunesストアで無料配布しているみたいだ。一見すると正反対のマーケティングのようだけど、NBCとフォックスってこんど共同で「HULU」なるダウンロードサイトを立ち上げるんだよな。ここらへんの思惑はよく分からん。NBCが成功すればCBSもiTunesストアからの脱退を考えるとのことで、とりあえずNBCには大コケしてほしいところです。

そんななか、パイロットが無料配布されていたCBSの作品(製作はワーナー)「The Big Bang Theory」という30分シットコムを観てみる。

えー、なんだ、一言でいえば「ゴミクズ」といった感じの作品。

女性に縁のない2人のオタクが住むアパートに、パツキンのおねーちゃんが引っ越してきてそりゃもう大変なことに…という話なんだが、「僕だって友達くらいいるさ、MySpaceに50人くらいね」とか「女の子とオフラインでチャットなんてしたことないよぉ」とか、中学生あたりが考えそうなツマらないジョークが続くだけの内容で、こんなくだらないジョークにいちいち反応してるラフ・トラック(50%くらい水増ししてるな)がとてもうざったい。プロデューサーは「ダーマ&グレッグ」の人らしいけど、オタクたちを見下して笑いをとろうという魂胆が感じられて非常に気に入らない。あんなステレオタイプなオタクなんて今どきいませんぜ。「40歳の童貞男」なんかはオタクに共感できるところがあったからこそ、あんなに面白い作品になったと思うんだが。

あと個人的に致命的だと思ったのが、主人公と友人たちを合わせて4人のオタクが出てくるんだが、それぞれ「おねーちゃんにアタックしたいけど7割くらい諦めてる人」「おねーちゃんにまるで興味ない人」「自惚れておねーちゃんにアタックしてるけど無視されてる人」「緊張しておねーちゃんと口もきけない人」という役割になっていて、要するにおねーちゃんとのケミストリーが感じられる関係になっている人が誰もいないという点。こういうシットコムって「フレンズ」みたく登場人物の掛け合いが重要なはずなのに、男が4人もいて誰もまっとうにおねーちゃんと会話できない状態になってやんの。

まあまだパイロットだから、2話以降はグンと話が面白くなる可能性も否定できないものの、とりあえず俺はもう観る気ないや、この作品。

「HOT FUZZ」鑑賞

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アマゾンに注文してから1ヶ月半、やっとDVDが到着。

いやあ評判通りの大傑作。コメディとして秀逸なのはもちろんなんだが、それ以上にアクション映画として異様に出来が良かったりする。ほのぼのとしたコメディかな?と思わせておいて、後半は怒濤の「ショーン・オブ・ザ・デッド」的展開になっていくのが素晴らしい。いろんな展開が凝縮された内容ながら、ジェリー・ブラッカイマー的編集とはまた違う、素早いカッティングを効果的に使った編集によって観る人を引き込んでいく。あの編集テクニックに俺はイギリス映画の底力を感じましたよ。話の合間に挿入される細かいギャグにも感心。

「ショーン」だと典型的なダメ男を演じてたサイモン・ペッグが、今回は有能で真面目な警察官を立派に演じているほか、マーティン・フリーマンやスティーブ・クーガン、スティーブ・マーチャントといった俺好みの役者たちがちょろっと出演しているのもナイス。日本ではなぜか公開未定らしいけど、どうしてでしょうね。ただ英語の言葉遊び的なジョークが多いんで、そこらへんのニュアンスを伝えるのは難しいかもしれない。「Decaffeinated?」とか「Judge Judy and Executioner!」とか。

ちなみにDVDは特典映像とかコメンタリーとかがたくさん入ってて結構お得。週末またコメンタリーつきで観よっと。

「小人の饗宴」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの出世作(だよな?)「小人の饗宴」を鑑賞。

板東英二みたいな顔した「縦方向に挑戦された人々」が収容所を乗っ取り、ケタケタ笑いながら乱痴気騒ぎをひたすら繰り広げる映画、というのは文章だとひどくアートでアバンギャルドな作品に思えるかもしれないが、実際に観てみるとあんまり面白くない、というよりも正直つまらない映画だった。だって本当に小人たちがチョコマカ騒いでるだけなんだもん。小人だからってお互いに結束力が強いわけじゃなく、盲目の小人をよってたかってイジめたりすんのはあまりにも子供じみていて面白かったけど。

このときの経験がいずれ「アギーレ」や「フィッツカラルド」という傑作を生んだんだな、ということ以外はあんまり印象に残らない作品であった。