「THE EVENT」鑑賞


意味不明の現象が起きて、それから謎がゆっくり解明されていくという、いわゆるLOSTライクなNBCの新シリーズ。昨年「フラッシュフォワード」が失敗したことでこのジャンルは完全に下火になったかと思ってたけど、夏の「PERSONS UNKNOWN」も含め、まだ需要はあるみたい。あるいは製作者のアイデアが尽きているだけか。登場人物が多いうえ時系列が乱れて話が進むので、とりあえず登場人物とその行動について記すと以下の通り:

・恋人と南海のクルーズ旅行に出かけた青年のショーン。ダイビングから帰ると恋人は失踪し、彼と恋人がクルーズ船に乗船した記録はすべて消えていた。その数日後、ショーンは銃を持って旅客機に乗り込み、パイロットと会話をしようとする。
・ショーンの恋人の一家。ショーンたちが旅行中に彼らは何者かに襲撃される。その後、一家の父親はショーンの乗った旅客機のパイロットとなる。
・新たに就任したアメリカの大統領。彼は超能力者の集団(?)がアラスカの秘密基地に囚われていることを知り、国家情報長官の反対にも関わらず彼らを解放することを決定する。そして彼が集団のことについて公表しようとした会場に、ショーンたちの乗った旅客機が突っ込んでくる…。

といった感じかな。当然ながら筋の通った説明などは一切ないのだが、特殊な能力を持った集団が何らかの「イベント」に関わっていて、それについて様々な人や勢力が暗躍したり巻き込まれたりする話になるみたい。第1話は例によって「意味不明だけど何かスリリングな展開」がずっと続くため見応えはそこそこあるんだが、こういうのってよほど面白いストーリーを展開させないと飽きられるのも早いんじゃないだろうか。個人的には次の話も観てみたいな、という気にはならなかった。たまにウィキペディアであらすじをチェックすればいいや、という程度で。それと超能力者(らしきもの)を登場させてしまうと、何でもありの展開になってしまうような気がするんだが、どうなんだろう?

出演者はジェイソン・リッターとか、「ER」のウィーバー先生ことローラ・イネス。なんてのはどうでもよくて、ジャンル映画ではおなじみのトニー・トッドがチョイ役で出てたのが良かった。ほんとにチョイ役だったけどさ。

日本人受けする内容ではあるのでAXNあたりでいずれ放送されるだろうけど、果たして本国では長続きするのかね?crackedでも「いろんな展開が起きるだけ起きて、5週目に打ち切られるだろう」なんてネタにされてたぞ。

スティーブン・コルベアー対アメリカ議会


こないだスティーブン・コルベアーが議会で証言を行ったらしいぞ。事の発端は「コルベアー・レポー」でのゲストの呼びかけに応じて、移民がやっている仕事をアメリカ人がやってみようという体験プログラムに彼が参加したことで、それが転じて移民の環境などに関して証言することになったらしい。しかし真面目に証言しているわけではなく、あくまでも番組内のキャラクターを演じきっているところが度胸があるというか何というか。

周りはカタブツの公務員ばかりなのでジョークを言っても爆笑が起きるわけでもなく、全体的にお寒い雰囲気が漂っている感じは否めないのですが、以前のブッシュ大統領の前で彼をコケにしたスピーチといい、実際にこういうことをやってしまうのは凄いよなあ。議会の税金のムダ遣いという人もいるかもしれませんが。

さらにはジョン・スチュワートと組んで、フォックスニュースのグレン・ベックが行ったワシントンでのマーチに対抗するマーチを10月30日に開催するようだし、コメディとニュース番組の境界がどんどんボヤけたものになってきてるんすね。

「LONE STAR」鑑賞


フォックスの新作ドラマで、現代版「ダイナスティ」みたいな作品。

詐欺師の父親に育てられたロバートは、テキサスを舞台に父親と組んで石油ビジネス絡みの投資詐欺を行っていた。そして石油王のクリント・サッチャーの資産を狙い、彼の娘であるキャットと結婚する。しかしその一方で彼はテキサスの別の場所にリンゼイという恋人がおり、2人の女性のあいだを秘密裏に行き来するという二重生活を送っていた。やがてサッチャー家のビジネスに深く関わるようになったロバートは、父親にリンゼイを捨てるように忠告されるのだが、普通の生活に憧れた彼はリンゼイとも結婚することになり…というような話。

いろんな利権の絡んだ石油ビジネスを背景に、2人の女性との関係に巻き込まれる男性を主人公にした内容だが、あまり昼メロみたいなドロドロした話にはなってなくて、むしろ主人公が奮闘するサクセス・ストーリーっぽいものになっている。これは主人公のロバートが非常に好人物として描かれているためで、2人の女性を本当に愛し、それ以外の浮気はせず、親の期待を裏切れないために詐欺を続ける彼の姿に、観る人が自然と共感してしまう作りになってるのが巧いな。

ロバートを演じるのはジェームズ・ウォークとかいう比較的無名の役者だけど、ニコニコ微笑むディラン・マクダーモットといった感じで、主人公をきちんと演じきっている。また彼の父親をデビッド・キース、クリント・サッチャーをジョン・ヴォイトといったベテラン俳優が演じて脇を固めている。ヴォイトって反オバマのトチ狂った発言を繰り返してるのでハリウッドから干されたかと思ってたけど、テレビではまだ仕事ができるんですかね。

なかなか重厚なドラマで、そのオリジナリティが批評家たちにも絶賛されて今シーズンの新作のなかでは一番の出来という声も高いようなのだが、残念なことに第1話の視聴率は散々だったらしく、早くも打ち切りの噂が飛び交っているらしい。これはたぶん地上波ネットワークでなくケーブル局向けの作品だったんだろうな。他の多くのフォックス作品のように「出来はいいんだけどすぐ打ち切られたカルト作品」になってしまうんだろうか?

「RAISING HOPE」鑑賞


フォックスの新作シットコム。個人的にフォックスのシットコムはすべてあの傑作「ブルース一家は大暴走」こと「Arrested Development」と比べてしまいがちなのですが、この作品は奇天烈な一家が主役で、ラフトラックなしのシングルカメラ番組という点では「AD」に通じるところがあったかな。

主人公のジミー・チャンスは典型的なホワイトトラッシュの家庭に育った23歳の青年で、日雇い業者の父親やチェーンスモーカーの母親、認知症の祖母、パーティー好きの従兄弟に囲まれながら、いつかは家を出て大成することを夢見ていた。そんなある日、彼は男に追いかけられていた女の子を助けたことから、そのまま彼女と一夜をともにしてしまう。しかし彼女は実は男を食い物にする犯罪者であり、逮捕された彼女は死刑判決を受けてしまう。だが彼女はジミーの子供を身ごもっていたことから、彼女の刑が執行されたあと、ジミーは赤子を引き取ってホープと名付け、何の育児経験もないままどうにか育てようとするのだが…というような話。

上の死刑執行うんぬんというのは殆ど話と関係なくて、要するに変人だらけの一家で赤ちゃんを育てようとする青年のドタバタを描いた内容になっている。主人公の親たちも単なるホワイトトラッシュのバカとして描かれているわけではなく、子供想いの優しい面も持っているなど、それなりに深みのある設定になっているかな。ただし狭い家の中でのドタバタを描くことには限界があるわけで、一家以外の人物とのやりとりをどこまで描けるかがポイントになってくるだろう。ジミーと恋仲になりそうなレジ係の女の子とか。あとジミーが繊細すぎるというか、あらゆることに対して受け身のリアクションしかしないため、主人公なのにキャラが立ってないのが気になったな。

赤ん坊を中心にしたTVシリーズってどうも長続きする気がしないのですが、悪い作品ではないとは思うので、これからもっと面白くなっていくことに期待しましょう。

「OUTLAW」鑑賞


ジミー・スミッツ主演の、NBCの新作法廷ドラマ。

主人公のサイラス・ガーザはアメリカの最高裁判所の判事でありながらも女好きでギャンブル中毒という型破りな性格で、その保守的なスタンスから左派には嫌われていた。しかしACLUのメンバーと夜をともにし、リベラルな思想を持っていた彼の父親(昨年に交通事故で死去)のインタビュー映像を観たことから、サイラスの思想は一夜にして180度転換し(いやホントに)、リベラルな男になって最高裁判事の座を辞職、自身の弁護士事務所を立ち上げて、法の誤った裁きを受けた人々を助けていくのだった…というような話。

なんかハリウッドのリベラルたちの幻想が詰まったような設定だよなあ。主人公が右派の最高裁判事だという設定を知ったときはかなり型破りな作品になるかと期待したのですが、そのあと話がどんどんせせこましくなって普通の法廷ドラマになってしまうのが残念。これはやはりデビッド・E・ケリーあたりにまかせて、独自の裁きを下す判事の話とかにしてほしかったんだが。「アウトロー」の題名が泣いているぞ。

法廷ドラマとしても出来は凡庸で、ありがちな展開にありがちな音楽がかぶさっている感じ。メロドラマの要素が多いのも話をつまらなくしていて、無実の罪で収監された死刑囚(なぜか演じるのはRZA )が妻と一緒に「俺は無実だ!」と嘆願するシーンなんかはクサくって観てらんない。第1話の監督は「ホテル・ルワンダ」などで知られるテリー・ジョージだが、あの人ってもっと演出巧くなかったっけ…?

ジミー・スミッツは好きな役者だけど、落ち着いた印象を与える人なので、こういう破天荒なタイプの役は向いてないような気がする。本国でも評判はずいぶん悪いようなので、たぶんシーズン途中で打ち切られるんじゃないでしょうか。