「ATTACK THE BLOCK」鑑賞


イギリス発のSFホラー/パニック映画。

舞台となるのはサウス・ロンドンの、あまり裕福ではない区域の団地。ガイ・フォークス・ナイトということで花火が舞うなか、奇妙な物体が空から落ちてくる。団地に住むゴロツキで、通行人から金銭を巻き上げたばかりのモーゼス率いる少年ギャングたちはその物体に遭遇し、中にいた獰猛な生物に襲われるものの逆にそれを殺害し、その死体を担いで意気揚々と団地へと引き揚げる。しかしその後さらに凶暴な生物が団地のまわりにつぎつぎと飛来し、モーゼスたちを狙って団地を襲撃するのだった…というストーリー。

マッシヴ・アタックのPVに出てきそうな薄汚い団地を舞台に、次々と現れるクリーチャーたちと闘う少年たちの姿は非常に見応えあり。全体的なノリとしては80年代にVHSで観てたB級インベイジョンもの(「クリッター」とか)にかなり近いんだけど、あれらの作品の多くは主人公が純朴な少年たちだったのに対し、こっちはストリートワイズな不良少年たちが主役だというのがポイント。だから武器もナタとか日本刀を使いこなしてたりもする。話の冒頭から女性をカツアゲして財布を奪ったりしてるし、こういうゴロツキにどこまで感情移入できるかが作品の評価の分かれ目になるかな。サウス・ロンドンのギャングのスラングもバンバン出てくるので、字幕がないと観るのはキツいかも。

あと団地を襲撃するクリーチャーはヌルヌルもヌメヌメもしてないゴリラの着ぐるみのような外観ですが、真っ黒な体に鋭い牙だけが闇の中で光るという演出はなかなか巧いですね。彼らに関する伏線が結構バレバレなのは少し残念でしたが。

これが初作品となる監督のジョー・コーニッシュは実際にギャングにカツアゲされたことでこの映画を考案したんだとか。プロデューサーにはエドガー・ライトも名を連ねていて、ニック・フロストも出演してるぞ。ニック・フロストのエイリアン映画としては「宇宙人ポール」よりもこっちのほうがずっと面白かったんだけど、日本での公開予定はいったいどうなってるんだろうか。

「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」鑑賞


「ロケッティア」のジョー・ジョンストンが帰ってきた!あの人やっぱり真面目な映画撮ってるよりもこういうレトロでちょっとユーモラスな冒険活劇がいちばん似合うんじゃないだろうか(「遠い空の向こうに」もそれに含めることにする)。

ただし「ロケッティア」はあくまでも1人の少年の冒険物語だったのに対し、こちらは大戦中の国の英雄の物語なので、主人公がリーダーへと成長するまでの過程が十分に描かれなかったのは残念。単身もしくは小部隊で闘っている前半はとてもいいんだけど、キャプテン・アメリカとしてのカリスマ性が後半になっても欠けているというか。単に勇気とスーパーパワーだけでなく、洞察力とか思慮深さも身につけていくところが観たかったというか。バッキーがXXされるシーンもやけにサラッと描かれてるし、女性には最後まで弱いままだし。クリス・エヴァンスは口の達者な脇役はよく似合うものの、国のヒーローを演じるのはちょっと力不足だったかもしれない。

あとの役者はやはりトミーリー・ジョーンズがズバ抜けて巧い。ヒューゴー・アーヴィングはドイツ語訛りのせいで損をしていて、スタンリー・トゥッチはその逆。ヒロインは可も不可もなし。ゾラ博士の人が個人的には良かったな。あとリチャード・アーミテジが出てたのには気付かなかったよ。

もう一押しすればもっと面白い作品になったかもしれないが、普通のアクション映画として観れば十分に楽しめる作品。マーヴェル映画としては「アイアンマン2」より上で「マイティ・ソー」よりちょっと下、というくらいの出来かな。

「HART OF DIXIE」鑑賞


The CWの新作ドラマ。いわゆる「都会の人が田舎に行って四苦八苦するものの、次第に周囲と打ち解けていく」というジャンルの作品。

ニューヨークの若き女医であるゾーイ・ハートは医学校を首席で卒業した優等生で、心臓病の医者になることが夢だったものの、患者に親密に接することができないという理由で上司にその夢を断たれてしまう。失望したゾーイは数年前に彼女の卒業スピーチを聞いて感動したという老人のオファーを受け、アラバマの小さな町の病院で働くことになる。しかし彼女がその町に着いたときには老人は既に亡くなっており、彼の遺言で病院の半分の所有権がゾーイに譲られていたことを彼女は知る。こうして彼女はニューヨークとは異なる田舎の慣習に驚かされながらも、町の人たちの面倒を見るようになり、ある秘密を知ることになるのだった…というプロット。

アイシャドーが濃い主人公のゾーイを演じるのはレイチェル・ビルソン…って誰だっけ。彼女と病院を共同で運営する医師の役でティム・マシスンが出てるけどレギュラーでなくゲスト扱いみたい。都会のキャリアウーマンが夢破れて田舎に行き、そこでカルチャーギャップに驚くという展開はどっかで観たなあ。というわけで目新しさは無いものの、いわゆるオールドスクールなThe CWの雰囲気があって、俺はそんなに嫌いではないですよ。

アラバマの人たちはみんな呑気でマイペースで、頭の回転がなんか鈍そうで女の子がすぐ妊娠する、という描写はどうなんだろ。良家のお嬢様で悪賢そうなビッチも出てくるけどね。全体的に田舎者を見下してる雰囲気が感じられなくもないが、昨年の「OFF THE MAP」よりはマシか。南部なのに白人ばかり出てくる内容になるのかなと思ったら、町の町長は引退した黒人のNFL選手という意外な設定だったのは面白かったかも。

「ONCE UPON A TIME」同様に登場する女性がみんな30歳以上というのはちょっと残念ですな。とはいえ早くもフルシーズンの放送が決まったらしいので、爆発的なヒットにはならなくても、このまま番組表の片隅でずっと続いていく「ONE TREE HILL」のようなシリーズになるんじゃないですかね。

「ONCE UPON A TIME」鑑賞


なぜかimdbで第1話が先行公開されていたABCの新作ドラマ。

おとぎの国では白雪姫を王子様が無事に生き返らせ、2人はめでたく結婚することになったものの、結婚式の途中に悪い王妃が現われ、いずれ災いが起きることを伝えて去っていく。そして2人のあいだに子供が生まれたとき、王妃が2人の城に攻めてきたことから白雪姫は魔法の扉を使って赤ん坊を「我々の世界」へと送り出す。それを知った王妃はおとぎの国自体を「我々の世界」へ持ち運ぼうとするが…。それから28年後、保釈金の取り立て屋をしているエマという女性のところに10歳の少年が訪れてくる。彼はエマがむかし養子に出した実の息子だというのだ。そして彼といっしょにストーリーブルックという小さな町に行くエマだったが、その町ではおとぎの国からやってきた住人たちが人間の姿を借りて暮らしていたのだ。さらに実はエマこそが白雪姫と王子の娘であり、彼女が町にやってきたことで「最後の戦い」への歯車がまわりはじめる…というようなプロット。

ちょっと解説が長くなったけど、分かるかな?ようするにおとぎの国のキャラクターたちが我々の世界に隠れて住んでいるということだよ。これってNBCで始まる「GRIMM」という番組と同じコンセプトなんだが、元ネタはDCコミックス/ヴァーティゴの「FABLES」だよなあ…あっちのTVシリーズ化の話は全然進んでないのに、よく似た話の番組が2つも作られるという不思議さ。まあハリウッドではよくあることでしょうが。

「LOST」のプロデューサーが絡んでるようで、どうも「LOST」ライクな番組として売り出したいみたいだけど、第1話の時点で多くの謎が説明されてるようなので、これからどこまで視聴者を引っ張っていくことができるのかな。小さな町のミステリーという点ではsyfyの「ユーリカ」とか「ヘイヴン」に似た雰囲気があるけど、地上波ネットワークでこうした内容がどこまで通用するんだろう。

主人公のエマを演じるのは「ハウス」のジェニファー・モリソン。他にもランプルスティルスキンの役でロバート・カーライルなんかも出演している。ロバート・カーライルにアメ公どもの脇役を演じさせるのは勿体ないなあ。白雪姫をはじめ出てくる女性がみんな三十路の人たちなのがアレですが、今後はシンデレラとかが出てくるみたい。他に出てくる(予定)のキャラクターはピノキオにゼペットじいさん、ジミニー・クリケットや赤ずきんなどなど。

すくなくとも「GRIMM」よりはずっと面白いし宣伝にも力を入れてるようなのでそれなりに長続きはするかもしれないが、こういうファンタジー色の強い番組がABCでどれだけ人気がでるのかはよく分かりません。

「HOLY FLYING CIRCUS」鑑賞


「キリストの生涯を茶化している」という理由から世界各地で上映禁止となった、モンティ・パイソンの映画「ライフ・オブ・ブライアン」にまつわる騒動の裏話を描いたBBC4のTVムービー。

パイソンズの面々を他の役者が演じているということで前から話題になっていた番組だが、内容はかなりおふざけが入ったものになっており、マイケル・ペイリンの奥さんは女装したテリー・ジョーンズだし、ジョン・クリーズもカメラに向かって「僕はクリーズ本人よりも(「フォルティー・タワーズ」の)バジル・フォルティーに近いキャラクターです」なんて自己紹介する始末。ちなみに上の写真を見ても分かるようにキャストは本物たちによく似ていて、テリー・ジョーンズだけは似てないかと思ったけど女装したらよく似ていたよ。

ストーリーも内輪ネタというかメタなジョークが満載で、登場人物がテリー・ギリアム風のアニメになったり人形になってライトセーバーで闘ったり、歴史検証に間違いがあることに気付いた(架空の)視聴者がBBC4にクレームを入れたりとやりたい放題。ただしこうしたナンセンスさが全て成功しているとは言い難くて、特にパイソンズを陥れようとするTVプロデューサーたちも間抜けにしてしまったことで、最後の見せ場であるキリスト教の僧侶とのテレビ番組での討論への盛り上がりに欠けてしまったのが残念。別に「フロスト X ニクソン」みたいなのを期待してたわけではないが、抗議運動などはもうちょと真面目に描いてもよかったのに。でも話の主人公を「世界でいちばん良い人」ことマイケル・ペイリンにしたのは正解だったな。視聴者がいちばん感情移入しやすい人だろうから。

というわけでどこまでがフィクションでどこまでが実話かよく分からない怪作でしたが、かつてこんなに論議を呼んだ映画があったんだよと知るのには適した番組ですかね。ちなみにアイルランドでは「人生狂騒曲」さえも公開禁止にされたんだよな。

早くも全編をyoutubeにアップした猛者がいた: