「SILICON VALLEY」鑑賞


2000年代になって「ビーバス&バットヘッド」を復活させたりして、なんか日和ったなと勝手に思ってたマイク・ジャッジがいつのまにか作っていたHBOの新作コメディ。例によって第1話が公式のYouTubeチャンネルにあがってるのでIPアドレスをゴニョゴニョすれば視聴可能だよ。

タイトル通りシリコンバレーを舞台に、若きプログラマーたちを主人公にした内容で、グーグルもどきの大企業に勤めるリチャードは職場の雰囲気に居心地の悪さを感じながらも、仕事の合間に音楽配信サービスの立ち上げに取り組んでいたが、そこで使われているデータ圧縮のアルゴリズムが非常に画期的なものであることが周囲に知られ、会社の社長より直々に技術の買収を数百万ドルでオファーされることに。さらにシリコンバレーの大物からもオファーが届き、リチャードのとった選択は…というような内容。

どうもジャッジは80年代に実際にシリコンバレーで働いていたことがあるらしく、そのカルトな雰囲気が嫌ですぐ辞めたらしいが、番組の内容も比較的シリコンバレーに批判的なような。ハリウッド以上に金が集まるようになったシリコンバレーにおいて、企業のリーダーたちはエコロジーやスピリチュアリズムにはまり、プログラマーたちはリーダーたちを盲信し、ギークな社員たちの間にもヒエラルキーが存在していることなどが描かれている。サラリーマンが主人公のジャッジのコメディといえば「リストラ・マン」が有名だが、過度なリベラリズム二対する風刺という点ではむしろ「The Goode Family」に内容が似ているかな。劇中に出てくるネタの多くは実際の出来事をベースにしたらしいけど、俺もシリコンバレーの文化に詳しくないので少しジョークが分からないところもありました。

主役のリチャードを演じるのはトーマス・ミドルディッチ。あまりよく知らない役者だな。しかし彼と同居しているプログラマーとして、TJミラーやマーティン・スター、クーメル・ナンジャニーといった強力な役者陣が出演しております。

HBOのコメディの常として抱腹絶倒するようなものではないけど、ダメ男たちが奮闘するドラマとしては面白くなりそうなんじゃないでしょうか。

「Stripped」鑑賞


アメリカの新聞に掲載されているコミック(横長の型式なのでコミック・ストリップという)についてのドキュメンタリー。

まずはコミックの歴史の説明から始まり、まだテレビやラジオが必ずしもポピュラーでなかった時代の大衆に娯楽を与えるものとしてコミックは大きな人気を誇り、ルーブ・ゴールドバーグやウィンザー・マッケイなどの作品が子供も大人も楽しませていたことが説明される。ミルトン・カニフがセレブのように扱われてたなんて今となっては信じられないような話ですな。

ご存知のようにアメリカでは日本のような全国紙はなく、それぞれの年において幾つもの新聞が発行されていたわけですが、それらにコミックを提供していたのがシンジケーションと呼ばれる配給会社で、彼らが良いと思ったコミックを作家から受け取り、各新聞に販売する仕組みであったわけです。よって作家たちはそれぞれの新聞と交渉するような必用はなく、シンジケーションに作品を売り込めばよかったわけで、作品が起用されたときは天にも昇る気持ちになったらしい。

その一方で作家たちは毎日のように作品を生み出し続けなければならず、ろくに休暇もとれない日々が何年も続くことが語られるわけだが、そうした創作の流れについて数多くの作家たちにインタビューが行なわれており、大御所では「ビートル・ベイリー」のモート・ウォーカーや「ジッピー」のビル・グリフィス、「ガーフィールド」のジム・デイビスあたりから、後述するウェブコミックの若手、あるいは「BONE」のジェフ・スミスのような非ストリップのコミック作家などが登場する。またメディア嫌いで隠遁生活をしていることで知られている「カルビン&ホブス」のビル・ワターソンがはじめて音声インタビューに応じていた(上のイラストも彼によるもの)。観ていて気づいたけど、ストリップの作家って女性も多いよね。いわゆるスーパーヒーローもののアーティストに女性が殆どいないけど、新聞のコミックは女性の読者にもアピールする必用があったためなんだろう。

しかしこれらの新聞コミックって、インディペンデント・コミックと同様に90年代くらいまでの日本ではものすごく情報が得られなかったものであり、せいぜい「ピーナッツ」や「ブロンディ」といった老舗の作品くらいが邦訳されていたような?おかげで自分の知識もこれらに関してはかなり限られており、世の中にはさまざまなコミック・ストリップがあるのだと実感した世代です。いまでは米ヤフーなどで気軽にチェックできるわけで、もっと勉強しないといかんな。なお上記のように多くの作品が紹介されている一方で、俺のお気に入りである「クレイジー・カット」や「ドゥーンズベリー」「THE FAR SIDE」「LIO」などはあまり紹介されておりませんでした。

こうして20世紀は栄華を誇ったコミック・ストリップだったが、新聞の発行数の減少にあわせてその影響力を失っていく。かつてはどの都市にも発行部数でしのぎを削る大新聞が2つ以上あり、そのどれかにシンジケーションが作品を売れば十分だったものの、新聞は相次いで廃止に追い込まれるか、コスト削減のためにコミックのページを無くしたりしていってしまう。

それに対して台頭してきたのが「Penny Arcade」や「PVP」、「Hark, A Vagrant」といったウェブコミックであった。これらの作家たちはシンジケーションに作品を売り込む必用もなく、ただ自分の作品をウェブにアップすることでファンを獲得して収入を得ることができ、作品の著作権についてシンジケーションと揉めるようなこともなかったのである(ただしドットバブルのときにはポータルサイトとPenny Arcadeのあいだで一悶着あったらしい)。古参の作家たちからはシンジケーションに比べてウェブコミックの収入が少ないことを懸念するような声も出るものの、このドキュメンタリーではウェブコミックの可能性について多くの時間が割かれ、スコット・マクラウドなんかも登場してウェブコミックについて力説していた。

ただしウェブコミックの収入の8割近くはコミックそのものでなくマーチャンダイズによるものだし、ファンからの寄付などでは収入が不安定なため、より確固としたビジネスモデルを模索してマネタイズを図っていく必要性も語られていた。ここらへん新聞紙のころは作家はシンジケーションだけを相手にしていればよかったのに対し、ウェブでは自分たちでビジネス面も把握しないといけないのが対照的だな。エンドクレジットでは登場した作家のウェブサイトが紹介されるのだけど、一人残らずなんらかのサイトを持っているのが印象的であった。

そして今後もし新聞などが無くなっても、コミックは何らかの形で残っていくでしょ、と意外なくらいにポジティブなメッセージをもってこのドキュメンタリーは終わる。確かに人間がマンガを描かなくなる日はこないだろうけど、DCコミックスやマーヴェルの人間だったら、ここまで楽観的なコメントはできないだろうなあ。これって気軽にサクッと読めるストリップの型式が、ウェブに合っているということで楽観的になれるのだろうか。

弱冠の専門知識が必用とされるので万人向けではないものの、コミック・ストリップの状況や将来を分かりやすく説明した良作のドキュメンタリーであった。おすすめ。

「A BAND CALLED DEATH」鑑賞


「シュガーマン 奇跡に愛された男」や「アンヴィル!」みたいな、忘れ去られたバンドを追いかけたドキュメンタリー。

1970年代初頭のデトロイト。黒人であるデビッドとボビーとダニスのハックニー3兄弟はザ・フーやアリス・クーパーに触発され、ロックバンドを組むことを決意する。モータウン全盛期のデトロイトにおいて彼らのような黒人がロックミュージックを演奏することは異色なことであり、近所の人たちからも「白人の音楽じゃないの!」と色目で見られた彼らだが、構わずに練習を続けて腕を上達させていく。当初はバンド名をロック・ファイヤー・ファンク・エキスプレスと名乗っていたものの、すぐにリーダーのデビッドの発案により名前を「デス」へと変更する(彼らは敬虔なクリスチャンであり、それなりにスピリチュアルな意向があったらしい)。

そして適当に選んだスタジオに入ってアルバムの収録を始めた彼らはプロデューサーに曲の良さを認められ、レコード会社の幹部にも紹介してもらう。しかしそのまんま「死」というバンド名が敬遠され、そのレコード会社はおろか世界中のレコード会社から拒絶をくらってしまうが、デビッドはバンド名の変更を頑として拒んでいた。仕方なしにアルバムの完成は諦め、7インチシングルを500枚ほどプレスした彼らは気晴らしも兼ねてニューイングランドに移るが、そこでもバンド名が災いしてライブの宣伝さえも認めてもらえなかった。そして結局のところ別のバンド名でゴスペル・ロックのアルバムを制作するもののヒットせず、失意のもとにデビッドはデトロイトに戻り、ボビーとダニスは残ってレゲエバンドを結成するものの、デビッドは80年代に肺がんで亡くなってしまう。

そして時は流れて2000年代。デスのレコードはいつの間にか「デトロイトのバンドの激レアな傑作」としてレコードコレクターのあいだで噂されるようになり、実際にレコードを入手した者がMP3にしてネットで公開したことでさらにデスのカルト的な人気が高まっていく。さらにボビーの息子が友人に勧められて曲を聞いたところ、「これ親父の声じゃね?」と気づいたことで、もはや忘れ去られていたデスの歴史が再び明らかになっていく(ボビーはデスのことを息子に話していなかったらしい)。こうしてまたデスはレコード会社に注目され、今回はバンド名も問題にならないまま、録音してから30数年ぶりにアルバム「…For The Whole World To See」が発売されることとなった。ボビーの3人の息子たちはアルバムの宣伝も兼ねてトリビュート・バンドのラフ・フランシスを結成し(普通にプロ並みの演奏をこなしてしまっているのが凄い)、そしてついにボビーとダニスもデビッドの代役のギタリストを立ててデスを再結成することを決意する…というストーリー。

「パンクよりも前に、デスというパンクバンドがあった!」というのがこの映画のキャッチコピーで、これを観るにあたって「..For The Whole World To See」を聴いてみたのだけど、パンクというよりもガレージ・ロックやザ・フーに近い感じじゃないかな?でも演奏力の抜群な高さとタイトなプロダクション(もっと自家録りみたいな音かと思っていた)のおかげで、確かにすごく良いアルバムであった。

映画はおおまかに2部構成になっていて、バンドの生い立ちからデビッドの死までが語られる前半と、バンドの再評価から再結成までが語られる後半からなっている。特に後半ではヘンリー・ロリンズやジェロ・ビアフラ、ヴァーノン・リードといったミュージシャンのコメントも出てくるのだけど、全編を通じて語られるのは、兄弟3人の結束から始まり、彼らの音楽が息子たちに引き継がれるという家族の絆の物語である。兄弟たちの母親の葬式で話が終わるところもそれを象徴している。

あとはレコードコレクターが見つけたレコードをウェブにアップすることで、その曲がすぐに世界中で聴けるようになるという描写が、音楽の共有のスタイルの変化を象徴してるかな。ちょっと前まではレアなレコードの共有なんて(ローバート・クラムのマンガにもあるが)数人が集まって一緒に聴くという手段くらいしかなかったもので。またラフ・フランシスや再結成したデスの観客の大半が白人だというのも印象的であった。

70年代に活躍していたときの映像が殆ど無いことや、バンドの中心人物であったデビッドがいないことで弱冠内容が薄いような気もするが、こういう音楽ドキュメンタリーが好きな人は十分楽しめるであろう良作。

「CRISIS」鑑賞


NBCの新シリーズ。5月には日本でも放送されるとか?第1話の監督をフィリップ・ノイスが務めていた。

大統領の息子を含む、政府の要人や大企業の重役の子供たちが通う高校において、生徒たちが遠足の途中に何者かに誘拐されるという事件が起きる。生徒たちは巨大な邸宅に監禁され、政府の元エージェントだった黒幕はあらゆる点で完璧なプランを組み立てていた。FBIエージェントのスージー・ダンは子供が誘拐された親の1人である姉のメグと協力して捜査にあたるのだったが…というプロット。

最近のサスペンスドラマの傾向として、LOSTライクな謎解きものにとって代わって、1つの大きな事件が何話にもわたって対処されていく内容のものが増えてきているような?CBSの「HOSTAGES」とか、あとまあ「ザ・フォロイング」とか。20話もストーリーを引っ張れないからミッドシーズン向きの題材ではあるのだろうが、「HOSTAGES」の評判を聞く限りあまり成功しているようには思えないので、今後のトレンドとしてはどうなっていくんだろう。

んでこの「CRISIS」ですが、FBIエージェントよりも事件の黒幕のほうが主人公扱いになるのかな?政府によって裏切られた過去を持つ元エージェントの黒幕は文字通り体を張って自分のプランを遂行していくのですが、その一方で部下に文句を言われたり、生徒の1人を逃がしてしまったりとなんかあまり万全ではなさそうな。驚いたのは生徒たちを探すために政府が市街地で無人偵察機を飛ばすという描写がしれっと行なわれていることで、オバマ政権はいつの間にそんなこと了承してたんだ?事件の黒幕によって無人機はあえなく撃墜されるわけですが、これでことが明らかになったら誘拐事件以上に大問題になりかねないぞ。

事件の黒幕を演じるダーモット・マローニーって、あー「リビング・イン・オブリビオン」のカメラマン演じてた人か。メグ役をジリアン・アンダーソンが演じているけど、彼女って「ハンニバル」でも準レギュラーやってなかったっけ?イギリスでは「THE FALL」のシーズン2もあるらしいので、スケジュールの調整どうするんだろう。あとはマックス・マーティーニやマーク・バレーなんかがちょっと出ています。

テロリストが家族を自宅で人質にする「HOSTAGES」の無茶な設定に比べればまだサスペンス感はあるし、今後の展開は気になるものの、本国での評判はあまり良くないようなので1シーズン限りになるかな。ケーブル局のミニ・シリーズにすれば良かったのにと思うような作品。

「From Dusk Till Dawn: The Series」鑑賞


ロバート・ロドリゲスが立ち上げたヒスパニック向けケーブル局「El Rey」初のオリジナルシリーズだそうな。ロドリゲスが監督した1996年の同名映画のシリーズ化だけど、こないだの「ザ・ファーム」といいこんどの「ファーゴ」といい、90年代の映画のTVシリーズ化が最近顕著なのは何なんだ?オリジナルを劇場で観たアラフォー世代あたりを狙ってるのか?でも20年近く前の映画の内容なんてあまり憶えてないよう。

いわゆる名義貸し的な作品かと思いきやロドリゲスがガチで絡んでいて、第1話の脚本と監督を担当していた。文字通り夕暮れから明け方までの半日を舞台にしていた劇場版をシリーズ化しているために当然ながら話がものすごく引き延ばされていて、第1話では例のナイトクラブなどは登場せず、その前の酒店におけるゲッコー兄弟と保安官とのスタンドオフがみっちりと展開されていく。

いちおう吸血鬼らしき存在も出てくるものの、内容は完全なガンアクション。気になるのはゲッコー兄弟が平気で人を殺すサイコパスとして描かれているところで、極めて不快。あれを主役にしてしまうのは無理があるのでは。むしろ彼らに復讐を誓う若き保安官が主役扱いになるのかな?ゲッコー兄弟も保安官も比較的無名の役者が演じているが、第1話にはドン・ジョンソンがゲスト出演していたほか、ロバート・パトリックがこのあと登場してくるみたい。

劇場版を知ってると展開がたるい気がするのは否めないが、出来はそんなに悪くないかと。しかし本当にどうやって話を引き延ばしていくのだろう?