「TURN」鑑賞


AMCの新作シリーズ。

舞台となるのは1776年で、アメリカ独立戦争の初期。イギリス軍はマンハッタンを占拠し、アメリカ軍は荒野に潜伏していた。だが何者かによって情報がイギリス側に漏れていると考えたアメリカ軍は、情報戦の重要性に注目する。そしてニューヨーク州で農業をしていたエイブ・ウッドハルは作物を横流ししようとしていた際にアメリカ軍に目をつけられ、彼らのスパイとなるように命じられる。最初は戦争に巻き込まれることを拒否していたエイブだったが、イギリス軍の横暴さに耐えかね、彼らの情報を探るようになる…という内容。

第1話は1時間ちょっとの長尺なのだが、キャラクター紹介にいろいろ時間を割きすぎていて、肝心のプロットはあまり進んでいないような。スパイ活劇ものになるのか、重厚な時代劇になるのかが見当つかないんだよな。そもそも独立戦争時の時代背景がよく分からなくて、誰がイギリス側で誰がアメリカ側で、当時の勢力がどうなってたのか理解できないのですが、これって一般的なアメリカの視聴者なら知ってることなのかしらん。

なお登場人物はウッドハルを含めて殆どが実在した人物で、カナダでは銅像が立っているような人が卑劣な悪役として描かれてたりするんだがいいのかそれ。ウッドハルたちが設立したカルパー・リングという組織は世界初のスパイ組織と見なされているような集団で、その存在は20世紀になるまで明らかにされなかったのだとか。でもスパイものにありそうなスリル感がどうも欠如してるんだよな。ウッドハルはイギリス側の有力者である父親のうかがってばかりで、妻子がいるのに元彼女に未練があって、彼女にハッパをかけられてやっと諜報活動をするような優柔不断な男だし。

そのウッドハルを演じるのがジェイミー・ベル。彼って「リトル・ダンサー」のときは想像つかなかったくらいに男前の役者に成長したよな。あとは「トーチウッド」のバーン・ゴーマンも出ております。彼にとって初のアメリカのシリーズかな?

AMCの時代劇ということで「Hell On Wheels」に雰囲気は似ている。第1話では今後の方向性がよく分からないのも同じ。あっちは第4シーズンくらいまで続いてるので、こっちも長続きする可能性はあると思うんだが…。

「Narco Cultura」鑑賞


昨年「アクト・オブ・キリング」と並んで高い評価を受けていたドキュメンタリー。

メキシコの麻薬戦争と、メキシコおよびアメリカのヒスパニックのあいだで人気が出ている音楽ムーブメント「ナルココリード(麻薬バラード)」を取り上げたもので、テキサスのエル・パソに隣接しているメキシコのフアレスは麻薬戦争の影響によって殺人の件数が10倍に跳ね上がり、年間3000人近い犠牲者が出るようになってしまっていた。その一方で金と権力を手にした麻薬王たちは若者たちの憧れの的となり、彼らのライフスタイルを賛美した歌が作られ、それが大衆のあいだで人気を博していくことになる。

このドキュメンタリーではフアレス警察で科学捜査を行なうリチ・ソトと、ロサンゼルスでナルココリードの歌手として大成しようとするエドガー・クインテロという2人の男性の日常が交互に描かれている。ソトのほうは毎日のように血なまぐさい殺人事件の現場に呼び出され、麻薬カルテルの報復を避けるために覆面をして捜査をする次第。それでも何人かの同僚は暗殺されており、警察もまたカルテルの金によって汚職がはびこっていることが示唆される(刑務所に銃持った連中が普通に入り込んだりしてるんだぜ)。

一方のクインテロは実在のチンピラを誉め称えるバラードを歌って、そのチンピラから金をもらったりしてるわけだが、この「権力者を褒めてご褒美をもらう」システムって意外なくらいに中世的な音楽ビジネスだよね。しかしナルココリードの人気は実際すごいらしく、クインテロはバンドを結成してそれなりに大きな会場をまわるツアーを行なうことになる。しかしこのナルココリード、音楽のスタイルはアコーディオンを多用したポルカなのでかなり牧歌的に聞こえてしまって、バズーカの模型を抱えて「俺はAK47をぶっ放し〜」とか歌ってる格好と全然合ってない気がするんだが、それでもライブに集まった老若男女の客は歌詞を憶えていて大合唱になったりするのな。なお劇中でソトとクインテロの生活が交差するようなことはないのだが、平和を求めてソトがエル・パソへの移住を望んでいるのに対し、歌のネタをネットで得ているクインテロが「俺もメキシコ行きて〜」と語るのが何とも皮肉であった。

このドキュメンタリーを観るまで、ナルココリード文化についてはまったく知らなかったのだけど、いわゆるアウトローが美化され、銃や麻薬について歌われ、そのスターがVシネ並みの安っぽいアクション映画に出演し、特定のマイノリティから強い支持を受けてるさまは80年代のギャングスタ・ラップの興隆によく似ているような。実際に歌手が襲撃されて殺される事件も起きているようだし。またメキシコではいろいろ放送禁止の扱いを受けているらしい。

特に明確な結末があるわけでもなく、ドキュメンタリーとしては弱冠詰めが甘いような気もしたけど、自分の知らなかった文化について学べるという意味では興味深い作品でした。なおナルココリードで賛美の対象となっている麻薬王のホアキン・グスマンがこないだ逮捕されたらしいが、それってナルココリードにどう影響してくるのかな?いずれ続編が作られることに期待。

デビッド・レターマンの後任にスティーブン・コルベアー


いろんなところで報じられてますが、いやー驚いた。いや確かに彼が候補として挙っていたし、自分もちょっとは期待していたものの、まさか実際そうなるとは思ってなかったので。まあでも地上波ネットワークのレイトショーの司会をレターマンから引き継ぐということは大出世になるわけで、ここは素直に歓迎すべきでしょう。

新しい司会になるのは2016年だし、まだどんな内容になるかも分からないものの、これはつまり「コルベアー・レポー」が2015年で終了することを意味しているので、放送開始から全エピソード観てきた者としてはなんか寂しいなあ。とりあえず「コルベアー・レポー」で演じている「ウルトラ保守」というキャラクターは演じないことを公言しているらしいけど、「素」のコルベアーの司会はどんなものになるんだろう。

あとは「コルベアー・レポー」の後番組がどうなるかですね。インターネット大喜利の番組「@midnight」が昇格するという噂が早くも出ているものの、やはり「デイリーショー」絡みの番組が続いて欲しいわけで、サマンサ・ビーあたりに番組持たせるとか、ジョン・オリバーをHBOから戻させるとか…?あといまの「レイトショー」の製作はレターマンの製作会社ワールドワイド・パンツが製作しているけど、新番組はジョン・スチュワートのバスボーイ社が引き継ぐのかな?

まあとりあえずは終わりの見えてきた「コルベアー・レポー」の残りを楽しむようにします。あと日本のウィキペディアは「コルベア・リポート」という表記を直すように!

「SILICON VALLEY」鑑賞


2000年代になって「ビーバス&バットヘッド」を復活させたりして、なんか日和ったなと勝手に思ってたマイク・ジャッジがいつのまにか作っていたHBOの新作コメディ。例によって第1話が公式のYouTubeチャンネルにあがってるのでIPアドレスをゴニョゴニョすれば視聴可能だよ。

タイトル通りシリコンバレーを舞台に、若きプログラマーたちを主人公にした内容で、グーグルもどきの大企業に勤めるリチャードは職場の雰囲気に居心地の悪さを感じながらも、仕事の合間に音楽配信サービスの立ち上げに取り組んでいたが、そこで使われているデータ圧縮のアルゴリズムが非常に画期的なものであることが周囲に知られ、会社の社長より直々に技術の買収を数百万ドルでオファーされることに。さらにシリコンバレーの大物からもオファーが届き、リチャードのとった選択は…というような内容。

どうもジャッジは80年代に実際にシリコンバレーで働いていたことがあるらしく、そのカルトな雰囲気が嫌ですぐ辞めたらしいが、番組の内容も比較的シリコンバレーに批判的なような。ハリウッド以上に金が集まるようになったシリコンバレーにおいて、企業のリーダーたちはエコロジーやスピリチュアリズムにはまり、プログラマーたちはリーダーたちを盲信し、ギークな社員たちの間にもヒエラルキーが存在していることなどが描かれている。サラリーマンが主人公のジャッジのコメディといえば「リストラ・マン」が有名だが、過度なリベラリズム二対する風刺という点ではむしろ「The Goode Family」に内容が似ているかな。劇中に出てくるネタの多くは実際の出来事をベースにしたらしいけど、俺もシリコンバレーの文化に詳しくないので少しジョークが分からないところもありました。

主役のリチャードを演じるのはトーマス・ミドルディッチ。あまりよく知らない役者だな。しかし彼と同居しているプログラマーとして、TJミラーやマーティン・スター、クーメル・ナンジャニーといった強力な役者陣が出演しております。

HBOのコメディの常として抱腹絶倒するようなものではないけど、ダメ男たちが奮闘するドラマとしては面白くなりそうなんじゃないでしょうか。

「Stripped」鑑賞


アメリカの新聞に掲載されているコミック(横長の型式なのでコミック・ストリップという)についてのドキュメンタリー。

まずはコミックの歴史の説明から始まり、まだテレビやラジオが必ずしもポピュラーでなかった時代の大衆に娯楽を与えるものとしてコミックは大きな人気を誇り、ルーブ・ゴールドバーグやウィンザー・マッケイなどの作品が子供も大人も楽しませていたことが説明される。ミルトン・カニフがセレブのように扱われてたなんて今となっては信じられないような話ですな。

ご存知のようにアメリカでは日本のような全国紙はなく、それぞれの年において幾つもの新聞が発行されていたわけですが、それらにコミックを提供していたのがシンジケーションと呼ばれる配給会社で、彼らが良いと思ったコミックを作家から受け取り、各新聞に販売する仕組みであったわけです。よって作家たちはそれぞれの新聞と交渉するような必用はなく、シンジケーションに作品を売り込めばよかったわけで、作品が起用されたときは天にも昇る気持ちになったらしい。

その一方で作家たちは毎日のように作品を生み出し続けなければならず、ろくに休暇もとれない日々が何年も続くことが語られるわけだが、そうした創作の流れについて数多くの作家たちにインタビューが行なわれており、大御所では「ビートル・ベイリー」のモート・ウォーカーや「ジッピー」のビル・グリフィス、「ガーフィールド」のジム・デイビスあたりから、後述するウェブコミックの若手、あるいは「BONE」のジェフ・スミスのような非ストリップのコミック作家などが登場する。またメディア嫌いで隠遁生活をしていることで知られている「カルビン&ホブス」のビル・ワターソンがはじめて音声インタビューに応じていた(上のイラストも彼によるもの)。観ていて気づいたけど、ストリップの作家って女性も多いよね。いわゆるスーパーヒーローもののアーティストに女性が殆どいないけど、新聞のコミックは女性の読者にもアピールする必用があったためなんだろう。

しかしこれらの新聞コミックって、インディペンデント・コミックと同様に90年代くらいまでの日本ではものすごく情報が得られなかったものであり、せいぜい「ピーナッツ」や「ブロンディ」といった老舗の作品くらいが邦訳されていたような?おかげで自分の知識もこれらに関してはかなり限られており、世の中にはさまざまなコミック・ストリップがあるのだと実感した世代です。いまでは米ヤフーなどで気軽にチェックできるわけで、もっと勉強しないといかんな。なお上記のように多くの作品が紹介されている一方で、俺のお気に入りである「クレイジー・カット」や「ドゥーンズベリー」「THE FAR SIDE」「LIO」などはあまり紹介されておりませんでした。

こうして20世紀は栄華を誇ったコミック・ストリップだったが、新聞の発行数の減少にあわせてその影響力を失っていく。かつてはどの都市にも発行部数でしのぎを削る大新聞が2つ以上あり、そのどれかにシンジケーションが作品を売れば十分だったものの、新聞は相次いで廃止に追い込まれるか、コスト削減のためにコミックのページを無くしたりしていってしまう。

それに対して台頭してきたのが「Penny Arcade」や「PVP」、「Hark, A Vagrant」といったウェブコミックであった。これらの作家たちはシンジケーションに作品を売り込む必用もなく、ただ自分の作品をウェブにアップすることでファンを獲得して収入を得ることができ、作品の著作権についてシンジケーションと揉めるようなこともなかったのである(ただしドットバブルのときにはポータルサイトとPenny Arcadeのあいだで一悶着あったらしい)。古参の作家たちからはシンジケーションに比べてウェブコミックの収入が少ないことを懸念するような声も出るものの、このドキュメンタリーではウェブコミックの可能性について多くの時間が割かれ、スコット・マクラウドなんかも登場してウェブコミックについて力説していた。

ただしウェブコミックの収入の8割近くはコミックそのものでなくマーチャンダイズによるものだし、ファンからの寄付などでは収入が不安定なため、より確固としたビジネスモデルを模索してマネタイズを図っていく必要性も語られていた。ここらへん新聞紙のころは作家はシンジケーションだけを相手にしていればよかったのに対し、ウェブでは自分たちでビジネス面も把握しないといけないのが対照的だな。エンドクレジットでは登場した作家のウェブサイトが紹介されるのだけど、一人残らずなんらかのサイトを持っているのが印象的であった。

そして今後もし新聞などが無くなっても、コミックは何らかの形で残っていくでしょ、と意外なくらいにポジティブなメッセージをもってこのドキュメンタリーは終わる。確かに人間がマンガを描かなくなる日はこないだろうけど、DCコミックスやマーヴェルの人間だったら、ここまで楽観的なコメントはできないだろうなあ。これって気軽にサクッと読めるストリップの型式が、ウェブに合っているということで楽観的になれるのだろうか。

弱冠の専門知識が必用とされるので万人向けではないものの、コミック・ストリップの状況や将来を分かりやすく説明した良作のドキュメンタリーであった。おすすめ。