「マン・オブ・スティール」鑑賞


「ウォッチメン」のあとはザック・スナイダーの映画は二度と観るまいと誓った身ですが、スーパーマン映画となると話は別で。許せ。

公開したばかりなので感想を簡潔に:

・またダメ映画になるかと思ったけどある程度は楽しめた。でもこれスーパーヒーロー映画というよりSF映画だよな。人類のファースト・コンタクトを描いた内容の。

・「ダークナイト」が大ヒットしたときにワーナーの重役あたりが「これからのDCコミックスの映画はみんな暗くするからね〜」といったことを言っていて、スーパーマンを暗くしてどうするんだよと思ってたが、本当にそんな感じだった。

・今回はそれはそれで映画が成り立っているけれど、フランチャイズとして人気を持続させることが出来るのかは微妙な気もする。なんか悪い意味で全力を使い果たしてしまったというか、後にも登場するであろうキャラクターたちをきちんと立たせていないし。おそらく次の映画には出てこないであろうケヴィン・コスナーとラッセル・クロウなどは良い演技を見せているのだが。

・「プレミアム・ラッシュ」を観てしまうと、マイケル・シャノンの悪役はどうもカラ威張りしているように見えてしまうな。

・まあ次回はご存知のようにバットマンが登場するわけで、そっちのほうのアクションを際立たせておけば映画としては成り立ってしまうんだろうか。この暗いトーンってバットマンには似合うかもしれないけれど、JLAには合わないんじゃないの。

・話題を呼んだラストの展開も含め、爽快感は無いものの、まあ悪くはない作品でした。ただやはりこの路線って話がどんどん暗くなる方向にしか進まなくて、いずれ行き止まりに達するような気がする。というわけで次作のことを勝手に心配しながらスクリーンを眺めるという、どうも不思議な体験であったよ。

「PAIN & GAIIN」鑑賞


マイケル・ベイが「でっかいロボットが出てくる大作ばかり撮るのも疲れたんで、ちょっと気分転換に低予算映画を作るわ」とか希望して監督した犯罪コメディ。とはいえ予算は20億円くらいかけてるし、2時間超の長尺で最後は結局アクション映画になるあたり、彼にとっての低予算映画というのは一般の人たちの認識とはちょっとズレてるんでしょう。

1993年から95年くらいにかけてフロリダで実際に起きた事件をもとにしたストーリーで、ジムのトレーナーとして働くダニエルは、ジムの会員で裕福なビクターの資産に目をつけ、それを奪うことをジム仲間のポールとエイドリアンと画策する。何度かドジを踏んだものの彼らはビクターを誘拐することに成功し、彼を痛めつけて必用な書類にサインをさせる。そしてビクターを事故で死んだように見せかけ、自分たちは彼の自宅や銀行貯金をまんまと手にするが、実はビクターは重傷を負ったものの死んではおらず、彼に雇われた敏腕探偵がダニエルたちの周りを探るようになって…という内容。

主要な登場人物が10名くらいいるんだが、うち6名くらいが自分の経歴をモノローグで語ったりするものだからうざったくて仕方がない。こんなに多くの人物のナレーションが出てくる映画って初めてじゃないだろうか。ダニエルや仲間たちは暇さえあればバーベルを持ち上げてるような筋肉バカであり、外見だけで頭はカラッポの人間という描き方をすれば良かったのに、彼らにモノローグという内なる声を変に与えてしまったために中途半端に真面目になっていてコメディに徹しきれていないんだよな。ならばアメリカのマッチョ主義とかステロイド問題とかを風刺すればよかったのにそっちも全然描かれてないし。

主演のマーキー・マークは地で頭の悪い人なので今回のようなマッチョ役は似合っているはずなんだが、前述したように変にシリアスになってウジウジ悩んだりするのでどうも話のなかでカラ回りしている感じが否めない。むしろ相棒のハワード・マッキーのほうが「筋肉とセックス」という実に分かりやすい動機で犯罪に加担してて役回りは明快だったし、もう1人の相棒を演じるロック様は筋肉モリモリながらも自分に自身が持てない元犯罪者を絶妙に演じておられる。いつも思うんだけどこの人はコメディ演じたほうが巧いよね。あとはトニー・シャルーブやエド・ハリスといった役者が脇を固めているが、作品を救うことは出来ていないような。

前作の「トランスフォーマー3」を観たときも実感したが、マイケル・ベイって致命的に話を盛り上げる才能が欠けているというか、実話に基づいた脚本をそのまま撮っているだけという感じがするんだよな。だから話に緩急がつけられなくて、どこを削れば中身がもっと面白くなるかの判断がつけられないでやんの。話の中盤でビクターから奪った金を使い果たした主人公たちが、新たにポルノ業界の大物を狙おうとするんだけど、そこらへんの展開が前半とあまり変わらなくて「またやんの?」という感じであった。刑事ドラマを2話続けて見させられたような印象というか。あと「トランスフォーマー」でも指摘されていたように、人種差別やホモフォビアの雰囲気が微妙に漂っているのが気になったな。「犯罪者を美化しているのでは?」という批判がアメリカではあったらしいが、主人公たちは単に不快なキャラですから!

観るのが苦痛であるものの得られるものは何もないという、タイトルが半分だけ合っている映画。マイケル・ベイはもうCGを相手にドンパチを撮ってなさい。

「NOT FADE AWAY」鑑賞


「ソプラノズ」のクリエーターであるデビッド・チェイスの長編初監督作品。彼の自伝的な要素が詰まったものらしい。

舞台となるのは60年代のニュージャージー。ダグラスはブルースやブリティッシュ・ロックが好きな高校生で、やがて友人たちとバンドを組んでパーティーなどで演奏を行うようになる。そしてガールフレンドもでき、バンドもカバー曲だけでなくオリジナル曲を演奏するようになり、レコード会社のオーディションも受けるのだが、やがてバンドのなかで軋轢が生じてきて…というストーリー。

2時間弱くらいあってそこそこ長い作品なんだけど、これくらいのあらすじしか思いつかんなあ。JFK暗殺とか公民権運動とかベトナム戦争とか、当時の出来事についていろいろ言及されたりはするものの、全体的になんか頭でっかちというか、それらの出来事が主人公の家族にどう影響したのかが深く描かれていないんだよね。60年代を舞台にしたバンドものとかボーイ・ミーツ・ガールものなんて今まで映画で山ほど扱われてきた題材であるわけで、すべてがクリーシェの域を出ていないのが残念。

一番の問題がジョン・マガロ演じる主人公のダグラスで、最初はドラムを担当してたのが「俺のほうが歌うまいから」と主張してボーカルになるものの、声質がペラペラで全然うまく聞こえないのでやんの。親が必至に働いて貯めた金で大学に行っておきながら「バンドに専念したいから」といって大学を中退し、せっかくレコード会社の人間に面会しても「音楽ってアートだから。ビジネスなんかじゃないし」とバンド活動に幻滅しはじめ、しまいには「俺やっぱ映画を学ぶわ」といってロサンゼルスに移ってしまうという筋金入りのボンクラ。いやデビッド・チェイス自身はやがてハリウッドで大成したかもしれないが、こういう主人公に感情移入できる人はそんな多くないんじゃないのか。

むしろ故ジェームズ・ガンドルフィーニ演じる彼の父親のほうがずっとキャラクターが立っていて、青春時代は不況のもとで過ごし、戦争を経験し、必死に働いて家族を養ってるのにガンだと宣告され、徐々に息子にも打ち解けていく親父の話のほうがずっと面白いはずなのだが、親父と息子のシーンが後半になるほど少なくなっていくのが勿体ない。

なお劇中の音楽の監修は「ソプラノズ」つながりでスティーヴ・ヴァン・ザントが行っていて、それなりの予算を使ってビートルズやストーンズ、キンクスにボー・ディドリーなどといった当時のヒット曲が劇中で流れるようになっている。でも物語の最後でセックス・ピストルズ(しかもカバー曲の「ロードランナー」)を起用したのはどういう意図があるんだろう。そしてこうした名曲と比べると、やはり主人公のバンドのショボさが目立ってしまうのよねん。

少なくとも監督のロック愛というかノスタルジアはひしひしと伝わってくる内容であり、愛情をこめて作った作品であることはよく分かるものの、なんかもっと冷静な視点から映画を作るべきではなかったかと思わずにはいられない作品。

「LOW WINTER SUN」鑑賞


「ブレイキング・バッド」に代わるドラマが早急に必用なAMCの新シリーズ。秋に早くも日本で放送するとか?

フランクはデトロイト市警の刑事だったが、同僚のブレンダンの悪徳ぶりと汚職に耐えられなくなくなり、別の同僚のジョーと結託してブレンダンを殺害し、自殺に見せかけて車ごと海に投げ込む。完全犯罪を達成したつもりのフランクだったが、実はブレンダンは内部調査の部門に目をつけられており、次の日に彼らが調査にやってきたことからジョーは調査のことを知っていたのではと訝しむフランク。一方ではブレンダンから麻薬の横流しを受けていた街のゴロツキたちが、ブレンダンがいなくなったことでマズい状況におかれていた。さらに海中から引き揚げられたブレンダンの車のトランクから切断された死体が発見されたことで、物事は予期せぬ展開を迎えることに…というのが第1話のプロット。

主演は最近いろんな映画で悪役を演じてる感のあるマーク・ストロング。彼の同僚のジョーを演じるのは同じくイギリス人のレニー・ジェームズ…ってこのままだとアメリカ人のテレビ俳優はデトロイトの労働者よりも先にみんな失業してしまうんじゃないだろうか。「ブレイキング・バッド」のデヴィッド・コスタビルも出てるけどね。そもそもストロングがイギリスで出演した同名のミニシリーズをベースにしたものらしい。ミニシリーズならまだしも、この設定で話をどこまで引っ張ることができるんだろう?

話は地味というか暗くて、荒廃したデトロイトを舞台に登場人物たちがウジウジ悩む描写が続く内容になっている。その地味っぷりはAMCの「ルビコン」に通じるものがあるかな。「ブレイキング・バッド」には吹っ切れた主人公によるカタルシスがあったわけだが、この番組にそのようなものは期待できず。「バッド」の後釜になるのは厳しいかな。ちゃんとデトロイトで撮影をして地元の経済復興に貢献してるようなので(自治体から補助金もらってるらしいけど)、頑張ってほしいシリーズではあるのですが…。

「ワールド・ウォーZ」鑑賞


最後の展開がイマイチということで大幅な撮り直しが発生し、大コケするのではないかとの前評判を覆してブラピ映画として最大の興行成績を挙げた作品だが、それでもコストが回収できてないのでは?と噂されているあたりがハリウッド大作の悪しきビジネスモデルだよな。

ストーリーの流れもその撮り直しによって生じたのであろうツギハギ感が否めず、ゾンビの感染源をたどって世界をめぐる冒険…になるはずが後半になってその流れが途切れ、かなり行き当たりばったりな展開になっていたような?特にウェールズに到着してからは今までのグローバルなアクションとはうって代わり、かなり小ぢんまりとしたバイオハザード(ゲームのほうね)みたいな内容になるのは違和感があったんだけど、やはりあそこが撮り直しで加えられた部分になるみたい。本来はゾンビの感染源が中国だと示唆されるはずだったのが、「あそこハリウッドのお得意様だから…」という理由でボツになったという裏話を聞くと、ゾンビも中国資本には勝てんのだなあと思う。

なお「ワールド・ウォー」といいつつも、主役不在(らしい)原作に対して映画版の主役はあくまでもアメリカ人のブラピであり、彼が訪れるところも韓国の米軍基地やイスラエルにウェールズといった、アメリカ人にとってあまりエキゾチックではない場所に限定したのが「パシフィック・リム」に比べてアメリカでヒットした原因ですかね?

そして皆が言っているように劇中のブラピはゾンビ以上の生命力を持っていて、さすがに最後のアレはやりすぎだろうと思うが、1人で映画を抱えて頑張っていたよな。ただし主人公は別にブラピじゃなくても良かったんじゃない?という気もするけど。ミレイユ・イーノスはブラピの妻を演じるにはブスすぎるだろ、というのがキャスティングを聞いたときの率直な感想でしたが、夫の帰りを待つ薄幸な感じはよく出ていた。あとはマシュー・フォックスがもっと大きな役を持っていたらしいが、撮り直しにより登場シーンがブチ切られたそうで。

あとは原作と異なりゾンビが走れるようにしたのはビジュアル的に大正解だったとは思うものの、やはりCGを多用しているためアクションに質量感が無いのが気になった。冒頭のトラックが突っ込んでくるところとか、普通は絶対に気づくよな。決して悪い作品ではないものの、あれだけ金をかけたのならもっと良くなる可能性があったのになんか勿体ない。続編の話も出てきているようだけど、関係者はもうこれは放っておいて次なる作品に進むべきでしょう。