「パシフィック・リム」鑑賞


ジャパンプレミアで観てきたのだよ。いやー最高。オタクの恍惚ですな。ロボットアニメを観て育った世代にとって、これは外せないだろという話のツボをすべて押さえているという大変素晴らしい作品。文句のつけどころは殆どないのですが、気になったところをあえて挙げてみる:

・登場する巨大ロボット「イェーガー」のうち、ジプシー・デンジャーが主人公機のためかいちばんクセがなくて逆に物足りなかったりする。俺の好みは3人乗りのクリムゾン・タイフーン(上の画像)だな。ちょっとしか活躍しないけど。

・イェーガーの武器でいちばん強いのって、実は冷却ガスじゃないか?

・怪獣のデザインが「ヘルボーイ」のスピンオフコミック「BPRD」に出てくるモンスターに似てるな、と思ったら「BPRD」のガイ・デイビスがコンセプトアーティストとして関わっているのをクレジットで見つけて納得。

・怪獣の登場シーンはテロップつけて欲しかったっすね。「さそり怪獣 オータチ」といった調子で。

・ライバルのオーストラリア野郎のキャラが主人公とかぶってるのが勿体ない。あれはドーベルマンを飼っている、キザでニヒルな長髪という役にしてほしかった。

・いちばんいい役どころはストリンガー・ベル長官がすべて持っていっています。主人公たちは残り物にありついている感じ。

・菊地凛子の他の映画って観たことがないのですが、あれが地の英語力になるの?

・去年の「ダークナイト・ライジング」に続き、バーン・ゴーマンが夏の大作に出ているのが「トーチウッド」のファンには嬉しいこってす。

・そして謎の「由美子剣」!

本来ならば日本人が作らなければならなかった作品を、メキシコ人が作ってしまったことに我々は深く感謝すべきであろう。この作品の良さが毛唐どもには分からなかったらしく全米の興行成績は苦戦してるらしいが、日本のオタクどもよ、夏休みを返上してでもこの映画を観にいけ!俺も金払ってまた観に行くよ!

「トランス」鑑賞

ダニー・ボイルの新作。去年のロンドン・オリンピックの前後に製作したものらしい。以後ネタバレ注意な。

一流の絵画を扱うオークション・ハウスに務めるサイモンは、オークション中にフランク率いる強盗団に襲撃され、ゴヤの作品を奪われてしまう。しかしフランクが手にしたのは空の額縁だけだった。実はサイモンとフランクはグルであり、サイモンが協力してフランクに絵画を渡すはずだったのが、サイモンが途中でどこかに隠してしまったのだ。しかし襲撃の最中にサイモンが頭を強打されたことで記憶喪失になってしまい、絵画をどこに隠したのかは彼自身も分からなくなってしまっていた。サイモンを拷問にかけても絵画の行方が分からないことを悟ったフランクは、彼の記憶を取り戻すために催眠療法のセラピストであるエリザベスという女性の助けを借りることにするのだが…というプロット。

サイモンとフランクとエリザベスの三者にそれぞれに思惑があって、陰謀や裏切りが錯綜していくさまはボイルのデビュー作「シャロウ・グレイヴ」に通じるところがあるかな。脚本も「グレイヴ」のジョン・ホッジと久しぶりに手を組んでいるし。元々「グレイヴ」のあとに別の脚本家から持ち込まれたストーリーがベースになっていて、それを今になって映画化したものなのだとか。以前にもその脚本を用いたTVムービーが製作されてるらしいので、そっちも観てみたいな。

最近のボイルの作品に顕著であった、凝ったアングルや視覚効果は「やや」抑え気味になっており、比較的ストレートなサスペンス映画に仕上がっている。ただ画面の色使いは個人的には好きになれなかったかな。頭の中を扱ったサスペンスということで「インセプション」と比べる向きもあるみたい。

サイモンを演じるのがジェームズ・マカヴォイで、「Xメン」とかを観たあとではスコットランド訛り全開の演技は結構違和感を感じますね。ヒール役のフランクはヴァンサン・カッセルが演じていて、熱演をしているものの他の2人に翻弄されてばかりなのでちょっと損な役。そして実質的な主人公ともいえるエリザベス役のロザリオ・ドーソンは下の毛も剃ってすっぽんぽんになるほどの体を張った演技をしているのですが、フェム・ファタールというには行動的すぎるというか、「やる側」と「やられる側」の境界がいまいち曖昧すぎたかもしれない。

登場人物みんなに陰があって感情移入しにくいところや、後になって考えるといろいろ穴があるプロット、そしてそもそも催眠術が万能すぎやしないか?という点などがひっかかって、ボイルの作品のなかでは必ずしも上位に来るものではないものの、相変わらずテンポのいい編集や比較的短めの尺に助けられ、中だるみせずに最後まで話を引っ張っていくことには成功しているかと。ボイルはいまの映画界においていちばん多種多様なジャンルを手がけている監督であり、人によっては「スラムドッグ」や「127時間」よりもこっちを好むこともあるでしょう。そしてジョン・ホッジと久々に手を組んだということは、次はいよいよ「トレインスポッティング」の続編か…?

「Comic-Con Episode IV: A Fan’s Hope」鑑賞


日本じゃあまり報道されないが、アメリカではこの時期にサンディエゴで巨大なコミック・コンベンション(コミコン)が開催され、全米中のオタクどもがコスプレして集結し、マンガやフィギュア買ったりプロのアーティストのサインもらったりするわけですよ。

もともとは70年代に数百人ほどが参加した程度の集いだったが、特に21世紀に入ってからはジャンル映画の格好のマーケティングの場所であることに気づいた映画会社がスターなどを送り込んで大々的な宣伝やニュース発表を行い、もはやコミックというより映画やゲームの集いとなって10万人以上の参加者がやってくる大イベントになってしまった。今年はメタリカが来てライブをやったらしく、今後は音楽業界も絡んでいくのかな?

そんな数多の人々が集まるコミコンの姿を紹介したのがこのドキュメンタリーで、監督は「スーパーサイズ・ミー」のモーガン・スパーロックだが彼自身はカメラの前には登場しません。スタン・リーやジョス・ウィードン、ギレルモ・デル・トロ、グラント・モリソン、AintItCoolのデブ君などオタク好みの有名人がそれぞれのコミコン体験を語る映像を散りばめながら、コミコンに参加した何人かの一般人を追った内容になっている。

カメラが追う参加者はフィギュアのコレクター、アマチュアのコミックアーティスト、コミックのディーラー、コスプレのコンテストの参加者、そしてケヴィン・スミスのいる会場でガールフレンドにプロポーズしようと試みる少年など。コミコンの数日間のなかで彼らはそれなりの喜びや挫折を経験したりするわけだが(ちなみにプロポーズは成功するよ)、興味深かったのは自分のアートをコミック会社のブースに持ち込んで披露し、それが評価されたことで仕事を得るアマチュアのアーティストのところで、コミック会社がきちんとカウンセリングしてプロへの道を開いてあげる、という場は日本のコミケとかにもないんじゃないかな?その一方で作品を評価されずに落胆するアマチュアもいたりするわけですが。

また参加者のなかでいちばんパッとしなかったのは皮肉にもコミックのディーラーで、老舗オンラインストアのマイルハイ・コミックスの社長が出てくるんだけど、あまり期待したほどの売上も出せず「コミコンはもはやコミックのイベントではなくなった」と嘆くのが印象的であった。俺もむかしマイルハイを使ってたので寂しいのですが、ゲームや映画の派手な宣伝が行われてる片隅で、古いコミックを並べて売っているディーラーたちは確かに時代に取り残されていくのかも。

コミコンの裏事情を解説したりこれからの課題を問うわけでもなく、ただ参加者たちの様子を撮影したドキュメンタリーであり、金払ってまで観るようなものではないかもしれないけど、参加者の熱気はよく伝わってくるし悪い作品ではないですよ。いつか俺もコミコン行ってみたいなあ。

「42」鑑賞


生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え…などではなく、初の黒人メジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンの伝記映画な。日本では「42 世界を変えた男」という邦題で11月に公開されるらしいですが、野球のオフシーズンにやっと公開するというのはいかがなものですかね。

内容はロビンソンのドジャース入団から1年目の活躍を追ったもので、GMのブランチ・リッキーが「うちのチームに黒人を入れるぞ」と言って側近が青ざめるのを皮切りに、若きロビンソンが選ばれ、2軍のモントリオール・ロイヤルズで活躍したあとにドジャースに参加し、チーム内外からの差別に会いながらも活躍していくさまが語られていく。ロビンソンはスラッガーというよりも俊足の人として描かれているな。これに絡めて妻のレイチェル・ロビンソンとの恋愛模様とか、観客による差別と支持、フィリーズのベン・チャップマンによる罵詈雑言、ピー・ウィー・リースをはじめとするチームメートのサポートなどといったエピソードがいろいろ盛り込まれてますが、父親的存在であるブランチ・リッキーの加護が話の主軸になっている。

ロビンソンを演じるチャドウィック・ボーズマンってよく知らない俳優だけど、ロビンソンによく似ていていい感じ。リッキーを演じるハリソン・フォードはみなさんよくご存知のように演技の幅がとても狭い役者ですが、ガンコ親父のリッキーの役はその幅にうまく収まっていて好演をしている。あとはドジャースの監督レオ・ドローチャーをクリストファー・メローニが演じているものの、シーズン冒頭にスキャンダルでクビになってその後は出てきません。

演出は比較的平坦で、スポーツ映画としてはどことなく盛り上がりに欠ける感がなくはないものの、やはり元の話が良い話なので、野球に疎い人でもいろいろインスパイアされる作品ではないでしょうか(それなりに脚色が入ってるらしいけど)。メジャーリーグで人種差別が無くなったとは思わないけど、かつては有色人種であるだけでホテルへの宿泊も拒否される時代があり、ロビンソンの活躍はそうした偏見を打ち負かすのに貢献したわけで。日本でも在日がどうだのと騒いでる人たちが観とくべき映画じゃないでしょうか。

「FAMILY TREE」鑑賞


ジョージ・クルーニーのハワイのやつじゃないよ、HBOとBBCが共同製作した、クリストファー・ゲストの新シリーズだよ。ゲストの作品なので当然のごとくモキュメンタリーのスタイルで撮られたコメディ。

交通事故の過失を調査する仕事をしているトムは、姉とともに久々に父親の家を訪れたところ、彼の大叔母にあたる女性が亡くなったことを父親から伝えられる。そして大叔母は一家に伝わる品々が入った箱をトムに遺しており、その中で彼は自分の祖先らしき人物の古い写真を発見し、彼が誰であったかを調べようとするのでした…というプロット。

主人公のトムが自分の親族に関わるいろんな事実を発見していく、というコンセプトの番組で、やがて海を渡ってアメリカに行ったりするらしい。いろいろエキセントリックな人たちが出てきて笑えるところは笑えるんだけど、小市民のペーソスみたいなものが根底にあって、トムは自分の先祖が偉大な人かもしれないという期待が裏切られてばかりだし、彼の父親はろくに動作もしない発明品に凝っている有様で、姉のビーにいたっては心の鬱憤をうまく吐き出すことができず、腹話術を使って猿の人形に罵詈雑言を言わせる癖をもった女性だったりする。

ゲストが監督した映画「みんなのうた」でも男女ふたりの儚い名声とその後の生活の描写がとても哀しかったけど、どこか精神的に脆い人々をバカにするわけでもなく、賛美するわけでもなく、絶妙なスタンスで描いているのがクリストファー・ゲスト作品の巧いところですかね。エンドクレジットで流れるロン・セクスミスのオリジナルソングも異様にメランコリックでいいぞ。

トムを演じるのは「IT CROWD」のクリス・オダウド。他にもゲスト作品の常連としてマイケル・マッキーンやフレッド・ウィラード、さらにゲスト本人が出てくるほか、エド・ベイグリー・Jr.とかケビン・ポラック、エイミー・セイメッツなどが出演しているらしい。あとビーを演じるニナ・コンティって本当に腹話術で有名なコメディアンで、猿の人形も彼女のスタンダップ芸からの拝借らしい。

批評家の評判は良いものの、HBOで放送されたときはかなり視聴率が低かったらしく第1シーズンで打ち切りではないかとの憶測が飛び交っているようだけど、良い作品だと思うのでもうちょっと世に知られて欲しいところです。