「NO ORDINARY FAMILY」鑑賞


こないだ始まったABCのドラマ。

ここ最近のハリウッドではスーパーヒーローもののトレンドが一段落した感じがあって、相変わらずアメコミ原作の大作映画が作られている一方で、『普通の人が超能力を身につける』というプロットの映画がいろいろ企画されてるらしい。こんど日本でも公開される「キックアス」もその1つになるのかな。

この「NO ORDINARY FAMILY」もそんな内容のドラマで、ティーンの娘と息子を抱えた夫婦が、家族そろって南米に旅行へ行ったところ、飛行機が墜落してジャングルの川に4人は放り出されてしまう。その結果4人はそれぞれが特殊な能力を持つようになり、父親は強靭な肉体を誇り、母親は猛スピードで走れるようになる。そして娘は読心術を身につけ、息子は難解な計算も瞬時に解く能力を持つようになった。彼らはこれらの能力を犯罪撲滅などに役立てながらも、ごく普通の一家として暮らそうとするのだが…というようなプロット。

まあ一言でいえば「実写版Mr.インクレディブル」といった感じだけど、当然ながらあの映画ほどの面白さはなし。一家のほかにも超能力をもった人物がいることも示唆されて、ちょっとサスペンスっぽい話にもなってるんだけど、ファミリードラマをやりたいのかコメディをやりたいのかサスペンスをやりたいのか、どうも煮え切らない感じがすることは否めない。

主人公の父親を演じるマイケル・チキリスは「ザ・シールド」の主演で知られる人だが、こういうコメディ・タッチの作品てあまり向いてないんじゃないかな。本国でも大して評判は良くないようだし、すぐに打ち切られないとしてもあまり長続きはしないんじゃないでしょうかね。

「TOWER PREP」鑑賞


放送前からアメリカのオタクどものあいだでは結構話題になっていた、カートゥーン・ネットワークの実写ドラマ。

なぜ話題になったかというと、この番組のクリエーターがポール・ディニなんですね。ディニといえばアニメシリーズのライターとして「Batman: The Animated Series」などで多くのファンを魅了したほか、アメコミのライターとしても名作「The Batman Adventures: Mad Love」などを手がけ、優れた作品を次々と世に送り出しているライター/プロデューサーなのですよ。(カミさんが20歳以上も若い女マジシャンだというのも、オタクの憧れではあるな)そのポール・ディニが「Xファイル」のライターたちと組んで作ったのがこの「TOWER PREP」というわけだ。

主人公のイアンはアメリカの田舎町に住む高校生だったが、ある日奇妙なノイズを耳にして気を失ってしまい、目が覚めると謎の全寮制高校「タワー・プレップ」に連れてこられていた。そこは皆が同じ制服を着て、名もなき教師たちから高度な授業を受けさせられる学校だった。なぜ自分がそこにいるのか分からず、何の説明もされないイアンはさっそく脱出を試みるが、周囲の森を徘徊する謎の鉄仮面の集団に行く手を阻まれてしまう。しかし彼は自分のほかにもタワー・プレップからの脱出を試みている3人の男女と出会い、彼ら4人が特殊な能力の持ち主であることを知る。そしてイアンたちはその能力を駆使して、いつの日かタワー・プレップから脱出することを誓うのだった…というのが大まかな設定。

主人公が謎めいた場所に連れてこられる、という内容から当然ながら「プリズナー」と比較されてるわけだが、基本的には子供向けの番組なのであそこまでのスタイリッシュさはなし。でもAMCのリメイク版「プリズナー」よりは面白いよ。予算のなさが感じられるという点では今夏の「PERSONS UNKNOWN」に通じるところがあるかも。でも夜にうごめく鉄仮面の集団の映像なんかはよく撮れていたぞ。

それと主人公たち4人が持っている特殊能力がなかなかユニークで、1人はあらゆる声帯模写ができ、1人は顔の表情からその人の思考を読み取ることができ、もう1人は会話によってあらゆる人を説得でき、そして主人公はすべての動きを数秒前に感知できる(よって攻撃をかわすのが上手)というもの。これらの一風変わった能力を使ってタワー・プレップの謎を解き明かしていくのが本作の醍醐味らしい。

第1話を観た限りではあまり話が先に進まず、これから面白くなってくのかどうか判断つきかねるものだったが、AintItCoolのハリー・ノウルズなんかは既にシーズン1全話を観たらしくて、「このシリーズは最高だぜ!」なんて書いてたけど、彼はよく煽り記事を書くからなあ。どこまで信用していいのやら。でもやはりポール・ディニの作品ですからね。今後はもっと面白くなっていくんじゃないでしょうか。

「Detroit 1-8-7」鑑賞


ABCの新作刑事ドラマ。犯罪の街デトロイトを舞台に、昼夜問わず犯罪者たちを追う刑事たちの姿をとらえたリアルなドラマという設定のはずなのだが、パイロットはアトランタで撮影したというのがお茶目である。

登場人物は一匹狼の刑事を主人公に、ヘマばっかりやってるルーキーや主人公と恋仲になりそうな女刑事、タフな女ボスに加え、定年退職の1日前に殉死しそうな おやっさん刑事など、刑事ドラマのお約束的な役割のメンツが揃っているわけですが、主人公を演じるのが「ソプラノズ」のマイケル・インペリオリだということもあり、彼の魅力も手伝ってあまり古くさい設定だとは感じなかったかな。インペリオリは「ライフ・オン・マーズ」の失敗したリメイクに出演した時は似合わぬヒゲ面で「何これ?」って感じだったけど、この番組では一匹狼の刑事の役がよく似合っている。

もともとはモキュメンタリーぽくなるはずで、それが製作途中で方向転換したらしく、悪態をつく犯罪者の口にモザイクがかけられるなどといった演出がまだ残ってたりする。また各エピソードで2つの犯罪が捜査されるという仕組みになってるようだけど、番組をそうやってフォーミュラ化するのはどうなんだろうね。

まあでもマイケル・インペリオリは好きな役者だし、ストレートな刑事ドラマとしては悪くないですよ。ABCの刑事ドラマということで「NYPDブルー」と本国では比較されているみたい。あちらでファンシー署長を演じた役者も出ているし。ただし視聴率はぱっとしないようなので、「NYPDブルー」ほどの長寿番組にはならないだろうな。

「スプライス」鑑賞


「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリの新作。

研究機関で働く科学者のクライヴとエルサは恋人同士であり、動物の遺伝子操作(スプライス)を行うことによって全く新しい人工生物を生み出し、そこから薬品の製造に必要なプロテインを採取する研究を行っていた。さらに彼らは周囲の目を盗み、人間の遺伝子が混合された禁断の人工生物を生み出すことに成功する。最初はすぐに死んだかと思われたその生物は急激な速さで成長し(これ人工生命もののお約束ね)、やがて人間の子供のような外見を持つようになったことからドレンと名付けられる。しかし成長を続けるドレンを研究所のなかで隠しきれなくなったことから、エルサの生家で現在は無人になった農場へとドレンは連れて行かれる。そこでも成長を続け、人間のごとく知性を取得していくドレンだったが、『彼女』には恐るべき秘密があった…というのがおおまかなプロット。

何というか真面目なSFとB級ホラーの境界線上にあるような作品。ドレンの謎めいた行為がリアルかつ不気味にきちんと描かれている反面、主人公2人の行動がちょっと間の抜けたものに見えなくもない。話の冒頭ではきちんと防護服を着て胎児状態のドレンの観察を行ってたりするのに、少し大きくなったら隠れ場所の多い納屋に入れて放置しておくというのは怠慢だろう。ドレンの尻尾の先に毒針が仕込まれてるのにも対処してないし、しまいにはドレンとXXしてしまうほど『彼女』に翻弄されてやんの。おかげで本業のほうは疎かになっているし、あんたら本当に頭のいい科学者なのかと。

またドレンが高度な単語を理解していることが明らかにされたり、エルサが複雑な家庭環境で育って、その経験をドレンの育成に反映させていることが示唆されたりしてることから、人間と人工生物の境界線はどこなのかというテーマをもっと掘り下げれば面白くなったんだろうが、結局のところモンスター・パニック的な展開におさまってしまったのが残念なところではある。

それなりに金のかかってそうなCGを多用し、スター級の俳優(エイドリアン・ブロディとサラ・ポリー)を起用した一方で、登場人物が非常に少なく、低予算映画であるという雰囲気は否めないわけだが、今後のナタリはもっと大作指向になっていくんですかね。というのも彼の今後のプロジェクトとして「ニューロマンサー」をはじめ「スワンプ・シング」とか「ハイ=ライズ」といったマニア垂涎の作品の映画化が噂されているので、このままカナダのカルト的監督という立場にとどまらず、でかい作品を1本ガツンと作ってほしいところです。

「TEETH」鑑賞


前からちょっと興味のあった、2007年のサンダンス系映画。本国だとホラーコメディとして紹介されてるんだけど、コメディ色は殆どなくて文字通り痛いシーンのあるホラーであったよ。

田舎の高校に通うドーンは病弱な母親とボンクラな義兄のいる家庭に育ちながらも、敬虔なクリスチャンとして純潔運動を説き、当然ながら自分の貞操をひたすら守る真面目な少女だった。彼女はトビーという同級生とねんごろな仲になりつつも、婚前の性行為はどうにか避けようとしていたのだが、我慢ならなくなったトビーによって半ばレイプのような形で挿入行為をされてしまう。しかし次の瞬間、トビーは股間が血みどろになって苦悶の呻きをあげていた。なんとドーンの女性器には鋭い歯が生えており、それで男性のモノを噛み切ることができるのだった。予想もしなかった自分の能力(?)に戸惑いを隠せないドーン。しかし彼女がその能力を使いこなせるようになってからは状況が変わって…というようなお話。

「歯の生えた女性器」を意味する「ヴァギナ・デンタタ」という概念は劇中でも言及されるように昔から存在してたらしいんだが、寡聞にして知らなかったよ。「ドクター・アダー 」というSF小説にこれと似た展開が出てきたっけ。監督のミッチェル・リキテンシュタインはロイ・リキテンシュタインの息子でゲイな人らしいが、ゲイだからこういう発想が出てきたのかな。まあストレートな男性が観たほうが怖い思いをする作品ではあるが。男性器を噛み切られたからって必ずしも死ぬわけではないが、男としての存在理由のようなものが瞬時に消え去るというのは興味深いところですね。

ただし全体的に展開がまどろっこしいところがあって、主人公以外の人物の描写も薄っぺらいし、性的な目覚めを経験する若者たちの描き方なども物足りないところがあるのは確か。B級ホラーとして割り切ってしまえば十分楽しめるのだけど、カルト映画というかジェンダー研究の対象として優れた作品になった可能性があっただけに中途半端な出来になってしまったのが残念。クローネンバーグが監督してたらたいへん面白い作品になっていただろうに。ただドーン役のジェス・ウェイクスラーの演技は大変素晴らしいですよ。もっと注目されていい役者さんだと思う。