「LAKE OF FIRE」鑑賞

めでたい新年には気の滅入るドキュメンタリー映画を観よう、ということで妊娠中絶を扱った作品「LAKE OF FIRE」を観る。これは「アメリカン・ヒストリーX」を監督したトニー・ケイが18年もの期間をかけて自腹で製作したもので、中絶反対派と賛成派両方のインタビューを中心に中絶問題の奥の深さを浮き彫りにしていくもの。

監督自身は今でも中絶について特に確固とした意見を持っていないことを公言しているんだが、俺は「客観的なドキュメンタリー」というものはありえないと思っているので何かしらのオピニオンが含まれているんだろうと疑いつつ観てみたら、確かに特に偏向のない内容になっていた。これはバランスのとれた作りになっているというよりも、中絶というテーマがあまりにも深すぎて、すべての意見が一理あるように聞こえるためなんだろう。作品中に出てくる「中絶に関してはあらゆる意見が正しい」という発言が印象的である。

俺自身もこの作品を観るまで自分は明確にプロチョイスだと考えていたけど、母親の腹から出てくる胎児の断片などといった非常にショッキングな映像を見せられると、やはり子供の命は可能な限り守るべきだと実感した次第です。でもその一方で、中絶反対を声高に唱える連中の殆どが、子供の育て方も知らないようなキリスト教右翼のファナティックであるのを見るとプロライフという思想も問題があるよなあと思わずにはいられない。胎児を殺すのはダメだけど中絶医たちを殺すのはオッケー、というロジックは俺には理解できないですね。宗教的な縛りの薄い、たとえば日本のような国ではまた異なる意見がいろいろ出てくるんだろうな。

2時間半という尺は長過ぎるものの、いろいろ考えさせられる作品であった。そして中絶を認めるにせよ認めないにせよ、とにかく苦労するのは女性だということを、われわれ男性は性交渉の前にきちんと肝に銘じておくべきでしょう。

謹賀新年

人生は牛のようだと言った人がいたけど/僕にはよく意味が分からない
・・・ダニエル・ジョンストン「GO」

2008年もまたサエない年であった。2009年もイヤそうなことがいろいろありそうです。みなさんも仕事と健康には気をつけましょう。
今年もどうぞよろしく。

2009年で期待したいもの:
●「THE LEAGUE OF EXTRAORDINARY GENTLEMEN: CENTURY」
●マイブラの新譜
●「バトルスター・ギャラクティカ」最終回
●劇場版「スター・トレック」
●新型Mac mini
●東京オリンピック招致失敗

「THE NEXT DOCTOR」鑑賞

もはや年末の恒例行事となった感のある「ドクター・フー」のクリスマス・スペシャル最新作。舞台となるのは1851年のクリスマスのロンドン。そこに1人でぶらりとやって来たドクターは、サイバーメンの一味、および自らを「ドクター」と名乗る謎の男性に出会う。果たして彼はドクターが再生した後の「次のドクター」なのか…?というのが主なプロット。

今回は珍しく女性コンパニオンが同行せず、デビッド・モリッシー演じる「次のドクター」がその代役となってるわけだが、彼が本当に次のドクターなのかどうかは最初のほうで何となく分かっちゃうこともあり(だってカッコ悪いキャラなんですもの)、いつものようなコンパニオンとの軽妙なやりとりは無し。ドクター1人で話を支えるのは難しいんだなあと再認識した次第です。でも悪役として「Ballykissangel」のデヴラ・カーワンが出てたのが個人的には嬉しいかも。

全体のストーリーはこの「次のドクターは何者か?」というプロット以外は比較的凡庸で、せっかくサイバーメンが出ているのに勿体ないなあと思ってたんだけど、最後のサイバー・キングの登場には笑えた!突然B級怪獣映画のノリになってしまうけど、まあクリスマスだしいいんじゃないですか。

2009年はあと4本くらいこうしたスペシャル番組が作られるんだっけ?とりあえず今回のものよりも優れたものになることに期待したいところです。

「Wallace and Gromit in ‘A Matter of Loaf and Death’ 」鑑賞

「ウォレスとグルミット」の30分ものとしては13年ぶりの新作。こういう番組を国営放送が流してくれるイギリスって羨ましいよなあ。

今回のウォレスとグルミットは自宅でパン屋を営んでおりまして、相変わらず怪しい発明品だらけのパン屋なのですが、それなりに繁盛しているようなのでした。そんなある日、彼らはパイエラという女性を自転車事故から救い出す。彼女は若かりし頃にパンのCMに出ていた女性で、ウォレスにとって憧れの存在なのでした。そのままいい仲に発展していくウォレスとパイエラ。しかし巷ではパン屋が次々と殺されていくという事件が起きており、グルミットはそれらの事件にパイエラが絡んでいることに気づくのですが…といった内容の作品。パイエラの飼い犬としてフラッフルズというメスのプードルも出てくるぞ。

粘土アニメーションの出来は相変わらず素晴らしいし、細かいジョークも満載で「エイリアン2」のパロディもやってくれるなど十分に楽しめる作品になっている。しかし単なる殴り合いや暴力的描写が多いなど、今までの作品に比べるとちょっとウィットに欠けたものになっているかな。最後の爆弾の処理方法だってもっと面白く出来たと思うんだが。ここらへんは製作期間が短かったことが影響しているのかも。それでも大変に楽しめる作品であることには変わりないので、今後も2年に1度くらいはこうして新作を発表していって欲しいところです。

「THE WIRE」シーズン1鑑賞

最近は暇さえあれば観ている。評判通りの素晴らしい出来。話の進展が遅いという批判も分からなくはないが、無駄なシーンが一切ないので重厚な小説を読んでいる気分になって何エピソードでも続けて鑑賞できる感じ。

あらゆる演出やストーリーが良い意味で徹底的に抑えられた作りになっており、派手さはない代わりに観ていて飽きることもまるでなし。また単なる勧善懲悪のドラマには全然なってなくて、警察側は官僚主義と汚職によって主人公たちの捜査を妨害してばっかりだし、ギャング側も自分たちの組織を守るためにめまぐるしい努力を続けていたりと、善と悪の境界線がひたすらグレーなのも特徴的かな。なかでも一番グレーなキャラであるオマーに人気が集まったのも納得できる。俺のお気に入りは麻薬組織ナンバー2のストリンガー・ベルですが。

この派手な展開が無いとか勧善懲悪でないという作りは、下手すればものすごくつまらない作品になった可能性もあるんだけど、このシリーズはそこらへんのバランスのとりかたが非常に見事なんですよ。こういう作品は視聴率重視の地上波ネットワークからはまず出てこないでしょうね。

ちなみにこないだDVDセットを135ドルで購入して格安だと思ってたら、何と今では90ドルで販売されている。いずれ値下がりするとは思ってたけど、こんなに早くなるとは。何か損した気分。