MATT WAGNER ON GRENDEL’S 25TH

俺の好きなアメコミ作家、マット・ワグナーの代表的作品「グレンデル」が発表から25周年を迎えるということで、作品の再販なんかがいろいろ行われるそうな。 意外だったのは「ER」などで知られるジョン・ウェルズのもとで映画化が企画されてるらしいことで、しかも主人公は初代グレンデルことハンター・ローズではなく2代目のクリスティーン・スパーになるそうな。でもグレンデルって本来は「悪の化身」というキャラクターなので、それをどう映画化するんだろう。

んでワグナー本人もグレンデルの新作を出すらしいけど、彼の特徴的なスタイルだった、非常に細かく実験的なコマ割りがここ10年くらい見られないのがちょっと残念なところ。93年に出た「バットマン対グレンデル」なんて緻密な話の展開がコマ割りに非常にマッチしてたのに、その3年後に出た続編なんて結構絵柄が粗くなっていたんだよね。

「Ultimate Avengers」鑑賞

マーヴェルがアニメでDVD市場に参入することになり、その第1弾「Ultimate Avengers」を観る。配給はライオンズゲート。 タイトルが示すように「アルティメイツ」と「アヴェンジャーズ」をごっちゃにしたような作品だけど、ストーリーや設定は「アルティメイツ」を大幅にベースにしている。キャプテン・アメリカの発見から始まり、アヴェンジャーズの結成、そして地球侵略を狙うエイリアンとの決戦へと話が進んでいくが、原作を急ぎ足でなぞった感じが否めず、なんか話の展開に盛り上がりが欠けるきらいがあるかな。チームの団結力の欠如によりエイリアン1匹に手玉にとられるところとか、エイリアンを撃退した直後に味方のはずのハルクと戦うとか、なんか観ててスカッとするような内容になってないのは問題だろう。

もともと「アルティメイツ」はマーク・ミラーの風刺がきいた、どちらかといえば年長者向けのコミックだったけど、この映画はそれを変に子供向けにアレンジしてるものだから、セリフやストリーが単純な割にはキャラクターに毒があって、スーパーヒーローなのにどうも嫌な性格の連中が揃ってるというのもどうかと。どうしてもマーヴェルはDCにくらべてアンチ・ヒーローが多いので、チームものをやると仲間同士のいざこざが目立つのはコミックでも同じだけど。

アニメの出来も中途半端で、リアルにしたいのかカートゥーンっぽくしたいのかいまいち理解しにくいし、映像効果なんかに金をかけてるのは分かるんだけど、そのわりには全体的にやたらチープな感じがするし。フォックスの失敗アニメ「タイタンA.E.」に雰囲気が似ている、といえば分かってもらえるでしょうか。アメコミをアニメ化するのって意外と難しいことだと思うけど、独自のスタイルを確立させたブルース・ティムがいかに偉大であるかを、この作品を観て再認識した次第です。いっそのことマーヴェルもティムを雇って作品を作ればいいのに。劇中のキャラクターと全く似てないビライアン・ヒッチの絵が、最後に流れるのは皮肉だよなあ。

これだけ書いといて何だけど、マーヴェルがこうしたアニメをつくることになったのはファンとして嬉しいことだし、作品の内容も決して原作を改悪したようなものではないことは十分理解できるのです。全体的な評価としては、良くないんだけど決して悪くはない作品といった感じ。ネット上でも同様の意見が多いようだ。今後マーヴェルはDVD向けに本作の続編や「ドクター・ストレンジ」(なぜ?)などのアニメを続々製作するみたいなので、とりあえずクオリティの向上を期待したいところです。

Podcasting Goes Pay-to-Play

リッキー・ジャーヴェイスのポッドキャストを最近よく聴いてるということを前に書いたが、なんか次シーズンからは課金制になるそうな。今シーズンの最後にあたる第12エピソードで「次シーズンまで少し時間をおく予定だったけど、実は来週も配信することになった。でもこれからは有料でゴニョゴニョ…」と言ってたのはこのことだったのかい。 非常に楽しめるポッドキャストだし、優れたコンテンツにお金を払うのはやぶさかでないけど、1ヶ月で7ドルという値段は高くないかよお。シングル曲のように1本99セントにするのが妥当な値段かと。これからはこうした有料のポッドキャストが増えてくんだろうか。日本のiTMSでは購入できないようになったら嫌だな。

「JUSTICE LEAGUE UNLIMITED」最終回 

スーパーヒーローもののアニメとしてはおそらく史上最高の作品「JUSTICE LEAGUE UNLIMITED」の最終回が放送された。シリーズの終了は正式には発表されていないものの、話の内容やスタッフの証言から判断する限り、これで終わりになることはまず間違いないだろう。人気があるシリーズだったのになんで終わるのかよく分からないけど、ブルース・ティムやポール・ディニ、ドゥエイン・マクダフィー(マイルストーンまたやってください)などの製作スタッフがいいかげん別の仕事をしたくなったのかもしれない。あるいは声優陣が豪華すぎて製作コストが高くついたとか。 リージョン・オブ・ドゥームを軸とした今シーズンの展開は、クエスチョンが重要な役を演じた昨シーズンのやつほど出来が良くはなかったんだけど、それでも観ていて楽しいエピソードばかりだった。「ティーン・タイタンズ」はあのアニメ絵が生理的に受け付けられず、俺の好きなタイタンズでありながらまるで観る気はしなかったけど、「JLU」はブルース・ティムがデザインしたキャラクターたちがいろいろ登場して見応えがあった。クエスチョンだけでなくビジランテやロケット・レッドといったマイナーなキャラクターが活躍したのも良かったなあ。グリーン・ランタンとホークガールの恋の結末が明かされなかったのが残念なところですが。

噂では同じスタッフによる「スーパーガール&リージョン・オブ・スーパーヒーローズ」の製作が企画されているということなので、とりあえず首を長くして待ってます。

And the adventure continues…

「A History of Violence」読了

こないだデビッド・クローネンバーグが作った映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」の原作「A History of Violence」をやっと読む。10年くらい前に立ち読みしたときは最後のグロいシーンに結構ショックを受けたんだけど、今読んでみたらそうでもなかった。グロさに耐性ができたのかな。 ジョン・ワグナーがストーリー、ヴィンス・ロックがアートを担当。元来はDCコミックスの「パラドックス・プレス」というレーベルから出てたんだけど、このレーベルが無くなったんで現在は「Vフォー・ヴェンデッタ」と同じく「ヴァーティゴ」というレーベルから出版されている。ちなみにトム・ハンクス主演の「ロード・トゥ・パーディション」の原作もパラドックス・プレスから出ていた作品。アメコミはスーパーヒーローだけではないのですよ。

個人的にこの作品を読んで一番驚いたのは「ジョン・ワグナーが長いストーリーを手がけている!」ということ。ワグナーといえば、ほぼ全てのイギリス人コミック作家を輩出してきた雑誌「2000AD」をパット・ミルズと共に創刊し、さらにはカルロス・エズクエラと「ジャッジ・ドレッド」を創作した、イギリスのコミック界ではもう大御所的な存在なんだけど、2000ADのページを埋めるために「質より量」で作品を乱発していた人というイメージが強いので、8ページ以上のストーリー、ましてや300ページ近いものをきちんと書いていることに驚きを感じてしまうのです。そして「バイオレンス」のストーリーは急ぎすぎも中だるみもせず、実にうまいペースを保って進んでいく。ヴィンス・ロックのアートも最初はとっつきにくく感じられるものの、話の雰囲気に非常にマッチしたものになっている。

話の内容は詳しく書かないが、小さな町でのささいな暴力事件がさらなる事件を起こし、過去に起きた事件が明らかになり、それが大都市での対決へと結びついていくという、タイトル通りの「暴力の歴史」がリアルに語られていくさまは読み応え十分。主人公がやけに強いとか、20年も人を拷問するなんて出来んのかな、と思うところもあるけどね。

ちなみに映画版は結構ストーリーが違っているらしい。クローネンバーグは大好きなので、彼がどのように話を料理するのかが楽しみなところです。前作「スパイダー」はどうもイマイチだったけど、今回は期待してまっせ。