「A FISTFUL OF FINGERS」鑑賞


こんど新作「ベイビー・ドライバー」(傑作!)が公開されるエドガー・ライトの1995年のデビュー作。そう、「ショーン・オブ・ザ・デッド」の9年前に1本撮っていたのだよ(この前にも「Dead Right」という短編を作っているらしい)。

当時は劇場1館だけで公開されたという超低予算作品で、DVD化もされてないので幻の作品かな…と思っていたらググったらすぐに動画が見つかった。アップしたの誰だ。なお上の画像に「20周年」とあるように、こないだLAで20周年記念の上映があったとか。

内容は題名から分かるようにセルジオ・レオーネあたりのマカロニ・ウェスタンのパロディとなっていて、さすらいのガンマンが自分の愛馬を殺した悪党を追い詰める、というのがざっくりとしたプロット。でもコメディなので話は脱線しまくってるけどね。

監督が友達を総動員して作ったアマチュア映画なので、出てくるインディアンやメキシコ人は顔に色を塗った白人だし、馬は自分の足で動かす木馬。ならず者たちの酒場は近所のパブで、西部の荒野は郊外の森あたりで撮ったんだろうなあ、というのがよく分かる。

話もしょーもないギャグが次から次へと繰り出される展開で、まあ正直なところあまり面白くありません。78分という短尺ながらも、結構グデグデになってしまっていたような。ガンアクションのところの編集とか、音楽と映像の合わせ方とか、のちに開花するライトの才能の片鱗がうかがえた…ような気がした…。

出演者もみんな無名の役者(?)ばかりで、当然ながらサイモン・ペッグもニック・フロストも出てません。主役のガンマンを演じるグラハム・ロウはライトの後の作品(「SPACED」とか)にも出ているみたい。最後にイギリス版「どっきりカメラ」みたいな番組の司会をやっていたジェレミー・ビードルという人がカメオ出演しているんだが、彼はどういうツテで出演したんだろう。

まあエドガー・ライトのよっぽどのファンでもない限り観る必要はないだろうが、西部劇愛というか映画愛が感じられる作品だし、後に傑作を作り続ける人がかつてはこういうものを撮っていた、というのを知る意味では興味深い作品ではないかと。というわけでみんな「ベイビー・ドライバー」観に行きましょう。

これはファンメイドのトレーラー。

「ザ・デイ・アフター」鑑賞


広島の原爆記念日に触発されたわけではないけど、かつて社会現象を巻き起こした作品なのに観たことなかったな、と思いyoutubeにあがってた低画質のものをチマチマと観る。

ウィキペディアにも日本語版記事があるので詳細はそっちを見てもらうとして、冷戦の緊迫状態にあった1983年に、アメリカとソ連との核戦争、およびその結果を描いたTVムービー。エクスプロイテーション的な内容ではなくて、当時はその生々しさが話題になって高視聴率を稼ぎ、なんと現在においてもアメリカ史上で最も視聴されたTVムービーなんだとか?日本でも当時は大きく話題になってましたね。126分とTVムービーにしては長尺だが、原爆が落ちてからの後半はCMなしで放送されたのか。

話はカンサスを舞台に、医者とその家族、結婚式を控えた娘のいる家族、基地に派遣された軍人たちの日常生活が、東西ベルリンにおける米ソの軍事衝突を境に緊迫感が高まっていき、やがて核ミサイルに襲撃され、廃墟となった土地で生きるさまが描かれていく。

なんでカンサスかというと核ミサイルの基地があるので軍事的なターゲットになっているそうな。アメリカ各地にも核ミサイルが落ちたようなことが示唆されるけど、高層ビルが吹き飛ぶようなシーンは出てきません。というかミサイルの発射シーンや核爆発で森や建物が崩壊する映像は明らかに軍の記録映像の使い回しで、まあ劇場映画とかに比べると低予算だったんだろうなあと。

キノコ雲の特撮なんかは悪くないんだけどね。原爆の被害もピカッと閃光が走ったらすぐに人が骨になっている感じで、「はだしのゲン」よろしく人の皮が焼けただれたり火脹れで顔が腫れ上がるような光景は全くなし。こういう作品は「ゲン」や「風が吹くとき」のように観る人にトラウマを与えてなんぼだと思うのだが、家族向けネットワークのABC放送ということでキツい映像にはいろいろ規制が入ったらしい。放射能によって人々の髪の毛が抜け落ちていく描写とかは頑張ってました。

監督は「スター・トレック」シリーズや「タイム・アフター・タイム」といった娯楽作で知られるニコラス・メイヤーだが、テーマのせいか演出はかなり淡々としている。つうか退屈の域。最初の1時間で戦争に向けて事態がエスカレートするさまが描かれ(ラジオでのニュース放送がメインだが)、中間地点で原爆が爆発、後半は生き残った人々が無気力なまま暮らし、やがて放射能により何人かが絶命していく。銃を持った自警団みたいなのが出てくるのがアメリカ的だなとは思いました。

出演者は故ジェイソン・ロバーズを筆頭に、「ポリス・アカデミー」でブレイクする前のスティーヴ・グッテンバーグや髪のあるジョン・リスゴーなどが出ていて今から見ると比較的豪華なのだが、いかんせん話が淡々としてるので目立った演技はなかったかな。

30年前に比べると世界情勢も変わってきているので、現代ではそのまま通用しないような要素もあるし、これが例えばテロリストによる核の起爆や北朝鮮のミサイルといった出来事だったらいろいろ話は変わってくるのだろうけど、こないだの震災を含め、大災害に遭ったあとの人々はどう生き延びるのかという所はいろいろ考えながら観ました。とりあえず食料の備蓄と懐中電灯の準備は日頃から行っておきましょう。

「エンドレス・ポエトリー」鑑賞


原題「Poesía Sin Fin」で、アレハンドロ・ホドロフスキーの新作。2年くらい前にクラウドファウンディングで製作費を募っておりまして、25ドルほど出資したのでございます。それで5月くらいに作品は完成してダウンロード可能になってたんだけど、不親切にも英語字幕が提供されてないので鑑賞できず、仕方なしにネット上に転がってた字幕ファイルとあわせて観るはめに。でも字幕のタイミングがずれまくってたうえにフランス語の会話の部分がぜんぶ抜けてたな。字幕が提供されてないのは欧米の出資者にも不満が出ているようだし、そのあと出資者に提供されたサントラのダウンロードもアメリカ国内でのみ可能と、どうも今回のクラウドファウンディングはアフターケアがいまいちのようでしたね。日本での試写イベントに招かれる権利はあるんだろうか(もう行われた?)。

内容は完全に前作「リアリティのダンス」の続編で、同じ役者が演じるホドロフスキー一家がチリのサンティアゴに移住してきたところから話は始まる。父が経営する商店を手伝いながら、医者になることを強制されるアレハンドロ少年だったが、本人の夢は詩人になることであった。そして青年になった彼はエンリケ・リンやニカノル・パラといった詩人や芸術家に出会い、自分もまたスタジオを持って芸術性を開花させていく、という物語。

「リアリティのダンス」は記憶喪失になった父親の帰還などのマジックリアリズム的な要素が多分にあったが、こちらは比較的ストレートに自伝的な内容になっている。それでも小人の女性などといったホドロススキー的な描写はいろいろ出てきますが。予算もなんとなく低予算のようだけど、セット芸術などは印象的だし、画面の色使いなども美しいシーンがいろいろ出てきていたな(撮影はなんとクリストファー・ドイル)。あとたまに「黒子」が出てきて、画面上の小道具を片付けたりする演出が斬新でございました。

前作に続いてホドロフスキーの父親役を演じるのが、ホドロフスキーの息子のブロンティス。さらに青年時代のホドロフスキーを演じるのがブロンティスと17歳くらい年の離れた弟のエイダン・ホドロフスキーで、つまり兄弟が親子の役を演じているというわけ。ホドロフスキーの母親を演じるのはこちらも前作に続いてパメラ・フローレスだが、今回はホドロフスキー青年とねんごろな仲になる女性詩人ステラ・ディアスの役も一人二役で演じていて、どことなく近親相姦っぽい雰囲気がありますね。

息子二人に加えてホドロフスキー本人も狂言回し的に随所で登場。クレジットを見るとスタッフにもホドロフスキーの親族がいるようで、もはや家内制手工業のような映画作りになってきたな。ブロンティスの娘もモデル兼女優をやっているそうで、いずれ続編に登場してくるのでは。でもホドロフスキーは実際は姉がいたようだけど、不仲だったそうで劇中ではいなかったことになってるのが手厳しいな。

前作を観たときほどの衝撃はなかったけど、それでも非常に独創的な出来の作品であり、一見の価値はあるかと。どうもホドロフスキー(88歳!)にはこの自伝的な内容の話を5部作にする構想があるらしいのだが、本当にできんのかそれ。いずれパリにおいて「デューン」を撮ろうとする逸話が出てきたりするのだろうか。

なおクラウドファウンディングの出資者に対する謝辞はいちおうあるものの、最後にパーっと出るだけで自分の名前を確認するようなことはできなかった。まあ期待してたわけじゃないんだけどね。チェッ。

マカオ・香港旅行


昨年のインドに比べれば小旅行だが、忘備録も兼ねてさくっと感想を。

期限が切れるマイレージがあったのでフライトを予約し、締め切りの迫った仕事を尻目に4泊5日の旅に。マカオへのフェリーとかも日本から予約していったけど、まあ行き当たりばったりでもどうにかなりますね。飛行機も思ったより早く着いたので1本前のフェリーにしてもらい香港空港からそのままマカオに。フェリーは間違えてタイパ(南側の島)に行くやつを予約してしまったが、各地のカジノに行く無料バスに乗って北側のマカオ半島に移動。ちっこい土地とはいえ、さすがに島同士をつなぐ橋を歩いて渡るのは無理みたい。そしてホテルにチェックイン。なぜかデポジットに3万円近くも現金を要求され、一時的であれ活動資金がグンと減ることに。
基本的にラスベガスみたいな観光地なので、見るものはカジノが中心。派手なカジノが並び、その周りには高級時計と宝石店が並ぶという、貧乏人には厳しい街であった。カジノもブラックジャックのミニマムベットが5000円弱と初心者には厳しい額なので、5セントのスロットマシンをチマチマやる程度。それでも負けましたが。

ホテルにあった無料雑誌にカジノ王のインタビューが載ってて、カジノの収益が数年前から下がっており、これからは日本への進出を期待する、みたいなことが(たぶん)書いてあったけど、これだけカジノの観光地というブランドがマカオで確立してるのに、いまさら日本がカジノ誘致をしたって太刀打ちできないと思うのだが。あれだけの規模の建物を揃えて従業員を教育するのってハンパない手間と予算がかかると思うぞ。
あと外を歩いてると頭がクラクラするくらいの暑さでしたが(でも名物ストリートフードはなぜかカレー煮込みおでん。当然食わなかった)、カジノの中は寒いくらいにクーラーが効いていて、まあ観光地たるものクーラーをフル稼働させないといけないですね。日本のオリンピックスタジアム、クーラーないんだって?なお各カジノの入り口には「我々は頑張ってこれだけCO2を削減してます」みたいな数値がこれ見よがしに飾ってあった。

物価はマカオも香港も、日本とほぼ同じかちょっと高いくらいか。でも最低賃金は半分くらい?おねーちゃんたちがサービスしてくれることで有名なマカオのサウナ(行ってないよ!)では日本人の女性が最も金額が高いということで、今後は逆ジャパゆきさんみたいなケースが増えてくるのかしらん。

貧乏人がカジノばかり行ってても仕方ないので旧市街なども観光しましたが、ポルトガル支配下で建てられた教会などが点在しているだけで、ヨーロッパ行ったことある人にはさほど目新しいものでは無いかも。個人的には国内外の市場が大好きなので、地元の人が使う市場に並んだ怪しい(失礼)魚や肉を眺められたのが楽しかったです。
マカオでは2泊して、それからまたフェリーに乗って香港へ。やはりこっちのほうがずっとコスモポリタンで、イスラム教やヒンズー教徒なども普通に道を歩いていて非常に国際的であった。海沿いのショッピングモールも非常に巨大だったし、なんか日本よりも勢いがあるように感じられましたね。ちょうど中国で活動家の劉暁波氏が病死していたが、地元の新聞は検閲もなく報じていた。

初日は無難にビクトリアパークまで登って夜景を眺めることに。しかし香港はどこ行っても人が多すぎ。トラムに乗るのもずいぶんかかったぞ。夜景は綺麗だけど、夜8時のシンフォニーオブライツはショボいですね。ビルのてっぺんがピカピカと光る程度。以前はもっと派手だったようだけど。

次の日は朝から旺角・油麻地あたりをぐるぐる歩いて市場観光。鳥市で鳥といっしょに餌のムシがうごめいていたり、女人街では大量のハンドスピナーが売られていたのが印象的であった。つまようじのボーガンは規制のためか見当たらなかったな。
なお食事は概して美味かったものの、暑さで夏バテ気味だったのでこってりした麺ものなどはあまり食べず、重慶大厦のインド料理屋でサモサなど買ってすませてました。俺はサモサが好きなんだよ。

あとマカオでも香港でもホテルの部屋にAndroidのスマートフォンが置いてあって、日本などには電話がかけ放題だし、外にも持ち出せて地図の確認とかするのに役立ったのだが、日本のホテルでも同様のサービスとかやってたりするのかな。無料Wi-Fiもあちこちにあったし、スマホが使えると海外旅行はグッと楽になるよな。

雨季なので天気は危惧していたが概ね好天に恵まれ(天気予報が全く当たらない!)、最終日だけ荒天になってフライトが2時間遅れるというハプニングがあったものの、全体的には楽しい旅行でありました。治安もいいし、日本も海外からの観光客を取り込むにはまだまだ学ぶことが多いですね。

「SNOWFALL」鑑賞


80年代にクラック・コカインがいかにLAに蔓延していったかを描いたFXの新シリーズで、プロデューサーはジョン・シングルトン。

今秋の新シーズンも含めた、最近のアメリカのドラマのトレンドとしては「アメリカン・クライム・ストーリー」などに触発された実録犯罪ものと、いわゆるBlack Lives Matter運動に絡めた「黒人社会vs警官」というテーマをもった作品が多く作られているみたい。どちらも日本では元ネタの知名度が低いのでどうも人気が出ないような気がするが、この「Snowfall」はそのどちらの要素も持っている作品といったところ。

1983年のロサンゼルスを舞台に、マリファナを売って小銭を稼いでいたが、ある日ふとしたことから多額のコカインをさばくことになったサウスコンプトンの黒人少年、メキシコのカーテルの一員になるために強盗を行うよう命じられるルチャ・リブレのレスラー、そして麻薬の過剰摂取で死んだエージェントの後始末をすることになったCIAの職員、といった3人の人物が怪しい案件に手を染めていくさまが描かれていく。いずれは3人の行動が交錯していくことになるのかな?

イスラエル人の大物ギャングが大量のコカインを扱っていることや、アメリカ政府が裏取引をして南米の国からコカインの密輸を容認していたような話が出てくるが、第1話ではまだクラック自体は出てこなかった。

大物ギャングの言動がかなりステレオタイプっぽかったり、レスラーが強盗に入った先で家人に見つかって、もみ合ううちに家人が死んでしまう展開とか、どうも使い古されたプロットがあちこちで見受けられる一方、演出(第1話の監督はシングルトンではない)が全体的に手堅いので、観ていて飽きることはなかった。よくできたブラックムービーみたいというか。

キャストは比較的無名の役者が多いかな?ほぼ主役の黒人少年を演じるダムサン・イドリスって結構ハンサムなのだが、彼もイギリス人俳優なのかー。出演作の少ないイギリス人が海を渡ってアメリカで起用される仕組みってどうなってるんだろう。

決して悪い作品ではないし、特にCIA絡みのストーリーは今後どうなるのか興味あるのだけど、やはり日本では注目されないだろうな…。