「WILL」鑑賞


若き日のシェイクスピアを描いたTNTの新シリーズ。これBBCかどこかの番組かと思いきや、TNTオリジナルの作品なのですね。例えばThe CWがティーンの視聴者目当てに、プリンセスが主人公の時代劇「Reign」を放送したりするのは分かるのですが、どちらかといえば無骨な番組が多いTNTが、こんな時代劇を放送してどうするんだろう?

物語は20代のシェイクスピアが劇作家としてロンドンでの成功を求めて、妻子を残してストラットフォードを離れるところから始まる。そしてロンドンにたどり着いた彼はツテを使って劇場を運営するジェームズ・バーベッジのもとに赴き、ひょんなことから新しい劇の脚本を担当することになる。しかし当時のロンドンは当局によるカソリック狩りが激化しており、カソリックのシェイクスピアにとっては危険な場所であった…というようなあらすじ。

ロンドン行きの場面でザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」が流れ、そのあとにはザ・ジャムの「ザッツ・エンターテインメント」がかかる演出からも分かるように、時代考証とかは二の次で、かなり現代風にアレンジされたシェイクスピアの物語となっている。劇場の観客はフェイスペイントをしたパンクスみたいな格好だし、作家たちは酒場でフリースタイルの勝負とかやってたりすんの。

まあシェイクスピアの劇もそれなりに下品なネタが入ってたりするのはよく知られてるが、当時はこうも乱痴気騒ぎが行われてたんですかね。おれ学生時代に授業で文章を無理やり読まされたのが嫌で、シェイクスピアってそんなに詳しく無いのですが(同じ理由でバートランド・ラッセルも嫌いです)、クリストファー・マーロウとは知人の仲だったんだっけ?番組中ではマーロウ(上の写真の左側)が彼のライバルのような扱いで出てきてました。

エピソードの監督は「エリザベス」のシェーカル・カプールで、こういう時代劇はお手の物ですかね。原案者および脚本家はバズ・ラーマン作品で知られるクレイグ・ピアースなので、舞台での歌や踊りはラーマン作品っぽいと言えるのかな。またシェイクスピアを演じるローリー・デイビッドソンって新人俳優らしいが、傍にはユエン・ブレムナーやコルム・ミーニーといった俺好みの役者が出ています。

第1話を観た限りでは、面白いかというと決してそんなわけではないのだけど、最近の(アメリカの)新番組のなかでは異色な存在だと思うので、もしかしたら後になって大化けするかもしれない。それまでTNTの視聴者が興味持ってくれればの話ですが。

2017年上半期映画ベスト10

ブログで取り上げない作品(試写会で観たため)が増えてきたので、年末への備忘のために書いておく。順不同。

・LOGAN/ローガン
・メッセージ
・グレート・ウォール
・ムーンライト
・トレインスポッティング2
・レゴバットマン ザ・ムービー
・ディストピア パンドラの少女
・ジェーン・ドウの解剖
・スパイダーマン ホームカミング
・ベイビー・ドライバー

「ワンダーウーマン」はまだ観てません。「ガーディアンズ2」は及第点。「沈黙」はどこかの阿呆が冒頭に映画館でケンカはじめて、雰囲気をマズくしたのが残念であった。

「THE MIST」鑑賞


映画化もされたスティーブン・キングの小説のTVシリーズ版で、放送局はSpike。

まあ設定はご存知のように、謎の濃霧がメイン州(where else?)の田舎町を覆い尽くすようになり、それと同時に怪現象が起きるようになって住民が殺されていくというもの。ただし登場人物はみんなオリジナルの設定になっているみたい。第1シーズンだけでも10話あるので話の展開はやたら遅く、第1話では後半になって濃霧が出てきて、ゴキブリが人を襲うような描写はあるもののクリーチャーなどは登場せず。あとこちらの濃霧は人を狂わせる(記憶喪失にさせる?)効力を持っているみたい。

登場人物は性教育を教えたことで学校をクビになった女教師とその夫、彼らの娘でパーティーでデートレイプされたらしき少女、そのゲイの男友達などなど。あとは保安官とそのジョックなアメフト息子とか、霧のなかから現れて記憶を失っている兵士、他界した町の住人の友人だという謎の女性などが出てきます。性教育を敵視する保守的なママさんが、映画版の宗教おばさんみたいな役回りになるのかな、と思いきや警告を無視して外出して真っ先に殺されておりました。

ショッピングモールに閉じ込められた母親と娘、警察署から外に出た教師の夫と保安官たち、あとは夫を霧から出てきた男に殺された老婆という3チーム(?)が主体になって話が進んでいくのかな。保安官や兵士がいるあたり「ウォーキング・デッド」っぽい展開になるかもしれないが、いかんせん謎のキャラクターが多くて今後の展開はよく分かりません。

登場する役者はモーガン・スペクターとかアリッサ・サザーランドとか、よく知らんなあ…。このあとイザイア・ウィットロック・ジュニアが登場するみたい。

話の設定はやはり面白いと思うものの、基本的にこの作品は密室劇であるわけで、何エピソードも話を引っ張ることってできるのかな?スモークを炊いたセットで撮影してるだけなので製作費は安くつきそうだけどね。

「CATFIGHT」鑑賞


日本でも来月映画祭で公開されるのかな?題名から若き女性が下着姿でくんずほぐれつするような内容を期待してはいけないよ。中年のオバハンふたりが殴り合うという映画。

ニューヨークの裕福な家庭に暮らすベロニカは、パーティーの場でバーテンダーとして働くアシュリーに再開する。かつて二人は同級生だったのが疎遠になり、アシュリーは画家を目指しながら貧乏暮らしをしていたのだ。身分の違う二人の会話はすぐにぎこちないものとなり、二人だけになった場では些細なことから殴り合いになってしまう。アシュリーのパンチをくらって階段から転げ落ちたベロニカは昏睡状態になり、2年間も病院で眠ることに。そして目を覚ました時、彼女は財産を失って無一文担っており、逆にアシュリーは絵画の腕前が評価されて売れっ子のアーティストになっていた…というあらすじ。

ベロニカ役にサンドラ・オー、アシュリー役にアン・ヘッシュ。助演にアリシア・シルバーストーンで、あとはディラン・ベイカーとかピーター・ジェイコブソンなんかが拘束時間半日といった感じでちょっと出演してます。

ストーリー的にはこの後アシュリーも痛い目に遭うわけですが、なんか中身がスカスカで95分の尺ながらもすごく間延びした印象を受ける。これFunny or Dieの30分くらいの短編だったら面白かったのでは。いちおうアメリカの医療保険の風刺とか、海外で戦争しかけて派兵していることへの皮肉なんかが込められているものの、どれも中途半端でピンとこないな。

むしろ元レズビアンのヘッシュにレズビアンの役をやらせたり、ヒッピーまがいの育児本を出して論議を呼んだアリシア・シルバーストーンに、ヒッピーまがいの育児にこだわる母親(赤ん坊にはwifiの電波や、中国製の玩具を近づけない)を演じさせるなど、かなりエグいキャスティングをしてるのが面白かったのですが、これどこまで意図的に配役したんだろう。

また劇中で3回くらいある格闘シーンは、どれも典型的なハリウッド風のケンカというか、全体的に凡庸で目新しさはなし。「ゼイリブ」みたいに時間配分を無視して延々と続けるとか、個人的に映画至上もっとも痛々しいケンカだと思ってる「ゆきゆきて、神軍」の素人同士の取っ組み合いのような、生々しさを感じさせる出来になってたらもっと面白かったと思うんですけどね。

というわけであまり出来の良い作品ではありませんでした。うーん。

「ディストピア パンドラの少女」鑑賞


原題は「The Girl with All the Gifts」で日本では7月公開。これマイク・ケアリーの小説が原作なのですね。ケアリーといえばコミックのライターとしてDC/ヴァーティゴの「ルシファー」のストーリーを担当してたり、ファンのあいだでは評価の低いポール・ジェンキンズのあとを継いで「ヘルブレイザー」を担当して人気を復活させたという人だが、俺はそんなに作品を読んだことがないかな。以降はネタバレ注意。

舞台となるのは近未来。謎の真菌類が世界中に蔓延し、それに感染した人々はゾンビ化して生身の人間の肉を喰らう怪物となっていた。生き残った少数の人間は軍事基地に避難してゾンビの侵攻に耐えていたが、ゾンビ化した母親から生まれた子供たちは、人肉への食欲を持ちながらも、高い知性と学習能力を備えていることが判明し、彼らを用いてゾンビ化に対するワクチンの研究が進められていた。子供たちの中でも特に高い知性を示した少女メラニーは教師のヘレンと仲良くなるものの、基地がゾンビたちによって陥落。メラニーとヘレンはワクチンを研究していた博士や数人の兵士とともに基地を脱出し、他の基地に合流しようとゾンビたちの蔓延するイギリス本土を旅することになるのだった…というあらすじ。

劇中のゾンビたちは「ゾンビ」ではなく「ハングリーズ」と呼ばれ、通常はじっと立った休眠状態でいるものの、匂いや音に過敏に反応し、人肉(動物もあり)を嗅ぎつけると全速力で追いかけてくるという存在。アリに寄生して行動を変化させる実在の真菌類をモデルにしてるのかな?彼らに噛まれると当然自分もハングリーズになります。

話の中心となる少女メラニーは第2世代のハングリーズとして人肉への渇望を抱きつつ、ヘレン先生たちを安全地帯へ導こうとする存在だが、彼女を研究対象とみなす博士や、彼女を怪物扱いする兵士たちとの葛藤が道中で描かれていく。イギリス作品のせいか、アクション中心のゾンビ映画というよりも、「28日後…」みたいなアートシネマっぽい描写もあり。

メラニーを演じるのは新人のセニア・ナヌマで、ヘレン先生をジェマ・アータートンがノーメイクで演じてます。兵士たちのリーダー役がパディ・コンシダインで、基本的に彼が出ている作品はハズレがないですな。あと観るまで知らなかったのだが、博士役にグレン・クローズ。今になって彼女をイギリスのゾンビ映画で見かけるとは思わなかったけど、体をはった熱演をしていて、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」よりもずっといい役でした。

監督のコーム・マッカーシーはテレビ番組のを監督を多数手がけてきた人で、これが初の劇場作品だとか。チェルノブイリの上空をドローンで空撮した映像を荒廃したロンドンの光景に使用したりと、大変な低予算作品ながらもいろいろ効果的なショットが用いられています。終盤のBTタワーとか非常に良かったですね。

非常に革新的というわけではないものの、ゾンビ映画に新しい観点を加えた良作。SF映画としても楽しめるし、ゾンビ作品に食傷気味の人でも楽しめる作品ではないでしょうか。