「サウスポー」鑑賞

Southpaw
アントン・フークア監督のボクシング映画。日本では8月公開かな?

ビリー・ホープはライトヘビー級の無敗のチャンピオンで美しい妻と娘にも恵まれていたが、彼との対戦を求める選手とのいざこざにおいて、妻が流れ弾を受けて死んでしまう。これのショックで自暴自棄になったビリーは飲酒運転などで事故を起こし、ボクシングのライセンスばかりか娘の養育権まで剥奪されてしまう。すべてを失ってどん底に落ちた彼は、町の小さなボクシングジムのトレーナーと出会い、再起をかけてまたボクシングを始めるのだが…というようなあらすじ。

予告編でバラされている内容が1時間半くらいかけて展開していく時点でもう減点対象なのだが、なんか3流漫画誌にありそうな非常にベタなストーリーの作品。すべてを失った男が、娘のために再起を誓う…って話は今までどれだけ目にしてきたことか。主人公と妻が孤児院の出身だとか、家庭内暴力に悩む少年がジムに通っているとか、コテコテな設定が中途半端に投げ込まれています。脚本は「サンズ・オブ・アナーキー」とかやはり短命に終わった「THE BASTARD EXECUTIONER」のカート・サッターだが、彼の脚本って肩に力が入りすぎていて話の流れに緩急が無いのでは。

これもともとはエミネム(左利き)が主演する予定だったのが、音楽活動に専念したいということで主役がジェイク・ギレンホールに交代したらしい。しかしギレンホールは右利きだ!「サウスポー」という題名を残す必要はあったのか?とはいえその前は「ナイトクローラー」でガリガリに痩せていたギレンホールが、短期間で筋肉モリモリの役作りをしたのは凄いけどね。主人公のサイコっぽい戦い方は「ナイトクローラー」に通じるものがあって、激昂して鏡をブチ壊すシーンもまたやってます。

ただ主人公が「殴られれば殴られるほど強くなる」というこれまたベタな設定なため、試合中は喋ってばかりでろくにガードをせずにボコボコに殴られてるのだが、実際にそんな試合やったら負けてますから!ガードができないチャンピオンって何なんだよ。良い子はマネしちゃだめだよ。

脇役にはレイチェル・マクアダムスとかフォレスト・ウィテカーとか揃えてるのにろくに活用してなくて勿体無い、一方でカーティス・ジョンソン(50セント)は演技がヘタなので起用しないほうがいいいと思うぞ。アントン・フークアって微妙な内容の娯楽映画ばかり作ってる印象があるのだけど、これもそんな作品であった。最近のボクシング映画ならこれじゃなくて「クリード」観ましょう。

「Donald Trump’s The Art Of The Deal: The Movie」鑑賞

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「iSteveみたいな、コメディ動画サイト「Funny Or Die」による50分ほどのパロディ・ムービー。ここから無料で視聴可能。

ドナルド・トランプが80年代に出した自伝「The Art Of The Deal」の幻の映画版、という設定になっており、監督も編集も主演もみーんなトランプだそうな。トランプによるニュージャージーのカジノの買収を背景に、自分のビルにやってきた少年にトランプが自らの成功体験を語るという内容で、成功するためのアドバイスが切り札(トランプカード)の形で随所に挿入されてます。

んで80年代のニューヨークの文化とか不動産についてのジョークが延々と続くのだけど、そんなものマイナーすぎて分かんねえよ!エド・コッチ市長がどうした、とか言われても知らんがな。「アルフ」とかファット・ボーイズ(当然本人たちではない)が出てきて、ああそういうのいたねえ、と分かるくらい。

トランプ自身は自己中心的な高慢ちきとして描かれているが、決して批判的な内容になっていない。2016年の大統領選挙についても最後にちょっと言及されるくらい(クリストファー・ロイドが「私は過去を変えるためにやってきた!」と登場するのは笑ったが)で、風刺としてのパンチは弱い。これ例によって4日間という短期間で製作されたそうだが、脚本がよく練られてないような。「iSteve」もそうだったけど、短編だったら面白いものを無理に長尺にしなくても良かったんじゃないかとは思う。

そして出演陣ですが、誰がトランプを演じたか、上の写真で分かりますか?実はジョニー・デップだそうな。なんで彼がこんな役をやってるのかわからないけど、まあ「Funny or Die」って昔から結構な有名人にバカな役やらせてたからなあ。これも80年代テイスト満載の主題歌をケニー・ロギンスが歌ってるし。そしてジョニー・デップはすごく熱演してていいですよ。最近は出演作が当たってないとか言われてるけど、やはり演技が上手いよね。他にもアルフレッド・モリーナとかロン・ハワード、ヘンリー・ウィンクラー、パットン・オズワルドなどが出演してます。

面白い作品かというとそうではないものの、時事ネタをジョニー・デップが体を張って演じているというのをタダで観られるということに文句をつけてはいけませんね。

「BONE TOMAHAWK」鑑賞

Bone Tomahawk
新人監督によるホラー・ウェスタン。

舞台となるのは西部開拓時代の小さな町。町に流れ着いたならず者の足を保安官が撃ったことで、女医が保安官の事務所に呼ばれてならず者の治療をすることとなる。しかし翌朝、ならず者と女医、そして保安官の助手の姿は消えていた。現場に残された矢から、彼らを誘拐したのは洞穴に住む人食いの原住民であることを知った保安官は、老人の保安官補佐、足を骨折している女医の夫、そして女たらしだが銃の腕は確かな男性とともに、女医たちを救出するために荒野へと向かうのだが…というあらすじ。

原住民(いわゆるアメリカン・インディアンとは違うという説明がされており、穴居人みたいな存在)にさらわれた女性を救いに行く男たち、なんて設定は「捜索者」みたいな骨太なウェスタンを期待してしまうが、実際はもっと「ヒルズ・ハブ・アイズ」みたいなグロ系のホラーであった。女医の夫の足の傷がどんどん目も当てられない状態になっていくほか、えげつない人体破壊の描写がいろいろ出てくるぞ。洞窟にいる敵と戦うあたりは「カウボーイ&エイリアン」に似ているが、あれをもっとR指定にしたような感じ。白塗りの人食い穴居人が怖いのよ。

低予算映画ながらキャストは豪華で、主演は「ヘイトフル・エイト」の格好そのまんまのカート・ラッセル。でもストーリー的においしい役は女医の夫を演じるパトリック・ウィルソンがとっちゃってます。あとはマシュー・フォックスやデビッド・アークエットなどなど。またクレジット見るまで気づかなかったけど、懐かしのショーン・ヤングがちょっとだけ出てたりします。

あまり個人的には好きなジャンルではないけど、いろいろ高い評価を得ているようだし、監督のS・クレイグ・ザーラーって今後も活躍してくんじゃないでしょうか。とりあえず正統派のウェスタンを期待してはいけないよ。

「オデッセイ」鑑賞

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原作は読んでない。公開されたばかりなので感想を簡潔に:

・邦題が例によってダサいと叩かれている作品だが、冒頭に流れる製作会社のTSGエンターテイメントのモーションロゴが奇しくもオデッセウスなわけで、題名もこれにあやかった…わけではないよなあ、やっぱり。

・冒頭からアクションが始まり、主人公とNASAの人々がプロフェッショナルとして次々と難題を解決していくさまがテンポ良く描かれ、2時間20分以上の長尺ながら飽きさせない娯楽大作になっている。不屈の主人公もさることながら、地球で策を練るNASAのクルーがカッコよかったな。結束してないから次々とやられてった「プロメテウス」のクルーとは大違いで。ショーン・ビーンさえも最後まで生き残ってますからね。

・でも個人的には「プロメテウス」も「悪の法則」も全然オッケーの人なので、これでリドリー・スコットが調子を取り戻したとは特に思わないですが、彼にとっては久々の大ヒット娯楽大作なわけで、今後の企画(たくさんある)にも期待できそうではないですか。

・天才科学者を演じることで知られるマット・デーモンがまた天才科学者を演じていて、じゃあ天才科学者に見えるかというと全くそうではないのだが、まあ今回はフィジカルさが求められる役だったので良しとしましょう。地球のNASAおよび宇宙船のクルーの数がずいぶん多かったが、各人がきちんと活躍する場面があったのも巧みであった。コメディ畑のクリスティン・ウィッグやドナルド・グローバーなんかも真面目な役をやってて上手かったかと。

・本国ではキウェテル・イジョフォーの役が原作ではアジア人だったのに黒人に代わったことを非難する声もあるようだけど、アジア系のベネディクト・ウォン演じるエンジニアが活躍してたし別にいいんじゃね?中国政府も大活躍だったし。

・サントラは劇中でヒドいと言われるための曲が使われているので確かにヒドいものの、デビッド・ボウイの「スターマン」が流れるところはグっときましたね。

・科学的考証は、そもそも火星であんな激しい嵐って起きないんじゃないかという件は原作者も承知してるらしいが、まあ大目に見るべきかと。でも火星の低重力の描写はきちんとされるべきだったと思うが。あと酸素をどうやって作ったかという説明ってあったっけ?あとNASAってあそこまで情報開示が徹底してるのか?もし火星人が発見されても、24時間後にはその情報が自動的に発表されるわけ?

・主人公たちがあまりにもグイグイと難問を解決していくので、逆にメリハリに欠けてる気もしたので、もう一度くらい主人公が窮地に陥っても良いような気がしたが(原作ではあるらしい)、贅沢な注文ですかね。万人が楽しめる作品かと。

「CARTEL LAND」鑑賞

Cartel Land
今度のアカデミー賞にノミネートされてるドキュメンタリー。

メキシコの麻薬カルテルに対して、法の手を借りずに自分たちで対処することにした人々を追ったもので、アメリカのアリゾナではティム・ホーリーという男性が、メキシコではホセ・ミレレスという医師がそれぞれ自警団を結成し、カルテルの撲滅および麻薬の密輸の阻止のために活動するさまが紹介されていく。

ホーリーは崩壊家庭の出身で、自らも酒とドラッグに溺れていたが子供ができたことで更生し、きちんと職に就こうとするもののメキシコからの不法移民に職をとられ、やがて彼らが移民した背景にはカルテルの横暴があることに気づき、国境を守るために自警団を結成したというもの。決してレイシストのようには描かれていないし、夜中に荒野をパトロールしてたりするものの、カルテルのギャングに遭遇するわけでもなく、彼の行動にどこまで効果があるのかは微妙なところだったな。

対してメキシコのミレレスたちの状況は遥かに深刻で、麻薬カルテル(なぜか「テンプル騎士団」と名乗っている)が地元のビジネスを牛耳り、みかじめ料を払えない者は幼い子供も含めて一家皆殺しにされるという環境のなか、何もしてくれない政府を頼らずにミレレスたちは銃を手にして、ギャングたちと激しい銃撃戦を繰りひろげていく。捕まったギャングのメンバーが「叔父さんの仇だ!」とか言われて頭をボコボコ殴られているのが印象的であった。

また麻薬を製造しているカルテルのメンバーへのインタビューも行われているが、メンバーが自警団のなかに潜入しているとか、カルテルと政府がズブズブだとか、しまいには自警団の活動資金はカルテルが出しているなどといった、メキシコの深い闇を示唆するような話が語られていく。ミレレスたちの自警団も市民の人気を集めていく一方で政府には疎んじられ、ギャングなのかどうか不明な人々を拷問したり、仲間割れをしたりするほか、ミレレスも決して公明正大な人間ではないところが映されていき、最後に皮肉な結末を迎えることになる。

この作品の評価って概ね「アメリカ側のシーンって不要じゃね?」というもので、確かに命がけで銃撃戦を繰り広げてる自警団と、山のなかをうろついてる連中を同等に比べるのは無理があるかな。とはいえメキシコのシーンだけあればいい、というわけでもないので難しいところである。アメリカとメキシコの対比という点では「皆殺しのバラッド」のほうが優れてたかと。