this-is-us-season-1
第1話が高い評価を受けているNBCの新シリーズ。確かに面白かった。

話の主人公となるのは5人の男女で、肥満に悩む女性と、その双子の弟で役者の仕事に疑問を抱いている男性、自分を赤ん坊のときに見捨てた父親を見つけて対面する黒人男性、そして子供の出産のために病院へ運び込まれる夫婦。彼らはみな同じ日に36歳の誕生日を迎えており、それぞれの悩みを抱えながらも生きていこうとする姿が描かれていく。

5人(というか2組と1人)の人生は絡み合うようで全く絡み合わずに話が進んでいくわけだが、誕生日が同じということでスピリチュアルなつながりがあった、みたいなティム・クリングあたりが考えそうな展開になるんじゃないかと懸念してたんですね。そしたら全く違って、まるで予想していなかった、しかし完全に腑に落ちる事実が明かされて彼らのつながりが最後に明らかになり、「おおっ!」と感心してしまいましたよ。

監督と脚本は「ラブ・アゲイン」の人たち。出演者はマンディ・ムーアを除けば殆ど知らない人たちだが、それが登場人物の一般人っぽさに貢献しているかと。

問題は第1話で完璧にオチをつけてしまったことで、じゃあこの後の展開がどうなるかがよく分からないのですね。家族ドラマなのかラブストーリーなのか、どういう方向に話は進んでいくのか。あまり奇をてらった展開も望めないだろうし。

でも何にせよ第1話はとてもよくできた短編映画を見ているようで楽しめましたよ。小説でもああいったオチはうまく描けないんじゃないだろうか。映像の力をフルに生かした内容になっているというか。本国での人気もこれからどうなるか分からないし、日本でも放送されるかは全く不明だけど、機会があれば第1話は見ておく価値がある作品。

Designated Survivor, Season 1
ABCの新シリーズ。

ワシントンDCで住宅都市開発長官を務めるトム・カークマンは温厚な性格で出世欲もなく、弁護士の妻にそれを嘆かれるほどだった。自分が提案した案件についても大統領の教書演説から省かれ、おまけにモントリオールへの左遷を命じられてしまう。しかしその晩の教書演説には出席せずに、有事に備えて一人で別のところで待機している役目「デジグネイテッド・サバイバー」に彼は任命される。そして教書演説は何事もなく進むかのように思われたが、何者かが仕掛けた爆弾によって議会議事堂が大爆発を起こし、大統領をはじめとするすべての議員たちが命を落とすという大惨事が発生してしまう。この混乱のなか、唯一残った議員としてトムはアメリカ合衆国大統領に任命されることとなる。明らかに経験不足の彼に不満を抱くホワイトハウスのスタッフもいるなか、トムは大統領として事態の沈静化を図るのだったが…というあらすじ。

新米の大統領が国を治めようとするなか、いったい何者が爆弾をしかけたのかという謎解きが進行し、さらにはなぜトムがデジグネイテッド・サバイバーに任命されたのか?という謎が絡んでくる政治スリラー。今後はこれらの要素がどう絡み合ってくるかによって、話の面白さが左右されるだろうな。トムは学者肌の穏健な人物として描かれているものの、テロを受けて不穏な動きを見せはじめたイランに対して早速武力行使をチラつかせるあたり、大統領に求められているのってそういうことなんですかね。それでも彼の穏便さに不満を抱いたタカ派の将軍がクーデターを示唆したりして、いろいろドロドロした展開が望めそうです。

「これは9/11以来の規模のテロだ」というセリフもあるけど、大統領と議員みんなが殺されたらそれ以上のテロだよなあ。その割にはワシントンDCの道路とかが比較的落ち着いているし、ナイトクラブがそのまま開いているあたりはご愛嬌。ホワイトハウスの危機管理センターの描写とかはよく出来てますよ。

主人公のトムを演じるのがキーファー・サザーランド。かつてはアメリカ本土が核攻撃されようともきっちり24時間でカタをつけていた彼だが、今回は急な展開に困惑する優さ男を好演している。彼よりも気の強そうな妻を演じるのがナターシャ・マケルホーンで、事故現場で調査にあたるFBIエージェントにマギーQ、大統領のスピーチライターにカル・ペンと、結構豪華なキャストが揃っている。カル・ペンは一時期役者業を休んでホワイトハウスで働いていたこともあり、シリーズのコンサルタントでもあるのだとか。

今後はサスペンスをどれだけ飽きずに継続させられるかが人気のカギになってくるだろうけど、第1話を見た限りではかなり期待できるシリーズになるかもしれない。

インド
久し振りに紀行文を。夏休みはモンゴルかドバイを検討していたがスケジュールや予算などの都合でインドにすることに。デリー・ジャイプール・アグラを周回する初心者向け?のツアーを申し込む。今回はじめて海外旅行するにあたってビザを申請することになったが、いろいろ面倒くさいですねあれ。書き直しが生じて申請所に2度足を運ぶことになったよ。

飛行機の時間がおねむの時間と重なってたので機内では「ジャングル・ブック」だけを観る。あの話のキモって、(ネタバレ)最後にモーグリが人間の世界に帰っていくことなのではないのか?ああいう終わり方でいいの?

デリーに深夜について次の日に観光。最初に行ったのがでっかい塔のクトゥブ・ミナール。
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70メートルほどの高さで、当初はもっと高かったのが落雷などでいまの高さになったのだとか、中には入れないものの、尖塔などが好きなので満足。

それから行ったフユマーン廟もまあまあ。ツアーの一環として輪タクにも乗りましたが、明らかに体力不足な初老のオッサンが立ち漕ぎしながら渋滞のなかを走るものだから、下手な遊園地のアトラクションよりもずっと身の危険を感じたぞ。インドってどうも短い距離なら道路での逆走が許容されているらしく、他の車ばかりか自分たちの乗ったバスも逆走を始めた時は血の気が引きましたね。

昼食はカレー。つうか旅行中はずっとカレー。美味くも不味くもないのだけど、一日中ずっと食べてるとさすがに飽きました。サモサが食べたかったけど出てこなかったな。現地では大丈夫で帰国したとたんに腹を壊したけど、食事のせいなのか疲労のせいなのかは不明。

あとはバスのなかからインド門などを眺めながらジャイプールに移動。高速道路はコンテナを積んだトラックで渋滞していて、たまに路肩に出て悪路を走りながら(ここにも逆走車あり)ひたすら道を走るという、ちょっと「デス・ロード」っぽい展開でした。

ジャイプールはホテルがいちばん綺麗だったな。次の日はアンベール城に向かい、象に乗って丘の上へと運ばれることに。象に触れたり乗ったりするのって長年の夢でしたが、よく考えてみれば人間に搾取されている象に乗っかっているわけで、微妙な罪悪感を抱いてしまった。そして象の背中は揺れる揺れる。1 (1)
アンベール城は鏡や宝石で飾られた部屋などもあって美しかった。インドはどの城や宮殿もやたら広く、王族がふんだんな財産と人力をかけて建設したことがよく伺える。この次に行った風の宮殿も広くて見晴らしが良かったですよ。

あとは王が作った天文施設のジャンタルマンタル。どことなくJG・バラードの小説を彷彿させるような幾何学的な建造物が立ち並ぶ土地のなかには20秒刻みで時を計れる日時計なんてのもあって圧巻でした。でも当然みんな太陽が出てないと使えないわけで、雨季などでは無用の長物になるんだろうか。
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それからまた長時間バスに乗ってアグラへ。途中でファテープル・シークリーに寄る。ここも山の上に建設されたにしては広大な宮殿でした。

なお格安ツアーなのでショッピングの立ち寄りが何度か設けられていて、個人的には宝石とか大理石とか服飾に興味がないのでちょっとしんどかったけど、他のツアー客、特に女性はいろいろ買われてましたね。今回は発展途上国(失礼)へのツアーのせいか、俺のように一人参加している客が比較的多かったような。それ以外の客も多くは旅慣れている感じで、そうでなくて空気の読めない人が一人でもいるとね、みんなの士気がどっと下がりますので、みなさんもツアーに参加するときは気配りしましょう。

3日目はいよいよタージマハール観光。あいにく片側が修復中だったが、逆に足場が組まれてることで建物のスケールがわかって良かったかも。内部の霊廟は写真撮影禁止のはずなのだがみんな平気でフラッシュ焚いてまして、警備員が激昂してました。大理石の飾りも美しく、やはり見事な建物でしたよ。
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最後はアグラ城に。ここもデカい。インド軍が使っていて建物の4分の3は入れないというにもかかわらずデカかった。タージマハールを立てた王様が息子によってここに幽閉され、タージマハールを眺めながら死んでいった、というのが歴史を感じさせますね。

それからまたバスに乗ってデリー空港へ。汗と砂で汚れてたので、成田空港よりも高くついたけどプレミアムラウンジでシャワーを浴びてリフレッシュ。おかげで帰りのフライトはよく眠れました。

3泊5日で1日6時間以上はバスに乗っているという強行軍だったので、悠久の時を感じる暇もない忙しい旅だったけど、それでもいい経験にはなりましたね。ただしクセのある国なので、海外旅行の初心者向けではないかも。物乞いも多いしゴミと瓦礫が散乱しているし、経済的な発展が見込まれているとはいえ、まだまだ課題が多い国ではあるな、と思ってしまう。学校に行ってるべき幼い子供が目の前で芸を披露し始めて小銭をねだったりするのを見るとね、どうすればいいのか困惑してしまうのよ。とはいえ思ったよりも危険は感じなくて、むしろ人々は陽気で親切な印象を受けました。空港のトイレで歯を磨いてたら掃除の人がペーパータオル持ってきてくれたし。いろんな国を訪れるたびに感じますけどね、結局いちばん印象に残るのって自然や建物でなく、その国の人にどう接されたですからね。優しく人に対応してもらえればその国に良い印象を抱くようになるし、その逆もまたしかり。というわけで日本に来ている観光客にもみなさん優しく対応してあげましょう。

The Neon Demon
ニコラス・ウィンディング・レフンの新作。タイトルにしっかりと「NWR」のロゴを入れてくるあたり、なんか自分をブランド化しようとしてるのかなあ。

両親を亡くし若干16歳でジョージアからロサンゼルスにやってきたジェシーは、モデル業で生計を立てようとして初のフォトセッションでメーク係のルビーと友人になる。彼女の美貌は皆の注目するところとなり、年を19歳と偽ってモデル・エージェンシーに登録した彼女は、著名な写真家に抜擢され、さらに他のモデルたちを差し置いて有名なファッションデザイナーのお気に入りとなる。しかしそんな彼女の急な成功を、周囲のベテラン・モデルたちは妬むようになり…というあらすじ。

映像はきらびやかで綺麗なおねーさんたちもたくさん出てくるけど、エログロ描写のあるスリラーですからね。デートとかで観に行かないほうがいいんじゃないかと。映像は「オンリー・ゴッド」同様に派手なネオン調のライトがふんだんに使われていて美しいのだけど、ストーリーは華麗なモデル業界の裏における女性たちの確執という、かなり使い古されたものであることは否めない。主人公が写真家に「服を脱げ」と言われる展開など、どこの少女漫画だよ…。レフンはエクスプロイテーション映画好きを公言してるので、意図的にトラッシュな内容にしたのかもしれないのだが、なんか映像美に比べて中身がスカスカな感じがしてしまった。

いちおう「美しさはそれ自体が強さである」というテーマがあるのだけど、「生まれながらにして持った自然の美しさこそ最強。整形手術などによって得た人工の美しさはダメ」という主張を登場人物がつらつらと語っていて、自然食じゃないんだからもうちょっとヒネリがあっても良かったんじゃないかと思う。

ジェシーを演じるのはエル・ファニング。こないだ「トランボ」で清純な娘役を演じているのを観たばかりなので、あれとは大きく異なる役を演じているのは面白かったですね。ただ皆が羨む美貌の持ち主かというと…?個人的にはルビー役のジェナ・マローンの方がタイプに感じました。あとはレフンのお気に入りのクリスティーナ・ヘンドリックスがちょっと出てるほか、主人公が泊まっているモーテルの横柄な管理人をキアヌ・リーブスが演じているのだが、やはり怒鳴る役って彼に似合ってないのよ。もう変に冒険せずにクールな役に徹したほうがいいのでは。音楽は例によってクリフ・マルティネスが担当していて、LAが舞台なせいか「ドライブ」以上にヴァンゲリスの「ブレードランナー」っぽい雰囲気になっていました。

監督の趣味が高じて作られてしまった作品なんでしょうな。こういうのが好きな人もいることはいるでしょうが、個人的にはピンと来なかった。

Atlanta, Season 1
FXの新番組。舞台は当然ながらアトランタ。

アーネスト(通称アーン)はプリンストン大学に進学しながらもドロップアウトしてアトランタに戻ってきた若者。彼は店頭勧誘員をしてギリギリの生活費で暮らし、実家にも住まわせてもらえず、赤ん坊がいるのにその母親に愛想をつかされて半同棲するような暮らしを続けていた。そんなある日、いとこがペーパー・ボーイという名前のラッパーとして有名になってきていることを知り、彼のマネージャーになることを直訴する。最初はペーパー・ボーイに軽くあしらわれたアーンだが、なけなしの金を使ってラジオでペーパー・ボーイの曲をかけてもらったことで彼に気に入られるのだが、その直後にペーパー・ボーイが銃撃事件を起こしてしまい…というあらすじ。

最近はコメディに力を入れてるFXだが、こないだの「Baskets」に続いてルイ・CKが製作した「Better Things」という番組も始まりまして、どちらも「Louie」に似た、ダメ男(女)の不運な話が続くダウナーな内容になっていて、正直なところコメディといっていいのかかなり微妙な内容なんだよな。この「ATLANTA」も「Louie」のようにダメ男の日常を描いたものになっていて、あるいはNetflixの「Master of None」と比較する声もあるみたい。純真な主人公が世知辛い世の中でどうにか生きていこうとする物語というか。

だから抱腹絶倒できるようなコメディかというと全くなくて、登場人物の哀しくも滑稽な生き様が描かれるドラマといった感じ。でもダメ男が主人公の作品って個人的には好きなので、コメディではないと割り切って観れば普通に楽しめる番組であった。自分が成功できなかったことを、いとこに託すというか投影している主人公の悲喜劇がうまく表されているというか。ちょっと幻想的なシーンもちらほらあって、製作者たちは「ラップ版ツイン・ピークス」とか呼んでいるらしいが、まああそこまで奇妙にはならないでしょう。

主演・原案・脚本は「コミュニテイ」のドナルド・グローバー。「オデッセイ」のリッチ・パーネル・マヌーバーの彼ですね。彼は「チャイルディッシュ・ガンビーノ」名義でラッパーとしても活躍してるので、こういう音楽シーンを舞台にした物語には似合ってるんでしょう。これアトランタのラップ・シーンとか知ってるともっと楽しめるのかな。共演者にはイザイア・ウィットロック・Jrが出ていた。意外と彼はいろんな番組で見かけるな。多くのエピソードをヒロ・ムライという日本出身の監督が演出していて、ドローンで撮ったらしき上空からの映像が効果的に使われていた。

題材などで観る人を選ぶ番組かもしれないが、主人公が今後どうなっていくんだろう、という気にさせてくれる番組ではありましたよ。やはり俺はダメ男が主人公の作品には共感せざるを得ないのです。