「ボーダーライン」「最後の追跡」といった無骨なサスペンス映画の脚本家で、いま公開中の「ウインド・リバー」(おれ未見)の監督でもあるテイラー・シェリダンが脚本・監督を手掛けた、パラマウント・ネットワークの新シリーズ。

舞台はその名のごとく、イエローストーン国立公園に接したモンタナの街。そこで家族代々、莫大な広さの牧場を運営してきたダットン家の長であるジョン・ダットンは子供たちとともに土地を守ろうとするものの、その土地の開発を狙っている資産家や、保留地に住むインディアン(ネイティブ・アメリカンね)たちとの利権争い、街で起きる犯罪などに頭を悩ませていた。さらに彼の子供たちも決して仲が良いとはいえず…というあらすじ。

第1話は90分の長尺だが、いろんなキャラクターが登場して好き勝手に行動しているだけで、意外と話の方向性が定まらない内容であった。ジョン・ダットンは家畜組合の会長ということらしいが、街の警察をヘリコプターに乗って指揮していたりして、かなり偉い警察官という設定なのかな?キャラクターの背景がきちんと語られないまま話が進んでいくので、内容をつかむのがしんどかったよ。

早くして妻を亡くしたジョンには3人の息子とひとりの娘がいて、息子のひとりはジョンとともに家畜の世話などをして、もうひとりは弁護士として土地の管理をしている。最後のひとりは家族と疎遠になって、インディアン保留地で妻子とともに住んでいるという設定。娘は土地のビジネス面の管理をしているみたい。これに加えてジョンの土地を狙う資産家や、インディアンの利権を拡大させようとする酋長などが登場する。

上にも書いたようにね、どういう番組にしたいのかいまいち方向性がわからんのよな。テイラー・シェリダンの他の作品のようなハードなサスペンスになるかと思いきや、メロドラマみたいな要素もふんだんにあるし、警察ドラマでも権力争いのドラマでもないし。広大な田舎を舞台にしたメロドラマっぽいサスペンス、ということでドン・ジョンソンが数年前に主演した「Blood & Oil」をどことなく連想したけど、あれ1シーズンで打ち切りになったしな。

ジョン・ダットンを演じるのはこれがTVシリーズ初出演となるケビン・コスナー。他にもウェス・ベントリーとかルーク・グライムス、・ライリー(例によって精神的に不安定な娘の役)、ダニー・ヒューストンなどが出演しているほか、第1話にはジル・ヘネシーがゲスト出演していた。

出演は豪華なんだけどね、やはり内容がメロドラマっぽいためかアメリカでの評判はイマイチのようで。テイラー・シェリダンって最近は日本でも高く評価されているようだけど、彼が関わっているからといってすべてが傑作になるとは限らないようで。(つうか何故「ウインド・リバー」は彼の初監督作品であるように宣伝されてるんだろう?2011年に「VILE」という映画を監督してない?)


公開されたばかりなので感想をざっと。以降はネタバレ注意。

・どんどん年をとってる主役が体を張ったアクションを披露するのが売りになってきたあたり、ジャッキー・チェンの一連の作品と同じようなノリになってきた感がある。スタントなしでアクションに挑むトム君はすごいものの、ジャッキーの時代と違って「これグリーンスクリーン使って撮影してるんじゃね?」とふと思ってしまうのが損なところである。

・んで観客はそのトム君のアクションを期待して観に来ているわけで、複雑なプロットとかいらないと思うのだがなあ。俺が年取っただけなのかもしれませんが、誰がラークで、ソロモン・レーンとどう関わってて、ホワイト・ウィドウはどういう役割なんだっけ、と30分くらいしたら分からなくなってました。

・誰が裏切り者かはっきり分かるシーンを前に出しておきながら、トム君に容疑がかけられるシーンに時間をかけるのも蛇足だろう。クリストファー・マッカリーって脚本家出身のせいかなんか話が回りくどいのよな。実際に起きないシーンを夢オチで描くのも邪道では。

・今回は珍しく違っていたものの、このシリーズって悪役の印象が弱いので、ソロモン・レーンが前作に出ていたことをすっかり忘れておりました。あなた誰だっけ?という感じで。長らく主人公のロマンス要素を阻害していたヒロインの問題も、いちおう今回で解決したことになるのかな?あれ見ると前作の設定を引きずらずに、新作ごとにヒロインを替えている007シリーズの割り切り方のメリットがよく分かりますね。

・キャストはまあ前作と大半が一緒だが、いまいち活躍してなかったジェレミ・レナーが去り、ヘンリー・カヴィルが強い相手役として加わったのが良いアクセントになっているかと。「ジャスティス・リーグ」では大金かけてCG処理してヒゲを取り除いてましたが、同じシーンでヒゲの長さが変わっているのを観ると、こっちをCG処理すれば良かったんじゃね?と思うのです。

・観ていていちばん気になったのが、映像にレンズフレアがやたら多用されてることで、映画館のスクリーンに不備があるのかと一瞬思いましたよ。セリフを話している人の顔にも平気で光のモヤモヤがかかってるのが目障りでして。これプロデューサーのJJエイブラムスが自分の撮影監督を送り込んできたのかと思ったが、撮影したロブ・ハーディって「エクスマキナ」の人だったのか。あちらではすごく美しいショットを撮っていたのに、なんでこっちではモヤモヤとした映像になったのだろう。

体を張ったアクション・シーンは見応えがあるし、手に汗握る展開も多いのでチケット代ぶんの価値は十分にある作品であるのですよ。ただもうちょっと簡潔な内容にしても良かったんじゃないかと。特に「インクレディブル・ファミリー」のスパっとしたアクション展開とプロットを観たあとでは、ブラッド・バードが監督した「ゴースト・プロトコル」の域には達していないな、と思わざるを得ないのです。


SHOWTIMEで始まった、サシャ・バロン・コーエンの新番組。ジャーナリストや活動家に変装したコーエンが、それを知らない政治家などにトンデモないインタビューをして彼らの本音をさらけ出すという、要するにイギリスで彼がやってた「Da Ali G Show(「ボラット」などはここから生まれた)」のアメリカ版ですかね。第1話で行われるインタビューは以下の4つ:

・保守系ジャーナリストに扮して、民主党のバーニー・サンダース議員にインタビュー。「国民の1%が富を独占していると言いますが、残りの99%がその1%に加わればいいんじゃないですか?そうすれば199%になりますよ?」とか主張するものの、バーニーは根が真面目なのであまり動じず。

・リベラル系の知識人に扮して、トランプ支持者の夫婦と夕食。ニューエイジ風の子育てについて自慢して夫婦を絶句させるものの、あまりオチはなし。

・刑務所に21年いたというアーティストに扮して、アートギャラリーのコンサルタントと面会。収監されているときに自分のウンコで描いたというアートを披露し、褒められる。著名なアーティストたちからもらった陰毛でできたという絵筆を持ち出し、彼女からも1本もらう。

・イスラエルの軍人に扮し、銃の推進派と会話。学校での銃撃事件に対抗して教師を武装すべきだというNRAの案は手ぬるいから、3歳から16歳の子供たちに銃を持たせるべきだと提案し、一緒にコマーシャルを作ったばかりか、共和党の議員などからも賛同のコメントをもらう。

とまあ、リベラルも保守も両方カモにしている感じですかね。最初の2つは不発で、残りの2つが面白かったかな。コーエンは日本未公開の「The Brothers Grimsby」でドナルド・トランプ(大統領選に出馬したころ)がエイズになる、というネタをやってたし、アメリカ政治の風刺をやるのは規定路線といったところか。

このあとはサラ・ペイリンやディック・チェイニーといった著名な政治家なども出てくるらしいが、まあ当然ながらインタビューされる人たちはダマされたわけで、あとになって相手がコーエンだと知って激怒する人もいるらしい。ペイリンは「傷病軍人のふりをして寄ってきたのが許せない」とか言ってる一方で、コーエン側はそんな格好はしていないと主張しており、さてどうなるんでしょ。あと第1話の銃の推進派の人が「実はダマされてることに気づいてたけど、自分たちの主張を伝えるために番組に出てやったぜ!」みたいな言い訳をしているらしいが、番組を観る限りでは単なるアホにしか見えなかったりする。

番組のスタイル的に、イギリスの伝説的な風刺番組「BRASS EYE」と比較する記事もあるみたいだけど、あそこまでの勢いはない感じ。とはいえ変装してアクセントを巧みに操るコーエンの才能は見上げたものだし、インタビュー中に正体がバレたりしないかと結構ハラハラします。

内容にムラがある出来ではあるものの、いまの世の中、こういった番組があってしかるべきなんだろう。政権から訴えられるほどの内容になることに期待。


ジョー・ケリー(ストーリー)とケン・ニイムラ(アート)によるイメージ・コミックスの同名作品(邦訳あり)を映画化したもの。ジョー・ケリーって90年台半ばにマーベルが破産申請でゴタゴタしてるときに作品をあれこれ執筆してた人で、なんかマーベルのイエスマンという印象があってそんなに好きではないのですが(これ偏見だろうし、デッドプールのキャラ設定に大きな貢献をしたんだろうけど)、この作品は彼のクリエイターオウンド作品で、彼の代表作といっていいんじゃないでしょうか。

小さな海辺の町に住むバーバラは、いつか町を巨人が襲ってくると信じ、彼らを撃退する罠の準備に専念している不思議な女の子。その町に引っ越してきた少女ソフィアや、学校のモレー先生などは彼女と仲良くしようとするものの、バーバラはなかなかうち解けようとしない。学校でも家庭でも孤立していくバーバラだったが、その一方で彼女のみなす「巨人の前兆」は増えていき…というあらすじ。

脚本をケリー自身が手がけているので、原作に忠実な映画化ということになるのかな。ただし眼鏡っ娘でウサギ耳をつけたバーバラは原作だともっと芯の強いタイプに描かれていたし、
ソフィアもミッドティーンくらいの少女だったけど、映画版ではバーバラはもっとファンタジー少女っぽくて、ソフィアはもっと幼い感じになっている。これ製作をクリス・コロンバスがやっていて、「ハリー・ポッター」みたいなお子様ファンタジーにしたかったのかなあ。

ただね、全体的に話がまどろっこしいのよ。周囲の善意にもかかわらずバーバラがウジウジしている描写がずっと続いて、肝心の巨人との対決についても何か拍子抜けでスッキリせず。原作の勢いがないというか、話のメリハリに欠けるのよ。最後で明らかにされるバーバラが心の葛藤を抱えている理由についても、もっと伏線を貼っといてよかったんじゃないかとか、彼女にとって巨人を倒すということは何なのかとか、もうちょっと深く描いていれば面白い作品になったと思うのだがなあ。監督のアンダース・ウォルターってこれが長編デビュー作らしく、なんか力量不足だなという感は否めない。

バーバラを演じるのはマディソン・ウルフ。ほかにイモジェン・プーツとか、ゾーイ・サルダナなど。撮影時15歳だったウルフをはじめ、役者の演技はそんなに悪くない。なんか疲れてる学校の先生役にソーイ・サルダナは似合うなあと。あと一瞬だけノエル・クラークが出ています。

もっと主人公の内面に迫った話にしていれば、いろいろ改善されたはずなのがちょっと残念な作品。


ついに始まりましたよ「The League of Extraordinary Gentlemen」の新シリーズ。「LOEG」の最終シリーズとなるばかりか、アラン・ムーアとケヴィン・オニールの作者ふたりにとっても最後のコミック作品となることが告知されている作品だが、少なくともムーア御大は過去に何度も引退をチラつかせてるので、あんまり真剣にとらえないほうがいいかも。また「Necronomicon」のときのように、税金を払う必要が出てきたらコミック書いたりするんじゃないかと…まあいいや。

全6話のシリーズで、今までの「LOEG」って第1話はプロローグ的な、比較的ストーリー展開が少ないものだったようなきがするが、今回は過去のキャラクターがいろいろ出てきて話にギアが入っておりまして、密度の高いストーリー展開が今後も期待できそうなこってす。以降はネタバレ注意。著作権の関係で名前が変わっているキャラクターは、便宜上元になったキャラクター名で記します。

・まずは昨年亡くなった、BEANO誌の「ミニー・ザ・ミンクス」や「バッシュ・ストリート・キッズ(読め!)」のクリエーターとして知られるレオ・バクセンデールに捧げる追悼コラムみたいなのが冒頭についてます。彼の功績を讃えるとともに、いかに彼が出版社によって搾取されたかを綴ってるのがムーアらしいなと。

・プロローグが3つ。一つは「2009」の終わりからそのまま続き、アフリカでアラン・クオーターメインを葬ったミナ・マーレイとオーランドー(女性形)とエマ・ピールが若返りの泉に赴き、エマが「Black Dossier」のころの年齢に若返ります。

・2つ目は白黒のSFコミック風で、火星からの勢力によって荒廃させられた2996年の地球(?)においてレジスタンスを続ける男女のスーパーヒーローがタイムマシンを奪還し、来たる大災害を警告するために女性のほうが1958年の世界にタイムスリップするというもの。これが後述のセブン・スターズに関わってくるのかな。

・最後のプロローグは全体主義が続く2009年のイギリス。エマ・ピールがミナたちと失踪したのを受けて、MI-5の新しいトップに「Black Dossier」のジェームズ・ボンドが「M」として着任します。

・一方でロンドンではミナが60年代に所属していたスーパーヒーロー・グループ「セブン・スターズ」の元メンバーであるマーズマンとサテンが、2996年の災害を防ぐために他のメンバーを探そうとします。サテンが実はプロローグに出てきた女性であり、タイムスリップにより長年災害の記憶を失っていた、ということらしい。なおセブン・スターズ時代のミナ・マーレイは透明人間のヒーローであり、誰も彼女の正体を知らない、というのがミソ。

・ミナたちを執念深く追うボンドこと「M」の物語は新聞連載の3コマ漫画形式で語られ、映画の歴代のジェームズ・ボンドが揃った「Jシリーズ(「カジノ・ロワイヤル」のウディ・アレンまでいる!」という精鋭のエージェントをひきつれ、プッシー・ガロアを尋問して得た情報によってアフリカに向かいます。そこで彼は若返りの泉を発見し、「Black Dossier」の頃の若さに戻ります。他の者が泉を使用できないように爆破したあと、ミナたちの探索を続けるのでした。

・そして追われる立場になったミナたちは、キャプテン・ネモの子孫であるジャックに助けを求めようと、原子力潜水艦スティングレイを奪い、さまざまな国をめぐって情報を得たのちにジャックの住む島へと向かいます。「イエロー・サブマリン」のペパー・ランドの廃墟なども出てくるぞ。しかし島の目前で、彼女たちは謎の巨人に捕まってしまい…。

・巻末にあるのはいつもの小説ではなく、セブン・スターズを主人公にした白黒のコミック。ヒーローたちの会合の形式をとりつつ、ミナが透明ヒーローになった由来や、謎の敵の登場、マーズマンの過去などが語られます。そしてその裏では、アメリカをベースにしたセブン・スターズに対抗するため、イギリス政府は独自のヒーローチーム「ヴィクトリー・ヴァンガード」を結成させるために暗躍していたのだった…。

とまあ、冒険活劇やらSFやらスーパーヒーローと話は盛りだくさんだし、「Vol.3」と「Black Dossier」のストーリーが集大成を迎える流れで期待は高まるばかり。「Vol.2」の火星襲撃のプロットも関係してくるのかな?「2009」では強力な助っ人を送ってきたブレイジング・ワールドのプロスペローの助けはもう期待できない、みたいな台詞も出てくるけど、シリーズの題名が「テンペスト」であることを考えると後できっと登場するのでしょう。

例によって細かいネタが散りばめられていて、元ネタが分からないものの多々あったので、そこらへんはまたジェス・ネヴィンズ氏あたりが注釈まとめてくれることに期待しましょう。第2話は9月発売だそうで、まあムーア御大のことだから刊行が遅れるんじゃないかという懸念もありますが、かなり面白いシリーズになりそうなので辛抱強く待ちましょう。