ついに始まりましたよ「The League of Extraordinary Gentlemen」の新シリーズ。「LOEG」の最終シリーズとなるばかりか、アラン・ムーアとケヴィン・オニールの作者ふたりにとっても最後のコミック作品となることが告知されている作品だが、少なくともムーア御大は過去に何度も引退をチラつかせてるので、あんまり真剣にとらえないほうがいいかも。また「Necronomicon」のときのように、税金を払う必要が出てきたらコミック書いたりするんじゃないかと…まあいいや。

全6話のシリーズで、今までの「LOEG」って第1話はプロローグ的な、比較的ストーリー展開が少ないものだったようなきがするが、今回は過去のキャラクターがいろいろ出てきて話にギアが入っておりまして、密度の高いストーリー展開が今後も期待できそうなこってす。以降はネタバレ注意。著作権の関係で名前が変わっているキャラクターは、便宜上元になったキャラクター名で記します。

・まずは昨年亡くなった、BEANO誌の「ミニー・ザ・ミンクス」や「バッシュ・ストリート・キッズ(読め!)」のクリエーターとして知られるレオ・バクセンデールに捧げる追悼コラムみたいなのが冒頭についてます。彼の功績を讃えるとともに、いかに彼が出版社によって搾取されたかを綴ってるのがムーアらしいなと。

・プロローグが3つ。一つは「2009」の終わりからそのまま続き、アフリカでアラン・クオーターメインを葬ったミナ・マーレイとオーランドー(女性形)とエマ・ピールが若返りの泉に赴き、エマが「Black Dossier」のころの年齢に若返ります。

・2つ目は白黒のSFコミック風で、火星からの勢力によって荒廃させられた2996年の地球(?)においてレジスタンスを続ける男女のスーパーヒーローがタイムマシンを奪還し、来たる大災害を警告するために女性のほうが1958年の世界にタイムスリップするというもの。これが後述のセブン・スターズに関わってくるのかな。

・最後のプロローグは全体主義が続く2009年のイギリス。エマ・ピールがミナたちと失踪したのを受けて、MI-5の新しいトップに「Black Dossier」のジェームズ・ボンドが「M」として着任します。

・一方でロンドンではミナが60年代に所属していたスーパーヒーロー・グループ「セブン・スターズ」の元メンバーであるマーズマンとサテンが、2996年の災害を防ぐために他のメンバーを探そうとします。サテンが実はプロローグに出てきた女性であり、タイムスリップにより長年災害の記憶を失っていた、ということらしい。なおセブン・スターズ時代のミナ・マーレイは透明人間のヒーローであり、誰も彼女の正体を知らない、というのがミソ。

・ミナたちを執念深く追うボンドこと「M」の物語は新聞連載の3コマ漫画形式で語られ、映画の歴代のジェームズ・ボンドが揃った「Jシリーズ(「カジノ・ロワイヤル」のウディ・アレンまでいる!」という精鋭のエージェントをひきつれ、プッシー・ガロアを尋問して得た情報によってアフリカに向かいます。そこで彼は若返りの泉を発見し、「Black Dossier」の頃の若さに戻ります。他の者が泉を使用できないように爆破したあと、ミナたちの探索を続けるのでした。

・そして追われる立場になったミナたちは、キャプテン・ネモの子孫であるジャックに助けを求めようと、原子力潜水艦スティングレイを奪い、さまざまな国をめぐって情報を得たのちにジャックの住む島へと向かいます。「イエロー・サブマリン」のペパー・ランドの廃墟なども出てくるぞ。しかし島の目前で、彼女たちは謎の巨人に捕まってしまい…。

・巻末にあるのはいつもの小説ではなく、セブン・スターズを主人公にした白黒のコミック。ヒーローたちの会合の形式をとりつつ、ミナが透明ヒーローになった由来や、謎の敵の登場、マーズマンの過去などが語られます。そしてその裏では、アメリカをベースにしたセブン・スターズに対抗するため、イギリス政府は独自のヒーローチーム「ヴィクトリー・ヴァンガード」を結成させるために暗躍していたのだった…。

とまあ、冒険活劇やらSFやらスーパーヒーローと話は盛りだくさんだし、「Vol.3」と「Black Dossier」のストーリーが集大成を迎える流れで期待は高まるばかり。「Vol.2」の火星襲撃のプロットも関係してくるのかな?「2009」では強力な助っ人を送ってきたブレイジング・ワールドのプロスペローの助けはもう期待できない、みたいな台詞も出てくるけど、シリーズの題名が「テンペスト」であることを考えると後できっと登場するのでしょう。

例によって細かいネタが散りばめられていて、元ネタが分からないものの多々あったので、そこらへんはまたジェス・ネヴィンズ氏あたりが注釈まとめてくれることに期待しましょう。第2話は9月発売だそうで、まあムーア御大のことだから刊行が遅れるんじゃないかという懸念もありますが、かなり面白いシリーズになりそうなので辛抱強く待ちましょう。


最近いちばん劇場で目にしている(ハン・ソロ、猿の惑星、スリー・ビルボードetc.)気がする役者であるウディ・ハレルソンの初監督作品。といっても舞台の演出に近いのかな。ロンドンを舞台にハレルソン本人がさまざまな不遇に見舞われ四苦八苦するさまがリアルタイムで撮影され、それが「生放送で」イギリスの映画館において上映されるという、一緒のライブビューイング的な鑑賞が行われた作品なんだそうな。いちおう世界初の試みだそうで。

ハレルソンが以前にロンドンのタクシーの灰皿を壊したために警察に追われることになった実体験を脚色したもので、ハレルソンが本人自身を演じている。舞台出演のために家族を連れてロンドンに来ていたハレルソンだったが、前夜に3人の女性と乱痴気騒ぎをやらかしたことがパパラッチされてしまい、それを知った妻は当然ながら激怒。ホテルに戻る前に頭を冷やすよう命じられる。仕方なしに時間を潰す羽目になった彼はイランの王子たちに遭遇し、彼らに連れられてナイトクラブへ向かう。そこでは旧友のオーウェン・ウィルソン(これも本人)に出会うものの、ささいなことから喧嘩となってしまう。さらにハレルソンの災難は続き、しまいには警察に追われて収監されてしまうことに…というストーリー。

ハレルソンは実物よりも(たぶん)もっとB級セレブ的な扱いをされていて、殆どの人が彼のことを知らないか、90年代の作品を覚えている程度。役者が本人を自虐的に演じるパターンですね。オーウェン・ウィルソンとの会話もウェス・アンダーソンの映画とかに関する楽屋オチっぽいものになっていて、そういうのあまり好きではないけどまあ役者ふたりが本人同士を演じるとそういう内容になるのでしょう。ハレルソンとウィルソン以外はそんなに有名な役者は出ていないが、U2のボノ(とその奥さん)が電話越しに声だけカメオ出演しているほか、終盤になってなぜかウィリー・ネルソンが登場していた。ウィリー・ネルソンとハレルソンといったら、一緒にマリファナをキメてハイになる展開でしょ、と思ったらそうでもなかったな。

ウディ・ハレルソンってそのテキサス訛りのせいか、あまり演技に幅のある役者だとは思ってなかったけど、これを観ると体を張った多様な演技ができる人だな、というのが良く分かる。一発撮り作品としては「ヴィクトリア」よりも手が込んでいるんじゃないかな、これ?車の運転手と会話しながらも移動するシーンが2回くらいあるんだが、あれ役者が本当に運転しながら移動したのだろうか?ハレルソンが車に追いかけられるシーンとか、よく一発で撮れたなと感心するところもいろいろありました(自分が観たバージョンは、生放送されたものに多少の編集が加えられてるかもしれないが)。

まあ一発撮り作品の欠点として、カットすればいいような場面もカットされておらず全体的にテンポが悪いし、単なるギミック映画と言ってしまえばそれまでなのだが、ハレルソン渾身の演技もあって以外と楽しめた1本でした。


公開されたばかりなので感想をざっと。ロン・ハワードが8割くらい撮り直したらしいので、ミラー&ロード版だったらどうなってたか、と論じるのは野暮でしょ。以降はネタバレ注意。

・前に「ローグ・ワン」もそうだったし、SW映画なのにオープニングのテキストクロールがないとか、画面のワイプがないことに不平を言うつもりはない。しかし前半ずっと画面が暗かったのは何なんだろう。戦場のシーンとか列車強盗のシーンとか、リアリズムを出すつもりならそれは失敗していると思うし、誰もSW映画にそんなものは求めてないと思うのだがなあ。後半になって明るくなったからよしとするが。

・現在進行形であるエピソード7〜8が、古参の俳優が枯渇していっているためにフランチャイズを方向展開していってジェダイやフォースなどから離れて行っているのに対し、こちらはプリクエルとして別の俳優を起用して過去の伏線回収というかプロットの補足をバンバン行えるわけで、まあオールドファンを喜ばせられる強みはあるわな。

・個人的には「ケッセルランを12パーセク」はソロがでっちあげたホラ話であってほしかったけど。観客の想像に委ねればいいことをいちいち余計に補填してくれるのが、SWプリクエルの大きなお世話ですな。

・全体の4分の1を脱出ポッド(しかも進行方向にある)が占める宇宙船って何だよ。

・ハリソン・フォードは演技が下手ながらも「不敵にニヤッと笑う」ことだけは完璧にできてた人なので、それに比べるとオールデン・エアエンライクはまだその域に達してないかな。若き頃の姿とはいえ、なんかディズニー化されているというかいい人すぎる設定なのよな。ファンの間で論議を呼んだ「先撃ち」をやったのは良かったけど。

・エミリア・クラークはなんかぷにぷにしていて、最初から貧困感がなかったような。ドナルド・グローバー演じるランド・カルリジアンよりもベスピンのヘッドセットの人の登場を期待してたのですが、出てこなかったですね。

・最後の赤い人の登場、今作が「エピソード1」よりも後の話であることを忘れていたよ。なんかスピンオフのために無理して伏線張ってるような気もするが。彼の声がアニメ版と同じになっていることも含め、アニメシリーズへの言及がずいぶん多いようですね。

前述したようにオールドファンを喜ばせるという仕事はしていて、可もなく不可もない作品といったところか。工業的にこけたことで、今後のスピンオフ展開もいろいろ見直しが入ってくるんだろうが、変なテコ入れがはいってこないことを願うばかりです。


ダコタ・ファニング主演のインディペンデント系映画。日本では9月に「500ページの夢の束」という邦題で公開予定。キノフィルムズ、作品をいろいろ買うのはいいのだけど日本公開がいろいろ遅いと思うの。以降はネタバレ注意。

ウェンディは自閉症の女の子で、オークランドの施設に暮らしていた。簡単なバイトとかはできるものの人とのコミュニケーションが苦手で、感情が高まったりするので姉の赤ん坊にも合わせてもらえない状況。そんな彼女が大好きなのは宇宙大作戦こと「スター・トレック」で、オリジナル・シリーズはおろかスピンオフ・シリーズのキャラクターなどを熟知し、周囲のオタクどもからも一目置かれる少女であった。そんな彼女はパラマウント・ピクチャーズがスター・トレックの脚本コンテストを開催していることを知り、自分が手塩にかけた500ページもの脚本を送ろうとするものの、最後の最後までこだわったために郵送できる締め切りを過ぎてしまい、仕方なく彼女はパラマウントまで脚本を手渡しに行こうと、周囲の誰にも告げずに人生初の長旅に出るのだったが…というあらすじ。

感情の表現がうまくできないスポックとウェンディを重ね合わせるセリフがあったり、コミュニケーションが下手な彼女がクリンゴン語を使って会話するシーンなどがあるものの、スター・トレックはそんなに大きなテーマとして扱われているわけではない。そもそもスター・トレックって一般人から脚本を受け付けているほぼ唯一のTVドラマであることは有名で、なんで脚本コンテストなんかやるの?と思うのだが、CBSでなくパラマウント・ピクチャーズ主催なので映画版の脚本なのだろうか。でもウェンディの脚本って「スポックがディープ・スペース・ナインに赴いてウォーフの助力を請う」なんていうファンフィクションまがいの内容のようで、それって映画化するのかなり難しいのでは。そもそも500ページの脚本(つまり約500分の内容)なんてハリウッドで誰も読まないだろ、とは思うものの、まあそこらへんに愚痴を言っても仕方ないか。あと脚本をメールで送ればすべて解決したんじゃね?と思いたくなるが、いちおう投稿の規定は「印刷されたものを郵送」だそうな。あとパラマウントのオフィスにあんな簡単に入り込んだりできないからね!

内容は比較的凡庸なロードムービーだが、主人公がバスから降ろされたり、道中出会ったカップルに財布とられたり、乗った車が事故ったりと、いろいろ災難がてんこ盛りでなんかお腹いっぱい。施設から消えたウェンディを探して彼女の姉や施設の管理人も心配して苦労するわけでが、周囲に迷惑をかけていることを主人公が認識していないために、観ていてなんかモヤモヤするところがあったよ。いちおうコンテストの優勝賞金をゲットすれば姉に迷惑をかけずにすむ、という目的をウェンディは抱いているのだが、自閉症という設定にしたことで逆に彼女の決心が曖昧なものになっていたような。もっと普通の内気な女の子を主人公にしても良かったんじゃないの。そのほうが、自分の抱える問題に向き合って解決しようとする彼女の行いがもっとスッキリ描けたと思うのだが。

ダコタ・ファニングは例によってFull Retardにならない自閉症者の演技をしていて、まあ型にはまっているといえばはまっている。彼女を施設で面倒みているのがトニ・コレットで、彼女の姉を演じるのがアリス・イブ。ご存知のようにアリス・イブって「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に出演してるので、そこらへん何かメタな展開があるかなと期待してたけど何もなかった。この映画、スター・トレックを題材にしている割には、あまりトレッキーが喜ぶネタがないのが寂しいところである。パットン・オズワルド演じる、クリンゴン語を話す警官なんてのは出てきてたけど。

まあ凡作。


別名「Marvel’s Cloak & Dagger」で、その名から分かるようにマーベルの同名コミックをもとにしたFreeformの新作シリーズ。原作のクリエイターはロケット・ラクーンと同じくビル・マントロ御大な。Freeformとしては初のマーベル作品だけど、過去にもABCファミリー時代にコミックを映像化した傑作「THE MIDDLEMAN」とかやってたのでそんなに違和感はない。

先に原作のコミックのほうを説明しておくと、「クローク&ダガー」という名前が一般的に指すミステリーやサスペンスのジャンルとは関係なくて、光でできた短剣(というか飛びナイフ)を操る白人女性のダガーと、フード付きの巨大な外套をまとい、それに包まれたもの(自身を含む)を自在に瞬間移動させる能力を持った黒人男性のクロークというふたりのティーンのスーパーヒーローを主人公にしたもの。

初登場は1982年のスパイダーマン誌で、そこからスピンオフして独自のミニシリーズ、さらにはオンゴーイングシリーズなどで活躍していったキャラクターだが、いわゆるスーパーヴィランと戦うような内容というよりも、当時社会問題だったティーンの家出とか麻薬問題などを扱った話が多かったらしい…すいません俺ほとんど読んだことありません。まあキャラクターが地味なんだよね。クロークの外見とか能力って少し前に登場したダズラーとよく似たものだったし、クロークは背後でむっすりしてるだけで特徴的なところはなかったし。他の作品にたまにゲストキャラで出てくる人たち、という印象が強かったかな。

マーベルのキャラクターとしてはデアデビルやパニッシャーのようなストリート系ということで、映像化も安上がりに済みそうだと思われたんだろうか。さらに主人公がティーンということでFreeformで放送されることになったとか?とにかくスーパーヒーローの番組というよりも、ティーンの青春ドラマという雰囲気が強い内容になっている。

主人公のタイローン(クローク)とタンディ(ダガー)は幼いときに、ニューオリンズ沖で起きたロクソン・コーポレーション(マーベルではおなじみの悪徳企業)の実験施設が爆破したときの衝撃を水中で受けた結果特殊な能力を身につけたものの、本人たちにはその自覚もなく、また事故の記憶も殆どなかった。しかし事故と前後してタイローンは兄を悪徳警官に射殺され、タンディは父親がロクソンに関わっていたと逮捕され、両者はそのトラウマによって周囲になじめないティーンに成長していた。やがて彼らの能力が覚醒し始め、タンディは光の短剣によって人を傷つけてしまい、タイローンは意図せずに遠く離れた場所へとワープするようになる。その能力に困惑する二人は、やがて大きな運命に導かれて出会うようになり…というあらすじ。

最初の2話まで観たけど話のペースが非常に遅くて、クロークとダガーの能力が発動するのは数回のみ。悪者をバッタバッタと倒すスーパーヒーロー活劇を期待していると、壮大な肩透かしをくらうことになるだろう。タンディの家庭が崩壊寸前で彼女が非行に走っているところとか、兄を失ったタイローンが家でも学校でもいろんなプレッシャーに苦しんでいるとことか、いかにもFreeformっぽい作品だなとは思うものの、それってマーベル作品に期待しているものなのかな、という気もする。

タンディ役は歌手もやってるオリヴィア・ホルト、タイローン役はオーブリー・ジョセフ。まああまり知られてない若手俳優ふたりですかね。有名俳優といえばタイローンの母役に「ER」のグロリア・ルーベンが出ているくらいか。

原作にはない神秘的な予知夢(?)のシーンとかもあって、マーベル作品としては一風変わった出来になっているし、今の段階でも少なくとも「インヒューマンズ」よりは面白くなるだろうとは思うものの、いかんせん話のペースが遅すぎて今後はどうなるかわからんなあ。主人公ふたりが自分たちの能力を完全に使いこなせるようになれば話が面白くなるんだろうけど、それがいつのことになるやら…。