
「ファウスト」で俺の中のリスペクト度が再び跳ね上がったテリー・ギリアムによる新作短編。タイトルはキリスト教の「聖家族」と全粒粉をかけてるんだろうが、イタリアのパスタ会社が出資して作られた作品だそうな。よって「これはコマーシャルではないのか?」みたいな批判もあったらしいけど、金の無いことで有名な監督なんだし別に企業に出資してもらったっていいじゃんねえ。
よって舞台となるのは当然のごとくイタリアで、イギリス人の父とイタリア人の母と一緒に観光に来ていた少年のジェイクは屋台に並んでいたプルチネッラの人形に魅了されるが、両親は彼がそれを買うことを許さず、ジェイクは親とケンカしたあげく夕食抜きでベッドに送られる。しかし彼は人形をひとつ屋台からくすねており、それが夜中になって動きだし、ジェイクを不思議な世界に連れ込んで…というようなストーリー。
口うるさい両親に理解してもらえない子供が不思議な世界を旅する、という展開は「バンデットQ」によく似ているかな。また仮面をつけた大量のプルチネッラたちのコレオグラフィーは「ファウスト」のオペラチックな演出に通じるものがあるかなと。目新しい感じはしないものの非常にギリアム的な作品でしたよ。
そしてストーリーもコンパクトにまとめられているが、いかんせん20分という尺であるために比較的単純で、なんとなく消化不良な感じがしなくもない。欲をいえばもうひとひねりあれば良かったな。
個人的にギリアムって「タイドランド」でなんか変な方向に行っちゃったイメージがあって、それが「パルナサス」を経てこの映画で再びかつてのスタイルに戻ってきた感があるので往年のファンとしては嬉しいこってす。で、次に長編を撮るのはいつよ?
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ジョージ・クルーニー監督、ライアン・ゴズリング主演の政治サスペンス。よく考えたら俺はクルーニーの監督作はおろかゴズリングが出演してる映画を観るのが初めてだった。あらすじを書くだけでもネタバレになりそうな作品なので、以下はご注意を。
舞台となるのはオハイオ州での民主党の大統領候補選挙で、ペンシルバニア知事のモリス知事がアーカンソーのプルマン知事と接戦を繰り広げ、オハイオを制した者が民主党の正式な指名を受け、共和党の候補も破って次期大統領になることは確実視されていた。主人公のスティーブはモリス知事(演じるのはクルーニー)のキャンペーンの若きスタッフで、知事自身および上司のポールから選挙活動のノウハウを学びながら知事の当選に尽力していた。そんなとき彼はプルマン知事のキャンペーンのマネージャーであるトムから要請を受け、他のスタッフに内緒で彼と会うことになる。そしてトムはスティーブンを自分のチームに引き抜きたいと彼に伝えるが、スティーブンはこれを固辞してモリス知事のところへと戻る。しかし彼はそのとき既に陰謀の渦にとらわれていたのだった…というような話。
とはいえ国家を揺るがすような陰謀などは出てこなくて、もっと個人的なレベルでの駆け引きで罠にはまった主人公が、やがて反撃に転じるといった内容。話の後半になると主人公が復讐者モードになるんだが、寡黙に仕事をこなしてく役がゴズリングにはよく似合ってるな。
ただし話の展開が全体的におとなしいというか、観終わったあとによくよく考えると主人公も他の登場人物もあまり多くのことをやってないような気もする。あくまでも普通の選挙活動の裏側で起きてそうなことというか。まあそれがポイントなのかもしれないけどね。映画のいちばんの教訓が「ゴムはつけろ」だというのはいかがなものか。
クリーニーとゴズリングのほかにも熟練した出演者が揃っていて、フィリップ・シーモア・ホフマンにポール・ジアマッティ、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッドなどなど。それと光と影のコントラストをいかした画面作りが良かったな。これは監督というよりもDPの手腕によるものかもしれないけど。
これ日本では「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」というなんかちょっと違う邦題で3月末に公開されるようだけが、アメリカの政治用語や実際の政治家の引用などがバンバン飛び出すので日本の観客にウケるのは難しいんじゃないだろうか。「デイリーショー」とか見て勉強してるつもりの俺でも分かりにくいところがあったぞ。
今年は大統領選挙があるので実にタイムリーな映画ではあるのだが、共和党の候補者選挙で各候補が失言や足の引っ張り合いを繰り返してるのを見ると、こういう映画にあるようなスタイリッシュな駆け引きがどこまで実際に行われてるのか疑問に感じたりもしますね。
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NBCが贈る年配者向け「GLEE」。プロデューサーにはスピルバーグも名を連ねている。
ニューヨークのブロードウェイでのミュージカルの裏側を描いたもので、ソングライターの二人がマリリン・モンローをテーマにしたミュージカルを作ることを思いつき、離婚調停中のプロデューサーのもとで才能はあるんだけど女たらしの演出家を雇い、マリリンによく似た女優を主演に起用しようかと思ってたら抜群の歌声を持った無名の女の子が現われて…といったストーリー。これに登場人物の私生活とか恋愛関係とかが絡んできて、ちょっと昼メロ的な展開になっていくみたい。
当然ながら歌って踊るナンバーがいろいろ出てくるんだが、ミュージカルを題材にした作品なのに躍動感が致命的に欠けているのはいかがなものかと。「GLEE」との比較が妥当なものかは分からないが、あちらは学校で蔑まれている生徒たちがステージの上で輝こうとする意欲がきちんと描かれ、高校生らしかぬ派手な踊りと演出が楽しかったのに対し、こっちはプロもしくはセミプロの人たちが「いつもの仕事」をしているという感じで、どうも話にフックがないんだよな。いちおうウェイトレスをしながらスターを夢見る女の子というのも出てくるんだけど、必死になってスターになってやるといった意欲が全然感じられないのですよ。ミュージカルの題材がマリリン・モンローだという点もあまり深い理由はないし、なんか凡庸だよねえ(話中でも「マリリンなんてみんなやってるじゃん!」といったツッコミがされている)。
それと映像が全体的に暗くて地味なのも役立ってないな。2時間のアートっぽい映画ならいいかもしれないが、TVシリーズとしては「次回も観たいな」という気にならない出来になっている。期待してなかった無名の女の子が歌いだして、演出家が「おっ」となる演出もクサい限りだし。
内容のわりに出演者はそれなりに豪華で、デブラ・メッシングにジャック・ダヴェンポート、アンジェリカ・ヒューストンのほかディラン・ベイカーがチョイ役で出てたり、後にはユマ・サーマンも出てくるらしい。無名の女の子を演じるキャサリン・マクフィーって人が細めのレイチェル・ワイズって感じで結構いいなと思ったんだけど、「アメリカン・アイドル」で有名になった人なんですね。
キャストやスタッフに一流どころが揃ってるのに、どうも満足感を与えてくれない出来の作品であったよ。スピルバーグがプロデューサーの作品なら「Locke & Key」のパイロット版をシリーズ化したほうが面白かっただろうに。低迷が続くNBCを救う番組にはならないであろう。
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あの世にもヒドい邦題を持った2004年のカルト的人気を誇る映画をアニメ化したフォックスのTVシリーズ。こないだの「THE FIRM」もそうだけど、数年前の映画をTVシリーズ化するのに需要なんてあるのかね?しかもこの映画は収益をめぐってプロデューサーがフォックスを訴えてなかったっけ?まあハリウッドの常として「法廷の外で決着がついた。内容については口外しない。」ということになったんだろうけど。
「THE FIRM」に比べるとこちらは映画のオリジナルキャストがみんな揃って各キャラクターの声をあてていて、話の設定も映画版そのまんま。アイダホのど田舎における高校生の生活をのんべんだらりと描いてるんだが、映画版ではそのユルさで話が持っていたのに対し、TVシリーズだと毎回何かしらイベントが起きないといけないわけで、例えば第1話ではニキビの薬で凶暴化したナポレオンが格闘技のリングに立つことになるのですが、それって映画の設定とまったく異なるような。
ただし話の出来自体はそんなに悪くなくて、間抜けな家族が主役の典型的なフォックスのアニメ作品だと思えばそこそこ楽しめなくもないかな。日本刀を振り回す日本人の交換留学生とかが出てくるあたりも、なんか今どきの米国アニメだね〜といった感じ。そういう意味では映画版のアニメ化などにせず、似たような設定のまったく新しい番組を作ったほうがよかったかもしれない。
個人的にはセス・マクファーレンの息がかかってないフォックスのアニメシリーズは応援したいところですが、それらは打ち切り率がかなり高いので(こないだのAllen Gregoryもすぐ打ち切られた)、このシリーズもどこまで続くのかは微妙なところです。
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アカデミー賞を受賞どころかノミネートさえもされなかったものの、ドキュメンタリー映画の金字塔的作品として名高い「フープ・ドリームス」の監督であるスティーブ・ジェームズのドキュメンタリー。んでこれも例によって今年のアカデミー賞の候補に選ばれていなかったりするので、アメリカでは非難の声があがっているみたい。
これは暴力沙汰の事件が相次ぎ、イラクやアフガンでの兵士よりも多くの人が死んだというシカゴを舞台に、暴力をふるう人と人のあいだに立って彼らを仲裁しようとする「インタラプターズ(制止者)」と呼ばれる活動家たちの姿を描いた映画で、インタラプターズは「暴力は疫病と同じで、人から人へと感染するものだ」という考えに基づいて疫病学者が創設した「シースファイア(停戦)」という活動団体が導入したプログラムの実践者であり、警察と犯罪者(というかいわゆるゴロツキ)の中間的なポジションに立つことで後者の信頼を得て、彼らを更正させていこうとする。
インタラプターズの多くは元犯罪者であり、ミーティングの場では「みんな合計したら500年くらい懲役くらってるかなあ」なんて冗談も飛び出すわけだが、やはりみんな凄みというか貫禄がやたらあるんだよな。そういう人たちが更正して罪滅ぼしのために活動し、「悪いことして俺みたいになるなよ」などと言ってるのを聞くと言葉の重みがハンパじゃないわけで。
作品中では3人のインタラプターズに焦点があてられ、有名なギャングの娘で不良だったアミーナ、刑務所への出入りを繰り返していたコーブ、17才のときに殺人を犯して10数年間刑務所に入っていたエディーたちが、それぞれ不良少女に学校に行くよう説得したり、ケンカばかりしている兄弟を仲直りさせたり、強盗に入った少年を被害者に謝らせたりする姿が描かれていく。日本だったら「プロ市民」などと呼ばれそうな活動かもしれないが、私欲もなしに辛抱強く活動を続けていく彼らの姿は純粋に立派だと思いますよ。暴力に巻き込まれて負傷するインタラプターなんてのも実際いるわけだし。
彼らの活動がすべて成功しているわけではないものの、暴力を減らすことに貢献したとのことで海外からも視察団が訪れ、バミューダ諸島でも同様のプログラムが導入されたらしい。ただ日本では同様のプログラムが通用したりするのかな。銃が蔓延しているわけではない(福岡を除く)から暴力の種類も違うだろうし、文化の違いなども大きいかと。でも学校の生徒が元犯罪者から話を聞くのは意外とためになりそうな気がするんだけど、どうなんだろうね。
2人の少年の成長を追った「フープ・ドリームス」に比べると少し散漫な出来ではあるものの、いろいろ考えさせられる作品であった。
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