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Syfyの新作シリーズ。原案は「セルフレス 覚醒した記憶」のパストール兄弟で、製作には「グッド・ワイフ」のテッド・ハンフリーのほか、なぜかマット・デイモンとベン・アフレックが関わっている。

舞台は2074年。大規模な気候変動の影響により地球の資源は枯渇し、天然の食料は希少な存在となっていた。政府は破産し、代わりに巨大企業がのし上がって世界を管轄し、企業に勤めるエリートたちはグリーン・ゾーンというエリアに住み、それ以外の貧民たちはレッド・ゾーンという隔離された無法地帯に暮らしていた。大企業の1つスピガに勤めるベン・ラーソンは美人の妻を持ち幸せに暮らしているように見えたが、実は彼はレッド・ゾーンの出身者であり、行方不明になった知人を探すためにスピガへと潜入していたのだった。厳重に守られたスパイガのデータへのアクセス権を得るため、上司を陥れてでもベンは企業で出世をしようとするが…というあらすじ。

レッド・ゾーンの住民がグリーン・ゾーンに入ることが禁止されてるなら、グリーン・ゾーンでの道路工事やトイレ掃除などは誰がやってんだろ、と思うのですが、そういうツッコミは野暮かと。過度にテクノロジーが発達したディストピアという設定は「Black Mirror」に通じるところがあるものの、こちらは話を続ける必要があるのであそこまで風刺色は強くない。ライバル企業との競り合いとか海外でのテロ活動とか、面白そうな要素はあるのでもうちょっと過激な内容にしても良かったかなとは思うけどね。

主役のベンを演じるショーン・ティールはこれまたイギリス出身の俳優だが、ベネズエラ系ということでオスカー・アイザックによく顔が似ているかな。あとは「テラ・ノヴァ」のアリソン・ミラーのほか、「24」のデニス・ヘイスバートがスピガの不気味な社長を演じてますが、ヘイスバートの第1話でのシーンは少ないのでどのくらい重要な役なのかはよく分かりません。

設定が現代の移民問題とかグローバリゼーションを反映しすぎていて、かえって凡庸に感じられるきらいはあるものの、モンスターとかアクションにあまり頼らない、(比較的)知的なSyfyのドラマは久しぶりなので期待したいところ。今後の展開次第では結構面白くなるかもしれない作品。

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CGアニメ全盛のこの世においてストップモーション・アニメをコツコツを作り続けるライカ社の新作。今回は社長のトラビス・ナイトが自ら監督を手掛けた意欲作になっている。

舞台となるのは侍がいた時代の日本。人智を超えた存在である「月の王」の娘は、幼子である「クボ」を抱え、冷酷な父親と自分の妹たちのもとから海を渡って逃げて人里へとやってきた。それから月日がたち、少年となったクボは三味線を弾いて折り紙を自在に操るという能力を持ち、村で勇敢な侍ハンゾウの物語を弾き語るという暮らしを過ごしていた。しかしある日、日没後に外出してはいけないという母親の戒めを破ってしまったクボは、魔女のごとき格好をした母親の妹ふたりにさらわれそうになる。クボの窮地を母親が身を挺して救うものの、その影響でクボは遠く離れた謎の土地へと飛ばされてしまう。そこで彼のお守りが生身になったというメスザルに救われたクボは、かつてはハンゾウの部下の侍だったが呪いによって人型の虫にされたというクワガタとも出会い、月の王を倒せるという3つの神器(刀と鎧と兜)を探すための旅に出る。しかし彼らのもとには月の王の魔の手が忍び寄っており…というあらすじ。

もうね、映像の美しさがハンパないのですよ。人形ながらもクボの表情は2万以上の型が作られたといい、5メートルほどの巨大ガイコツのフィギュアも作られ、すべてが滑らかな動きをもって自在に画面の中を舞っていく。ライカの前作「Boxtrolls」は下水道とトロールたちのキモい描写があまり好きにはなれなかったが、こちらは紅葉の森のシーンとかがね、すごく温かみがあって美しいのです。やはりストップモーション・アニメって、まだCGが到達することができない手作り感があるんじゃないだろうか。予告編は不気味な感じを前面に出しているのがちょっと勿体ない。

またストーリーも映像に負けないほど巧みで、クボたちの冒険活劇というスタイルととりつつも、話の核となるのは「物語を語ること」であり、生まれてすぐに月の王に片目を奪われて隻眼になったクボの出自にまつわる話や、サルやクワガタに関する物語が語られ、巧妙にストーリーのなかに編み込まれている。あまり多くは明かせないけどね、サルとクワガタの話がまたいいんですよ。三味線を演奏するクボについて、題名の「2本の弦」の意味が分かってくる最後の展開も素晴らしい。

そのサルとクワガタの声優を務めるのがシャーリーズ・セロンとマシュー・マコノヒーで、クボを鍛えつつも暖かく見守る演技が大変素晴らしい。人間時代の記憶を失っているためにどこかボケているクワガタを演じるマコノヒーが特に良かったな。他にも声優としてレイフ・ファインズやルーニー・マーラなどが参加しているほか、ジョージ・タケイやケイリー・ヒロユキ・タガワといった日系人のキャストも多数起用されています。

トラビス・ナイトは父親(ナイキの社長のフィル・ナイト)に連れられて日本を訪問してから日本の文化に魅了され、「子連れ狼」なども愛読していたらしい。この作品のスタイルは版画家の斎藤清の作品に影響を受けているらしいが、盆踊りとか灯籠流しの光景とか、アメリカの作品だとは思えないほど丁寧に描かれているんじゃないだろうか。三種の神器の鎧と兜がちょっと中国っぽいデザインだけど、クボの母親の名前が「サリアツ」ということも含め、渡来したものという設定なのかな?

とにかくこれだけ日本の文化をもとにした作品が、日本でまったく知られておらず、日本での公開も決まっていないというのは大変な問題ですよ。「Boxtrolls」も未だに日本公開されていないが、どうもそこらへんの権利関係がゴタゴタしてるらしいんだよなあ。アメリカでの興行成績は振るわなかったらしいけど、これは本来なら日本で公開されて、多くの人に見てもらうべき作品でしょう。というわけでもし海外や飛行機のなかとかで見かけたら、日本人の義務として一見することをお勧めします。

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MTVの新作ドラマ。

舞台となるのは学生寮のある大学キャンパス。そこでは男子学生による女子への性的暴行が頻発していたが逮捕されるような者は少なく、男子たちは大手を振って生活していた。そんなとき暴行をした男子の一人が黒づくめの人物によってボコボコにされるという出来事が発生する。この人物の正体は女子学生のジュールズで、昼間は優秀な生徒である彼女は夜になると一人で男子学生たちに天誅をくらわせていたのだった。そして友達が少なくてコンピューターに詳しい女子のオーフェリアは、現場に残されたペンダントからジュールズの正体を知り、彼女を尾行していって結果的にジュールズのピンチを救うことになる。こうして二人はコンビを組み、悪い男子を懲らしめていくのだった…というようなあらすじ。

日本でも男子学生の横暴が報じられたりしてるけど、アメリカの大学での性的暴行というのは結構深刻な問題になっているらしい。こないだはローリング・ストーン誌が学生寮でレイプされたという女子の記事を掲載したあとに、どうも虚偽だったらしいとうことで叩かれていたけど、どれだけの事件が起きているのか明確になっていないというのも状況を深刻にしているのでは。女性を蔑視した発言をした人物が大統領になったりするとね、女性にとってはますます声を立てにくい世の中になってくるんじゃないですか。

そういった意味ではこの番組は絶妙なアンチテーゼになっているのかも。ジュールズとオーフェリアは忍者のごとき黒衣装(ブルカっぽくもある)に身を包んで、横柄な男子たちを痛めつけていく。ジュールズもかつて性的被害にあったことが示唆され、人が死んだりと真剣な展開がある一方で、MTVのドラマらしく流行の音楽(「Defying Gravity」の使い方は巧かった)とキャッチーなセリフに溢れており、ドラマなのかコメディなのかいまいち分かりにくいところもあるが、まあ今後の展開に期待しましょう。

ジュールズを演じるエライザ・ベネットはこれまたイギリス出身の俳優。若いけど結構なキャリアがあるみたい。オーフェリアを演じるテイラー・ディアーデンって「タイラー・ダーデン」みたいな名前だな…と思ってたらブライアン・クランストンの娘なのか!

当然のごとく反フェミニスト的な人たちには早くも叩かれているようだけど、こういう番組もあって良いと思うよ。

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ディズニーXDの子供向けSF番組。

ベイシティという街の高校生であるライアンはスポーツ万能の兄に対して平凡なオタク少年だったが、ある日自分が電子機器を意のままに操ることができる能力をもった、テクノパスという存在であることに気付く。さらに郊外の廃船のビジョンを経験した彼は、友人ふたりとそこに赴くと目の前に40メートルほどの巨大ロボットが出現した。ロボットの内部(巨大なので中に会議室みたいなのもある)に招かれた彼らの前に謎の男の映像が現れ、ロボットの名前が『メカX4』であること、テクノパスであるライアンが操縦できること、そしてその男自身が失踪したか死亡したことを伝えられる。こうして巨大ロボットを手に入れたライアンたちだったが、今度は街に巨大怪獣が出現。メカX4をきちんと操るには4人のクルーが必要(操縦・攻撃・防御・メカニック担当)であることを悟ったライアンは、彼の兄もクルーに入れて怪獣を無事に撃破。こうして彼らは怪獣の脅威から街を守りつつ、怪獣を送ってくる黒幕は誰なのか、そして映像に出てきた謎の男は何者なのかを明かそうとするのだった…というあらすじ。

巨大ロボットvs怪獣の特撮番組といえば胸がワクワクするような設定ではあるのですが、なんとなく残念な出来に終わっている。メカX4の内部のセットとかは金がかかってるし、CGのアクションも決して悪くはないのだけど、「パシフィック・リム」とかで目が肥えてしまっているから、アサイラム社の「アトランティック・リム」程度にしか見えないのが残念。

ストーリーもね、主人公が突然超能力を身につけて、さらに巨大ロボットが与えられる、というのはいくらなんでも都合が良すぎるだろう。子供向けの番組でもそこらへんはもうちょっと練りこんでほしかった。ちなみに怪獣を送り込んでくる黒幕は学校の校長先生であることが途中でわかるのだけど、異なる動物の遺伝子(イカとヘビとか)を組み合わせて怪獣を生み出してるさまは「仮面ライダー」っぽくて楽しそうでありました。

そして最大の問題はやはり主役ロボのメカX4がカッコ悪いことでして、名前もイケていないのだが顔もXというかバッテンが貼り付けられていて、何とも感情移入しにくい顔。これなら日本の「Xボンバー」(古い)のほうがイケメンだったぞ。
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ロボの操縦方法はライアンの動きをトレースする「パシリム」方式だがパイロットに腰ヒモみたいなのが付いてるだけなのがなんか安っぽい。体型も細くて貧弱そうだし、こんどの劇場版「パワーレンジャーズ」のロボットといい、短命に終わったゲンディ・タルタコフスキーの「Sym-Bionic Titan」といい、なんであちらのメカには重層感がないのか…ここらへん日本の特撮の着ぐるみから学ぶことができるのでは。右手からヒート武器を出すことができて、白熱した手刀が必殺技になるのは「Gガンダム」みたいでちょっとカッコよかったけどね。

メカX4の防御を担当するアジア系のガリ勉君とか、登場するキャラクターはいい感じだし、いろいろ面白くなりそうな要素はあるのだから、凡庸な子供番組で終わらずにもうちょっと上を目指してほしいところです。なお早くもシーズン2の放送が決まったとか。

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BBCの新シリーズで「ドクター・フー」のスピンオフ作品。これキャラクター紹介がまんまネタバレになるので以下は注意。

舞台となるのは「ドクター・フー」でクララが勤めていたコール・ヒル高校で、あの番組にも登場した先生たちがちらほら出ています。つうかコール・ヒル高校って1963年の「ドクター・フー」の第1話にも登場したという、由緒(?)正しい学校なんですね。そこに時空の切れ目が生じたことで、奇妙で恐ろしい存在がいろいろ学校に出現することになり、そこの生徒であるエイプリルたちは学校を守ろうとするのだった…というようなあらすじ。
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話の主人公となるのは4人の生徒と一人の教師で、上の写真の左から説明すると:

・タニヤ:厳格なナイジェリア人の母を持つ女生徒。頭脳明晰なため飛び級で年長のクラスに属している。
・チャーリー:一見は内気なゲイの青年だが、正体は他の星に存在していた文明の王子。反乱軍と戦っているあいだに「影の眷族」に星の住民を皆殺しにされ、ドクターに救われてミス・クイルとともに地球に逃げてきた。
・エイプリル:明るい性格だが友達のいない孤独な女生徒。心臓に特徴あり。母親は事故により車椅子に乗っている。
・ラム:スポーツマンでモテ男だが繊細な面もあり。「影の眷族」に襲われ重傷を負うが…。
・ミス・クイル:口の悪い科学教師。実はチャーリーの王国に反旗を翻したレジスタンスのリーダーであったが、捕獲されて脳に蟲を入れられ(!)、チャーリーの護衛をするよう精神的な束縛がされている。またこの影響で一切の武器を使う事ができない。

とまあ、みんな特徴的な面々が揃ってます。チャーリーのボーイフレンドも彼の正体を知ってるような描写があるのだが、準レギュラー的な扱いなのかな。生徒たちが肉体的にも精神的にもトラウマを抱えていて、セクシャリティとか家庭環境についても悶々としたものを抱いていることが丁寧に描かれているかな。その一方で悪態をつきまくるミス・クイルは悩みなんぞなくて、武器が使えないのに細腕でケンカを売ろうとするあたりがサイコー!みんなキャラが立っていて面白いですよ。あとは学園ものにしては比較的珍しく、生徒たちと親とのやりとりにもしっかり時間が割かれていた。

年末まで「ドクター・フー」の全権を握っているスティーブン・モファットは裏方に徹し、原案と脚本はパトリック・ネスが担当している。彼のことは知らなかったけど、邦訳も出ているヤングアダルトSFの作家なんですね。なんかちょっと暗いSFを書く人らしく、この番組の雰囲気に合っているかも。

学園を舞台にした「ドクター・フー」のスピンオフといえば「サラ・ジェーン・アドベンチャー」があったけど、あれよりかは明らかに大人向けで、セックスのない「トーチウッド」といったところか。ゴア描写もそれなりにあって、ラムが毎度血しぶきを浴びるのはランニング・ジョークを狙ってるんだろうか。そして1話あたり4〜5人の犠牲者が出ているのだが、そんな危険な学校はすぐさま閉鎖されてるだろ!

あと第1話はドクター出てきますよドクター。話が生徒たちからの視点になっているため、「なんかヤバそうなオッサン」という扱いになっているのがなかなか新鮮であった。

ティーンが抱える特有の繊細さと不安が、学校の不気味さとうまくマッチしていい暗さを醸し出している作品。逆にCGのクリーチャーが出てくるとちょっとショボくてガッカリするので、クリーチャー出さずに雰囲気だけで勝負したほうが面白いかもしれない。何にせよ今後の展開に期待。