「BRAVE NEW WORLD」鑑賞

NBCユニバーサルの配信サービス「Peacock」が今週開始されたのだよ。広告付きの無料オプションと、広告あり/なしで追加コンテンツが視聴できる2種類のプレミアムオプションというプラン分けのほか、NBC子会社のケーブルサービスに加入してると無料で観られるあたり、Disney+やHBO MAXよりもApple TV+のような既存サービスの付加価値的な役目を果たすのかな?品揃えはユニバーサル作品の旧作がいろいろあって、まあ目新しさはないけど手堅いラインナップという感じ。

とはいえ最近のトレンドとしてオリジナルシリーズの1つや2つは持ってないといけないわけで、これがその1つ。オルダス・ハクスリーのディストピア小説「すばらしい新世界」を原作にしたもので、ライター兼プロデューサーにグラント・モリソンが関わっている。もともとSYFY用に作られたシリーズのようで、「HAPPY!」つながりでモリソンに声がかかったんだろうか。

舞台は原作と大体同じで、いまから数百年後のニュー・ロンドン。人々は遺伝子操作によってアルファからイプシロンまで5つの身分階級に分かれて生まれ、自らの身分に不満を抱くこともなく上の階級に仕えて暮らしていた。バーナード・マルクスは最上級のアルファ・プラスに属する身分で、人を高揚させるドラッグ「ソーマ」を分け与えられる立場にいたが、彼自身が何かしらの不安を抱えていた。そんな彼は部下の美女レーニナを連れてアメリカの蛮人保存地区へ観光に行くが、そこでトラブルに巻き込まれ…というあらすじ。

「現代社会をよく表してるのは『1984年』よりも『素晴らしい新世界』だよねー」って厨二病の決めゼリフのようであんま言いたくないのだが、実際のところ国民がなんとなく抑圧されて不幸せに生きている「1984年」よりも、自分の与えられた境遇に満足し、ドラッグとフリーセックスにうつつを抜かして政府への不満など抱かない国民が出てくる「新世界」のほうが現代の風刺としてはより効力があると言えるのではないか。みんなハイになってパーティーをやってるなかでも劣等感を抱くバーナードとか、いかにも管理職の小市民的な悩みで面白かったじゃん。

このシリーズも大まかな設定は原作と同じで、アルファやベータ階級の雑用はイプシロンたちが行い、上流階級はパーティーと乱行に明け暮れてる次第。乱行シーンとかはSYFYでも放送できなかっただろうな。ただ原作だと蛮人保存地区はネイティブ・アメリカンの居住地で、そこで育った白人の蛮人ジョンはシェイクスピアを愛する知的な青年という設定だったが、こちらでは蛮人保存地区に住むのは世界政府の管理を拒否したアメリカの田舎のホワイト・トラッシュたちで、ジョンもその一人ということになっている。

そして原作と異なり、その保存地区に住む白人たちは見世物扱いされることに反発して外部からの見学者に襲いかかることになる。またニュー・ロンドンでもイプシロンたちが何かしらの陰謀を企てていることが示唆されるのだが、ここらへんの展開はもろにHBOの「ウェストワールド」でして、いまそれをやるかい!という感じでした。

キャストはそれなりに豪華で、野蛮人のジョン役に若きハン・ソロことオールデン・エアエンライク、バーナード役にハリー・ロイド、あとはデミ・ムーアやハナ・ジョン=カーメンなんかも出演しています。

原作はもっとスピード感があって、特に後半はジョンの新世界における奮闘と空回りがグイグイ進んでいく感じだったが、こちらは全9話のシリーズにして、アクションシーンを加えたりしたことで逆にテーマが散漫になってしまった印象も受ける。批評家の評判もあまり良くないみたいだけど、まだ数話しか観てないのでもうちょっと続けて観てみます。

「8:46」鑑賞

Netflixが突然Youtubeで公開したデイブ・シャペルのスタンダップ。

警察に窒息死させられた黒人男性ジョージ・フロイドの追悼として、シャペルが地元のオハイオで行ったものを撮影したのかな?よってスタンダップ・コメディというよりも差別に関するスピーチといったところでジョークは僅かなのだけど、そこはシャペル、絶妙なスピーチで観客の注目をグイグイ引き付けていく。

デイブ・シャペルといえばコメディ・セントラルの番組「Chappelle’s Show」で人種をネタにした際どいジョークを扱って大人気を博したコメディアンだけど、自分自身が白人スタッフに笑われてるような気がしてちょっと神経衰弱っぽくなり、人気絶頂にあったときに番組を打ち切るなど、以前から人種問題には敏感なところがあった人なのですよね。

彼のスタンダップのすごいところは何も話さなくても観客の気を散らせないところ。ベラベラ喋って客の気を引こうとするするコメディアンなんて山ほどいるけど、ステージ上で何も話さないのに客の視線を引きつけるパフォーマーは彼とジョン・スチュワートあたりがトップレベルじゃないだろうか。もちろんそれなりの知名度が必要なので今までのキャリアが重要なのだろうけど。

今回のパフォーマンスも観客との他愛ないお喋りから始まり、口数も少なめで、つかみでは90年代の地震について語っていく。カリフォルニアで経験したノースリッジ地震はシャペルにとって初めての地震で、えらく揺れて死ぬほど怖かったと。「でも揺れてたのは30秒くらいだろうな…それに比べて、あの警官はフロイドの首に8分46秒も乗っかってたんだぜ!」と突然ジョージ・フロイドに関する本題に入っていくまでの流れは鳥肌もの。

あとはジョークも控えめに、黒人を非難する保守系のコメンテーターへの罵倒や、警察によって不当に殺された黒人たちの話へと彼のスピーチはつながっていく。ここで凄いのは、差別への不満をただぶちまけるのではなく、話の流れがものすごく綿密に計算されていること。最初のほうで「8:46」というのは自分が生まれた時間でもある、と語ったあとで最後のほうでコービー・ブライアントの背番号が自分の誕生日と同じだった、とつなげるところや、ジョージ・フロイドが死ぬ間際に母親の名前を呼んだ姿は、自分の父親が死ぬときに祖母の名を呼んだのと同じだった、としたうえで最後に自分の祖先が誰だったかを語るところなど。スピーチ全体に伏線と回収があるというか、単に言いたいことをぶちまけてるのではなく、しっかり計算した上で話しているのがよくわかる、スタンダップの教科書のような内容だった。

個人的には数年前にシャペルが「サタデーナイト・ライブ」で行ったオープニングのモノローグは神がかったような出来だと思ってたけど、今回のパフォーマンスも(ジョークが少ないとはいえ)非常に力強いものだった。日本ではコメディアンが政治を語るのに顔をしかめるような人も多いけど、コメディアンが本当に上手く政治を語るとどんな見事なことができるかを証明した好例。

「STARGIRL」鑑賞

有料サービス「DC UNIVERSE」の新作シリーズ…なのだが1日後には地上波のTHE CWで放送されることになっていて、ますますDC UNIVERSEの存在意義が薄くなっているような。

90年代末のDCコミックス作品「Stars and S.T.R.I.P.E.」をベースにした番組で、第1話の脚本はコミックと同じライターのジェフ・ジョンズ。コートニー・ホイットモアは幼い時に父親が疾走したせいか少し内向的な少女で、母親がパット・デュガンという男性と結婚したことでネブラスカの田舎町ブルーバレーに引っ越してくる。そこで彼女はパットがスターマンというスーパーヒーローのサイドキック(相棒)だったことを知り、さらにスターマンの形見であるコズミック・スタッフを発見し、空を飛べるその杖を持って冒険に出かける。しかしブルーバレーには、スターマンが属していたジャスティス・ソサイエティを壊滅させたグループのメンバーが住んでいたのだった…というあらすじ。

アメコミ読んでいたほうが当然いろいろ楽しめるわけだが、初心者にも分かりやすい内容になってると思う。ジャスティス・ソサイエティというのはジャスティス・リーグに先んじるスーパーヒーローのチームで、スターマンのほかにドクター・ミッドナイトとかワイルドキャット、アワーマンといった人たちがいました。その宿敵がインジャスティス・ソサエティという悪者グループで、メンバーはアイシクルにブレインウェーブ、スポーツマスターなど。後述する「スターマン」の重要なキャラであるシェイドの存在が示唆されるシーンもありました。

コートニーが使用するコズミック・ロッドというのは星から降り注ぐパワーを溜めて、飛行やビーム発射などを可能にする杖のことでして、コミックでは90年代の傑作タイトル「スターマン」(おれ全冊持ってます)の主人公スターマンことジャック・ナイトからコートニーは譲り受けるのだが、番組ではジャックは登場せず。逆に番組のスターマンことシルベスター・ペンバートンはコミックだとスカイマンと名乗っててスターマンだったことは無いぞ…というのは野暮なツッコミですね。なおコミックと違ってコズミック・ロッドは意志があるような設定になっていて、コートニーにじゃれたりしてます。

そしてスターマンの年長の相棒だったパットの正体はストライプシーという元B級ヒーローで、年を取ったいまはストライプという巨大ロボットに乗り込んでコートニーのサポートをすることになる。DC UNIVERSEの番組って「アローバース」の番組よりも予算があるのか、ストライプをはじめとする特殊効果はなかなか良くできていました。

第1話は典型的なオリジン話といったところで、コートーニーがスターガールの衣装を着たりもしないのだけど、上のポスターなどから察するに、彼女の他にも新たなワイルドキャットやドクター・ミッドナイトたちが登場して、新しいジャスティス・ソサイエティ(それって「インフィニティ・インク」では?)を結成することになるみたい。ほかにもセブン・ソルジャーズ・オブ・ビクトリーが登場するとかしないとか。ティーンのヒーローたちが田舎町で悪と戦うあたりは「バッフィ」を彷彿とさせ、そこらへんはTHE CWの観客と相性がいいんじゃないですか。ストーリーは意外と暗くなっていくらしいけど。

コートニー役はブレック・ベイシンガー。知らない役者だったけど20歳にして結構な数のTVシリーズに出演してるみたい。パット役がルーク・ウィルソンで、ちょっと気弱なパパ役が似合ってます。あと死んでしまったスターマンをジョエル・マクヘイルが演じていて、今後はフラッシュバックとかで登場してくるのかな。

原作者が脚本を書いているだけあって手堅いストーリー展開になっているし、コミックのファンにはいろいろ楽しめる番組になりそう。とりあえず続きも観てみます。

「スノーピアサー」鑑賞

TNTの新シリーズで、言わずと知れたポン・ジュノ監督の同名映画のTVシリーズ版。日本でもNetflixでやるのね。数年前に製作は発表されてたのだがスタッフの交代とかいろいろあって放送がえらく遅れたわけだが、結果としてその間にポン・ジュノがアカデミー賞獲ったりしてるわけで、ケガの功名になるのかな。

話の設定は映画版とほぼ同じで、地球温暖化への対抗措置が失敗して凍てつく星になってしまった地球において、永久期間によって走り続ける列車「スノーピアサー」の中で暮らす最後の人類たちの抗争を描いたものになっている。映画版は列車が15年くらい走り続けてるのに対し、こっちは7年くらいの設定なのかな?

スノーピアサーを設計した謎の人物ウィルフォード氏以外は登場人物はみんな映画版と別だが、列車の最後尾には劣悪な環境で暮らす貧民たちが収監され、先に進むにつれて住人の待遇が良くなっていくというのは映画版と同じ。

主人公のレイトンは列車の最後尾で暮らす男性で、より良い生活環境を求めて仲間たちと共謀して管理者たちに蜂起する予定だったが、なぜか彼だけが呼び出されて上層部のもとに連れて行かされる。実は彼はスノーピアサー乗車前は殺人課の刑事を務めており、列車のなかで(連続)殺人事件が起きたことから、それを調査するために抜擢されたのだ。そして彼は貧民たちの生活の向上と引き換えに、調査を引き受けるのだが…というあらすじ。

映画版は列車の後ろからただ前に行くという、ある意味ではストレートな話だったが、こちらはミステリの要素が加わって面白くなりそう。レイトンには車両のあいだを自由に行き来する権限が与えられる一方で、貧民層を抜け出した彼の元妻、さらには謎めいたウィルフォード氏なども絡んできて、スノーピアサーにまつわる謎が明かされていくみたい。

このスノーピアサーはなんと1001車両あるという設定で、移動するだけで日が暮れそうな代物なのだが、女性スタッフがヒール姿で気楽に歩き回ってるんだよな。すべて屋内で話が進む作品だが、温室の車両や水族館の車両などもあって環境のバラエティは豊か。しかしセット代を節約したのか各車両の幅が映画版に比べて狭いような?人のすれ違いとかが窮屈そうだったぞ。映画版が営団地下鉄ならばこっちは都営大江戸線の車両というか。あれで24時間通勤してたら暴動を起こしたくなる気も理解できるな。

レイトン役には「Blindspotting」のダビード・ディグス。でっかいドレッドヘアが気になるのだがずっとあの姿でいるのかな。彼に捜査を依頼するスノーピアサー上層部の管理係にジェニファー・コネリー。シーズン2の製作もすでに決まっていて、ショーン・ビーンが登場するとか?

放送されるまでのゴタゴタがいろいろ報じられた作品だけど、第1話は意外と面白かったですよ。いかんせん話の舞台が限られた内容ではあるもので、これからどうやってストーリーを引っ張っていくんだろう?

「THE GREAT」鑑賞

米HULUの新作ミニシリーズ。ロシア皇帝ピョートル3世とその妻キャサリン・ザ・グレートことエカチェリーナ2世の仲違いを描いたコメディ風味の作品で、「*ときどき事実に基づいた話」とタイトル画面に出てくるように、必ずしも歴史に忠実ではなくて脚色が多分にされてるみたい。

ストーリーはキャサリンの生い立ちとかを全部すっとばして彼女がピョートルに嫁ぐところから始まる。ロシアの王妃になれると心をときめかせて宮殿に向かった彼女だったが、ピョートルは飲んだくれの遊び人でキャサリンのことなどろくに気もかけず、ただ後継ぎがほしいために初夜もさっさと済ませるようなズボラ男だった。宮廷社会もピョートルの機嫌を伺って遊び戯れる貴族ばかりで、哲学書を愛読するキャサリンは疎外感を感じるばかり。女性向けの学校を作ろうとした彼女の試みも阻害され、さらにはピョートルに殺されかけたことでキャサリンと彼の仲は急激に悪化。彼が亡くなれば自分が女帝になれることを知ったキャサリンはクーデーターを模索するのだった…というあらすじ。

個人的にはロシアの歴史などまったく明るくないので、話がどこまで史実に基づいているのか分からないのですが、先日もヘレン・ミレン主演でエカチェリーナ2世のドラマが作られていたことからも、彼女って欧米ではネタにしやすい題材なのだろうな。

脚本は「女王陛下のお気に入り」のトニー・マクナマラ。宮廷社会で陰謀を画策する女性の話、というのが得意なんでしょうね。「お気に入り」はヨルゴス・ランティモス作品としてはずいぶん平凡な気がしてそんなに良いとは思わなかったものの、こちらの番組の方はエゲツない下ネタとかも散りばめられていて面白いですよ。

キャサリンを演じるのがエル・ファニングで、自分の理想がすぐさま打ち砕かれる女性を好演。対するピョートル役がニコラス・ホルトで、自分の置かれている環境とかを理解せずに本能のままに振る舞うさまは「マッド・マックス」のウォーボーイを彷彿とさせますな。あとはキャサリンの味方/愛人になるオルロフ役に「ドクター・フー」のサッシャ・ダーワン。当然ロシアの貴族にインド系などいたわけないので、キャスティングにはずいぶん脚色が入ってます。あと侍女役のフィービー・フォックスって綺麗な人ですね。

約55分のエピソードが10話と比較的ボリュームの多いシリーズで、とりあえず2話まで観たけど、このあとは宮廷ドラマが続くだけではなく、キャサリンによるクーデターが実際に描かれたりするのかな?時間があれば残りの話も観てみます。