「SMILE」鑑賞

昨年なぜかヒットしたホラー映画。精神科医の主人公が患者を診ていたところ、その患者が笑みを浮かべて突然自殺してしまう。そのあとも主人公の周りで笑みを浮かべて死ぬ人間が続出し、やがて彼女はこれが一種の呪いであることに気づくのだが…というあらすじ。

もともとは配信スルーになる予定だった作品らしく、作りはチープ。肝心の呪いの仕組みとか原因とかの説明はろくに無くて、とりあえず怖そうな展開にしておけばいいや、といった感じ。そこらへん日本のJホラー映画に近いのかな?作りの安さとあわせ、00年代初期にFOXがビデオスルーで出してた一連のホラー映画感(「ミラーズ」とか)がありました。

微笑みの呪いが「人に引き渡されていくもの」だという設定は傑作「イット・フォローズ」のパクリなんだろうけど、あの映画にあったジワジワと恐怖が迫ってくる演出は皆無で、「急にビックリさせる→主人公の幻覚でした→またビックリさせる→これまた主人公の幻覚でした」というパターンの繰り返しなのでストーリーなんてどうでもよくなってしまう。これ元々は10分の短編をその監督が長編にしたものらしいが、全体的に水増ししている感があるのは否めない。

主人公の精神科医を演じるのはケヴィン・ベーコンの娘か。鼻が父親に似てます。頬のホクロに目がいってしまうのよな。あとはカル・ペンとかがちょっと出てました。

とにかくどこかで見たような演出と展開ばかりのホラーで目新しさは全くなし。こういうの作っちゃダメでしょ、という好例のようなホラー映画だった。

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

まだ50の手前ですが、もう今年で田舎のどこかに家でも買ってアーリーリタイアしようかと本気で考えてまして、どうなるんでしょうかね。ストレス溜めて働いて給料稼いでも、好きな映画やアメコミを楽しむ時間が作れなければ本末転倒だよなあと最近ヒシヒシと感じているのです。定年まで働いて、体が動く10年くらいのあいだ好きなことをやって死ぬよりも、貯金をはたいてでも先にリタイアして20年くらい好きなことやって暮らすのも悪くはないのかなと。まあ独り身なのでそこらへんは気楽なんだけどね。どうなることやら。

というわけで今年はドタバタしそうな感じもしていて、それによってこのブログの方向性も変わってくるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いいたします。やはり健康第一ですので、病気にかからぬよう皆様もご自愛ください。

2022年の映画トップ10

今年はそれなりに劇場に足を運んで映画を観た年だったかな。じゃあ傑作が多かったかというと必ずしもそうではないのだが。よってちょっと無理に10本選んだ感もあるが、以下は順不同で。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

映画そのものよりも、Youtubeとかにあがってる「海外の観客のリアクション」が面白い作品だった。過去のキャラクターの活躍に大声で狂乱する客とか、日本ではあまり見られない光景だからね。

『ウエスト・サイド・ストーリー』

スピルバーグ健在。冒頭のカメラワークから引き込まれる。ヤヌス・キンスキーの色褪せた撮影スタイルって好きじゃないのだけど、今回はそれが控えめで色調豊かだったのも良かった。

アフター・ヤン

コゴナダの作品は前作の方が好きだったけど、美しい映像で語られる物静かなアンドロイドの物語。

The Innocents

今年の1位を挙げるとしたらこれかな。大友克洋の「童夢」のパクリだろ、と言われればそれまでなのだが雰囲気の盛り上げ方が素晴らしい。

Mad God

グロシーンのいくつかは半年たった今でもトラウマです。

『GOOD LUCK TO YOU, LEO GRANDE』

自分には関係ないテーマとはいえ、老いた女性の性を真正面から扱った良作。エマ・トンプソンの演技が素晴らしい。

『神々の山頂』

これと「アルピニスト」は山好きにとって楽しめる映画だった。原作読んでなかったので比較せずに観れたのも楽しめた理由かな。

Weird: The Al Yankovic Story

これと「マッシブ・タレント」合わせ、メタなコメディが面白かった1年。内輪ネタにならない、絶妙なバランスを突いているのよな。

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

ストーリーよりも映像美。3Dで観ることで、なにか新しい映画の視聴形態を体験していることを実感させてくれたのは貴重だった。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

笑って笑って最後には泣かせてくれるという傑作。

自分で選んでおいて何だが支離滅裂だな…。あとは「ノースマン」「Old Henry」なども良かった。『RRR』は未見。世間で評判の良い「トップガン マーヴェリック」は、やはりこう自分がトム・クルーズを好きではないというバイアスがかかってまして…。「ザ・バットマン」「リコリス・ピザ」は完全にハズレ。ウェス・アンダーソンの作品はどんどん感情移入できにくくなっていく。

TVシリーズは「ピースメーカー」「PISTOL」などが秀逸。話数が多いものは自分がキャッチアップできないという理由もあるのだけどね。

あと今年の映画の傾向として、「年配の女性の恋愛(性愛)」の描写が多かったような?自分が年取ってそういうのに気づくようになっただけかもしれないが、 『LEO GRANDE』を筆頭に『エブリシング〜』や『Three Thousand Years of Longing』、あとまあ『X』もそうか。興行収入を稼げる映画スターの年齢層が上がってきているという記事もあったし、かつてハリウッドで言われていた、女性の役者は歳をとると役にありつけなくなる、という悪しきトレンドが変わってきているのかなと思いましたです。

「Three Thousand Years of Longing」鑑賞

ジョージ・ミラーの新作。「マッド・マックスの監督がこんな映画を?」と一瞬思ってしまうが、ペンギンが踊るアニメも作ってた人なので意外性はないわな。日本では「アラビアンナイト 三千年の願い」という邦題で2月公開だが、話に「アラビアン・ナイト」関係ないから!旧約聖書の話のあと、「アラビアン」の時代をとばしてオスマン・トルコ帝国の話になってるぞ?

舞台は現代のイスタンブール。学術会議のためにそこを訪れていた文化学者のアリシアは古物屋で古びたガラス瓶に惹かれてそれを購入する。彼女がホテルでそれを開けると、中から妖霊のジンが飛び出してくる。彼は長年にわたって瓶に閉じ込められていたというのだ。解放された礼として3つの願いを叶えてやろうとアリシアに伝えるジンだったが、ジンにまつわる伝承に詳しい彼女は彼に騙されるのではないかと彼を拒絶する。そんな彼女を前に、ジンはなぜ自分が過去に3回も瓶に閉じ込められることになったのかを語るのだった…というあらすじ。

ジンは万能の力をもっているようで実はいろいろ弱いところがあって、魔法を使う人間には手込めにされるし物理的な弱点も持っていたりする。また誰もが思うであろう「3つの代わりに無数の望みを叶えてくれ」という願いは受け付けないそうな。彼は人間の女性を愛し、妖霊のハーフだったシバの女王をはじめ、彼がいかに各時代の女性たちを愛し、彼女たちの望みを叶え、それがいかに自身の破滅(幽閉)につながっていったかを語っていく。

シンプルなホテルでのアリシアとの会話を挟んで、優雅な時代の物語が豪勢な衣装やセットで描かれていて、これ石岡瑛子とかが衣装やってたら見ものだったろうなあ。AS・バイアットの短編をもとにジョージ・ミラーと娘が脚本を書いていて、肥大した裸の女性が出てくるあたりが「デス・ロード」っぽいかな。あとは「デス・ロード」のバア様のひとりがちょっと出ています。

身寄りのないアリシアを演じるのがティルダ・スウィントン様で、相変わらず年齢不詳でお美しい。ジン役はイドリス・エルバことストリーンガー・ベルで、大きな目をキラキラさせながら語るのがいいです。

予告編だと奇抜な内容であるかのような印象を受けるが、実際はもっとしっとりした、大人のおとぎ話・恋物語であった。興行的には大失敗したとかで、確かに最後の展開はちょっと弱いところがあるものの、普通に楽しめる作品でした。「マッド・マックスの監督」という偏見を捨てて観るべし。

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」鑑賞

いやー評判通り面白かった。日本は3月公開。遅いよ。とにかく先の展開が読めない作品なので、何の前知識も持たずに観に行ったほうが良いと思うものの、某ピクサー映画の抱腹絶倒のパロディが出てくるので元ネタは知っておいたほうが良いかも。

夫婦でクリーニング屋を細々と経営する中国系夫婦の奥さんが、ある日突然、別の次元からやってきたという別の夫に出会い、マルチバースすべての世界に迫る脅威と戦うことになる…というあらすじだが、SFからカンフー映画からコメディまであらゆる要素を混ぜ込んで、それでいてしっかり感動させてくれるという見事な内容になっている。

主人公は凡庸な主婦である一方で、別次元の夫に与えられたヘッドセットを通じて他の次元の自分にアクセスしてその能力をコピーすることができ、おかげで小指で人が殺せるカンフーの名手になれたりもする。このためカンフー映画やウォン・カーウェイの映画のパスティーシュなどが出てきて面白いのですが、別次元にアクセスするには「奇抜な行為」をやる必要もあるとかで、彼女やその敵たちが行う行為がいろいろエスカレートしていきます。なんとなく雰囲気が近いな、と思ったのは「バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー」(あっちもジェイミー・リー・カーティス出てましたね)、さらに言うと「うる星やつら」みたいな80年代のSFコメディ漫画かな?

日本の漫画だと女子高生が主人公の学園コメディとかになりそうだけど、こっちは主役を演じるミシェル・ヨーが60代、夫役で20年ぶりに役者業に復帰したキー・ホイ・クァンが50代、父親を演じるジェームズ・ホンに至っては90歳と、かなりの年配組。それでも体を張ってカンフーを披露してたりするから凄いのだが、コメディやアクションの裏には、しがない主人公が他の次元で経験できたかもしれない「ありえた人生」が語られていく。脅威と戦うのにこの次元の主人公が選ばれた理由も、他の自分と比べて何も達成してないから伸びしろがある、みたいなことが説明されてたような。

また中国系の家族における苦心や絆についても多分に描かれていて、これだけ中国語が飛び交う作品が全米で大ヒットしたのも驚きだが、状況によって広東語と北京語が使い分けられてるらしくて、こういうのは監督の片割れであるダニエル・クワンの経験とかが反映されてるのかな。親子3代が違いを乗り越えて結束し、カンフーを使ってニヒリズムと戦う、なんて映画作れそうにないものをしっかり作ってしまっている。

2時間20分は長いものの、とにかく次に何が起きるかわからないままゲラゲラ笑いつつ最後にはしっかり感動させてくれるという貴重な経験でした。おすすめ。