「トイ・ストーリー3」鑑賞


うーん。世間的にはたいへん高い評価を得ている作品ですが、個人的にはどうもしっくりこなかったのだよ。これは作品の良し悪しではなく自分の期待によるものなのでしょうが。

自分にとっての「トイ・ストーリー」というのは、オモチャの主人公たちがドタバタを繰り広げつつも、ホロッとさせてくれるシーンもある作品というイメージで、そのドタバタと真面目の比率が7:3くらいなんだよな。それが今回は「捨てられるオモチャ」という大真面目なテーマが最初から設定されているために、その比率が逆になって、全体的に重々しい雰囲気が感じられてしまうのですよ。

それと「2」のXXXXXに対しても感じたけど、「悪意のあるオモチャ」というのがどうも受け入れられなかった。「2」のザーグみたいに悪役として作られてるもののどこかマヌケなオモチャならいいんだが、今回は(ちゃんと理由があるとはいえ)露骨に悪者のオモチャが出てきたのが好きになれなかったな。オモチャはあくまでも無邪気で、悪いのはクソガキや強欲なコレクターの人間という図式を勝手にいだいてたので。仲間を拷問してゲロらせるオモチャというのは、どうもね。

別に「アニメは陽気であるべきだ!」とか「子供に暗いアニメを見せるな!」とか言うつもりは毛頭ないですが、今までの話とずいぶんトーンが違ったので戸惑ってしまったというべきかな。持ち主に捨てられるオモチャの悲哀なら、すでに「2」のジェシーのフラッシュバックで十分に秀逸な演出を見せられてたし。

でも最後の30分あたり、ゴミ処理場からのシーンはドタバタあり感動的なラストありで、従来の「トイ・ストーリー」を彷彿とさせて大変面白かったですよ。

ちなみに3Dはいらんでしょ、これ。ピクサーによるオモチャたちは2Dで観ても十分に立体感があるし、遊戯所に奥行きができたからってそんなに面白いものでもないし。メガネなしでも普通に見えるくらい、3D処理がされてなかったような?

「STAR WARS UNCUT」鑑賞(途中まで)


「スター・ウォーズ エピソード4」を15秒ごと、計473のシーンに切り分けて、それぞれのシーンをファンのみんなが分担して撮影して1つの長編作品を作り上げよう、という26歳のSWファンが企画したプロジェクト。こないだまで各シーンの撮影者を募集してたような印象が合ったけど、いつの間にか完成していて、こないだエミー賞のインタラクティブ部門なんてのを受賞したらしい!

完成品は公式サイトで公開されてるけど、基本的に15秒のクリップが連続して流されるという仕組みで、コスプレあり手書きアニメあり人形アニメあり、さらにはチャット風のシーンありと、皆が独自の解釈で撮影したシーンが次々と流されるのは(クオリティに大きな差があるとはいえ)なかなか面白い。ルークがオヤジになったり子供になったり、C3POがアルミホイルの塊になったかと思いきや「MST3K」のクロウに化けたりと大忙し。みんなR2D2の扱いに苦心してるのが笑える。実写と絵アニメと人形アニメがそれぞれ3分の1くらいの割合かな。フィギュアとかレゴ人形を使った人形アニメがいちばん再現性が高いんだけど、そのぶん安直すぎてつまらなかったりする。ハリボテのヘルメットをかぶったストームトルゥーパーたちがドタバタするような映像のほうが微笑ましくていいぞ。

実はルーカスフィルムが全面的にバックアップしているらしくて(太っ腹!)、いずれはオリジナルのサントラを用いたコンプリート版が作られる予定らしいけど、いまの時点では各シーンに複数のバージョンがあった場合、いちばん人気のあるものが流されるという仕組みになってるらしい。まさにインタラクティブ。俺が観たときはフラッシュ・プレーヤーの読み込みがうまくいかなくてモス・アイズリーの酒場あたりまでしか観れなかったんだけど(シーン飛ばしがうまく出来んのよ)、いずれまたコンプリート版を観てみたいところです。

Star Wars: Uncut Trailer from Casey Pugh on Vimeo.

「THE GHOST WRITER」鑑賞


いろいろ巷で話題になっているロマン・ポランスキーが、スイス警察に逮捕されながらもしれっと作ってしまった政治サスペンス(刑務所で編集をしたらしい)。

物語はユアン・マクレガー演じる主人公の作家が、イギリスの前総理大臣であるアダム・ラングの回顧録のゴーストライターの仕事を持ちかけられるところから始まる。既に回顧録には別のゴーストライターがいて草稿を書き上げていたのだが、彼は謎の溺死を遂げてしまったというのだ。そして主人公は政治に疎いものの、原稿執筆の早さを見込まれて仕事を与えられ、そのままラングが滞在しているアメリカはマサチューセッツの孤島(マーサズ・ヴィニヤード)へと送られる。そこで彼はラングのほか、彼の秘書や神経質な妻に出会う。さっさと仕事を片付けて島から出ようとした主人公だが、ラングが首相のときにイギリス国籍のテロリスト要員をアメリカに引き渡して拷問にかけさせていたことが世間に明らかになり、ラングは戦争犯罪で裁判にかけられる可能性が出てきてしまう。とつぜん身の回りが慌ただしくなってきたなか、主人公は自分の前任者が残した謎めいた資料を発見し、彼の本当の死因を探ろうとする。そして調査を進めるうちに、主人公は衝撃の事実を知るのだった…というのが大まかなプロット。

とにかく雰囲気の盛り上げかたやストーリーの進め方が巧い。人里離れた僻地を舞台に、絶妙なカメラアングルを用い、臨場感ある音楽を絡めて謎を少しずつ解き明かしていく手腕はさすがベテランですね。「チャイナタウン」のようなギラギラした感じはないものの、じわじわと不気味な謎がストーリーに染み込んでいくさまは「ローズマリーの赤ちゃん」に通じるものがあるかな。孤島を舞台にしたサスペンスとしては「シャッター・アイランド」よりも遥かに面白かったぞ。無人の車がフェリー内で見つかる冒頭から、衝撃のラストまで観る人を飽きさせない。

イギリスの元政治記者が書いたフィクション小説が原作なのだが、前総理大臣のアダム・ラングは露骨にトニー・ブレアをモデルにしていて、彼の政権とアメリカの癒着を暗に批判した内容になっている。ラングを演じるピアース・ブロスナンも腹に一物ある政治家を巧みに演じているほか、彼の妻を演じるオリヴィア・ウィリアムスもいい感じ。ただしウィリアムスは「天才マックスの世界」の清純な女教師のイメージが個人的にはあるので、最近こういう影のある役を演じることが多くなったのには少し複雑な気分がするのですが。ラングの秘書を演じるキム・キャトラルだけが少し浮いていたかな。どうしてもSATCのイメージが強すぎるので。あとイーライ・ウォラック(94歳!)がチョイ役で元気な姿を見せてくれるぞ。

(ネタバレ注意)「イギリス政権はアメリカの傀儡だった!」というオチには、そんなもん皆すでに知っとるわい!と思ったりもしたが、非常に優れたサスペンスであることは間違いない。世間ではこれがポランスキーの最終作になるのではという声もあるようだが、これだけ面白い作品を作れる監督がこれで打ち止めとは勿体ない。いたいけな13歳の少女を人身御供にしてでも、ぜひまた映画を作って欲しいところです。

「ヒックとドラゴン」鑑賞


「トイ・ストーリー3」を観てないのであまり大きなことは言えないのだが、個人的にこの夏のお薦め映画は「インセプション」とこの作品かと。

ストーリー自体はとてもベタで、恐ろしい存在だと思われていたドラゴンと少年が交流していくうちにお互いに心を開いていき、やがて共存することの大切さを学ぶという、映画のポスターを見ただけでも予想がついてしまうような話が続くわけだが、この王道の展開がかえって素朴かつ力強いものをストーリーに与えているのではないかと。従来のドリームワークスのアニメはピクサー作品に比べて、ムダな下ネタや時事ネタのパロディなどを詰め込んで作品の質を下げている印象があったんだけど、今回はそれを排除したことでより多くの観客にアピールできる内容になっている。やっとピクサーに対抗できる作品が出てきたな、という感じ。

少年がドラゴンと空を駆け回るシーンも非常にダイナミックで見応えがあって、これなら3Dで観ても悪くはないかな、と思わせる出来だった(それでも俺は3D嫌いだけどね)。後半の展開には「君たち、ドラゴンの生態系を破壊してない?」と思ったが、少しビタースウィートなヒネリのあるラストも含め、大変楽しめる作品であった。

原作は何巻もある絵本だし、続編の製作も決まってるらしいけど、「シュレック」シリーズみたいにダラダラ続くフランチャイズにならないことを願うばかりです…。

「インセプション」鑑賞


やっと観てきた.評判通りの素晴らしい出来。キャラクターの立ち方が半端じゃなかった「ダークナイト」には劣るかもしれないが、2時間半の長尺を飽きさせずに最後まで観させるクリストファー・ノーランの手腕は凄いものがあると思う。 自分が何を伝えたいのかをきちんと把握している監督の映画はやはりいいですね。この作品については既にいろいろなことが語り尽くされていると思うので、今さら自分がどうこう言うのもおこがましいのですが、いくつか感想を箇条書きすると:

・夢の設定とかにはいろいろツッコミが入れられそうなのだが、何も言うまい。自由落下している人の夢の世界が無重力状態になるなら、寝返りをうった人の夢の中は天地が逆になるのかな?
・ディカプリオは前作「シャッター・アイランド」とキャラがかぶっている点で損をしている。眉間に皺を寄せて顔を洗うような作品ばかり出たりせず、インディーズのコメディとかに出てたまにはガス抜きすればいいのにと切に願う。
・渡辺謙はあと2倍くらい英語が上手くならないと、「無口な役」とか「半分気絶してる役」とかから抜け出せないような気がする。特に日本人にとって鬼門であるthの発音をマスターしないといかんな。
・トム・ハーディが「ネメシス」の時からえらく顔が変わっていて誰だか分からなかった。もっともあの人は「BRONSON」でもっと過激な肉体改造に挑んだ前例があるのだが。
・トム・ベレンジャーは最初ブライアン・コックスかと思った。久しぶりにこの人が出てる映画を観たな。
・あの皆が接続する機械は「ブレードランナー」のヴォイト=カンプ・テスト用のマシンへのオマージュだろうか。

ダークナイト」のときもそうだったけど、あまりにも作りが手堅すぎてこういう雑多な感想しか思い浮かばなかったりする。でもさ、映画のなかではあんな面倒くさいミッションを遂行してたけど、他人のアイデアを拝借して、本当に自分のアイデアだと心の底から思い込んでしまう人ってよくいないか?そういう意味ではおれ何度もインセプションした経験があるよ!