「デイトリッパー」鑑賞

「スーパーバッド」や「Adventureland」のグレッグ・モットーラ監督のデビュー作(1996)。プロデューサーはスティーブン・ソダーバーグ。

ロングアイランドに住むイライザは夫のルイスと幸せな夫婦生活を送っていると思っていたが、ある日夫の服のポケットにラブレターらしき手紙が入っているのを発見してしまう。これに驚いた彼女は実家の両親に相談したところ、直接ルイスに会って真相を問いただすのが最良だと説得され、イライザとその両親、および妹とその婚約者の5人はステーションワゴンに乗り込み、ルイスが働くニューヨークへやってくるのだったが…というような話。

ニューヨークの郊外ロケを多用した撮影や、変にインテリな会話が始まる展開なんかはいかにも90年代のインディペンデント映画という感じだけど、1日の旅において家族の絆と価値観が見直され、家族みんなが何かしらの形で成長していくさまが手堅く描かれていて面白い。またキャストが異様に豪華で、ホープ・デイビスやリーヴ・シュレイバー、パーカー・ポージー、スタンリー・トゥッチ、キャンベル・スコット、マーシャ・ゲイ・ハーデンなど後に主役級の役者となる面々が揃っているのが結構凄い。母親役のアン・メアラ(ベン・スティラーの母親)がいちばん熱演してたかな。

全体的に少し古めかしい気がするのは否めないが(ワールド・トレード・センターが出てくるだけで時代を感じるようになってしまった)、よく出来た小品。個人的には「Adventureland」よりもお薦めかも。

「SUGAR」鑑賞

野球が題材のアートハウス・シネマなんて初めて観た。

ドミニカ共和国の野球クラブでピッチャーをしていたミゲル・”シュガー”・サントスは、スカウトに教えられたナックル・カーブが認められてカンサス・シティーのメジャーリーグ・チームのキャンプへと招かれる。家族を離れてフェニックスのキャンプ場にやってきたシュガーはそこでも実力が認められ、アイオワのド田舎に拠点を置くマイナー・リーグのチームでプレーすることに。慣れない環境に戸惑いながらも徐々に力をつけていき、勝利を重ねるようになったシュガーだが、足を怪我したことでスランプに陥ってしまい…というのが大まかなプロット。

話の前半はそれなりのサクセス・ストーリーなんだけど爽快感などはまるでなく、レストランのメニューも読めないような選手が異国のマウンドに立つことの壮絶な孤独感がうまく描かれている(全体的に撮影が巧い)。成績が出せなければ即刻で解雇される環境のなか、周囲の人間とろくに意思疎通もできずにプレッシャーに押しつぶされていくシュガーの姿が哀愁を誘っていた。

そしてシュガーやその代わりのピッチャーがどれだけ活躍したとしても所詮はマイナー・リーグでの話であるわけで、アメリカの野球界の選手層がどれだけ分厚いかを実感させてくれる映画であった。前に「フープ・ドリームス」を観たときもNBAの選手層の厚さに驚いたけど、メジャー・リーグの場合は海外にも太いパイプを持っているぶんさらに選手の層は厚いんじゃないかな。故郷にいてもろくな職につけないなか、アメリカン・ドリームを夢見てアメリカにやってくる選手たちは数多いんだろうけど、そのなかで大成できるのは本当にごく限られた一部なんだろうな。

「My Wrongs 8245–8249 & 117」鑑賞

愉快なテロリストたちを描いた映画「Four Lions」がついに完成して今度のサンダンスで公開されるらしいクリス・モリスが、脚本と監督を手がけた2002年の短編映画。

ある男性が友達の家で留守番をして犬の面倒を見ていたところ、犬が自分に命令しているように感じるようになり、彼は犬にうながされるまま手綱を持って犬と外出することに。そして手綱を自分の首にかけたとたんに犬が暴走して彼は公園の池に飛び込んでしまう。そしてついに犬は男性に語りかけるようになり、自分は男性が犯した罪に対する弁護士だと主張するのだが…というような内容。

ひたすらシュールな展開が続く作品で、男性が犬に引き回されて公園やバスや教会に連れてかれる展開が非常にスピーディだし、レジデンツのPVを彷彿させる実験映画っぽい特殊効果もあってなかなか面白い。ワープ・レコーズの映画部門が関わっているということでオウテカっぽい音楽もなかなかいいぞ(音楽もモリスによるものだとか)。BAFTAの短編部門賞を受賞したというのも頷ける。

なお主役の男性を演じるのはパディ・コンシダイン。彼って無骨な役柄のイメージがあったけど、こういう困惑した人物の役も似合うんですね。

「グラン・トリノ」鑑賞

今さらながら。こういう話だったのか!イーストウッド爺さんカッコ良すぎる。年をとるごとにこういう復讐鬼(?)の役が似合っていく役者というのは彼くらいのものじゃないだろうか。ブロンソンでもあの貫禄は出せなかったよな。

「許されざる者」において、「酒を飲むと人を殺すから」という理由で酒を断っていた主人公が、親友が殺されたことを聞いてグビグビと酒を飲みだす場面(しかも非常にさりげなく撮っている)は俺の映画人生のなかでもベスト10に入る名シーンなのですが、この映画もそのシーンを彷彿させるところが多くて素晴らしいのです。最後は牧師を連れて「ローリング・サンダー」的展開にもつれ込むのかと思ったけど、さすがにそれは無かったか。

あと話の進み方とか撮影の手法(特に光の当て方)とかが良い意味で古典的で、こういう映画を作れる人って少なくなったような気がする。難があるとすれば、THE WIREなんかを観てると分かるがギャングの去ったあとには別のギャングがやってくるわけで、ラストの解決法が弱冠安直な感じがすることか?でもまあ文句は言うまい。あとはミャオ族の文化について我々は劇中で紹介されたものを素直に受け止めているわけで、ミャオ族に詳しい人からは異論が出るのかもしれないな。

イーストウッド健在であることを実感した一本。彼とマイケル・ケインにはいつまでも長生きして欲しいところです。

「ポイント・ブランク」鑑賞

これもまたアメリカでは人気あるものの日本では知名度の低い作品。「殺しの分け前/ポイント・ブランク」と題名が似ているがこっちはブラック・コメディなのでお間違えのないよう。

ジョン・キューザック演じる主人公のマーティン・ブランクは一流のヒットマンだが自分の仕事に空しいものを感じるようになり、セラピストに通うようになっていた。そんな彼に高校の同窓会の通知がやってくる。最初は出席を嫌がっていたものの、ちょうど地元での暗殺仕事を引き受けたため彼は10年ぶりに地元へ戻り同窓会に出ることに。いざ地元の町に戻った彼は仕事そっちのけで昔の恋人を見つけ出し、再びよりを戻そうとする。しかしそんな彼を狙う殺し屋たちも町にやって来ていて…というような話。

それなりに派手なドンパチとかもあって面白いことは面白いものの、主人公が終始落ち込んでいるために何かキレが悪い感じがする作品。もっと脳天気な内容にしてもよかったのに。主人公と他の殺し屋と政府のエージェントという3者の関係もいまいち掴みにくい。ジョン・キューザック主演のブラック・コメディだったら「アイス・ハーヴェスト」のほうがずっと面白かったぞ。なお音楽担当はなんとジョー・ストラマー。ザ・クラッシュやヴァイオレント・フェムズをはじめ、スペシャルズやザ・キュアーといった80’sの音楽がガンガン流れる内容になっている。というかオリジナルの音楽はほとんど流れてなかったような。