「ゼイリブ」鑑賞

前から観たかったのよ、これ。

前半の30分くらいは、突然テレビに映し出される海賊放送や人民はコントロールされているというメッセージ、上空を旋回する警察のヘリコプターや住民を襲撃する機動隊などの描写が、例のカーペンターな音楽にあわせて独特な雰囲気を作ることに成功しており、「おおっ、これはビデオドローム!」とか思ったんですけどね。

でもエイリアンたちを識別できるサングラスをかけるようになってから、無口だった主人公が急に饒舌になって、かの有名な決めゼリフ「俺はここにガムを噛み、ケツを蹴りに来た。そしてガムは切らしている」を発してからはズルズルとB級映画のノリになっていくところが、まあジョン・カーペンターかなと。あの意味もなく延々と続くケンカとか、背広姿で異星に向かう宇宙港とか、全体のストーリーとあまり関係ないところの描写がやけに凝ってたりするんだよな。

でも扱っているテーマは非常に興味深いものがあるし、かなり楽しめる作品だった。例によってリメイクの話があるそうだけど、「要塞警察」も「ハロウィン」もリメイク版は評判悪いんだから無理して作ることもないのにね。

「モンキーボーン」鑑賞

こないだ「コラライン」のDVDを注文したので、その予習としてひとつ。監督自身が駄作と認めてるような作品だが、それなりに面白かった。

確かに演出は拙いし、話の展開もトロかったりするんだが、それはそれで味のある映画かと。特に前半の、昏睡状態に陥った主人公の悪夢のシーンなんかは見応えあり。特に地獄(辺獄?)の「ダウンタウン」の描写はザ・レジデンツの「バッドデイ・オン・ザ・ミッドウェイ」に通じるものがあるな。

出演者ではチョイ役であるものの解剖医を演じるボブ・オデンカークが相変わらず素晴らしい。あとはクリス・カッタン。あの人ってジミー・ファロンの10倍くらい面白いと思うんだけど、最近あまり話を聞かなくなっちゃいましたね。そして俺は今のところブレンダン・フレイザーが出ている駄作というのを観たことがないかも。そんなに観てませんが。

3連休でもやることがなくて家でゴロゴロしてる人間が、サクッと観るにはうってつけの作品。

「恐怖のまわり道」鑑賞

こないだRotten Tomatoesのビデオキャストを観ていたらエロール・モリスが出て来て彼の好きな映画ベスト5を挙げておりまして、そのなかで「恐怖のまわり道」(Detour, 1945)なる低予算作品を史上最高のノワール映画だと讃えていたのが気になって、さっそくarchive.orgでダウンロードしてみたのであります。

物語の主人公はニューヨークのしがないピアノ弾きで、ハリウッドに行った恋人に会いたくなって西へヒッチハイク旅行をしていたところ、裕福そうな男性の車に乗ることに。そしたら何の因果かその男性が急死してしまい、仕方なしに主人公は彼の死体を隠して、彼の免許証を使って身分を偽り旅を続けることに。そして到着したカリフォルニアで1人の女性を乗せてあげるのだが、彼女は急死した男性のことをたまたま知っており、主人公が身分を偽っていることに対して恐喝をしてくるのだった…というのが大まかなプロット。

鬼女のごとく恐喝をしてくるアン・サヴェージの演技はなかなか迫力があるものの、まあ普通の作品かなあといった感じ。ストーリーの大部分が車中で進行していく点がイマイチなのかな。モリスに限らずアメリカでの評判は高い作品らしいけど、個人的にはさほど素晴らしい作品だとは思えなかった。

ちなみにモリスの最も好きな映画は、なんと原一男の「ゆきゆきて、神軍」なんだそうな!インタビューの対象が何を言い出すのか、まるで予想がつかない状況というのが彼にとっての憧れらしい。まあ確かに奥崎謙三が相手じゃ予想はつかんよな…。

「ターミネーター4」鑑賞

これ、「ターミネーター」じゃないじゃん。

「ターミネーター」という作品を構成していた血と肉をとっぱらって、文字通り骨だけの内容にしてしまったような映画。第一作をあれだけ面白いものにしていた「未来から送られて来た恐怖の殺戮マシーン」というようなプロットは全部捨てられていて、単に金属のガイコツとのドンパチが2時間続くだけの話になってしまっている。でも俺そういうのが観たかったら映画館じゃなくてゲーセンに行きますから。

巨大メカやら大爆発やらを次々と繰り出して来てくるのは結構ですがプロットの薄さは致命的で、マーカスの正体が何なのかは観客みんなすぐ分かっちゃうし、カイル・リースがどんな危険に晒されようとも死なないというお約束もミエミエ。その一方で前作までのストーリーとの整合性に変に縛られているような気がするんだよな。そもそもタイム・トラベルの技術が出てこないのに、なぜスカイネット側はあの時点でカイルの重要性を把握できたんだ???

クリスチャン・ベールは役作りにちゃんと気を使う役者だし、監督だって脚本家だってそれなりに面白い作品を製作しようとこの作品に関わったはずなのに、それが結局このようなダメ作品しか生み出せなかったことに俺は非常にムカついておりまして、それがハリウッドというものの実情なのかは存じませんが、そんなんだったら映画作るの止めちゃえばいいのに。シリーズ自体は今後もダラダラと続けられるだろうけど、「スター・トレック」以上にオーバーホールが必要なフランチャイズなんじゃないの、これ。

マイケル・アイアンサンド(上の写真)がいつもと同じような役で出演してるのは嬉しかったけど、それくらいしか褒められる点が思い浮かばないや。

「スター・トレック」鑑賞

とりあえず眩しい映画。観るときは明るいところで観ましょう(笑)。

*以降はネタバレ注意*

映画そのものとしては85点くらいあげてもいい出来なんだけどね、オールドファンとしては観終わったあとに何かポッカリと空しいものを胸のなかに感じてしまったよ。その理由は至極単純で、旧シリーズとの整合性をもたらすために持って来られた(と俺は思う)タイムトラベルの要素が、結局のところ旧シリーズとの断絶を決定的にしてしまったところ。

いやさ、「あれはあれ、これはこれ」と切り分けられればいいんだけど、じゃあ老スポックなんて連れ出してくる必要がなかったんじゃないのかと。例えば劇場版第4作目におけるスポックと母親のやりとりなんて非常に好きな場面なのですが、あれをいきなり「なかったこと」にされても、ねえ。そもそも宇宙連邦って時間調査課が存在しなかったっけか?DS9に出て来たダルマーとラクスリーは、こんな重大な歴史改変を許してしまうのか?まあ別れた恋人のことを想ってウジウジ悩むのか、気分を入れ替えて新たな恋愛活動を始めるかを迫られる映画なのかもしれない。俺は私生活でも明らかに前者ですが。

新しい俳優陣は特にミスキャストもなく、みんなうまい具合に役にハマりこんでいるという感じ。特にマッコイ役のカール・アーバンが予想以上に良かったかな。残念なのはエリック・バナ演じる悪役がものすごく型にはまったキャラクターということで、暗い宇宙船のなかで邪魔そうな武器をもち、しかめ面して怒鳴るだけ。こんな奴にバルカン人は負けるなよ。

ストーリー自体はテンポも良くてアクションも多く、観る人を飽きさせない出来になっている。ただ「M:I-III」のときも感じたけど、J・J・エイブラムスってプロットを巧妙にヒネった娯楽作を手堅く作ることに長けているけど、そこから先のドラマの部分に関しては凡庸なことしか出来ないんだよな。誰もスター・トレックに感動的なドラマを求めてはいないかも知れないが、そこを磨かない限り彼はスピルバーグのようにはなれないでしょう。最近の「ダークナイト」や「スパイダーマン2」から察するに、こうしたフランチャイズ映画はオリジン話に時間をとられる第一作よりも続編のほうが面白くなる傾向があるようなので、この「スター・トレック」も第二作目に期待したいところだけど、その際の監督はエイブラムスじゃないほうが良い結果になるんじゃないかな。

まあいろいろ書いたけど映画としては十分に楽しめる作品だと思う。日本で大ヒットするかというと微妙だけど、デートムービーとして鑑賞できるスター・トレックというのは画期的ですからね。日本のトレッキーどもよ、女の子と映画を観にいける生涯一度のチャンスが来たぞ!

追記:
そういえば怒りに震えるスポックに対して、サレクが語りかけるシーンで「復讐するな」という字幕が出るんだけど、あれって「怒りを抑えるな」という方が正しいんじゃないの?そうしないと次の「私は彼女を愛していた」(感情の肯定)に続かないと思うんだが。