「ルーニー・テューンズ バック・イン・アクション」鑑賞

2003年の映画で現時点でのジョー・ダンテの最新劇場作品(要するにホサれてんのよ)。興行的に大失敗したということでちょっと敬遠してたんだが、何のことはない、目が覚めんばかりに素晴らしい作品だった。

雰囲気的にはあの大傑作「グレムリン2」に似ていて、つまりプロット自体は破綻しているものの代わりにダンテ流の悪ふざけがギッシリ詰められており、彼の作品の常連であるディック・ミラーやロバート・ピカード、さらにはロジャー・コーマンが登場し、数多くのルーニー・テューンズのキャラクターたちと一緒に濃すぎるギャグの大進撃を見せつけてくれる。エイリアンが収容されている「エリア52」において、メタルーナ・ミュータントとトリフィッドとダーレクが肩を並べて襲ってくるなんて映画、他にはありませんぜ?そしてこれらの裏には、B級映画やルーニー・テューンズに対するダンテの愛情がひしひしと感じられる。どうもアニメのキャラクターの態度が冷たい気がした「ロジャー・ラビット」や「スペース・ジャム」に比べ、こちらのバグス・バニーやダフィー・ダックは実に生き生きしているんだよな。

内容はこんな中年オタク向けなのに、ファミリー映画としてマーケティングされたんだから興行成績が散々だったのも分からなくはないが、予定調和なストーリーの「カンフー・パンダ」なんぞより、俺は断然こっちを支持するね!というわけでレンタル店で見かけたら絶対観るように。

「WONDER WOMAN」鑑賞

DCコミックスのアニメムービー最新作。ワンダーウーマンって個人的にあまり思い入れのないキャラクターなんだけど、この作品は予想以上に面白かった。

基本的には1つの大きなオリジン・ストーリーになっていて、女神ヒッポリタの統治のもと女性だけのアマゾン族が暮らす平和な島に、ある日アメリカ軍のパイロットのスティーブ・トレヴォーが乗った戦闘機が不時着。彼を本国に帰すためにヒッポリタの娘ダイアナがワンダー・ウーマンとなって一緒にアメリカに渡るものの、男性が支配する世界に彼女はショックを受ける。それと同時期に、島に幽閉されていた戦争の神アレスが脱出に成功し、世界に戦渦をもたらそうとしていた…というような内容。

当然ながら戦闘シーンも多分に展開され、おかげでこの手のアニメには珍しくPG-13のレーティングがついているものの、単なるアクション作品にはならず、フェミニスト的な要素が盛り込まれているのがポイント。女性アメコミ作家としていまいちばん勢いのあるゲイル・シモーンが共同執筆した脚本においては、男性は暴力が好きでトラブルを起こしてばかりの頼りない存在になっており、われわれ男性にとっては耳の痛いセリフもでてくるものの決して説教的なストーリーにはなっていない。ダイアナは繊細でこそあるもののか弱い女性としては描かれておらず、トレヴォーが彼女を酔わせようとして逆に自分が酔いつぶれるあたりはハリウッドのステレオタイプの逆をうまく突いているようでニヤリとさせられる。

アニメーションの出来とストーリーに多少荒削りなところがあるものの、女性スーパーヒーローをうまく描いた佳作かと。ただしワンダーウーマンの最大の矛盾点である「平和の使者なのに戦闘ばかりしている」という点は言及されるものの答えは出されてませんが。あと難があるとしたらアルフレッド・モリーナによるアレスの声にドスがきいてなくて軽々しく感じられることと、スティーブ・トレヴォーのデザインが「イーオン・フラックス」(もちろんアニメ版だよ)のキモ男トレヴァー・グッドチャイルドに似ているところかな。

ちなみにDCはこのあと「グリーン・ランタン」のアニメムービーを製作し、そのあとは「スーパーマン/バットマン」を作る予定なんだとか。ずっと前から製作が発表されてる「THE NEW TEEN TITANS: THE JUDAS CONTRACT」の話はどこに行ってしまったんだろう…。

「Dr. Who and the Daleks」鑑賞

ピーター・カッシングがドクターを演じたことで知られる劇場版「ドクター・フー」の、2つあるうちの1つ。ストーリーはテレビシリーズの第2話(早川書房から小説版が出てたやつ)をもとにしているけど、内容はまるで「ドクター・フー」とは呼べない代物になっていた。

オープニングで流れるのは例のテーマ曲じゃなくてチープなモンド系の音楽だし、なんとドクターはタイムロードとか異星人という設定ではなく、ただの気のいい地球人の発明家という設定になっている。そんな彼の発明したターディスに乗って、孫娘ふたりとその恋人と一緒にドクターは遠い星に行くのですが、そこにはダーレクという不気味な種族がいて…という話なんだけど、セットは大がかりなものの出演者の演技はみんな凡庸だし、ストーリーに起伏がないし、ダーレクはレンズに泥を塗られたくらいで慌てふためくし、何だかなあといった感じ。当時の観客は「ドクター・フー」にこの程度のことしか求めてなかったんだろうか。ピーター・カッシングは好きな俳優だけど、彼にはグランド・モフ・ターキンとかヘルシング教授のような高い頬骨の似合うシリアスな役を期待してしまうのであって、この映画のような好々爺の役はどうも違うと思うんだが。

「ドクター・フー」のよほど熱心なファンでなければ、観る価値のない作品。

「チャンス」鑑賞

前から観たいと思っていた作品だけど、期待してたほどのものではなかったかな。

ピーター・セラーズ演じる軽度の知的障害をもった庭師チャンスが、主人が死んだことにより子供の頃から出たことがなかった屋敷を追い出され、初めての外界で多くの人々と出会っていく。その無垢さゆえにチャンスは人々の心情を映し出す鏡のような存在になって、人々は彼の何も意味のない言動に対し勝手に深い意味を見いだして感銘を受けるわけだが、あくまでも彼らはチャンスがただの庭師だということを知らないわけであり、それに対して観客はチャンスの正体を知っているから人々とのやりとりがどうもまどろっこしく感じられるんだよね。フランク・ダラボンの「マジェスティック」を観たときにも感じたが、観客だけが主人公の過去を知っている場合、周囲の登場人物の応対などをちゃんとうまく描かないと、周囲の人々が単なるアホのように見えてしまうんじゃないかと。

なお世間知らずが世間に出た話、という意味ではリンゼイ・アンダーソンの「オー!ラッキーマン」のほうが面白かった。もしかしたら「引きこもりが親の死によって家から出た話」として見ることもできるかもしれない。チャンスがテレビ中毒だというのをネット中毒というのに置き換えてさ。

ピーター・セラーズって稀代なコメディアンという見方が一般的だけど、個人的には「ピンク・パンサー」シリーズを大して面白いと思わないことや、この映画や「博士の異常な愛情」の役の印象が強いために、むしろペーソスのある役者という感じがするんだよな。あのアホ映画「カジノ・ロワイヤル」でもしっかり途中で殺されてたし。むかしロンドンにあるフリーメーソンのグランド・ロッジを見学したときに彼の写真が飾られてたのには驚きましたが。

「007/慰めの報酬」鑑賞

ダメ。前作で不満に思ったことがそのまま踏襲されている。一番ムカつくのは、悪役がサム・ライミ似の中間管理職のサラリーマン風情な猫背の中年男(当然弱い)だということ。世界征服を企む大富豪や、巨大兵器を建造するキチガイ科学者はどこに行ってしまったんだ!失脚した大統領にとりいって満足してるような偽エコ会社の社長なんか相手にしてどうするんだよ。奴の背後にある組織についてもろくに説明されないし。あとボンド・ガールがボンドとヤらないというのも非常に問題かと。

それとチェイス・シーンが多いのは結構なんですが、編集が粗いうえに競馬だのオペラだののシーンを挿入しているために何が起きているのかがとても分かりにくいことが多々あり。ここらへんは同じイギリス映画の「ホット・ファズ」から学ぶものがあるんじゃないでしょうか。

スクリーンを見ながらずっと、不敵に微笑むコネリー時代のボンドを懐かしんでいました。ボンドがいつまでもウジウジ悩んでるようじゃ、ねえ。