「バーン・アフター・リーディング」鑑賞

だめー。「レディキラーズ」がなければ俺にとってのコーエン兄弟のワースト作品かも。

彼らに映画作りの何たるかを説く気は当然無いけれど、サスペンスだろうとコメディだろうと観客が感情移入できる登場人物が最低1人はいないといけないと思うのですよ。それがこの映画の登場人物って私利私欲に取り憑かれた軽薄なバカばっかりで、誰がどんな運命に遭おうとも大して気にならないんだよな。国家機密と私生活という点ではジョゼフ・コンラッドの小説「密偵」を連想したけど、あちらは壮大な国家のイデオロギーが登場人物のケチな私欲に合わせてシュルシュルと矮小化されていく皮肉が痛快だったのに対し、この映画には別にイデオロギーなんてないからね。あとCIAが基本的に無能だという描写はブッシュ政権下だったらもっと効果的に見えたかもしれないが、今となっては、ねえ。コーエン兄弟はこの映画と「ノーカントリー」の脚本を同時期に書いていたらしいが、最終的な結果は水と油のごとくきれいに差が出たような感じ。

というわけで前回に続き、自分にとってのコーエン兄弟作品をランキング化してみる:

1、「ミラーズ・クロッシング」
2、「ブラッド・シンプル」
3、「ノーカントリー」
4、「ビッグ・リボウスキ」
5、「赤ちゃん泥棒」
6、「バートン・フィンク」
7、「オー・ブラザー!」
8、「ファーゴ」
9、「バーバー」
10、「ディボース・ショウ」
11、「未来は今」
12、「バーン・アフター・リーディング」
13、「レディキラーズ」

昔の作品は自分のなかで美化されつつあるのかな。世間的には「ブラッド・シンプル」の評価は高くないけど、床の血だまりをウインドブレーカーで拭こうとして逆に広げてしまう描写とかは非常に好きなんだよな。その一方で「ファーゴ」はやはり好きになれませんが。

帰国

ああ疲れた。ヒザが痛い。行きと違って帰りは良質の映画を2本観た。

まずは「フロスト/ニクソン」。フランク・ランジェラがニクソンよりもプレジネフに似ているという点に目をつむれば、インタビューにまつわる葛藤がうまく描かれた作品。インタビューがウォーターゲートの核心に迫るにつれ2人の背景が暗くなっていく演出も巧み。でもこれって歴史的背景が異なる日本じゃまずヒットしないだろうね。

そしてアカデミー賞受賞の「スラムドッグ$ミリオネア」。確かに感動的で素晴らしい出来の作品。これはみんなにお薦めします。ダニー・ボイルはその映像美にかなり独特のセンスをもった監督だと思うんだが、この作品でそれが頂点に達したような感じ。これ以上やるとたぶんコテコテになりそうなので、次の作品ではスケールバックするのか、それとも別の方向に行くのかにも期待したい。

出張中

またおフランスより。
いちおうリゾート地のようなとこなんだが天気は悪かったりする。

行きの飛行機ではゴミ映画を2本観た。まずは「地球が静止する日」で、何の理由でリメイクしたのかまったくもって不明な作品。感情のないエイリアンに仏頂面のキアヌ君を持ってきたのは分からなくもないが、いかんせん表情のない主役というのは観ていて退屈。ジェニファー・コネリーも相変わらずの「困ったママさん」という表情をしてるだけだし。脇役にもジョン・クリーズとかキャシー・ベイツとかカイル・チャンドラーとかいい役者を使っておきながら、みんな芸を殺すような役回りにしているのが最悪。あとオリジナルではあれだけ重量感があったゴートが、今回はサイズがデカくなっているくせにやたら軽く感じられる。ああいうのを観ると、CGが映画をつまらなくしているというのを実感しますね。

で次は日本未公開の「マックス・ペイン」。原作のゲームってよく知らないんだけど、何をやりたいのかまるで分からない作品。スーパーナチュラルなものかと思いきや全然そうでもなくて…。マーキー・マークはキアヌ同様に表情がいつも一緒だし。いくら薬でハイになっているからって、至近距離から撃たれて死なないというのはズルいよなあ。あとここ半年でオルガ・キュリレンコの出てる作品を3本観たけど、みんな「ワンピースを着た、淫らそうで実は筋の通ったねーちゃん」という役回りなのは何故なんだろうか。

こんな映画を2本観るよりも「チェンジリング」を観ればよかったと至極後悔。

「ルーニー・テューンズ バック・イン・アクション」鑑賞

2003年の映画で現時点でのジョー・ダンテの最新劇場作品(要するにホサれてんのよ)。興行的に大失敗したということでちょっと敬遠してたんだが、何のことはない、目が覚めんばかりに素晴らしい作品だった。

雰囲気的にはあの大傑作「グレムリン2」に似ていて、つまりプロット自体は破綻しているものの代わりにダンテ流の悪ふざけがギッシリ詰められており、彼の作品の常連であるディック・ミラーやロバート・ピカード、さらにはロジャー・コーマンが登場し、数多くのルーニー・テューンズのキャラクターたちと一緒に濃すぎるギャグの大進撃を見せつけてくれる。エイリアンが収容されている「エリア52」において、メタルーナ・ミュータントとトリフィッドとダーレクが肩を並べて襲ってくるなんて映画、他にはありませんぜ?そしてこれらの裏には、B級映画やルーニー・テューンズに対するダンテの愛情がひしひしと感じられる。どうもアニメのキャラクターの態度が冷たい気がした「ロジャー・ラビット」や「スペース・ジャム」に比べ、こちらのバグス・バニーやダフィー・ダックは実に生き生きしているんだよな。

内容はこんな中年オタク向けなのに、ファミリー映画としてマーケティングされたんだから興行成績が散々だったのも分からなくはないが、予定調和なストーリーの「カンフー・パンダ」なんぞより、俺は断然こっちを支持するね!というわけでレンタル店で見かけたら絶対観るように。

「WONDER WOMAN」鑑賞

DCコミックスのアニメムービー最新作。ワンダーウーマンって個人的にあまり思い入れのないキャラクターなんだけど、この作品は予想以上に面白かった。

基本的には1つの大きなオリジン・ストーリーになっていて、女神ヒッポリタの統治のもと女性だけのアマゾン族が暮らす平和な島に、ある日アメリカ軍のパイロットのスティーブ・トレヴォーが乗った戦闘機が不時着。彼を本国に帰すためにヒッポリタの娘ダイアナがワンダー・ウーマンとなって一緒にアメリカに渡るものの、男性が支配する世界に彼女はショックを受ける。それと同時期に、島に幽閉されていた戦争の神アレスが脱出に成功し、世界に戦渦をもたらそうとしていた…というような内容。

当然ながら戦闘シーンも多分に展開され、おかげでこの手のアニメには珍しくPG-13のレーティングがついているものの、単なるアクション作品にはならず、フェミニスト的な要素が盛り込まれているのがポイント。女性アメコミ作家としていまいちばん勢いのあるゲイル・シモーンが共同執筆した脚本においては、男性は暴力が好きでトラブルを起こしてばかりの頼りない存在になっており、われわれ男性にとっては耳の痛いセリフもでてくるものの決して説教的なストーリーにはなっていない。ダイアナは繊細でこそあるもののか弱い女性としては描かれておらず、トレヴォーが彼女を酔わせようとして逆に自分が酔いつぶれるあたりはハリウッドのステレオタイプの逆をうまく突いているようでニヤリとさせられる。

アニメーションの出来とストーリーに多少荒削りなところがあるものの、女性スーパーヒーローをうまく描いた佳作かと。ただしワンダーウーマンの最大の矛盾点である「平和の使者なのに戦闘ばかりしている」という点は言及されるものの答えは出されてませんが。あと難があるとしたらアルフレッド・モリーナによるアレスの声にドスがきいてなくて軽々しく感じられることと、スティーブ・トレヴォーのデザインが「イーオン・フラックス」(もちろんアニメ版だよ)のキモ男トレヴァー・グッドチャイルドに似ているところかな。

ちなみにDCはこのあと「グリーン・ランタン」のアニメムービーを製作し、そのあとは「スーパーマン/バットマン」を作る予定なんだとか。ずっと前から製作が発表されてる「THE NEW TEEN TITANS: THE JUDAS CONTRACT」の話はどこに行ってしまったんだろう…。