「SONIC OUTLAWS」鑑賞

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ここ数年で日本でも活発に論議されるようになった、知的著作権やフェアユースについてアーティストの側から語られたドキュメンタリー「SONIC OUTLAWS」を観る。

U2の曲を勝手にサンプリングして彼らに訴えられていた頃のネガティヴランドを中心に、音源を切り刻んでコラージュする人やビルボードの宣伝を書き換える人、海賊ラジオを放送する人といった様々なアーティストの活動と作品が紹介され、著作権に対する彼らの考えが述べられていく。以前にビデオクリップを紹介したEBN(Emergency Broadcast Network)や、イエス・メンの前身であるバービー解放戦線も出てくるぞ(みんな顔つきがヤバい人に見えるのは気のせいか?)。彼らの行う音や映像のコラージュはバロウズにならってカット・アップと呼ばれているが、今だとマッシュ・アップと言うのかな。作品自体がコラージュ的というか実験映画的な作りになっているので、話の流れが直線的でなくやや分かりづらい(見づらい)点があるのは仕方ないか。

1995年の作品ということで扱っている情報は古いものの、当時のフェアユースに対する概念がうかがえるのも興味深い。「カルチャー・ジャミング」なんて言葉はこの頃からあったんですね。「インターネットは今後どんどん中央管理されてくだろう」なんて発言もあるが、これは当たってるのかな…?あの当時だとまだ音楽や映像のコラージュにはオープンリールのテープなどといったプロ用の機材が必要で、作業にそれなりの職人技(=アーティスト芸)が必要とされてたと思うんだけど、それが10年ちょっとたった今じゃ市販のパソコンがあれば中学生でも音や映像が切り貼りできる世の中になったんだよな。Youtubeなんかを見ればわかるように、こうした素人が作った作品がプロの作品よりも人気が出てたりするわけで、ゲージュツについてはプロと素人の境界がどんどん薄れてきているわけだ。そして既存のものを再利用して新たな作品を生み出すこともどんどん活発になってきている。これに合わせ、知的著作権の扱いに対する規則・法律というのはより早いサイクルで再考・更新を迫られることになるんだろう。

それにしてもアメリカってこういうトンガったアーティストが多数いて羨ましいよな。日本だとすぐに社会から抹殺されそうなもんだが。

「オー! ラッキーマン」鑑賞

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「If もしも….」に続いてリンゼイ・アンダーソンとマルコム・マクダウェルがコンビを組んだカルト的作品「オー! ラッキーマン」を観た。マクダウェルが演じる主人公の名前は「If もしも….」と同じマイケル・トラヴィスだが、続編というわけではない。

あの当時のイギリス映画独特の、真っ黒けっけなユーモアがぎっしり詰められていて非常に楽しい作品。コーヒー豆のセールスマンとしてイギリス北部に派遣された主人公が、下宿の女将に誘惑されたり、軍につかまって拷問されたり、病院で人体実験をされかけたりとシュールかつ無茶苦茶な目にあいつつ世の中の摂理を理解していく、というのが主なストーリー。同時にイギリスの警察や裁判官や金持ちの実の姿を痛烈に風刺した内容になっている。3時間近い長尺だが、話の展開が異様に早いので観てて飽きることがない。元アニマルズのアラン・プライスが狂言回しとして随所に登場し、歌を披露するのも話にいいテンポを与えている。

これはマクダウェルが「時計じかけのオレンジ」のすぐあとに出演した作品らしいが、この頃の彼の雰囲気って凄いですね。ハンサムでもないし愛嬌があるわけでもないんだけど妙に人をひきつけるところがあって、「オレンジ」のアレックス同様に利己的に振る舞っても全然嫌みがなく、何やっても許されるような無垢な感じがするというか何というか。逆に後半で愚直なモラリストになると急に言動が空回りするのも面白い。あとの出演者は若かりし頃のヘレン・ミレンが出ているほか、複数の役を演じている役者が多いのが特徴的。最後にはリンゼイ・アンダーソン本人が出てきて、マイケルをこの映画に起用するというメタなことになってしまう!こういう映画はもう作られんだろうなあ。

ちなみにウィキペディアのこの映画のページには、「グラント・モリソンの作風に影響を与えた」みたいなことが書かれてるけど、そうかぁ?あまりモリソンっぽさは感じなかったけどね。

「RESCUE DAWN」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの久々の非ドキュメンタリー作品「RESCUE DAWN」を観た。これは以前に取り上げた、ヘルツォーク自身によるドキュメンタリー「Little Dieter Needs To Fly」をドラマ化したもので、飛行機に憧れてドイツからアメリカに渡り、空軍のパイロットとなったディーター・デングラーの姿を描いている。

ベトナム戦争に派遣されたディーターは操縦する戦闘機を撃墜され、北ベトナム軍に捕獲されてしまう。彼は拷問を受けたあとに他のアメリカ兵が収容されている捕虜収容所に移されるが、そこの過酷な状況にも耐えて収容所からの脱出を計画する…というのが主な内容。最初の10分くらいで戦闘機が撃墜される展開はかなり急だったが、そのあとは収容所における極限の生活と、逃亡後のジャングルでのサバイバルの姿がじっくり描かれている。ヘルツォーク作品の常として自然の描写はかなり見事。ベトナムではなくタイで撮影されたものらしいが、ジャングルや岩山の光景は非常に美しい。ただし主人公が「陽気でいい人」ということもあって、ヘルツォークの昔の作品に比べてかなり話が凡庸な気がしなくもない。やはりクラキンがいなくなった穴は大きいなあ。

主人公を演じるクリスチャン・ベールは相変わらず演技が上手だが、それ以上に他の捕虜を演じるスティーブ・ザーンとジェレミー・デイビスの演技が光る。スティーブ・ザーンなんてB級コメディの人かと思っていたけど、シリアスな演技がこんなに巧かったんだ。あとベールは映画によって体重の増減が激しすぎ。早死にするぞ。この作品ではウジ虫なんかも喰ったりしてるし。

伝記映画にはよくあることだけど、描かれている内容が実在の出来事とずいぶん違うということで捕虜たちの遺族から非難されているらしい。ここらへんはヘルツォークも十分承知したうえで意図的にフィクションを混ぜているので、観るときはちょっと留意したほうがいいかも。

「ブレードランナー」ファイナルカット版を観て

以前にも書きましたが、やはり俺としてはデッカードがレプリカントだという設定は好きになれんのよ。今回ファイナルカット版を観ていてつくづく思ったが、この作品のテーマは人間とレプリカントの対比にあるはずなわけで、デッカードとレイチェルの関係も人種(?)を超えた愛であり、おまけに彼女はあと数年で命尽きるという悲劇的な内容なわけですよ。そして人間によって作り出されたレプリカントがもはや肉体的にも知性的にも人間を超えた存在となり、しまいには生命を尊重するという感情さえも備えてしまったことを、狩る者から狩られる者になったデッカードが最後に悟るわけだよね。

これがもし「デッカードはレプリカントだった!」ということになるのなら、単に「同類相哀れんでいる」というだけで作品のテーマがえらく希薄になってしまうと思うんだが、どうだろう。確かにユニコーンを使った最後のタネ明かしの演出は素晴らしいけどさ。例えば「シックス・センス」なんかでは主人公が××だった、と明かされたことでそれまでの伏線が一気に解決されたけど、この作品ではデッカードがレプリカントだと明かされても、それまでの展開が変に複雑なものになるだけだし、あまり賢い終わり方だとは思えんのだが。そこらへんキャストやスタッフはどう考えてるんだろうと思って監督のコメンタリーや3時間超のドキュメンタリー「DANGEROUS DAYS」を観てみたが、あまり関連したことは話してなかった。うーん。

余談だがこの作品って原作に大幅な脚色を加えているわけで、「ブレードランナー」で使用されなかった原作の部分を拾い集めて再映像化しても十分面白いものが出来上がりそうなんだがどうだろう。自分の死期を承知しているレイチェルや、彼女と同型の脱走レプリカント、偽の警察署、自分にVKテストを試みるデッカード、足を切られてもがく蜘蛛、郊外を埋め尽くすキップル、あとまあマーサー教などなど。Sci-fiチャンネルあたりでTVムービーとかにしてくれないかな。

「Star Trek: Of Gods and Men」鑑賞

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「Star Trek: Of Gods and Men」なる「スター・トレック」のアマチュア・ムービーがネット上で公開されていた。3パートあるうちのパート1だとか。こないだの「World Enough and Time」はスールーことジョージ・タケイが出演していて話題になったが、今回はウォルター・ケーニッグにニッシェル・ニコルズ、イーサン・フィリップス、ギャレット・ワン、チェイス・マスターソンにシロック・ロフトンなどなど、かつてST関連のシリーズに出ていた役者が勢揃いで、監督もトゥヴォクことティム・ラスが担当している。ここまでくるとアマチュア・ムービーではなくて半分プロ作品だな。役者たちがファンの期待に応えて出演したとみるか、仕事がなくてヒマだったので小銭稼ぎに出演したとみるか、判断はおまかせします。

最近のSTのアマチュア・ムービーは「SFX一流、演技二流」だと以前にも書いた気がするが、じゃあ今回はプロの役者が出てるから演技が一流かというと…。みんな老けたなあ…という感じ。全体的に演出がなんか間延びしてるんだよね。SFXも「Star Wreck: In the Pirkinning」に比べればチャチに見える。あといろんなキャラクターを一緒に登場させるための苦肉の策なんだろうけど、プロットにパラレルワールドとかタイムトラベルとかをもってくるのやめようよ。話がややこしくなるばかりだって。

でもまあエンタープライズBのサエない船長ことジョン・ハリマンが活躍したり、「チャーリーX」までが登場するので、オールドファンにとってはそれなりに楽しめる出来になっている。こういう作品がちゃんと利益を出すようになって、キャストやスタッフたちに還元される仕組みが確立されればいいんだがなあ。