2014年の映画トップ10

評論家の方々がお選びになられている「6才のボクが、大人になるまで。」とかまだ観てないし、「アンダー・ザ・スキン」とか「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」とかが心の琴線に響かなかった俺ですが、今年は粒ぞろいの作品が揃った年だったような。ブロックバスター作品でも「ゴジラ」や「ガーディアンズ」みたいにちゃんと作り込んだものが多かったせいですかね(「トランスフォーマー」除く)。とりあえず上位5本と次の5本を、観た順にならべました:

・「アクト・オブ・キリング
年の初めに観たのでインパクトはもう薄れたが、その重厚な犯罪の告白は衝撃的であった。続編はどういう内容になるんだろう。

・「ウルフ・オブ・ウォールストリート
ディカプリオってやはりコメディが向いてるのではないか、と長年感じてたことがズバリ当たったような作品。金と欲望がぎっちり詰まった3時間。

・「X-MEN: フューチャー&パスト
今年のアメコミ映画はみんな当たりなのだが(「シン・シティ」も大目に見る)、個人的にはやはり新旧のフランチャイズをしっかり融合させ、3つくらいのプロットをきちんと語り尽くしたこの作品をベストに推したい。続編はこれを超えるの難しいのでは。

・「ザ・レイド GOKUDO
日本では意外と客が入っていないようなんだけど、なんかシーンをカットしたんだって?アクション映画としては今年のベストですな。

・「インターステラー
突っ込みどころはいろいろあるんだろうけど、実験的なSF映画できっちり客を呼べるところは賞賛すべきだろう。

次の5本(こっちも観た順)
・「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
・「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
・「LEGO® ムービー
機内で観たという引け目がなければもっと上にいったかも。最後のメタな展開はほんと素晴らしい。
・「グランド・ブダペスト・ホテル
・「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

書いてて思ったが、別に5本ずつに分けなくても良かったかな。まあいいや。

あとは「ゴジラ」「リアリティのダンス」「THE BATTERED BASTARDS OF BASEBALL」「ヒックとドラゴン2」などが良かったです。2015年も期待の作品が目白押しで、全米の興行成績は過去最高になるのではないかという皮算用もされてるようですが、みんなきちんと日本でも(早めに)公開されてくれると良いですね。

「ヒックとドラゴン2」鑑賞

How to Train Your Dragon 2
日本じゃ結局劇場公開しないんですってよ奥さん。

舞台は前作の5年後。青年となったヒックはトゥースレスとともに未知の土地の探索を行なっていたが、ある日ドラゴンを狩る男たちの集団に遭遇する。彼らを探ったヒックは氷に包まれたドラゴンたちの巣を発見し、そこを守る意外な人物に出会う。しかしドラゴンの撲滅を狙う男ドラゴの魔の手はその巣、さらにはヒックたちの故郷であるバークにも伸びてきて…という展開。

前作は本当に大傑作のアニメでして、今でもサントラをよく聴いたりするのですが、少年の成長とか異種族との和解とかボーイミーツガールとか、少年ものの王道の展開を真っ当から描いたところが素晴らしかったわけですね。それをやってしまったあとの今作では弱冠ネタ切れというか話が散漫になっている感が否めないが、しかしヒックが部族のリーダーへと成長していくさまはしっかりと描かれており、その象徴として重要な人物が○○したりと、結構ダークな展開が続くようになっている。その一方でケラケラ笑えるようなジョークも散りばめられているよ。

前作以上に多くの種類のドラゴンもでてきて、アルファ級(前作のボスみたいな連中)のドラゴンが暴れるところなんかは怪獣特撮のファンも満足できるんじゃないだろうか。ヒューレット・パッカードの新しいレンダリング・エンジンによって作られたグラフィックも、雲の上で舞うドラゴンとか夕陽の雪原などが非常に美しい(前作に続いてロジャー・ディーキンスがビジュアル・コンサルタントを担当)。大きなスクリーンで観たかったなあ。

声優陣は前作の人たちがそのまま復帰。ジェイ・バルチェルのヒックは前作だとナヨった感じが合ってたんだけど、青年になった今作ではちょっと頼りなく聞こえるかな。クレイグ・ファーガソン演じるゴバーが前作よりも重要な立ち回りを演じていていい感じ。一方でケイト・ブランシェットが新キャラを演じているものの、こないだ「ホビット」観たばかりなのでまたファンタジー映画に出てるのねとちょっと食傷気味である。今回はキャラクターが歌うシーンもあって、あまり個人的には好きではないのだけど、シェーン・マクゴーワン作詞でヨンシー&ジョン・パウエル作曲という珍しい組み合わせの曲なので大目に見ることにする。

まったく期待せずに観たら大傑作だった前作と比べるとインパクト的には弱いものの、「アナ雪」「ベイマックス」などとも勝るに劣らない出来の作品ですよ。なんでこれが日本で公開されないのか、ほんと残念。

「LASTDAYS」鑑賞


キャスリン・ビグロー姐さんによる3分ほどの短編で、象牙の密輸がもたらす被害を訴えたもの。公式サイトはこちら

綺麗な象牙の加工品が買われるところから始まり、時間をさかのぼってそれが密輸され、テロリストから売られ、象たちが象牙のために虐殺されていくさまが描かれていく。それに諸々のメッセージが重ねられるのだが、主なものを挙げると:

・希少動物の密輸は、銃や麻薬などについで世界4位の密輸ビジネスになっている。
・象牙の密輸によって得られた収入は、ボコ・ハラムやジャンジャウィードといったテロ集団の資金源になっている。
・15分に一匹の割合で、象が殺害されている。
・あと11年もすれば野生の象は絶滅する可能性がある。

といったもの。アニメーション作品なんだけど、途中でナイロビのショッピングモール襲撃のフッテージが挿入されてるところがビグロー作品っぽいかな。

冒頭で象牙の加工品が買われるのは(たぶん)中国なんだけど、日本だって象牙のハンコが普通に売られているわけだし(「うちの店は許可を得てます」と謳ってるけど、象牙を扱ってることに変わりはないよね)、我々としてできることは象牙の需要を無くすことかと。

「インターステラー」鑑賞

interstellar-poster
封切りしたばかりなのでネタバレにならぬよう感想をざっと:

・アンチの声は気にするな。あれだけハードなSFをきちんとブロックバスター映画に仕上げたノーランの手腕は評価されるべき。

・とはいえ科学や物理に疎い俺でも「あれ?」と思うようなプロットの穴がワームホールのようにぽっかり開いているわけですが、細けえことはいいんだよ!

・ただしこの話って「2001年宇宙の旅」でやったことだよね?と思ったことも事実で、キューブリックがクラシック音楽とアシッドトリップ(みたいなもの)で抽象的に描いていたものを、下世話にオルガンをガンガン鳴らしてやり直した、と思われても仕方あるまい。

・マン博士って名前から勝手に中国系かと思ってたら、あの人が頭脳明晰な科学者でしたかそうでしたか。

・一家のうち父親だけがテキサス訛りで話すってことありえるのかな?子供たちも影響受けたりしない?

繰り返すが「ダークナイト(特にライジング)」同様にツッコミを入れようと思えばいくらでも入れられるのだが、安直な大作でなく考えさせられる映画を作って客を集めてるクリストファー・ノーランはちゃんと評価されるべきであろう。一見の価値は或る作品ですよ。

「シン・シティ 復讐の女神」鑑賞

Frank Miller's Sin City_ A Dame to Kill For
9年ぶりの続編。以前から公表されていた通り、原作のうち「A DAME TO KILL FOR」を主軸に置いたもので、語られる話は4つ。前作と異なりうち2つは映画版オリジナルの脚本となっている。セグメント順に説明すると:

「Just Another Saturday Night」
1話読み切りのやつが原作。タイトル前のちょっとした短編ですね。マーヴを演じるのは前作に続いてミッキー・ローク。

「The Long Bad Night (Part I)」
映画オリジナルの話。というか出版されなかった原作の話を使ってるのかな?ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるギャンブラーが街にやってきて、悪徳政治家に賭けを挑む。抜群の賭けのセンスを持つギャンブラーはカッコいいんだけど…。

「A Dame to Kill For」
これがメインの話。ドワイトを演じるのはクライヴ・オーウェンに代わってジョシュ・ブローリン(いちおうオーウェンにも打診はしてたらしい)。まあ原作通りの話かな。前作の「The Big Fat Kill」の前日譚だけどコンテュニュイティーがちょっと変なのは気にしないように。

「The Long Bad Night (Part II)」
メインの話をブックエンドするような形で続きが語られる。パート1ではカッコよかったギャンブラーがどんどんヘタレになっていくような…。終り方もしっくりこないのよな。

「Nancy’s Last Dance」
前作の「That Yellow Bastard」の続編。ハーティガン刑事の仇をとるために、復讐計画を企てるナンシーの話。殴り込みに加担するマーヴが強すぎるのと、ナンシーを演じるジェシカ・アルバのアクションの演技がなっちゃいないので、なんか長過ぎる蛇足のような話であることは否めない。

ミッキー・ロークやジェシカ・アルバ、ブルース・ウィリスなどは前作に引き続き同じ役を演じているが、9年のあいだに鬼籍に入った人もいるので(マイケル・クラーク・ダンカンとか)、一部の役はキャストが変更になっている。デボン青木が演じてたミホはジェイミー・チャンが演じてるが、あの能面顔はデボン青木のほうが似合ってましたね。強大な黒幕のウォレンキストをステイシー・キーチが演じてるが、あんなコテコテのメークを施したのなら誰が演じても同じだったろうに。なおジェシカ・アルバが相変わらず脱がないストリッパーを演じているのに対し、「DAME」役のエヴァ・グリーンはすっぽんぽんで頑張ってます。あとはクリストファー・ロイドとかロザリオ・ドーンとか、キャストは豪華なのよキャストは。

結末を知らない映画オリジナルの話のほうが楽しめるかと思ってたけど、脚本がなんか拙いのよな。最初の短編はテンポがよくて面白かったものの、後半になるとかなり失速してしまっているような。単純に原作の「Family Values」(珍作「To Hell And Back」は忘れよう)あたりを映像化すれば良かったのに。そうするとドワイトづくめになるから外したのだろうか。

ビジュアル的にはカッコいいし、皆のオーバーすぎる演技もそれはそれで似合ってるんだが、どうも全体的に盛り上がりに欠けているんだよな。いちおう3部作にする予定らしいけど、本作が興行的に失敗だったので続きは作られないかも。個人的に好きな「Family Values」が映像化されてないのがちょっと残念。