「Escape From Tomorrow」鑑賞


今年のサンダンス映画祭で何の事前告知もなしに披露され、大きな話題を呼んだインディペンデント映画。何が特徴的かというとディズニーの許可を得ずにディズニーランドでゲリラ撮影を行ったことで、「ディズニーの弁護士の集団がヘリでサンダンスに向かっている」などという噂まで流れたものの、無事に一般公開までこぎつけたらしい。

舞台となるのはフロリダのディズニーワールド。そこに妻と2人の子供たちを連れてきていたジムは、朝から上司の電話で自分が解雇されたことを知らされる。暗鬱とした気分になりながらもそのことを妻子には隠し、皆でディズニーワールドへ向かうものの、期待していたように物事は進まず、妻には小言を言われ、子供たちには失望されてしまう始末。そんななかでジムは2人の魅力的なフランス人の娘たちに出会い、その後何度も彼女たちを見かけるうちに彼女たちに夢中になっていき…というようなプロット。

ジムの不安にあわせて現実と妄想と悪夢が錯綜していくような内容で、最初の1時間は妻子に苛まれ、残りの30分がSFっぽくなる展開。SF要素を排除して、惨めなバケーションだけの話にしても見応えがあったかも。世の中のパパさんは大変ですなあ。ラストも含め「シャイニング」に似てなくもないな。

全編をモノクロで撮影したのは季節感をなくすための策でもあったらしいが、ディズニーワールドのフューチャリスティックなデザインやクラシック調の音楽と相まって、「アルファヴィル」や「ウルトラQ」みたいなレトロ感覚のSF映画の雰囲気が非常に素晴らしい。花火のシーンにおける白と黒のコントラストもハッとするくらいに美しい。またゲリラ撮影したとはいえ満足できるショットを得るために何度もディズニーワールドに足を運んだとのことで、1つ1つのシーンがすごくよく撮れてるんですよね。きらびやかなはずのディズニーワールドを悪夢のように撮るとこうなるのかという。

なお、お姫様と魔女のアナロジー(?)が出てくるものの、ディズニーそのものに対する風刺などは皆無で、あくまでもディズニーワールドという文化をバックにした物語といった感じ。ところどころモザイクがかかってたりピー音が挿入されるものの、どうもあれは監督のジョークらしい。全然ジョークになってないところがさらにシュール感を強めているわけですが。

監督のランディ・ムーアは自費でこの映画を製作し、ディズニーの目を逃れるためにわざわざ韓国まで行ってポスプロ作業を行ったらしいが、今のところディズニーはこの映画のことは知っているものの何の法的措置もとっていない。騒ぎ立てて逆に注目を集めることになるのを避けている、ということらしい。おかげでアメリカでは劇場公開やVOD配信が行われているのですが、日本での公開とはできるのかなあ。単なるギミックではなく、映画としてとてもよく出来ている作品なので、ぜひこの監督にはこれからも映画を撮ってほしいところです。誰か東京ディズニーリゾートでリメークしようぜ!

「Much Ado About Nothing」鑑賞


ジョス・ウィードンが「アベンジャーズ」の製作中に休みをとって、しれっと短期間で撮影した低予算映画。シェイクスピアの「から騒ぎ」の舞台を現代に移し替えたもので、レオナートの屋敷にドン・ペドロの一行がやってきたことで生じる男女2組の恋愛模様と、それを邪魔しようとするドン・ジョンたちの悪巧みが巻き起こす騒動を描いている。

マイナーな登場人物の性別が変更されている点などを除けば、シェイクスピアの原作に非常に忠実らしいのだが…私事で恐縮ですが俺って大学で英文学専攻だったにも関わらずシェイクスピアって殆ど読んだことがありませんでして(授業で無理矢理学ばせられるのが嫌だったのだよ)、この作品もどのくらい脚色されてるのかはよく分からず。

おまけにセリフはすべて当時のままで言い回しが難解だし、登場人物の名前も古めかしくて、誰が誰なのかが分からないまま前半が過ぎていったような。ここらへんは原作に精通している人が観るとずいぶん違った感想になるかと。それでも後半になって話が佳境を迎えてからはどんどん面白くなっていったし、独身主義を貫いていたツンデレの男女が結ばれる結末は非常に微笑ましいものであったよ。モノクロ映画だけど日本でもきちんと宣伝すれば格好のデートムービーになるんじゃないでしょうか。

出演者はクラーク・グレッグやネイザン・フィリオンをはじめ、以前にウィードンと仕事したことのある役者たちが勢揃い。ウィードンは監督・脚本だけでなく作曲も担当し、撮影してるのもウィードンの自宅なので、とてもアットホームな雰囲気に満ちた内容になっている。奥さんが設計した家らしいが、デカくていい家に住んでるよなあ。

舞台を現代にしたことで「彼女は死んだことにしよう!」とか「決闘だ!」といった話の展開はさすがに無理があるものの、そこは目をつむりましょう。コケティッシュな魅力のある良い作品ですよ。

「EUROPA REPORT」鑑賞


インディペンデント系のSF映画。ちょっとネタバレ気味に紹介します。

木星の衛星エウロパにおける生命体の存在の可能性を調査するために、6人の宇宙飛行士が宇宙船に乗って1年以上もかかるような旅に出る。前例のない任務に胸を躍らせる彼らだったが、やがて悲惨な事故が起きてしまう。それでもエウロパに到着して地表に着地し、調査を始めた彼らだったが、そこで彼らを待ち受けていたものは…というストーリー。

物語の大半は宇宙船のカメラで撮影された映像で構築されていて、いま流行りのファウンドフッテージもののスタイルをとっています。宇宙飛行士たちに何が起きたのかを、地球の科学者たちが明らかにするという流れになっていて、記録された映像に科学者のインタビューが挿入されているような仕組み。また記録映像が順に出てくるわけではなく、時系列が意図的に乱されているので特に前半は話の流れを把握するのに難儀するかも。

科学的考証は、まあ、低予算映画にしてはいいんじゃないんですか。例によって無重力の描写は変なところがあるし、着陸船に全員が乗り込まずに母船に誰か残るだろとか、命綱くらい付けろよとかツッコミどころはあるものの、許容できる範囲内かと。ただ同じファウンドフッテージものでも、ホラーだと映像にとつぜん幽霊が映っても「あーこれ超常現象だから」と言い訳が出来るのに対し、SFだとどうしても科学的なリアリティが求められてしまうため、インパクトが薄まってしまうのかなとラストのオチを見て実感する。そういう意味では「プロメテウス」の荒唐無稽さはあれはあれで正しかったのだろう。

低予算作品だけどミカエル・ニクヴィストやシャールト・コプリーといった日本でも知られた役者が出演しているほか、音楽をベアー・マクリーリーが担当している。エウロパの氷の下の水中映像としてヘンリー・カイザーの南極探検の映像を使用しているのはヴェルナー・ヘルツォークの「Wild Blue Yonder」と同じだが、あそこまでポエティックな内容ではなく、「月に囚われた男」に雰囲気は似ているかな。地味だけど頑張ったことがよく分かる一品。

「THIS IS THE END」鑑賞


ジャド・アパトー系のコメディアンがみんな本人役で出演したコメディ映画。でもアパトー自身はこれには関わってないよ。

ジェイ・バルチェルがカナダから久しぶりにロサンゼルスにやってきて、旧友のセス・ローゲンと再会するところから話は始まる。2人はそのあとジェームズ・フランコの大邸宅で行われているパーティーに参加し、ジョナ・ヒルやマイケル・セラ、クレイグ・ロビンソンといった同業者たちに出会う。パーティーは夜中まで続いていたが、街が突然巨大な地震に襲われ、住民の多くが天からの青い光につつまれて昇天してしまう。これは聖書の黙示録に記された終末のときがやってきたのだ。

善人たちは神に選ばれて昇天できたが、ハリウッドのセレブなどという邪な連中が神に認められるわけもなく、大半が地割れに落ちたり業火に焼かれて死んでしまう。バルチェルとローゲン、ヒル、フランコ、ロビンソンの5人はフランコの家に閉じこもり、街を跋扈する魔物たちから身を守ろうとするが、招かれざる客としてダニー・マクブライドがやってきたことから内輪もめが始まり…というようなストーリー。

内輪ネタみたいなものは殆どないのだけど、まあ出演者(および彼らの出演作品)をどれだけ知ってるかで話をどれだけ楽しめるかが大きく変わってくるでしょう。話の中心となるのがジェイ・バルチェルやダニー・マクブライドであることを考えると、日本での劇場公開が見送られたのも無理はないかな。セス・ローゲンはエヴァン・ゴールドバーグと共同監督を務めていて、コメディもできるイケメンのジェームズ・フランコはやはり得だなーといった感じ。他にもエマ・ワトソンやリアーナ、アジズ・アンサリ、ポール・ラッドなどがチョイ役で出ています。そしていちばん体張ってるのがチャニング・テイタム。そこまでやるか?と思うくらいに頑張ってます。

話の半分くらいは出演者のアドリブだったらしく、口論のシーンなんかは本当にケンカしてたらしいが、そんな彼らのやり取りをずっと楽しむような内容になっています。プロット自体は中学生がノートに落書きしてるようなレベルなんだけどね。それで106分という尺はちょっと長いよな。長尺になるところは別にアパトーに見習わなくてもいいのに。あと出演者の大半がユダヤ系であるにも関わらず、「ヨハネの黙示録」通りに話が展開していくことへのツッコミが無かったのが意外だったかな。

前述したように人を選ぶ内容だし、吉本の芸人が総出演したようなノリの映画ではあるものの、個人的にはそれなりに楽しめました。アメリカではヒットしたことで続編の話も出ているらしく、今度はこの映画のプレミア試写会において天変地異がおきるという、なんかメタな話になるらしいのでそっちにも期待しておきます。

「PAIN & GAIIN」鑑賞


マイケル・ベイが「でっかいロボットが出てくる大作ばかり撮るのも疲れたんで、ちょっと気分転換に低予算映画を作るわ」とか希望して監督した犯罪コメディ。とはいえ予算は20億円くらいかけてるし、2時間超の長尺で最後は結局アクション映画になるあたり、彼にとっての低予算映画というのは一般の人たちの認識とはちょっとズレてるんでしょう。

1993年から95年くらいにかけてフロリダで実際に起きた事件をもとにしたストーリーで、ジムのトレーナーとして働くダニエルは、ジムの会員で裕福なビクターの資産に目をつけ、それを奪うことをジム仲間のポールとエイドリアンと画策する。何度かドジを踏んだものの彼らはビクターを誘拐することに成功し、彼を痛めつけて必用な書類にサインをさせる。そしてビクターを事故で死んだように見せかけ、自分たちは彼の自宅や銀行貯金をまんまと手にするが、実はビクターは重傷を負ったものの死んではおらず、彼に雇われた敏腕探偵がダニエルたちの周りを探るようになって…という内容。

主要な登場人物が10名くらいいるんだが、うち6名くらいが自分の経歴をモノローグで語ったりするものだからうざったくて仕方がない。こんなに多くの人物のナレーションが出てくる映画って初めてじゃないだろうか。ダニエルや仲間たちは暇さえあればバーベルを持ち上げてるような筋肉バカであり、外見だけで頭はカラッポの人間という描き方をすれば良かったのに、彼らにモノローグという内なる声を変に与えてしまったために中途半端に真面目になっていてコメディに徹しきれていないんだよな。ならばアメリカのマッチョ主義とかステロイド問題とかを風刺すればよかったのにそっちも全然描かれてないし。

主演のマーキー・マークは地で頭の悪い人なので今回のようなマッチョ役は似合っているはずなんだが、前述したように変にシリアスになってウジウジ悩んだりするのでどうも話のなかでカラ回りしている感じが否めない。むしろ相棒のハワード・マッキーのほうが「筋肉とセックス」という実に分かりやすい動機で犯罪に加担してて役回りは明快だったし、もう1人の相棒を演じるロック様は筋肉モリモリながらも自分に自身が持てない元犯罪者を絶妙に演じておられる。いつも思うんだけどこの人はコメディ演じたほうが巧いよね。あとはトニー・シャルーブやエド・ハリスといった役者が脇を固めているが、作品を救うことは出来ていないような。

前作の「トランスフォーマー3」を観たときも実感したが、マイケル・ベイって致命的に話を盛り上げる才能が欠けているというか、実話に基づいた脚本をそのまま撮っているだけという感じがするんだよな。だから話に緩急がつけられなくて、どこを削れば中身がもっと面白くなるかの判断がつけられないでやんの。話の中盤でビクターから奪った金を使い果たした主人公たちが、新たにポルノ業界の大物を狙おうとするんだけど、そこらへんの展開が前半とあまり変わらなくて「またやんの?」という感じであった。刑事ドラマを2話続けて見させられたような印象というか。あと「トランスフォーマー」でも指摘されていたように、人種差別やホモフォビアの雰囲気が微妙に漂っているのが気になったな。「犯罪者を美化しているのでは?」という批判がアメリカではあったらしいが、主人公たちは単に不快なキャラですから!

観るのが苦痛であるものの得られるものは何もないという、タイトルが半分だけ合っている映画。マイケル・ベイはもうCGを相手にドンパチを撮ってなさい。