「SOURCE CODE」鑑賞


(以下いちおうネタバレ注意)
「月に囚われた男」で注目されたダンカン・ジョーンズの第2作。日本では「ミッション: 8ミニッツ」というどうも残念な題で10月末に公開されるらしいね。今回の脚本はジョーンズによるものではないが、「もう1人の自分」というテーマは前作に通じるものがあるな。

シカゴ行きの列車が、何者かが仕掛けた爆弾によって爆破され乗客が全員死亡するというテロが発生。さらに犯人は6時間後に核爆弾によるテロを予告する。この緊急事態に対して政府は、死者の記憶を8分間だけ遡って現場の状況を探れるというシステム「ソース・コード」を起動し、空軍パイロットのコルター・スティーヴンスが「過去」へと送り込まれる。限られた時間のなかでスティーヴンスはテロの犯人を捜そうとするのだが、やがて意外な事実が明らかになっていく…というような話。

事故発生の8分前までなら何度でも戻ることができるので、犯人探しに失敗したスティーヴンスはもう1度戻って新たな手がかりを探し、それをもとにもう1度戻って…といったプロットになっているものの、懸念してたほど同じシーンが延々と繰り返されることはなかった。意外と早い時点で最初の謎が明らかにされ、そこから新たな謎が生じるというスピーディーな展開になっているので、観る人を飽きさせないつくりになっている。その代わり最初から最後までストーリーを貫くような大きな謎はないけどね。

そして犯人探しのプロットだけでなく、過去と現在を往復するうちに記憶が錯綜していくスティーヴンスの状態がもう1つの大きなプロットになっているわけだが、ここらへんはフィリップ・K・ディックの小説、特に「ユービック」に似たものを感じたよ。

列車の中と政府のオフィスという限られた空間で話の大半が進んで行くさまは「月に囚われた男」に似ているが、撮影テクニックなどが遥かに向上していて優れたSFサスペンスになっている。惜しむらくは前作と異なり音楽をクリント・マンセルが担当していないことか。

「マイティ・ソー」鑑賞


2Dで観た。原作のソーはキャラクターデザインが大好きな一方で、あのウサンくさい古典英語を話すところがどうしても好きになれなかったのですが、今回はまっとうな(?)英語を話していてひと安心。「Xメン」もそうだったけど、コミック版の口調とかアクセントを排除したのは正解だったな。

ストーリーはファンタジーと現代的なアクションをうまくまとめた出来になっていて、肉親同士の葛藤なんかはケネス・ブラナ—がシェークスピアをベースにしてきっちり描いた、といった感じでしょうか。ロキはもっと狡猾な生活にしても良かったと思うけどね。彼は肉弾戦を好むタイプではないので最後のバトルの相手にはちと力不足かと。というかデストロイヤー弱くない?原作だとムジョルニアを切断するという離れ業をやってたのに。

俳優陣はクリス・ヘムズワースの演技をまっとうに観たのはこれが始めてだが、豪快かつ純朴なソーをうまく演じている。ナタリー・ポートマンは相変わらず無邪気で幸薄そうな女性の役が似合うなあと。また浅野忠信はあの英語力ではハリウッドでは大成できないだろう。そして俺はステラン・スカルスガルドをずっとピーター・ストーメアだと思って観ておりました。

ここ最近のマーヴェル映画のお約束である「アベンジャーズ」への伏線は以前にも増して多めになっているが、セリフなどに巧妙に隠されているのであまり気にならない。ジェレミー・レナーがあの役で登場してたのにはニヤリとさせられましたな。

「ダークナイト」級の傑作ではないものの、「アイアンマン」くらいに気楽に楽しめる佳作。続編の製作が決定したそうですが、ベータレイ・ビルは出るよね?ね?

「A Lonely Place For Dying」鑑賞


スラッシュドットの記事で知った、現在寄付を募りながら製作されているというインディーズ映画の第1パート。公式サイトから無料でダウンロードできるよ。5パート揃って完成、ということらしい。

内容は政治サスペンスになっていて、KGBを裏切ったエージェントのニコライは、ワシントン・ポストの編集長に頼んでメキシコの収容所跡で記者と会おうとするのだが、CIAのエージェントがそこに現れて…というような話なんだが、正直なところ話がよく分からなかったよ。非常に政治的なシチュエーションのど真ん中から話を始める手法は分からんでもないのだが、観る人の興味をつかむのには成功していないような?

ワシントン・ポストの編集長役でジェームズ・クロムウェルがちょっと出演しているほかは、出演者はみんな無名の人たち。廃墟となった収容所で撮影したり、凝ったアングルを使ったりとそれなりに努力してるのは感じられるんだが、どうも素人っぽさが残ってしまったような。引きのショットばかりのせいか、映画というよりもゲームの合間に挿入されるムービーを観ているようであった。あと編集が拙いところがあって、電話で話すシーンでいちいち話している側に切り替わったりするのが目障りだったな。

最近は撮影や編集の機材がどんどん安価になってきて、そこらへんではプロとアマの違いは無くなってきていると思うんだけど、低予算でも何かしら目を引きつけるものを持った映画と、この作品のようなものを分つ要素って何なんだろうね。脚本?演出?監督の熱意?それら全て?それが分かれば誰も苦労しないのですが。

A Lonely Place For Dying 投稿者 ecufilmfestival

「スーパー8」鑑賞


俺がJ・J・エイブラムスの作品をどうしても好きになれない理由として、彼自身はすごく才能があってアイデアも豊富な人なんだろうけど、それが災いしてあまりにも手堅くきちんとした作品を作ってしまう点があって、要するにちょっと出来の悪いところがあったとしても「俺はこの映画を撮りたかったんだ!」というような情熱というか才気の爆発みたいなものが感じられないんだよな。そんな意味ではこの「スーパー8」はエイブラムスが撮るべきして撮った作品かと。だって作品の目的が「いかにスピルバーグ的な映画を撮れるか」なわけだから、スピルバーグの作品をきちんと勉強して律儀にオマージュを捧げれば立派なものは作れるだろうけど、どうしてもそれは「よく出来た模造品」であり、本物ではないという感が拭えなかったよ。

もちろん以前にもスピルバーグ的な映画を作った監督はいたわけだが、例えばジョー・ダンテ(あとたぶんゼメキス)なんかは自身の作家性が滲みだしていたのに対し、この作品はスピルバーグのスタイルを追うことだけに終始していたような(尤もエイブラムスの作家性が何なのか俺には分からないのだが)。よって結局のところ「どこかで観たことあるような映画」になってしまい、あれだけストーリーが謎にされた作品でありながら、先の展開が読めるものになってしまっていた気がする。そしてスピルバーグというのは模倣では絶対に超えることの出来ない天才であるわけで、おかげでスピルバーグとエイブラムスの力量の差を実感させられる内容になっていた。父親との屈折した関係や、女の子への童貞まるだしの憧れなんてのはスピルバーグならもっと巧く描けたはず。ここらへんはエイブラムスが崩壊家庭で育ってない(らしい)からなのかな。

とはいえ最初に書いたように相変わらず手堅いつくりの作品であることは間違いないわけで、観ていて楽しめないというわけではない。役者はエル・ファニングがずいぶん大きくなったな、という感じ。クリーチャーはCGなので例によって重量感がないのがマイナス点。結局のところオマージュと模倣のバランスが微妙な作品といったところですかね’。70〜80年代のスピルバーグを観てない人や世代などはまた違った感想を抱くのではないかな。

「世界侵略:ロサンゼルス決戦」鑑賞


とてもひどいダメ映画。アメリカで酷評されたので覚悟して観たけど、予想をはるかに下回る出来だった。とりあえず観ててダメだと思った点をいろいろ挙げていく。ネタバレがあるかもしれないがどうでもいい:

・話に起伏がない。というかストーリーが殆どない。たまにちょっと静かなシーンがあってもお決まりの展開(死に行く肉親とか)が披露されるだけで、あとは最初から最後までドンパチが続くだけ。
・キャラクターが全く立ってない。主人公にちょっとだけバックグラウンドがあるだけで、あとは誰もが一緒に見える。軍隊だからみんな同じ服装なのでさらに見分けがつかない。かといって戦闘のプロかというとそうでもなくて、攻撃されるとみんなパニックに陥ってるのは情けない。
・エイリアンがカッコ悪い。普通なら「相手はどんな格好してるんだろう?」といった好奇心を抱かせてくれるはずだが、この作品はエイリアンの解剖シーンがありながらもエイリアンの外見がよく分からないというお粗末さ。おまけに彼らが用いる兵器や乗り物も地球のものに良く似ていて面白みなし。
・役者がみんな叫びっぱなし。演技なんかが入る余地なし。ずっと大声で叫んでるだけ。

他にもいろいろあるんだがここらへんでやめとく。なんか敵がエイリアンだという必要はなかったんじゃないの?とまで思ってしまった。何が目的で侵略してるんだかよく分からないし(冗談のような推論は紹介される)、こうした侵略ものって圧倒的な戦力を持つエイリアンを人間側の機知でどうやって倒すかが大きな醍醐味だと思うんだが、ここでは力で力を制しているだけ。話にヒネリも何もない。

戦争ものと侵略ものの映画なんてのは今まで数多とつくられてきたわけで、参考になるネタとかはいくらでもあったはずなのに、なんでこんなゴミ作品が大金をかけて作られたのかは理解に苦しむよな。もうこの監督は2度と映画を作るべきではないと思う。同じロボット(?)との戦闘なら、「ギャラクティカ」のシーズン3冒頭のほうがはるかに迫力があったしストーリーも豊かだったぞ。