「THE INTERRUPTERS」鑑賞


アカデミー賞を受賞どころかノミネートさえもされなかったものの、ドキュメンタリー映画の金字塔的作品として名高い「フープ・ドリームス」の監督であるスティーブ・ジェームズのドキュメンタリー。んでこれも例によって今年のアカデミー賞の候補に選ばれていなかったりするので、アメリカでは非難の声があがっているみたい。

これは暴力沙汰の事件が相次ぎ、イラクやアフガンでの兵士よりも多くの人が死んだというシカゴを舞台に、暴力をふるう人と人のあいだに立って彼らを仲裁しようとする「インタラプターズ(制止者)」と呼ばれる活動家たちの姿を描いた映画で、インタラプターズは「暴力は疫病と同じで、人から人へと感染するものだ」という考えに基づいて疫病学者が創設した「シースファイア(停戦)」という活動団体が導入したプログラムの実践者であり、警察と犯罪者(というかいわゆるゴロツキ)の中間的なポジションに立つことで後者の信頼を得て、彼らを更正させていこうとする。

インタラプターズの多くは元犯罪者であり、ミーティングの場では「みんな合計したら500年くらい懲役くらってるかなあ」なんて冗談も飛び出すわけだが、やはりみんな凄みというか貫禄がやたらあるんだよな。そういう人たちが更正して罪滅ぼしのために活動し、「悪いことして俺みたいになるなよ」などと言ってるのを聞くと言葉の重みがハンパじゃないわけで。

作品中では3人のインタラプターズに焦点があてられ、有名なギャングの娘で不良だったアミーナ、刑務所への出入りを繰り返していたコーブ、17才のときに殺人を犯して10数年間刑務所に入っていたエディーたちが、それぞれ不良少女に学校に行くよう説得したり、ケンカばかりしている兄弟を仲直りさせたり、強盗に入った少年を被害者に謝らせたりする姿が描かれていく。日本だったら「プロ市民」などと呼ばれそうな活動かもしれないが、私欲もなしに辛抱強く活動を続けていく彼らの姿は純粋に立派だと思いますよ。暴力に巻き込まれて負傷するインタラプターなんてのも実際いるわけだし。

彼らの活動がすべて成功しているわけではないものの、暴力を減らすことに貢献したとのことで海外からも視察団が訪れ、バミューダ諸島でも同様のプログラムが導入されたらしい。ただ日本では同様のプログラムが通用したりするのかな。銃が蔓延しているわけではない(福岡を除く)から暴力の種類も違うだろうし、文化の違いなども大きいかと。でも学校の生徒が元犯罪者から話を聞くのは意外とためになりそうな気がするんだけど、どうなんだろうね。

2人の少年の成長を追った「フープ・ドリームス」に比べると少し散漫な出来ではあるものの、いろいろ考えさせられる作品であった。

「THE GUARD」鑑賞


アイルランド映画としては彼の国の興行記録を塗り替えたという映画。まあ小さい国なんですけどね。主演はブレンダン・グリーソンにドン・チードルで、監督のジョン・マイケル・マクドナーってマーティン・マクドナーの弟なのか。兄弟そろってグリーソンをフル活用してますね。あと最近悪役ばかり演じてるマーク・ストロングがここでも悪役を演じてた。

アイルランド西海岸のゴールウェイ地方の警察官であるゲリーは酒飲みで女好きで上司に平気で反抗するような人物だったが、汚職には手を出さないタフな警官だった。そんな彼の警察署に、海外から大量のコカインがゴールウェイに密輸されるという情報を入手したFBIの捜査官である黒人のウェンデルがやってくる。悪気も無く人種差別的な発言をするゲリー(および周りの住民)にウンザリするウェンデルだったが、2人の調査により麻薬の売人たちがゴールウェイに既にやってきていることが判明する。しかし他の警官たちは彼らに買収されていて…というような話。

住民の大半が白人のアイルランドにやってきた黒人捜査官、という設定は「ディボーシング・ジャック」などにもあったし必ずしも目新しいものではないが、子供っぽいグリーソンと真面目なチードルのかけ合いは面白いぞ。ゲールタハト(アイルランド語が話されてる地域)のこととか知らないと十分に楽しめないかもしれないけどね。アイルランドの田舎っぷりがよく分かる作品かと。でもゴールウェイはいいとこですよ。

脚本家が監督をやっただけにセリフが多いのが長所でも短所でもあって、売人たちが哲学書を読み合ってるところとか、気の利いたセリフを言わせたがってんなあ、といった感じ。いろいろ笑えるセリフも飛び出してくるんだけど、おかげでサスペンスの要素が薄まってしまってどうも変なバランス感があったような気がする。あとゲリーの母親の話とか、どうも説明不足というか消化不良のプロットがいくつかあったような?

突っ込みどころが少なくないのだけど、やはりブレンダン・グリーソンの演技が素晴らしいのでそれだけでも楽しめる作品。彼はこの役でこんどのゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたので、受賞できるか見守りたいところです。

今年観た映画トップ10

去年ほど明確な順位付けができそうにないので、良かった映画を日付順に10本挙げていく:

「DOGTOOTH」
実はこれを年間ベストに推したい気持ちもあるんだけどね。でも単なるキワモノ好きのように思われるので。ギリシャ映画は今年も注目しよう。

「127時間」
ラストのシガー・ロスの曲がかかるシーンがとても素晴らしいです。

「恋とニュースのつくり方」
普通だったら選ばないような出来の作品ですが、震災後にモヤモヤしていたしていたとき観に行ったらいい気分転換になったので、感謝の念を込めて。

「ブラック・スワン」
アロノフスキーの作品としては「レクイエム」と「レスラー」の延長線上にあるような感じで決して期待してたほどではなかったのですが、それでも出来の良い映画であることは間違いない。

「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」
今年のアメコミ映画のなかではこれがいちばん好き。マシュー・ヴォーンやるじゃん。

「ミッション: 8ミニッツ」
純粋に楽しめるSF映画。邦題が残念なところではある。

「スーパー!」
繰り返して言うが、目の前で行列に割り込んだ奴を撲殺する光景は素晴らしい。

「サブマリン」
飛行機のちっちゃい画面で観たことには気が引けるが、とてもよく出来たボーイ・ミーツ・ガールものだよ。

「ATTACK THE BLOCK」
ニック・フロストなら「宇宙人ポール」よりこっちのほうが面白いよ。来年に日本でも劇場公開されるはず。

「WARRIOR」
最近観たばかりだから印象が強いのかもしれないが、しっかり作られたスポーツ映画でした。

他にも良かったのは「FOUR LIONS」「トゥルー・グリット」「マイティ・ソー」「MI4」などなど。

それなりに観ているようでイーストウッドとかソダーバーグあたりの作品が抜け落ちているのはいかんなあ。来年はアジアの映画もしっかり観ないと。そして非リア充であるがゆえにロマンス映画を敬遠してるのではないかと、映画のリストを見ていて気付いた次第です。もっとまんべんなく鑑賞しないといかんですね。

「WARRIOR」鑑賞


興行的にはパッとしなかったものの評論家たちから高い評価を受けた、MMA(総合格闘技)の選手たちを主人公にした映画。

ピッツバーグに住むパディ・コンロンは元ボクサーで2人の息子たちも格闘家として育てていたが、酒のために身を持ち崩して家庭は崩壊し、妻は下の息子のトミーを連れて家を去り、上の息子のブレンダンもパディと絶縁してUFCの選手となり、引退後は高校の教師となって妻子を養っていた。そんなとき10数年ぶりにトミーがパディの前に現われ、彼を格闘家として再びコーチしてほしいと依頼する。一方でブレンダンは経済的理由から家のローンが払えず、家族を救うために格闘家に復帰しようと考えていた。こうしてパディとトミーとブレンダンはお互いに打ち解けることもないまま、ニュージャージーで開催されるMMAの大会に参加することになるのだが…というような話。

話の設定とか展開はかなりベタで、疎遠になった兄弟とか元アル中の父親、試合を心配そうに見つめる妻や生徒たち、強豪選手をスパーリングでノシて周囲を唖然とさせる無名選手、なんていう少年マンガ的な要素が前半はてんこ盛りで、トレーニングのシーンも「Xメン;ファースト・ジェネレーション」にあったスプリットスクリーンのモンタージュなんかを使っていて、定番だなあという感じ。

しかし後半のMMA大会になってからは話が俄然と面白くなってきて、試合のシーンがどれも非常にリアルなものになっている。俺自身はMMAにまるで詳しくないものの、「あ、これはウソだな」と思わせるような展開は無かったと思う。ブレンダンがちょっと打たれ強すぎる気はしたけどね。

役者の演技も非常によく、パディを演じるニック・ノルティはやはりアル中オヤジの演技がよく似合う。ブレンダン役のジョエル・エドガートン(って「スター・ウォーズ」のオーウェンおじさんの人か!)は目がちっこいのでいまいち感情表現が分かりにくいかな。圧巻なのはトミー役のトム・ハーディで、プロ顔負けの筋肉をつけて怪物みたいなファイティング・スキルを見せつけてくれる。これなら「ダークナイト・ライジング」のベイン役も期待できそうだな。あとブレンダンの妻を演じるジェニファー・モリソンが意外にも良かった。他にもMMAの関係者がたくさん出てるみたい。元WWEのカート・アングルもロシアの選手として登場するぞ。

ベタな内容でも話のツボをちゃんと押さえてれば面白くなるんだよ、というお手本のような良作。監督のギャヴィン・オコナーはアイスホッケー映画の「ミラクル」も撮っているのでこういうスポーツものの映画は慣れてるんでしょうね。日本でも劇場公開すべきだと思う。

「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」鑑賞


世間の評判通り楽しめる映画でしたよ。

ブラッド・バードが実写作品をどこまで手がけられるのかは未知数だったわけだが、アクションとコメディとの絶妙なバランスや、ラストの駐車場におけるファミコンのごときドタバタ劇をきちんと分かりやすく描いているあたりは「Mr. インクレディブル」に通じるものがあるなあと。このあと彼は実写映画でも引っ張りだこになるんじゃないだろうか。というわけで隠れた名作「アイアン・ジャイアント」を皆さん観ましょう。CGやスタントを使わなかったドバイの高層ホテルのシーンはやはり圧巻ですよ。ものすごく金のかかったジャッキー・チェン映画のような感じ。

多くの人が書いているように、ロマンス的な要素を排除してトム君のヤサ男イメージを削ったことや、チームの他のメンバーの活躍の場も増やしたことでトム君のエゴ映画という印象を減らしたことが功を奏しているのだろう。フランチャイズの主人公はジェレミー・レナーが引き継ぐという話もあるようだけど、この映画がヒットしてることや、レナーが他のフランチャイズを受けまくっている(アベンジャーズ、ジェイソン・ボーン)ことから、もう1回あたりトム君が主役を務めたりするような気がする。あとサイモン・ペッグが前作よりも活躍していて彼のファンとしては大満足。

アクションが洗練かつ充実している一方でストーリーが少し弱いのが欠点で、後半になると誰がどういう重要人物なのかが分かりにくくなってくるし、悪役が初老の「逃げ足が速い男」というのはどうかと。このシリーズは概して悪役が魅力的でないよね。でもJ・J・エイブラムス印の凡作だった前作よりもずっと楽しめる作品でしたよ。

ちなみにシリーズを通してだとジョン・ウーの職人芸的スローモーション(およびハト)が満喫できた2作目が俺はいちばん好きで、世間的にあの作品がよく叩かれてるのは納得いかんなあ。この4作目はそれと同じくらいの出来で、それよりずっと後ろにあるのが3作目、そしてフェルプス君を悪役にするという言語同断の行いをした1作目は唾棄すべき作品だと考えているんだが、皆さんはどうですか。